第100話:友情という奇跡の誕生
雲の上の、とある穏やかな午後。
天界の庭園で、お茶会が開かれていました。
ノエルは、ガブリエル嬢と一緒にテーブルについています。
今日は、小規模な集まりでした。
「良いお天気ですね」
ガブリエル嬢が、静かに言います。
「ええ」
ノエルは、頷きました。
テーブルには、天使と悪魔が混ざって座っています。
ベルゼブブとガブリエル嬢が隣同士。サタンとラファエルも、並んでいました。
「この雲菓子、美味しいですね」
ベルゼブブが、小さな一つを食べながら言います。
「ありがとうございます」
ガブリエル嬢は、微笑みました。
「でも、一つで十分ですね」
「本当に」
ベルゼブブは、嬉しそうに頷きます。
「お互い、少食すぎますよね」
二人は、お互いに微笑み合いました。
まるで、長年の友人のように自然です。
ノエルは、思いました。
少し前まで、敵同士だったのに。
今は、こんなに仲良く話している。
「不思議ですね」
ラファエルが、穏やかに言いました。
「何がですか」
サタンが、尋ねます。
「私たちが、こうして笑い合えること」
ラファエルは、お茶を飲みます。
「戦争の時には、考えられませんでした」
「そうですね」
サタンは、優しく頷きます。
「でも、今は違います」
「とても、嬉しいことです」
二人の会話を聞いて、周りも静かになりました。
「本当に」
ガブリエル嬢が、ゆっくりと言います。
「素敵なことですね」
その言葉に、みんなが頷きました。
少し離れたテーブルでは、ウリエルとベルフェゴールが話していました。
「このお茶の淹れ方は」
ウリエルが、説明しています。
「伝統的な手順があって」
「でも、もっと簡単な方法もあるんです」
ベルフェゴールは、元気に言います。
「努力して見つけました」
「簡単な方法……」
ウリエルは、少し考えます。
「それも、良いかもしれませんね」
「本当ですか」
ベルフェゴールは、嬉しそうです。
以前なら、対立していたかもしれません。
でも今は、お互いの意見を聞き合っています。
ノエルは、微笑ましく見ていました。
パヌエルとマモンは、次の企画を相談していました。
「今度は、みんなで音楽会をしましょう」
パヌエルが、明るく提案します。
「良いですね」
マモンは、すぐに賛成しました。
「費用は、私が出します」
「ありがとうございます」
パヌエルは、嬉しそうに手を叩きます。
二人の息はぴったりでした。
まるで、昔からの友達のように。
ガブリエル嬢が、小さくあくびをしました。
「眠いですか」
ノエルが、小声で尋ねます。
「少しだけ」
彼女は、正直に答えます。
「でも、みんなと一緒にいたいです」
その言葉に、ノエルは温かい気持ちになりました。
「ガブちゃん、大丈夫?」
ベルゼブブが、気遣います。
「ええ」
ガブリエル嬢は、優しく微笑みます。
「少し眠いだけです」
「無理しないでくださいね」
ベルゼブブの声が、優しい。
友達を気遣う、自然な優しさでした。
しばらくすると、ミカエルとレヴィアタンが到着しました。
「遅れてすみません」
ミカエルが、言います。
「いえいえ」
ラファエルは、手を振りました。
「どうぞ、座ってください」
二人が座ると、レヴィアタンが嬉しそうに言いました。
「訓練、見せていただきました」
「そうか」
ミカエルは、少し照れています。
「すごく速くて、綺麗で」
レヴィアタンの目が、輝いています。
「本当に、素晴らしかったです」
「そ、そんなに褒めるな」
ミカエルは、視線を逸らしました。
でも、その表情は嬉しそうです。
ノエルは、二人の様子を見ていました。
距離が、どんどん近づいている。
そう見えました。
「ミカエルとレヴィアタンは」
サタンが、穏やかに言います。
「良いコンビですね」
「うむ」
ミカエルは、頷きます。
「まあ、悪くはない」
その言い方が、照れ隠しのようでした。
お茶会は、和やかに続きます。
アスモデウスとサリエルも、楽しそうに話していました。
「恋愛とは、美しいものです」
アスモデウスが、熱く語ります。
「本当にそうですね」
サリエルは、真面目に頷きます。
「純粋な心が、一番大切です」
二人とも、とても真剣でした。
でも、その真剣さが微笑ましい。
ラグエルとルシファーは、相変わらずでした。
「さっき、お茶をこぼしてしまって」
ルシファーが、申し訳なさそうに言います。
「大丈夫、許しますよ」
ラグエルは、すぐに答えます。
「でも、私が悪いんです」
「いえいえ、もう許しましたから」
二人の会話に、周りが笑います。
優しい笑い声でした。
ガブリエル嬢が、静かに立ち上がりました。
