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第30話:「光に包まれる祭典」

天界の光祭りまで、あと一週間となった朝でした。


ノエルが執務室に到着すると、ガブリエル嬢はいつものように雲クッションで微睡んでいました。でも、机の上には光祭りの準備資料が山積みになっています。


「ガブリエル様、おはようございます」


声をかけると、彼女はゆっくりと目を開けました。


「あら...ノエル...おはよう...」


小さな欠伸と共に身を起こしたガブリエル嬢が、資料を見つめました。


「今日から...光祭りの...準備ですね」

「はい。初めての参加で、楽しみです」


ノエルの言葉に、ガブリエル嬢は微笑みました。


「天界の...最も美しい...行事ですから」


光祭りは、年に一度の天界最大の祭典です。全ての天使が協力して、雲海全体を光で彩る伝統行事でした。


「まずは...準備会議から...」


ガブリエル嬢が立ち上がると、ノエルも後に続きました。


会議室には、既に多くの天使たちが集まっていました。ミカエル、ラファエル、ウリエル、サリエル、ラグエル、パヌエル。7大天使が勢揃いです。


「それでは、今年の光祭りについて説明します」


議事進行はウリエルが担当していました。さすがに仕切りが上手です。


「今年のテーマは『調和の光』です」


資料を配りながら、ウリエルが説明を続けました。


「各部署で光の装飾を作成し、最終日に雲海全体で一つの光の芸術を作り上げます」


その説明に、参加者たちの目が輝きました。


「担当分けは...」


ウリエルが手際よく役割を発表していきます。


「装飾製作班:ガブリエル、ノエル、パヌエル」

「音楽班:ラファエル、サリエル」

「警備・進行班:ミカエル、ラグエル」

「全体統括:ウリエル」


ノエルはガブリエル嬢と同じ班になって、内心喜んでいました。


「各班は明日から準備開始です。質問はありますか?」


会議が終わると、装飾班は別室で打ち合わせを行いました。


「装飾は...雲の花を...使いましょう」


ガブリエル嬢が提案すると、パヌエルが嬉しそうに頷きました。


「素敵ですね。みんなで作ると楽しそうです」


パヌエルの人懐っこい笑顔に、場の雰囲気が明るくなりました。


「光る雲の花を...たくさん作って...雲海に散りばめます」


ガブリエル嬢の説明を聞いて、ノエルは想像を膨らませました。


「きっと美しい光景になりますね」

「ええ...楽しみです...」


翌日から、本格的な準備が始まりました。


装飾班の作業場は、天界の工房街にある広い作業室でした。そこに集まった三人は、早速雲の花作りに取りかかりました。


「まず、雲の形を...」


ガブリエル嬢が手本を見せてくれます。ふわふわの雲を花の形に整えていく技術は、想像以上に繊細でした。


「こうやって...ひとつずつ...」


眠そうにしながらも、その手つきは完璧です。


「すごいです、ガブリエル様」


ノエルが感嘆すると、パヌエルも目を輝かせました。


「本当に美しいですね」


褒められて、ガブリエル嬢は少し照れくさそうに微笑みました。


「では...一緒に...作りましょう」


三人で並んで作業をする時間は、とても楽しいものでした。


「ノエルさん、とても上手ですね」


パヌエルが褒めてくれると、ノエルは嬉しくなりました。


「ありがとうございます。でも、まだまだです」

「いえいえ...とても...センスがあります」


ガブリエル嬢からも褒められて、ノエルの頬がほんのりと赤くなりました。


作業を続けていると、他の班の準備状況も聞こえてきました。


隣の部屋からは、ラファエルとサリエルの音楽練習の音が聞こえます。


「あれ?この楽譜、逆さまでしたっけ?」


ラファエルの天然発言に、サリエルが慌てる声が続きました。


「師匠、正面から見てください」


その会話に、装飾班の三人は微笑みました。


「ラファエルらしい...ですね」


ガブリエル嬢が小さく笑いました。


警備班の打ち合わせ声も聞こえてきます。


「当日の警備体制は完璧にする」


ミカエルの厳格な声に、ラグエルの優しい返事が続きました。


「はい、でも参加者のみなさんが楽しめることを第一に考えましょう」


