第67話:初雪の贈り物
雲の上の、とある静かな朝。ノエルは、窓辺で何かに気づきました。
「あれは……」
空から、白いものが舞い降りています。小さくて、ふわふわとしたもの。
雪でした。天界に、初雪が降っています。
「ガブリエル嬢」ノエルは、すぐに声をかけます。
雲クッションで微睡んでいたガブリエル嬢が、ゆっくりと目を開けました。
「どうかしましたか」
「雪です」ノエルは、窓を指差します。「初雪が降っています」
「あら」ガブリエル嬢の顔が、ぱっと明るくなりました。
窓の外では、白い雪が静かに舞っていました。雲海に、ゆっくりと降り注いでいます。
その時、扉が勢いよく開きます。
「ガブリエル嬢、見ましたか!」パヌエルが、弾んだ声で入ってきました。「雪です、雪!」
「ええ」ガブリエル嬢は、優しく微笑みます。「綺麗ですね」
「みんなで外に出ましょう」パヌエルは、嬉しそうに言います。「もう、何人か集まってますよ」
中庭へ向かうと、すでに何人かの天使が集まっていました。ミカエル、ラファエル師匠、ウリエル、サリエル。みんな、雪を楽しそうに眺めています。
「おお、ガブリエル嬢も来たか」ミカエルが、声をかけてきます。
「初雪ですね」ガブリエル嬢が、優しく言いました。
「綺麗だね」ラファエル師匠が、のんびりと言います。
若い天使たちも、わいわいと集まってきました。雪を見て、みんな嬉しそうです。
「雪合戦しませんか!」一人の若い天使が、提案します。
「雪合戦か」ミカエルが、興味深そうに言いました。「良いな」
「私も参加します」パヌエルが、嬉しそうに言います。
あっという間に、チーム分けが始まります。わいわいと賑やかな雰囲気になりました。
「ガブリエル様も、ぜひ」若い天使が、誘います。
「私は」ガブリエル嬢は、少し困ったように笑います。「見ている方が良いです」
「そうですか」若い天使は、残念そうです。
「でも、楽しみにしていますね」ガブリエル嬢は、優しく微笑みます。
ノエルも、見学組に回ることにしました。ガブリエル嬢の隣に、立ちます。
雪合戦が、始まりました。若い天使たちが、雪玉を投げ合っています。ミカエルも参加して、的確に雪玉を避けていました。
「ミカエル様、上手いですね」若い天使が、感心しています。
「戦士だからな」ミカエルは、少し得意げです。
パヌエルが、雪玉を作っています。でも、投げる前に崩れてしまいました。
「あれ?」彼は、不思議そうに首を傾げます。
「パヌエル、もっと固めないと」ラファエル師匠が、教えています。
ガブリエル嬢が、その様子を微笑ましく見ていました。小さく、笑っています。
ノエルは、その横顔を見ていました。楽しそうにしている彼女。その表情が、とても穏やかで。
尊い、と。心の中で、そっと呟きます。
雪合戦は、賑やかに続きました。ウリエルが、冷静に戦略を立てています。サリエルは、一生懸命雪玉を投げていますが、方向が定まりません。
「サリエル、そっちは味方だ」ミカエルが、慌てて言います。
「え」サリエルは、真っ赤になります。「すみません」
みんなが、笑います。温かい笑い声が、雪の中に響きました。
やがて、雪合戦が終わります。みんな、息を切らしていました。
「楽しかった」若い天使たちが、口々に言います。
「次は、雪だるまを作りませんか」パヌエルが、提案します。
「良いですね」ウリエルが、珍しく賛成しました。
みんなで、雪だるま作りが始まります。大きな雪玉を転がして、積み上げていきました。
ガブリエル嬢が、そっと雪に触れます。手のひらに、雪が舞い降りました。
「冷たいですね」彼女が、小さく言います。
「はい」ノエルは、微笑みます。
「でも、綺麗です」ガブリエル嬢の声が、優しく響きます。
雪だるまが、完成しました。大きくて、立派な雪だるまです。
「目は、これで」パヌエルが、小石を持ってきます。
「鼻は」ラファエル師匠が、小枝を探しています。
みんなで飾り付けをして、可愛い雪だるまができあがりました。
「良いですね」ガブリエル嬢が、嬉しそうに言います。
「ガブリエル様も、一緒に記念に」若い天使が、誘います。
みんなで、雪だるまを囲みました。ガブリエル嬢も、その中に入ります。
「では、みんなで」パヌエルが、嬉しそうに言いました。
賑やかな一枚が、記憶に残ります。雪だるまを囲んで、笑顔のみんな。
やがて、寒くなってきました。
「温かいものを飲みましょう」ウリエルが、提案します。
「良いですね」ガブリエル嬢が、頷きます。
みんなで、大聖堂の休憩室へと移動します。ウリエルが、温かいお茶を用意してくれました。
「どうぞ」ウリエルが、みんなに配ります。
「ありがとうございます」ガブリエル嬢が、器を受け取ります。
みんなで、お茶を飲みながら話します。雪合戦のこと。雪だるまのこと。楽しかった時間のこと。
「初雪の日は、やっぱり特別ですね」パヌエルが、嬉しそうに言います。
「そうだな」ミカエルも、頷きます。
ガブリエル嬢は、温かいお茶を飲みながら、幸せそうに微笑んでいました。
ノエルは、その様子を見ていました。みんなと一緒にいる時の彼女。楽しそうで、穏やかで。
やがて、お茶会も終わります。みんな、それぞれの場所へと戻っていきました。
執務室に戻ると、ガブリエル嬢は窓辺に座ります。外では、まだ雪が降っていました。
「楽しかったですね」ノエルが、言います。
「ええ」ガブリエル嬢は、優しく微笑みます。「みんなと一緒だと、もっと楽しいです」
「そうですね」
「雪だるまも、可愛かったです」彼女は、嬉しそうに言います。
ノエルは、微笑みます。みんなで作った雪だるま。きっと、しばらくあそこに立っているだろう。
「……少し、眠くなってきました」ガブリエル嬢が、小さく呟きます。
「お昼寝なさいますか」
「ええ」彼女は、雲クッションに体を預けます。「雪を見ながら」
ガブリエル嬢は、目を閉じました。すぐに、穏やかな寝息が聞こえてきます。
ノエルは、そっと見守ります。初雪の日。みんなで過ごした、賑やかで温かい時間。
窓の外では、雪が静かに降り続けていました。今日も、良い一日でした。そう思いながら、ノエルは自分の仕事に戻りました。
## あとがき
初雪の日、みんなで雪合戦に雪だるま作り。賑やかで楽しい時間が、心を温めてくれました。冬の贈り物を、みんなで分かち合う一日となりました。




