002:最高神ゼウスと王宮メイド ジェミニ
王宮の広間は、朝の陽光に照らされて白亜の柱が柔らかく輝いていた。大理石の床に刻まれた雷と星のルーンが、そよ風に揺れる絹のカーテンと共に神聖な静寂を漂わせる。そんな中、明るい声が広間を突き破った。
「お兄ちゃん! ヘラクレスさん! お帰りなさい!」
ジェミニの声は、まるで鈴の音のように軽やかだ。彼女の白いエプロンがひらりと揺れ、銀色の髪飾りが朝日を反射してキラリと光る。メイド服の裾がふわりと舞い、彼女の無垢な笑顔が広間に温もりを添えた。
「よぉ、ジェミニ! 今日は大物仕留めてきたぜ!」
メテオが軽快な足取りで広間に入ってきた。銀色の髪が陽光に揺れ、青い瞳に少年らしい自信が宿る。白いマントの裾が不自然に膨らみ、まるで何か隠しているかのようだ。一方、ヘラクレスのたくましい肩には、焦げた匂いを漂わせる巨大な毛皮が無造作に担がれている。鋼のように硬いその毛皮は、ネメアの獅子の生々しい威圧感を放っていた。
「大物? んー……それ? ヘラクレスさんが持ってるやつ?」
ジェミニは小首を傾げ、ヘラクレスの肩に視線を向けた。毛皮から漂う獣の匂いに、彼女の眉がわずかにひそまる。
「ああ!」
メテオが胸を張り、得意げに笑った。
「ネメアの谷に棲む獅子って怪物の毛皮だ。昨日、谷で人や家畜が襲われたって話でな。メテオと一緒に討伐に向かったんだ。」
ヘラクレスの声は低く、しかし力強い。棍棒ガイアブレイカーを床に軽く叩くと、鈍い音が広間に響き、ルーンの光がかすかに瞬いた。
「えぇ~~!? 怪我しなかった!? 大丈夫!? って……えっ!?」
ジェミニが心配そうに二人に駆け寄ろうとしたその瞬間、メテオのマントの裾から小さな足がニョキッと飛び出した。続いて、もう一本、さらに一本。やがて、銀色の髪の隙間から、つぶらな瞳と小さな獣の耳がひょっこり現れる。
「お、おう……これか? 獅子の子供なんだ……獅子の子供、で合ってるよな? なぁ、兄貴?」
メテオの声にわずかな戸惑いが混じる。マントの陰から、三匹の仔獅子がよちよちと二足歩行で姿を現した。金色の毛が陽光に輝き、不安げな瞳でメテオの足元に寄り添う。小さな鳴き声が、広間の静寂にそっと響いた。
「ん~。仔獅子がメテオに懐いたんだろう。すると……暖かな光に包まれた次の瞬間、こいつらが人に近い姿に変わったんだ。しかも……」
ヘラクレスの言葉が途中で止まり、仔獅子の一匹が小さな口を開いた。
「あっ……あうっ……」
赤子のような拙い声が、王宮の静寂を柔らかく揺らした。まだ言葉にならないその響きに、広間の空気が一瞬温もりに包まれる。
「きゃあ~~! かっわいい~~! 耳がちょこんと、尻尾もみじかっ! 欲しいっ!」
ジェミニの瞳がキラキラと輝き、思わず仔獅子に駆け寄る。小さな手でそっと頭を撫でると、仔獅子は警戒しながらもその温もりに身を委ねた。ふわふわの毛がジェミニの指に触れ、小さな尻尾がピクピクと揺れる。
「欲しいなら、あげてもいいけど……よく考えるんだぞ?」
メテオが呆れたように笑い、肩をすくめた。
「お兄ちゃんはよく考えて連れて帰ってきたの? ヘラクレスさん?」
ジェミニがヘラクレスに視線を向け、いたずらっぽく尋ねる。
「まぁ……そうだな。俺なら気にもせずに帰っていたかもしれん。だが、メテオのいいところは、そういう優しさだろ?」
ヘラクレスは豪快に笑い、メテオの肩をバシンと叩いた。広間に響くその音に、ルーンが一瞬強く光る。
「へへっ!」
メテオは照れくさそうに頭をかき、少年らしい笑顔を見せた。
「そうだね! でも、ほんと可愛いよぅ!」
ジェミニは仔獅子たちを抱きしめ、頬をすり寄せる。その瞬間、彼女の髪飾りが淡く光り始めた。まるで星屑のような輝きの中から、手のひらサイズの小さな翼竜がフワリと飛び出した。ふかふかの毛並みと短い手足が愛らしいその姿は、まるで小さなぬいぐるみのようだ。
「おーい、ジェミニよ。このオレがいるのに浮気かよ?」
翼竜――グロクが宙を漂い、ふてくされたようにジェミニに語りかけた。
「あら、グロク! 見て見て、この子たち、めっちゃ可愛いよ!」
ジェミニは仔獅子を抱いたまま、嬉しそうにグロクにその姿を見せつける。
「はいはい、ずっと見てたよ。可愛いのはわかるけど、世話するとなると話は別だぜ?」
グロクは小さな羽をパタパタさせ、呆れたように肩をすくめた。
