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11 冒険者活動 3

 私が巣に連れてこられてから、1時間位経過したところで、爆発音が鳴り響いた。

 討伐部隊が到着したようだ。


 もう安心だ。


 グラスウルフの巣となっている洞窟はかなり入り組んでいる。

 すぐに助けは来ないだろうと思い、私は少しずつ入口を目指すことにした。

 私は鋼鉄化のスキルを解除して、走り出す。しばらくすると、グラスウルフが襲ってくるので、鋼鉄化する。そして、グラスウルフが諦めたら、また鋼鉄化を解除して走り出す。あまり進んでないけど、それでも少しずつは進んでいる。


 何でこんなことをしているかって?

 別にずっと鋼鉄化したまま、助けを待っていればいいのだけど、暇なんだよ!!

 これをやっていると、「ダルマさんが転んだ」をしているみたいで、いい暇つぶしになる。グレートボアで経験済みだしね。


 そんな中、執拗に私を攻撃してくる個体があった。

 リーダーのグラスウルフだ。他のグラスウルフが攻撃を諦める中、そのグラスウルフだけはやめようとしなかった。グラスウルフにもリーダーとしてのプライドがあるのだろうか?


 そんなことは置いておいて、リーダーのグラスウルフはボロボロになっていく。

 牙は砕け、爪は折れ、酷い有様だ。


 諦めればいいのに・・・


 それでもリーダーのグラスウルフは向かってくる。

 私にグラスウルフの渾身の頭突きがヒットする。結果は・・・


 気絶しちゃったか・・・

 牙も爪も使えなくなって、それで頭突きって・・・何にもしてないけど、こっちが悪者みたいだ。


 そんな暇つぶしをしているところに、救援部隊がやっていた。ミウもダクラも、それにジャンヌさんもいる。

 みんな、ボロボロになったリーダーのグラスウルフを見て、驚いている。


「こ、これはアオイがやったのかニャ?」

「やったと言えばやったことになるんだろうけど・・・自業自得というか・・・」


 大歓声が上がる。


「聖女様が、群れのリーダーを討伐なされたぞ!!」

「聖女様、バンザイ!!」

「馬鹿な冒険者と共闘した甲斐があったぜ!!」

「なんだと!?こっちだって、口だけの領兵に協力してやったんだからな」


 冒険者と領兵が口喧嘩を始めたが、誰も止める様子はない。雰囲気的にただのじゃれ合いだからね。この作戦を通じて、冒険者と領兵の溝も埋まりつつある。

 ジャンヌさんが言う。


「後処理は他の冒険者に任せて、アオイたちは私について来てくれ」

「あのう・・・どこに行くのでしょうか?私は特に何もしてませんので、解体くらいなら手伝いますよ」


 ジャンヌさんは苦笑いを浮かべて言う。


「聖女殿にそんなことをさせられんよ。悪い話じゃないんだ。まあついて来てくれ」


 案内されたの拠点に設置してある天幕だった。天幕からして、偉い人がいるのが分かる。

 天幕に入ると、赤髪の30歳くらいの整った顔をした男性が、私を見付けて近寄って来た。


「この度の働きは、領主として感謝する。報酬も弾むぞ」

「えっ・・・領主様?」

「そうだ。ジャミル・クロフォード伯爵、私の兄だ」


 どうやら、ジャンヌさんも貴族だったようだ。

 思考が追い付かないまま、報酬の話をされた。


「金銭的な報酬は冒険者ギルドが支払うとして、我からは・・・」



 ★★★


 私たちが領主様からもらったご褒美は、パーティーハウスだった。

 冒険者もある程度ランクが高くなるとパーティーごとで家を借りることが多い。宿代は掛からないし、資材の保管もできるからね。因みに私たち「鋼鉄の聖女団」はBランクに昇格した。これは異例のことで、Bランクともなれば、どこの国に行っても貴族扱いをしてくれるそうだ。


 それでパーティーハウスなのだが、所有権は領主様のままだが、家賃が無料なのだ。私室4つ、リビング、ダイニング、お風呂もあり、これが無料なんて有難い。

 ジャンヌさんが言う。


「兄上も、アオイたちを手放したくないようだ。だから気にすることはない。それで少し頼みがあるのだが・・・」


 ジャンヌさんの頼みというのは、冒険者活動とは別に聖女として活動してほしいとのことだった。


「実はアオイたちの人気は日増しに高まるばかりだ。方々から、「聖女様の有難いお話が聞きたい」という要望が絶えない。兄上も他の貴族や商人に頼まれているようなのだ」


 ここまでよくしてもらったので、仕方なくこの話は受けた。

 貴族の夜会や孤児院などに行って、会社の研修で講義をしてもらった偉いお坊さんの話や成功した経営者の話を思い出し、それっぽく薄っぺらい話をする。大抵が「やればできる」とか「感謝の気持ちを忘れずに」というような内容の話だった。

 それでも、ウケがいい。私のために教会を作ると言ってくれる人まで出て来た。


「なんか、騙しているようで心苦しいのですが・・・」

「騙してはいないだろ?アオイは自分から聖女とは一言も言っていない。相手が勘違いしているだけだ。それに寄付金はすべて慈善事業に使っているから、問題はない」


 それはそうだけど・・・


 最初は寄付金の一部を私に納めてくれるという話だったが、流石にそれは辞退した。

 定期的に冒険者活動をしているから、お金に困る事はないしね。私としては、聖女の活動を辞めたいのだが、そうもいかない。


 しばらくは、冒険者と聖女の二足の草鞋で頑張るか・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




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