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第79話:嫉妬を知らない賞賛者

魔界の食堂で、ノエルは不思議な光景を目撃しました。


「すごく美味しいです!」

ある女性が、目を輝かせています。


「こんなに美味しいもの、初めて食べました」

彼女は、料理人に何度も何度もお辞儀をしていました。料理人の方が、困った顔をしています。


「いえ、そこまで褒めていただかなくても……」

料理人が、照れくさそうに言いました。


「いえいえ、本当に素晴らしいです」

女性は、まだ続けます。

「私なんて、全然料理できないんです」


その謙遜ぶりが、可愛らしかったです。

ノエルは、その様子を見ていました。


「あれは、レヴィアタン様です」

ベルゼブブが、小声で教えてくれます。


「レヴィアタン……?」

ノエルは、その名前を思い出しました。


嫉妬の悪魔——。

でも、目の前にいるのは、誰かを羨んでいる様子ではありません。むしろ、心から称賛しています。


「料理人さんって、すごいですよね」

レヴィアタンは、まだ話しています。

「私には、とてもできません」


その笑顔が、本当に嬉しそうでした。


料理人は、最終的に笑顔で去っていきます。

レヴィアタンは、満足そうに席に戻りました。


「行きましょうか」

ベルゼブブが、ノエルを促します。


レヴィアタンのテーブルに近づくと、彼女が気づきました。


「あら、ベル様」

レヴィアタンが、嬉しそうに立ち上がります。


「レヴィ、お客様です」

ベルゼブブが、紹介しました。

「ガブリエル様と、近侍のノエルさんです」


「まあ!」

レヴィアタンの目が、さらに輝きます。

「ガブリエル様!お会いできて光栄です」


その興奮ぶりが、微笑ましかったです。


「こちらこそ」

ガブリエル嬢が、優雅に頷きます。


「そして、近侍の方まで」

レヴィアタンが、ノエルを見ます。

「きっと、優秀な方なのでしょうね」


「いえ、まだまだです」

ノエルは、謙遜しました。


「そんなことないです」

レヴィアタンが、即座に言います。

「ガブリエル様に仕えているなんて、すごいです」


その賞賛が、本気でした。

お世辞ではなく、心から尊敬しているようです。


「お座りになりませんか」

レヴィアタンが、席を勧めてくれました。


三人が座ると、レヴィアタンは嬉しそうに話し始めます。


「天界って、素敵なところなのでしょうね」

彼女の目が、キラキラしています。


「魔界も、素晴らしい場所ですよ」

ノエルは、率直に言いました。


「そうですか?」

レヴィアタンが、驚いたように目を丸くします。

「でも、天界の方がずっと綺麗だと思います」


その謙遜ぶりが、また始まりました。


「私たち魔界は、天界に比べたら……」

レヴィアタンが、少し恥ずかしそうに言います。


「そんなことはありません」

ガブリエル嬢が、穏やかに言いました。

「魔界は、魔界の美しさがあります」


「本当ですか」

レヴィアタンが、嬉しそうに微笑みます。

「ガブリエル様に、そう言っていただけると」


その喜びようが、純粋でした。


「ところで」

ノエルは、思い切って言いました。

「嫉妬、という名前なのですよね」


「ええ」

レヴィアタンが、こくりと頷きます。

「でも、名前と実態が……」


「合っていない」

ノエルが、続けました。


「はい」

レヴィアタンが、困ったように笑います。


もう、驚きはしません。

魔界の大悪魔たちは、皆そうなのです。


「私、嫉妬したことがないのです」

レヴィアタンが、不思議そうに言います。

「皆さん、すごいなあって思うだけで」


その表情が、本当に不思議そうでした。

嫉妬という感情を、理解できないようです。


「例えば、さっきの料理人さん」

レヴィアタンが、目を輝かせます。

「あんなに美味しいものが作れるなんて、すごいです」


「羨ましい、とは思わないのですか」

ノエルが、尋ねます。


「羨ましい……?」

レヴィアタンが、首を傾げました。

「うーん、それより、尊敬します」


その答えが、可愛らしかったです。


「皆さんの方が、ずっと上手ですよ」

レヴィアタンが、謙遜します。

「私なんて、全然ダメで」


その謙遜が、また始まりました。

自己肯定感が、とても低いようです。


「そんなことはないでしょう」

ノエルは、フォローしました。


「いえいえ」

レヴィアタンが、首を振ります。

「本当に、皆さんすごいんです」


その目が、キラキラしています。

他人の良いところを見つけるのが、得意なようでした。


「ベル様も、すごいですよね」

レヴィアタンが、ベルゼブブを見ます。

「健康管理、完璧ですもの」


「まあ」

ベルゼブブが、照れたように笑います。


「アスモデウス様の恋愛論も、素敵です」

レヴィアタンが、続けます。

「サタン様の平和主義も、尊敬します」


褒める言葉が、次々と出てきます。

止まりません。


「ガブリエル様の優雅さなんて」

レヴィアタンが、ガブリエル嬢を見つめます。

「憧れです」


ガブリエル嬢が、優しく微笑みました。


「そして、ノエルさん」

レヴィアタンが、ノエルに向き直ります。

「きっと、お仕事も完璧なのでしょうね」


「いえ、そんなことは……」

ノエルは、謙遜しました。


「謙遜なさらないでください」

レヴィアタンが、真剣な顔で言います。

「皆さん、本当にすごいんです」


その純粋さが、眩しかったです。


ノエルは、思いました。

嫉妬の悪魔——でも、嫉妬という感情がない。むしろ、他人を称賛することに喜びを感じているようです。


「みんなすごいなあ」

レヴィアタンが、幸せそうに呟きました。


その一言が、全てを表していました。

他人の素晴らしさを、素直に認められる人。それが、レヴィアタンなのです。


「レヴィは、いつもこうなのです」

ベルゼブブが、優しく言います。

「誰かを褒めている時が、一番楽しそうで」


「ええ」

レヴィアタンが、嬉しそうに頷きます。

「素敵な人がたくさんいて、幸せです」


その笑顔が、本当に幸せそうでした。


時間が、ゆるやかに流れていきます。

レヴィアタンは、まだ誰かを褒めていました。


ノエルは、微笑ましく思いました。

こんなにも純粋に、他人を称賛できる人がいるのだと。


嫉妬を知らない賞賛者——。

その姿が、とても愛らしかったのです。


魔界の午後は、今日も平和でした。

## あとがき


他人を褒めることに喜びを感じる人。嫉妬の名を持ちながら、称賛に満ちた心。その純粋さが、周りを明るくしていきます。次の物語では、また違う驚きが待っています。

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