2 ジョブとスキル
宰相の説明によると、ジョブによって様々なスキルが習得できるようだった。
そして、スキルを使えば使うほど、新たなスキルが身に付くようだ。たとえば「剣士」のジョブを持っている者は「スラッシュ」という切れ味が鋭くなるスキルが最初から使えるそうだ。そして「スラッシュ」を使えば使うほど、新たなスキルを習得しやすくなるみたいだ。
「折角なので、実際にスキルを使っていただきましょう。訓練所にご案内します」
私たちは、勢いのまま訓練所に案内された。
訓練所には金髪、青目で30歳くらいのイケメンが待機していた。
「騎士団長のカリエスだ。勇者殿の指導を任されている。俺のジョブは「魔法剣士」だ。「勇者」も「剣聖」も「大魔導士」も初期スキルは大体同じだから、当面は俺が指導する。まずは、精神を集中してスキルを感じてみてくれ」
スキルを感じろって・・・一体どうやるのよ?
しばらくして、勇者のレンが声を上げた。
「なんか、「スラッシュ」っていう技のイメージと「火炎斬り」っていう技のイメージが浮かんだんだけど・・・」
「流石は「勇者」だな。ではそのイメージ通りに剣を振ってみてくれ。最初は声に出すと、やりやすいぞ」
「よし!!スラッシュ!!」
レンが用意されていた巻き藁に訓練用の剣で斬り掛かった。巻き藁は一刀両断される。
「す、凄い・・・じゃあ、火炎斬り!!」
今度は剣に炎が帯びて、炎が巻き藁に飛んでいく。あっという間に巻き藁は燃え尽きた。
「流石は「勇者」だな。既に「剣士」と「魔法剣士」の初期スキルが使えるとはな・・・」
「それって凄いのか?」
「凄いなんてものではない。どちらも完璧に習得するには3ヶ月は掛かるからな。すぐに俺よりも強くなるだろう」
レンは有頂天になっている。
続いて、「剣聖」のサラが手を挙げた。
「私は「スラッシュ」と「二段斬り」のイメージが浮かびました」
「では二段斬りをやってみろ」
「はい。二段斬り!!」
眼にも止まらぬ速さで、剣が振り抜かれた。巻き藁が奇麗に切断される。
「二段斬りは剣士の中級スキルだ。流石は「剣聖」だな・・・」
「これを使い続ければ、もっと強力な技が出せるのですか?」
「そのとおりだ。訓練では、スラッシュも使ってみるといい」
そんな感じで、高校生たちは次々とスキルが発現した。
大魔導士のミスズは、風、火、水、土の四属性魔法が使え、聖女のクルミは回復魔法と支援魔法がいくつか使えるようだった。
「流石というか、なんというか・・・ここまでだと、俺に指導はできんな。大魔導士殿と聖女殿は宮廷魔導士が指導する。しばらくは、そちらで訓練をしてくれ」
「私って、魔法の天才かも?」
「聖女って、凄いのかもしれませんね」
そんな中、私はなかなかスキルが発現しなかった。
カリエスが付ききりで指導してくれるが、イケメンに密着されるなんて、ここ最近なかったから、緊張して、集中できない。
「焦らなくてもいい。すぐにスキルが発現するほうが珍しいんだ。徐々にでいいぞ」
「は、はい・・・何かコツとかありますか?」
「一般的には、何かに追い込まれた時に発現しやすいと言われている。何か切羽詰まった状況を思い浮かべてみてはどうだろうか?」
切羽詰まった状況?
先週の私だ。
部下が大きなミスをして、その対応に追われ、更に大事なコンペも重なって・・・思い出したくもない。多分、そういったことではないような気もするけど・・・
そんな時、急に頭の中にイメージが浮かんだ。
「鋼鉄化」
更に「鋼鉄化」という言葉を呟いてみると、具体的なイメージが浮かんだ。
身体を鋼鉄のように固くするスキルらしい。
「なんかできそうです。鋼鉄化!!」
急に体が硬くなり、身動きが取れなくなった。
心配したカリエスが声を掛けてくる。
「アオイ殿、大丈夫か?」
スキルの影響からか、瞬き一つできない。
カリエスがベタベタと触ってくる。
ちょっと変な気持ちになるだろうが!!
そう思ったが、感覚がなかった。
「何だこれは!?物凄い強度だ。アオイ殿、少し失礼する」
何とカリエスは、私のお腹を殴って来た。
暴力反対!!
しかし、全く痛みを感じなかった。
「アオイ殿のスキルは、身体を鋼鉄のように固くするスキルだな。分かったから、スキルを解除していいぞ」
どうやって解除するんだ?
結論から言うと、スキルを解除するイメージを強く念じれば、スキルを解除することができた。まあ、それに気付くまで、1時間放置プレイだったけど・・・
「アオイ殿、スキルを発動させたまま動くことはできないのか?」
「それができないんですよ。何とか頑張ってみてはいるんですが・・・」
「とりあえず、アオイ殿はスキルを発動させたまま、動けるように訓練をしよう」
「はい・・・」
それからしばらく、自分なりに頑張ってはみたが、何をどうしても全く動けなかった。
カリエスが言う。
「今日はここまでだ!!本格的な訓練は明日からにしよう。ゆっくりと休むように」
訓練後、カリエスが声を掛けて来た。
「アオイ殿のスキルは特殊だから、日常生活でも積極的にスキルを使ってみてくれ。こちらも初めて見るスキルだから、指導法がなあ・・・」
「そんな、カリエスさんが気に病むことでは・・・」
「いや、これでも責任がある。危険な任務に就いてもらうのだから、最大限こちらも努力する」
カリエスは結構いい人かもしれない。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




