第90話:人懐っこさが結ぶ友情
天界の大広間、準備が進んでいます。
「こちらに、飾りつけをお願いします」
パヌエルが、明るく指示を出していました。
天界と魔界の合同パーティー——今日は、その準備日です。
ノエルも、手伝いに来ていました。
「はい、分かりました」
ノエルは、装飾を手に取ります。
広間には、たくさんの人がいました。
天界側も魔界側も、協力して作業を進めています。
「マモンさん、予算はこれで大丈夫ですか」
パヌエルが、書類を見せます。
「ええ、全く問題ありません」
マモンが、にこやかに答えました。
「費用は気にしないでください」
その声に、迷いがありませんでした。
ノエルは、二人の様子を見ます。
パヌエルは、企画全体を把握していました。誰に何を頼むか、どこに何を配置するか——全てを、頭の中で整理しているようです。
マモンは、必要な物資を次々と用意していました。
「これも必要ですね」と言っては、惜しみなく提供しています。
「お二人、息がぴったりですね」
ノエルが、率直に言いました。
「ありがとうございます」
パヌエルが、嬉しそうに微笑みます。
「マモンさんと組むと、安心なんです」
「私も、パヌエルさんの企画力を信頼しています」
マモンが、頷きました。
二人の信頼関係が、伝わってきます。
作業は、順調に進んでいきました。
装飾が整い、テーブルが並び、照明が調整されていきます。
「ノエルさん、お茶を淹れてもらえますか」
パヌエルが、尋ねます。
「みんな、疲れてきたので」
「はい」
ノエルは、厨房に向かいました。
お茶を用意して、戻ってきます。
作業していた人たちが、ほっと一息ついていました。
「ありがとうございます」
天使の一人が、お茶を受け取ります。
「助かります」
魔界側の職員も、微笑みました。
休憩の時間です。
パヌエルとマモンも、ノエルの隣に座りました。
「お二人は、いつから仲が良かったのですか」
ノエルは、尋ねます。
「戦争の時からです」
パヌエルが、あっさりと言いました。
ノエルは、少し驚きます。
戦争の時から——敵同士だったはずなのに。
「僕、人と話すのが好きなんです」
パヌエルが、説明します。
「戦場でも、機会があれば話しかけていました」
その性格が、想像できました。
「ある時、停戦交渉の場で会いました」
マモンが、思い出すように言います。
「パヌエルさんが、『みんなでワイワイできたら良いのに』と」
「本当に、そう思っていたんです」
パヌエルが、頷きます。
「戦うより、楽しく過ごす方が良いですから」
その素直さが、パヌエルらしいものでした。
「私も、同じ気持ちでした」
マモンが、続けます。
「お金は、戦争ではなく、みんなの幸せに使いたかった」
二人の価値観が、似ていたのです。
だから、敵同士でも通じ合えた——ノエルは、理解しました。
「戦争が終わって、すぐに連絡を取りました」
パヌエルが、言います。
「『一緒にパーティーをしましょう』って」
「即座に、賛成しました」
マモンが、微笑みます。
「予算は、いくらでも出すと」
その時から、二人は協力してきたのでしょう。
「今まで、何回パーティーを企画したのですか」
ノエルが、尋ねます。
「数えきれません」
パヌエルが、笑います。
「大きなものから小さなものまで」
「全部、成功しました」
マモンが、誇らしげに言います。
その実績が、二人の信頼関係を物語っていました。
休憩が終わり、作業が再開します。
ノエルも、指示に従って動きました。
広間が、少しずつ変わっていきます。
装飾が加わり、テーブルクロスが敷かれ、花が飾られ——華やかな空間になっていきました。
「素敵ですね」
ガブリエル嬢が、広間に入ってきます。
彼女は、準備の様子を見に来たようです。
ゆっくりと、広間を見渡していました。
「ガブリエル様」
パヌエルが、駆け寄ります。
「明日、楽しみにしていてください」
「ええ」
ガブリエル嬢が、優しく微笑みます。
「きっと、素晴らしいパーティーになりますね」
その言葉に、パヌエルは嬉しそうでした。
夕方になりました。
準備は、ほぼ完了しています。
「お疲れさまでした」
パヌエルが、みんなに声をかけます。
「明日、成功させましょう」
拍手が起こりました。
天界側も魔界側も、一緒に拍手をしています。
ノエルは、その光景を見ていました。
かつての敵同士が、こんなに協力している——その事実が、まだ不思議に思えます。
でも、それが現実なのです。
人懐っこさと気前の良さ——二人の性格が、多くの人を結びつけているのです。
翌日、パーティーが始まりました。
広間は、人で溢れています。
天使も悪魔も、笑顔で語り合っていました。
音楽が流れ、料理が並び、笑い声が響きます。
パヌエルとマモンは、あちこちを回って、皆に声をかけていました。
「楽しんでいますか」
パヌエルが、ノエルに尋ねます。
「はい」
ノエルは、頷きました。
「本当に、素晴らしいパーティーです」
「みんなが幸せそうで、嬉しいです」
マモンが、満足そうに言います。
ノエルは、思いました。
これが、二人の目指したものなのだと。みんなでワイワイ楽しむ——その単純な願いが、こんなにも多くの人を笑顔にしているのです。
ガブリエル嬢は、テーブルで静かに座っていました。
少し眠そうですが、穏やかに微笑んでいます。
「ガブリエル嬢」
ノエルが、隣に座ります。
「楽しいですね」
ガブリエル嬢が、静かに言います。
「はい」
ノエルは、頷きました。
人懐っこさと気前の良さ——それが結んだ友情は、多くの人に広がっていきました。
パーティーは、大成功でした。
夜が深まっても、広間は賑やかです。
笑い声が、絶えません。
ノエルは、胸に刻みました。
友情——それは、性格の相性から生まれることもある。そして、その友情は、周りの人も幸せにできるのだと。
天界の夜は、温かい笑顔に包まれています。
## あとがき
人懐っこさと気前の良さが、多くの人を結びつけました。みんなでワイワイ楽しむ——その単純な願いが、最高のパーティーを生み出します。次の物語では、最も深い因縁を知ります。