「少し、歩いてきます」
彼女は、小さく言います。
「ご一緒します」
ノエルは、すぐに立ち上がります。
二人は、庭園を歩き始めました。
「みんな、仲良しですね」
ガブリエル嬢が、静かに言います。
「ええ」
ノエルは、頷きました。
花が咲く道を、ゆっくりと歩きます。
風が、優しく吹いていました。
「昔は、考えられませんでした」
ガブリエル嬢は、遠くを見ます。
「天使と悪魔が、友達になるなんて」
「そうですね」
ノエルは、同意します。
「でも、今は」
彼女は、微笑みました。
「当たり前のようになりました」
その笑顔が、とても穏やかでした。
ノエルは、心の中で呟きます。
尊い、と。
「これって」
ガブリエル嬢が、立ち止まります。
「小さな奇跡かもしれませんね」
「奇跡……」
ノエルは、その言葉を繰り返しました。
「ええ」
ガブリエル嬢は、頷きます。
「でも、みんなが作った奇跡です」
その言葉に、深い意味を感じました。
特別なことではない。
みんなが、少しずつ歩み寄った。
それが、今の関係を作った。
「素敵な奇跡ですね」
ノエルは、静かに言いました。
二人は、また歩き始めます。
庭園の奥に、小さな池がありました。
そこで、パヌエルが何かを見つけて喜んでいます。
「見てください、小さな魚」
彼は、嬉しそうに指差します。
マモンも、隣で覗き込んでいました。
「可愛いですね」
二人とも、子供のように楽しそうです。
ガブリエル嬢とノエルは、その様子を遠くから見ていました。
「パヌエルとマモンも」
ガブリエル嬢が、言います。
「良いコンビです」
「そうですね」
ノエルは、微笑みました。
お茶会の場所に、戻ります。
みんな、まだ楽しそうに話していました。
笑い声が、庭園に響いています。
「ガブリエル様、お帰りなさい」
ラファエルが、手を振ります。
「ただいま」
ガブリエル嬢は、優しく答えました。
席に戻ると、ベルゼブブがお茶を注いでくれます。
「ありがとう」
ガブリエル嬢は、それを受け取ります。
一口飲んで、満足そうに微笑みました。
夕方になりました。
お茶会が、終わりに近づいています。
「今日も、楽しかったですね」
サタンが、穏やかに言います。
「ええ」
みんなが、口々に答えます。
「また、開きましょう」
ウリエルが、提案しました。
「ぜひ」
ベルフェゴールは、元気に賛成します。
みんなが、笑顔で頷きました。
お茶会が、終わります。
帰り際、ベルゼブブがガブリエル嬢に言いました。
「今度、二人でお茶しませんか」
「ええ、喜んで」
ガブリエル嬢は、微笑みます。
「少食同士、ゆっくり話しましょう」
ベルゼブブも、嬉しそうでした。
ミカエルとレヴィアタンも、何か約束をしているようです。
「次の訓練も、見学に来てください」
ミカエルが、言います。
「本当ですか」
レヴィアタンの顔が、明るくなりました。
「ありがとうございます」
ノエルは、それらの光景を見ていました。
友情が、確かに育っている。
そう感じました。
執務室に戻る道。
ガブリエル嬢は、ゆっくりと歩いています。
「良い一日でしたね」
彼女が、静かに言いました。
「ええ」
ノエルは、頷きます。
「友達が、たくさんできました」
ガブリエル嬢は、微笑みます。
「天使も、悪魔も」
その言葉が、とても温かい。
執務室に着くと、彼女は雲クッションに向かいます。
「今日は、疲れました」
ガブリエル嬢は、横になりました。
「でも、とても嬉しい疲れです」
「ゆっくり休んでください」
ノエルは、優しく言います。
「ええ」
彼女は、目を閉じます。
すぐに、穏やかな寝息が聞こえてきました。
ノエルは、窓の外を見ます。
夕日が、雲海を染めていました。
今日見た、たくさんの笑顔。
自然に生まれた、友情の数々。
それは、本当に小さな奇跡でした。
でも、誰かが一人で作ったものではない。
みんなで、少しずつ築いたもの。
だから、大切なのです。
ノエルは、静かに微笑みました。
これからも、友情は育っていくでしょう。
天使と悪魔の間に。
そして、自分とガブリエル嬢の間にも。
そう思いながら、ノエルは仕事に戻りました。
## あとがき
小さな奇跡は、誰かが一人で起こすものではなく、みんなで少しずつ作るもの。お茶会で芽生えた友情が、これからもっと大きく育っていきます。
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記念すべき、拙作たちの中でも初の100話到達です。
皆様、本当にお付き合いありがとうございます。
今後とも、時々モチベ落ちがちな私への応援をよろしくお願いします。




