89 聖女出陣
早速、緊急の対策会議が始まった。
ライダース帝国と国境を接しているラドス王国、リドア公国、ルクレア共和国の三国の代表者は、すぐに援軍を出すように要請してきた。もっともな主張だ。
チャールズが曖昧な返答をする。
「全面戦争になってもいけませんし、ここは一つ・・・」
「何を悠長なことを!!盟約では、協力して対処することになっているのだ。すぐにでも連合軍を編成して、派遣してもらいたい」
当初から懸念していた一国でも見捨てたら、小国家群連合自体が崩壊するという事態だ。
議論が平行線をたどる中、私にも意見を求められた。
「聖女様の考えを聞かせてください」
軍事の専門家でもない私にいい案なんてない。あったらとっくに言っている。
でも私は、お飾りとはいえ、小国家群連合の代表でもあるのだ。意見を言わないわけにはいかない。
「1日考えさせてください。事態が切迫しているのは理解していますが・・・」
解決策が出せない私は、時間を稼ぐしかなかった。
★★★
三国の代表者を下がらせ、ミウとダクラ、チャールズやカリエスなどの信頼のおけるメンバーだけで、会議をすることにした。
「私としては、平和的な解決を目指したいのです・・・難しいとは思いますが、私が交渉に出向いて・・・」
カリエスが止める。
「それは危険すぎる。何もアオイ殿がすべてを背負う必要はない」
「でもそれでは・・・」
いい案が浮かばない。
ダクラが言う。
「国境を一時的に封鎖するのはどうだ?」
チャールズが答える。
「その行為自体が敵対行為とみなされ兼ねません。相手に侵略の口実を与えることになる」
「だったら、少し国境付近から下がったところで防衛線を張るのはどうだ?」
「それが現実的ですが、それで三国の代表者が納得するかどうか・・・」
私も議論に入る。
「国境を物理的に封鎖できれば何とかなるのでしょうか?」
「当面はそれで何とかなるでしょう。しかし、根本的な解決にはならないでしょうね」
「でも、当面の危機は回避できると?」
「当面ということであれば・・・」
チャールズによると、本当に危機を回避するには、帝国軍を無力化する以外にないという。
ミウなんかは物騒なことを言う。
「だったら、奇襲をかけてぶっ潰すニャ」
「そんなことをしたら、一発で戦争になるぞ」
「そこは、盗賊かなんかに偽装してだニャ・・・」
「正規軍にいきなり喧嘩を吹っかける盗賊なんている訳ないだろう?」
ダクラに諫められていた。
そんな時、私はある作戦を思いついた。
「ちょっと作戦を思いついたんだけど・・・」
★★★
私は今、シュルト山のボンバーロックの群生地に来ている。
どうしてかって?それは作戦のためだ。私の作戦は採用され、実行に移されることになった。大量のボンバーロックを前に「集団鋼鉄化」のスキルを使って、ボンバーロック諸共「鋼鉄化」する。
「爆発しないと分かっていても、いい気はしないニャ」
「それはそうだな」
「妾もじゃ。爆発したところで、死にはせんが、それでもかなり痛いのじゃ」
フェルスも続く。
「早く運んで、ご褒美を貰おうよ」
「フェルスに言われたら、世話ないのう・・・まあよい、やるか・・・」
私の作戦というのは、ボンバーロックを国境付近に大量に撒くことだった。
ボンバーロックの運搬は、ルージュやフェルス、それに他のドラゴンたちも手伝ってくれることになった。竜王に確認したところ、ボンバーロックを運搬するだけだから、人間の争いに首を突っ込むことにならないようだった。
こんなところで、新たなスキルが役に立つとは思わなかった。
ボンバーロックを大量に積み込んだ私たちは、ルージュたちに分乗して、国境を目指す。そこで、夜まで待機して、夜になったら国境周辺にボンバーロックを撒き散らした。帝国軍を監視していた情報部隊員の報告によると、帝国軍は朝から大慌てで、今も対策会議を開いているとのことだった。
その日はそれで、帝国軍に動きはなかったが、次の日から早速ボンバーロックの駆除が始まった。
流石の帝国軍もボンバーロックの駆除には手を焼いているようだった。
「基本的に戦闘能力はあまり関係ないニャ。問題は防御力だニャ」
「そのとおりだ。それにビッグボンバーロックを混ぜているから、かなり苦労するだろう。自慢の重装歩兵隊の楯や鎧もボロボロになっているからな」
ダクラの言うとおり、ボンバーロックを安全に駆除するには、前衛がしっかりとボンバーロックの爆発を防ぐ必要がある。いくら攻撃力があっても、結局は自爆させてしまうからね。
「かなり効果があるということが分かったわ。引き続き、ボンバーロック作戦を続けましょう」
それからの話だが、私たちはシュルト山でボンバーロックを大量に捕獲して、国境付近に撒き散らしている。三つに分かれている帝国軍も足止めを喰らっており、今のところ大きな衝突は起きていない。今日も今日とて、ボンバーロックを大量に捕獲していく。
いつもどおり、ボンバーロックを捕獲しようと思ったところ、声を掛けられた。
「最近、ボンバーロックがかなり減っていると思ったら、犯人は聖女さんだったのですね?」
そこには、殺気に満ちたドロスがいた。
これって、ヤバいやつじゃないのか?
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




