85 神聖竜騎士団
シュルト山には多くのドラゴンが常駐するようになった。
ただ、集まって来たのは、それだけではない。テイマーや研究者、ただの観光客など多くの人間も集まって来た。というのも、またまた迷惑記者のアンさんが「月刊鋼鉄の聖女団」と「月刊冒険者パーティー」に盛りに盛った記事を掲載したからだ。
「聖女アオイ!!多くのドラゴンを従える。今後は竜騎士の育成に取り組むようだ・・・」
ドラゴンを従えているわけではないし、そんなことは一言も言ってない。
アンさんにクレームを入れても、取り合ってくれなかった。
「でもアベル皇子は「竜騎士」ですよね?立派な竜騎士になるために聖女様が指導されているのではないのですか?」
「それはそうですけど・・・」
一応、私も竜騎士だった。
ただ、ルージュに乗って移動しているだけだけど。
「昨日も飛行訓練をしていましたよね?」
そう言われるとそうだ。
ピーコは、巨大化ができるようになって、アベル皇子を乗せて飛ぶことができるようになった。まだまだ、慣れないのでルージュかウィーラがついて飛ぶことがほとんどだ。傍目には私がアベル皇子に指導しているように見えても不思議ではない。
「で、でも・・・今回の記事は誇張しすぎです」
「しかし、これはドラゴンの方から取材した話をまとめたものです。嘘はありませんよ」
そうだった・・・ルージュもそうだが、ドラゴンは総じて盛って話すからね。
諦めた私は、ドラゴン関係の記事を出す場合は事前に私に見せることを指示して、アンさんを帰らせた。
★★★
竜王や他のドラゴンが、滞在を楽しんでいる一方で、死ぬ思いをしている者たちもいた。アベル皇子の配下の竜騎兵隊の面々だ。今もルージュにしごかれている。
「おい!!オオトカゲども!!気合いを入れろ!!妾の眷属がそんな体たらくでどうするのじゃ?食い殺すぞ!!」
いつから竜騎兵隊がルージュの配下になったんだ!?
小竜は怯え切っているし、騎兵隊の騎士たちもルージュに逆らえないので、大人しく訓練に励んでいる。
まとめ役のセバスに話を聞く。
「訓練は厳しいですが、練度は格段に上がっております。これなら、騎兵戦力だけでいえば、ライダース帝国のどんな騎兵部隊にも負けませんよ」
「でもいいんですか?所属はライダース帝国軍でしょうし・・・」
「問題ありませんよ。元々アベル皇子が皇位継承権を剥奪されれば、解散になる予定でしたし、他の部隊に移籍しても冷や飯を食わされるだけですからね。それを思うと、こちらで神聖竜騎士団として活動したほうがいい。隊員たちもやる気になっていますしね」
神聖竜騎士団?
「そちらのチャールズ殿から提案がありましてね。因みに神聖竜騎士団というのは、アンという記者が考えてくれました。いい名前だと、私たちも気に入っています」
高ランクの冒険者にエルフやダークエルフ、ドワーフや獣人の精鋭たちを集め、おまけに竜騎士団まで、創設して、一体ここの人たちは何がしたいのだろうか?
私は現実逃避して、その場を離れた。
「訓練頑張ってくださいね。私はこれで失礼します」
★★★
今日は、鋼鉄の聖女団の定例会議だ。
会議の出席者は私たち三人に加えて、元ザマーズ王国宰相のチャールズ、元騎士団長のカリエス、冒険者ギルドの代表としてケアルさん、商業ギルドの代表者、それに種族を代表して獣王国のレーヴェ王子、エルフの姫エレノアなどのそうそうたるメンバーだ。またミウは猫人族の代表、ダクラはダークエルフの代表、ノーリがドワーフの代表として出席している。
そして、今回からライダース帝国のアベル皇子が出席することになった。というのも、皇位継承権を放棄して、正式にこの地に定住することになったからだ。
アベル皇子の挨拶の後、チャールズの会計報告があり、それぞれの代表者からの発表となった。
最初に発言したのは、エルフのエレノアだった。
「世界樹はよく育っているわ。もう月に10本はエリクサーが作れるのよ」
これに反応したのは、商業ギルドの代表者だった。
「ありがとうございます。早速販売先を選定致します。当然、買占めなんかはさせませんからね。それと、アベル皇子には感謝を。行商の護衛に神聖竜騎士団が就いてくれて大助かりですよ。今後ともよろしくお願いしますね」
アベル皇子は嬉しそうだ。こういったところは、流石は商人と思ってしまう。煽てて、護衛料を値切るのかもしれない。
続いては、ノーリからだった。
「この町に超高温炉を作ろうという計画が持ち上がっているッス。ダンジョンでミスリルと少量ッスけどアダマンタイトが採取できることが分かったッス。ただ、予算の関係があるので、相談に乗ってほしいッス」
チャールズが答える。
「こちらでオリハルコンが精製できるとなると、大きな収益となります。ダンジョンでの採取量を確認しながら、併せて販路などを検討しますので、時間をください」
「お願いするッス」
そんな発表が続く中、レーヴェ王子が発言する。
「我が配下のリザードマンが、竜騎士となった。まだまだだが、一応竜騎士と呼べる程度にはなったとルージュ殿のお墨付きを得た。一応報告しておく」
私の膝の上で、昼寝をしていたルージュが反応する。
「最近、妾に憧れるドラゴンたちの間で、竜騎士を乗せることが流行っておる。次期竜王たる妾に媚びを売ろうとしておるのじゃろう。まあ、指導くらいはしてやるがな」
今後、どんどんと古竜に騎乗する竜騎士が誕生するのか・・・ちょっと過剰戦力過ぎないか?
それにここでオリハルコンを精製できるようになれば、武器の質も格段によくなる。この人たちは戦争でもしようと思っているのだろうか・・・
そんなことを思っていたら、ミウとダクラも発言する。
「猫人族は、今日も楽しく暮らしているニャ」
「ダークエルフは、日々精進している」
さっきまでの発表に比べて、全く内容がない。
しかし、二人の立場を考えて、みんなが気を遣って反応してあげている。
「猫人族には助かっていますよ。みんな魔力が高いですからね」
「そうだ。その中でもミウ殿は格別だ。それに美しい」
レーヴェ王子はまだ、ミウにアプローチをかけている。
「ダークエルフも頼もしいです」
「魔法剣士が多く、指導もしてくれて助かっています」
ミウとダクラはドヤ顔をして、やりきった感を出している。二人はこんな感じなので、少しほっとする。
そして、過剰戦力は問題だけど、収支はプラスなので、特に言うこともない私は、みんなで頑張りましょう的なことを言って会議を締めくくった。
会議終了後、深刻な顔をしたチャールズに声を掛けられた。
「聖女殿、少し話をしたいことがあります」
その表情からして、かなり深刻なことなのだろう。
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