そんなやり取りを聞きながら、装飾作りは順調に進みました。


三日目には、かなりの数の雲の花が完成していました。


「たくさん...できましたね」


ガブリエル嬢が満足そうに呟きました。


「みんなで作ったからですね」


パヌエルの言葉に、ノエルも深く頷きました。


「一人では、これほど作れませんでした」


共同作業の素晴らしさを、実感した瞬間でした。


四日目には、光を込める作業に入りました。


「雲の花に...優しい光を...」


ガブリエル嬢が手本を見せてくれます。花びらの一枚一枚に、柔らかな光が宿っていきました。


「美しい...」


ノエルは息を呑みました。ただの雲が、神秘的な光る花に変わる瞬間は、まさに魔法のようでした。


「私たちも挑戦してみましょう」


パヌエルの提案で、三人は光を込める練習を始めました。


最初はうまくいきませんでしたが、お互いにコツを教え合いながら、だんだん上達していきました。


「ノエルの光は...温かいですね」


ガブリエル嬢の評価に、ノエルは嬉しくなりました。


「パヌエルの光は...きらきらして...綺麗です」


褒め合いながらの作業は、とても楽しいものでした。


五日目には、他の班との合同練習が行われました。


「音楽に合わせて...光が踊ります」


ウリエルが全体統括として、各班の連携を確認していきました。


ラファエルとサリエルの奏でる音楽に合わせて、光る雲の花が雲海に舞います。その美しさに、全員が見とれました。


「素晴らしい...」


ミカエルも感動の声を上げました。


六日目は、最終リハーサルでした。


全ての準備が整い、本番さながらの通し練習が行われました。


雲海全体に散りばめられた光る雲の花が、音楽に合わせて光の波を作ります。その光景は、言葉では表せないほど美しいものでした。


「みんなで作り上げた...芸術ですね」


ガブリエル嬢の言葉に、全員が頷きました。


そして、光祭り当日。


天界中の天使たちが雲海に集まりました。観客席には、普段見ることのない多くの天使たちの姿がありました。


「緊張します...」


ノエルが呟くと、ガブリエル嬢が優しく微笑みました。


「大丈夫...楽しみましょう」


その言葉に、ノエルの緊張がほぐれました。


祭典が始まると、これまでの練習の成果が見事に発揮されました。


光る雲の花が音楽に合わせて舞い踊り、雲海全体が光の海となります。観客からは感嘆の声が上がりました。


「美しい...」


ノエル自身も、作り手でありながら、その美しさに心を奪われていました。


祭典の最後、全ての光が一つに集まって、巨大な光の花を作り上げました。それは調和の象徴であり、天界の結束を表現した芸術でした。


大きな拍手の中、祭典は成功を収めて終了しました。


「お疲れさまでした」


片付けをしながら、参加者たちが互いにねぎらいの言葉をかけ合いました。


「素晴らしい祭典でした」


ウリエルの総括に、全員が満足そうに頷きました。


「来年も...頑張りましょう」


ガブリエル嬢の言葉に、ノエルは嬉しくなりました。来年も、この仲間たちと一緒に祭典を作り上げることができる。


執務室に戻る道すがら、ノエルは今回の経験を振り返っていました。


天界の美しい伝統、みんなで協力することの楽しさ、そして完成した時の達成感。


「天界の一員になれた気がします」


ノエルの言葉に、ガブリエル嬢は優しく微笑みました。


「もう立派な...天界の仲間です」


その言葉が、ノエルの胸を温かく満たしました。


窓から見える夜空には、祭典の余韻が美しく輝いていました。


光祭りを通じて、ノエルは天界での居場所を見つけることができました。そして、大切な仲間たちとの絆も深まりました。


「尊い...」


いつもの口癖が、今夜はいつもより深い感謝を込めて響きました。

## あとがき


天界の光祭りの準備を通じて、ノエルは仲間たちとの協力の素晴らしさを学びます。共同作業で作り上げた光の芸術は、天界の美しい伝統の一部となりました。祭典の成功と共に、彼の天界での居場所がより確かなものになった一週間でした。

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