表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/100

第31話:「まどろみの真の意味」

光祭りが終わって三日目の午後、ノエルは執務室でガブリエル嬢の様子を観察していました。


祭りの準備で忙しかった日々が過ぎ、いつもの穏やかな日常が戻っています。ガブリエル嬢は雲クッションに深く沈み込んで、とても気持ち良さそうに眠っていました。


「(今日で...何時間眠ってるんだろう)」


ノエルは手帳に記録を取り始めていました。光祭り後のガブリエル嬢は、いつも以上によく眠っているような気がするのです。


「朝9時から10時半まで...午前の仮眠1時間半...」


真面目にメモを取るノエル。でも、その理由がよくわかりません。


「午後1時から現在まで...2時間経過...」


時計を見ながら記録を続けます。


「(光祭りの疲れかな?でも、他の天使はそうでもないし...)」


昨日パヌエルに会った時は、元気そうでした。ミカエルもラファエルも、いつも通り。


でも、ガブリエル嬢だけは眠る時間が明らかに増えています。


「(何か理由があるはず...)」


ノエルは真剣に考え始めました。原因を突き止めて、適切な対処をしなければ。


まず、環境を確認してみました。室温、湿度、光の具合。でも、いつもと変わりません。


「(食事?体調?ストレス?)」


可能性を手帳に書き出していきます。でも、どれもピンときません。


食事は普通に取っているし、体調も悪そうには見えない。ストレスといっても、光祭りは成功だったし...


「(うーん...)」


ノエルが頭を抱えていると、ガブリエル嬢がふと目を開けました。


「あら...ノエル...何を...?」

「あ、すみません。起こしてしまって」


慌てて手帳を隠そうとするノエルを、ガブリエル嬢は不思議そうに見つめました。


「手帳に...何を書いて...?」

「えっと...」


正直に答えるか迷いましたが、嘘をつくのも良くありません。


「ガブリエル様の睡眠時間を記録していました」

「まあ...」


ガブリエル嬢は少し驚いたような、でも微笑ましそうな表情を見せました。


「心配...してくれているのですね」

「はい。光祭り後、いつもより長く眠られているようで...」


ノエルの真面目な心配に、ガブリエル嬢は小さく笑いました。


「ありがとう...でも...大丈夫ですよ」

「でも、何か理由があるのでは?」


ノエルの質問に、ガブリエル嬢は少し考え込みました。


「理由...ですか」

「はい。原因がわかれば、対処できるかもしれません」


真剣な表情のノエルを見て、ガブリエル嬢は困ったような笑顔を浮かべました。


「実は...よくわからないのです」

「え?」

「なぜか...眠くなってしまうので...眠っています」


あまりにもシンプルな答えに、ノエルは拍子抜けしました。


「(よくわからない...?)」


でも、諦めるわけにはいきません。ノエルはラファエルに相談してみることにしました。


「師匠、ガブリエル様のことで質問があります」

「はい、なんでしょう?」


ラファエルが穏やかに応えました。


「光祭り後、いつもより長時間眠られているようなのですが...」


事情を説明すると、ラファエルは少し考え込みました。


「そうですね〜...」

「何か医学的な理由があるのでしょうか?」

「うーん...特に思い当たりませんね」


師匠も首を傾げています。


「ガブリエル様は昔から、よく眠る方でしたからね」

「昔から...ですか」

「ええ。理由は...あれ?なんでしたっけ?」


ラファエルの天然発言に、ノエルは苦笑いしました。


「つまり、原因不明ということですか?」

「そういうことになりますね」


結局、師匠からも明確な答えは得られませんでした。


執務室に戻ると、ガブリエル嬢はまた眠っていました。今度は更に深い眠りのようです。


「(本当に謎だ...)」


ノエルは手帳を見返しました。記録した睡眠時間、考察した原因、全て意味のないデータのような気がしてきます。


でも、その時でした。


急に魔界からの緊急連絡が入ったのです。


「ガブリエル様!」


ノエルが慌てて声をかけると、ガブリエル嬢は瞬時に目を開けました。


「緊急...連絡ですか」


その瞬間、いつもの凛とした表情に変わります。


受信装置の前に座ると、完璧な集中力で魔界との通信を開始しました。問題を的確に把握し、適切な指示を出していきます。


「(すごい...)」


さっきまで深く眠っていたとは思えない、完璧な対応でした。


通信が終わると、ガブリエル嬢は再び穏やかな表情に戻りました。


「お疲れさまでした」

「ええ...」


そして、何事もなかったかのように、また雲クッションに向かいました。


「(結局...これがガブリエル様なんだ)」


ノエルは手帳を閉じました。


理由はわからない。でも、眠っている時は本当に眠っているし、必要な時は完璧に起きて仕事をする。


「(謎だからこそ...魅力的なのかもしれない)」


すべてを理解する必要はないのかもしれません。


「(よくわからないけど、すごい人)」


そんな単純な結論に辿り着いて、ノエルは満足していました。


「おやつの時間になったら...起こしてくださいね」


いつものお決まりの言葉と共に、ガブリエル嬢は眠りに落ちました。


「はい、承知いたしました」


今度のノエルの返事には、分析を諦めた清々しさが込められていました。


窓の外では、午後の雲海がゆったりと流れています。


ガブリエル嬢の穏やかな寝息が、執務室に安らぎをもたらしていました。


「尊い...」


いつもの口癖が、今日は「謎だからこそ尊い」という新しい意味を持って響きました。


すべてを理解する必要はない。そのままの彼女を受け入れることの方が、ずっと大切なのかもしれません。


手帳に書かれた無意味な記録を見ながら、ノエルは小さく笑いました。


真面目に分析した自分が、なんだか可愛らしく思えてきます。


謎めいた魅力。それも含めて、ガブリエル嬢なのでした。

## あとがき


光祭り後のガブリエル嬢の睡眠時間増加を心配して、真面目に原因分析を始めたノエル。でも結局理由はわからず、「謎だからこそ魅力的」という結論に至ります。すべてを理解する必要はなく、そのままを受け入れることの大切さを学んだ一日でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