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第86話:癒しと平和の最強コンビ

魔界の調停室、ノエルは初めてこの場所に来ました。


「今日は、一緒に来てもらいたくて」

ラファエル師匠が、優しく言います。

「良い勉強になるはずだ」


「はい」

ノエルは、頷きました。


師匠に呼ばれて、魔界まで来たのです。

調停の現場を見学する——それが、今日の目的でした。


部屋の中には、既にサタンがいます。


「ラファエル、来たか」

サタンが、穏やかに微笑みました。


「ああ」

ラファエルが、応えます。

「弟子も連れてきた」


「ノエルさんですね」

サタンが、ノエルを見ます。

「よく来てくれました」


「お世話になります」

ノエルは、礼をしました。


「では、始めようか」

ラファエルが、言います。


調停——天界と魔界の間で起きた、小さな問題を解決する仕事です。

二人は、定期的にこの役目を担っているのだと聞いていました。


最初の案件が、持ち込まれます。

天界側の天使と、魔界側の職員が入ってきました。二人とも、少し不満そうな顔をしています。


「どうぞ、座ってください」

サタンが、席を勧めます。


二人が座ると、話が始まりました。

書類の処理方法を巡る、意見の食い違いでした。天界のやり方と魔界のやり方が、異なっているのです。


「まあまあ、落ち着いて」

サタンが、静かに言います。


「でも、こちらの方式が——」

天使が、言いかけます。


「お二人とも、正しいことを言っているのです」

サタンが、優しく遮りました。


ラファエルが、前に出ます。

「まず、それぞれの言い分を聞きましょう」


師匠の声が、穏やかでした。

焦らず、丁寧に。まず相手の話を聞く——それが、師匠の教えでした。


天使が、自分の意見を述べます。

ラファエルは、うなずきながら聞いていました。


次に、魔界側の職員が話します。

サタンも、静かに耳を傾けています。


ノエルは、二人の様子を見ていました。

どちらの味方もしない——中立的な立場を、貫いているのです。


「ノエル」

ラファエルが、突然呼びました。


「はい」

ノエルは、少し驚きます。


「君は、どう思う?」

師匠が、尋ねてきました。


え——いきなり意見を求められて、ノエルは戸惑います。

でも、逃げるわけにはいきません。


「えっと……」

ノエルは、考えます。


二人の言い分を思い返しました。

天界のやり方は、確実です。でも、時間がかかります。魔界のやり方は、効率的です。でも、確認が甘くなるかもしれません。


「両方の良いところを、組み合わせるのはどうでしょうか」

ノエルは、率直に言いました。


ラファエルが、微笑みます。

「良い答えだ」


「そうですね」

サタンも、頷きました。

「では、具体的にどうするか、考えましょう」


三人で、話し合います。

ノエルも、意見を言いました。天界の確認手順と、魔界の効率化を組み合わせる方法——自分なりに考えて、提案します。


天使と魔界職員が、それを聞いています。

次第に、表情が変わっていきました。不満から、納得へ。


「それなら、できそうです」

天使が、言います。


「私も、賛成です」

魔界職員も、頷きました。


問題が、解決しました。

二人は、笑顔で部屋を出ていきます。


「良くやったな」

ラファエルが、ノエルの肩に手を置きます。


「ありがとうございます」

ノエルは、少しほっとしました。


次の案件が、来ます。

今度は、もっと複雑な問題でした。


でも、ノエルは積極的に参加します。

分からないことは、師匠に聞きました。自分の考えも、臆せず述べます。


調停は、午後まで続きました。

いくつもの案件を、解決していきます。


全てが終わると、三人で休憩を取りました。


「お疲れさまでした」

ノエルは、二人に言います。


「こちらこそ」

サタンが、微笑みました。

「ノエルさんの意見、参考になりました」


「本当ですか」

ノエルは、嬉しくなります。


「ああ」

ラファエルが、頷きます。

「若い視点は、大切だ」


お茶を飲みながら、会話が始まります。


「師匠とサタン様は、昔から仲が良かったのですか」

ノエルは、尋ねました。


「いや」

ラファエルが、首を振ります。

「昔は、敵だった」


「戦争の時は、何度も戦いました」

サタンが、静かに言います。


ノエルは、少し驚きました。

でも、考えてみれば当然です。天魔大戦——二人も、戦場にいたのです。


「激しい戦いでした」

ラファエルが、遠くを見ます。

「お互いに、傷を負わせ合った」


「でも」

サタンが、続けます。

「戦いの中で、相手を理解していった」


ノエルは、聞き入ります。


「ラファエルは、敵を傷つけることを嫌っていた」

サタンが、言います。

「戦場でも、必要以上の攻撃はしなかった」


「サタンも、同じだった」

ラファエルが、頷きます。

「怒りに任せて戦うことはなかった」


二人の間に、何かが通じ合ったのでしょう。

敵同士でも、理解できることがある——ノエルは、そう感じました。


「戦争が終わって、平和協定が結ばれた」

ラファエルが、言います。

「最初に手を取り合ったのが、サタンだった」


「お互いに、平和を望んでいたから」

サタンが、微笑みます。


「それから、ずっと一緒に調停をしている」

ラファエルが、サタンを見ます。

「最強の平和コンビだ」


その言葉に、温かさがありました。


「師匠は、どうして調停を選んだのですか」

ノエルは、尋ねます。


「争いを、もう見たくなかったから」

ラファエルが、静かに答えます。

「戦争で、たくさんの傷を見た」


その声が、少し沈みます。


「だから、争いを止める側に回りたかった」

ラファエルが、続けます。


「私も同じです」

サタンが、頷きます。

「平和が、一番です」


二人の信念が、同じでした。

だから、こんなに良いコンビになれたのでしょう。


「ノエルも、いつかこの仕事を手伝ってくれるか」

ラファエルが、尋ねます。


「はい」

ノエルは、即座に答えました。

「ぜひ、お願いします」


今日の経験で、分かったのです。

調停という仕事の大切さ。平和を守る、具体的な方法。


「では、これからも一緒に」

ラファエルが、微笑みます。


ノエルは、頷きました。

師匠と共に、平和のために働く——それが、自分の目標になったのです。


窓の外では、魔界の空が色を変えていました。

一日の終わり——でも、新しい始まりでもありました。


癒しと平和の最強コンビ。

その姿が、ノエルの進むべき道を照らしてくれました。


魔界の夕暮れは、静かに深まっていきます。

## あとがき


調停の現場で、ノエルは一歩を踏み出しました。師匠と共に歩む道が、少しずつ見えてきます。平和を守る仕事の大切さを知り、成長への階段を登っていきます。

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