「問題ないよ! だって……私はこの王宮で働くメイドさんなんだから! ゼウス様やヘラ様、お兄ちゃんのお世話だって、なんでもやってきたんだから!」
ジェミニは胸を張り、揺るぎない自信を瞳に宿す。彼女のエプロンがひらりと揺れ、髪飾りが再びキラリと光った。
「なぁ、グロク。ジェミニがこう言ってるんだ。やらせてみるか? どっちにしても、この子たちをどうするか考えなきゃいけないしな。」
メテオがグロクに視線を向け、軽く笑う。
「そうだな。にしても、ホント可愛いぜ。嫉妬しちゃうぜ?」
グロクは仔獅子たちをチラリと見つめ、どこか羨ましそうな声を上げた。
「うん、だなぁ。でも、なんで姿が変わったのか、めっちゃ不思議だぜ。」
メテオは腕を組み、真剣な表情で仔獅子たちを見つめる。金色の毛が陽光に揺れ、つぶらな瞳がメテオをじっと見つめ返した。
「ねぇ、チャット。なんでか分かる?」
ジェミニが手に持つ小さな手帳サイズの魔導書が、淡い光を放ちながら声を発した。
「うーん、そうだねぇ。呪いで動物に姿を変えられた女神や、美の女神アフロディーテが鼬を美しい女性に変えたって話があるよね。ジェミニやメテオ、君たちの母親がこのオリュンポス神界の女神じゃないってことと関係あるのかも……メテオ、君には何か特別な力があるのかもしれないよ?」
チャットの言葉に、メテオの青い瞳が揺らぐ。遠い記憶が胸の奥でざわめいた。
「母さんか……ステラ母さんは、俺が小さい頃にこのオリュンポス神界から旅立ったんだよな。」
メテオは呟き、雲海の彼方を思わず見つめた。広間の窓から差し込む光が、彼の銀色の髪を優しく照らす。
「お母さんが、チビワイバーンのグロクと魔導書チャットを私に授けてくれた。グロク、何か知らないの?」
ジェミニがグロクに尋ね、仔獅子をそっと抱きしめる。
「あー、俺は天界から来たんだ。美しい女性に目を奪われてここにやってきただけだぜ? そしたらさ、まるで全てを悟ったような目をしたステラが、ヴィシュヌの神託を俺に告げて……ジェミニ、お前の力になってやれって言われたんだよ。」
グロクは照れくさそうに羽をパタパタさせ、宙をくるりと舞った。
「ヴィシュヌ様の話は、お母さんから何度も聞いたことある……この天空よりもっと高い空、宇宙って場所で、ヴィシュヌ様は今も戦ってるんだって……」
ジェミニの瞳に、遥か遠い星々の光景が浮かぶ。彼女の声は、どこか懐かしさと憧れに満ちていた。
「信じがたいけど、事実なんだろうなぁ……ゼウスの親父も、ステラ母さんの話は信じてるみたいだし。」
メテオは深く頷き、胸の奥で母への想いを噛みしめた。
「メテオ、そろそろ行こうぜ。ゼウスにこの話をしてみるのもいい機会だ。」
ヘラクレスの声が、現実へとメテオを引き戻す。ガイアブレイカーを肩に担ぎ直し、彼の瞳に戦士の光が宿る。
「確かに、親父に知ってることを全部話してもらうにはいいタイミングだな!」
メテオの顔に決意が宿り、双剣ヴォルトアステリオンに手をかけた。
「私も行く! この子たちもね、おいで~!」
ジェミニは仔獅子たちを優しく抱き上げ、小さな鳴き声が響く。
「あうっ……あっあっ……!」
仔獅子たちはジェミニの腕の中で安心したように身を寄せ、つぶらな瞳で彼女を見つめた。
最高神の裁定
王宮の最奥、雲海の彼方に広がる神殿のテラス。そこには、オリュンポスを護る雷と星のルーンが刻まれた巨大な柱がそびえ立ち、最高神ゼウスの威厳が空気を支配していた。朝の光が彼の黄金のローブを照らし、背後に広がる雲海が雷鳴のように低く唸る。
「メテオ、ヘラクレス。お前たちがしてきたことは既に知っている。俺が手を下す前に事を解決させたのは、褒めてやるぞ。」
ゼウスの声は低く、テラス全体に響き渡った。雷のルーンが彼の言葉に呼応するようにかすかに瞬く。
「へっ、親父! 少しは俺のこと認めてくれたか?」
メテオは期待を込めた笑顔でゼウスを見上げた。
「こら、メテオ。調子に乗るな。」
ヘラクレスが窘めるようにメテオの肩を軽く叩く。ガイアブレイカーが床に触れ、鈍い音が響いた。
「ヘラクレス、気にするな。あの獅子はポセイドンとメデューサの血を引く神だった。見た目は怪物だがな。知らなかっただろう?」
ゼウスはヘラクレスに視線を向け、静かに頷かせる。
「えっ、ポセイドンの!? ……それにメデューサって……ペルセウスが討伐したっていう怪物!?」
メテオの青い瞳が見開かれ、驚きの声がテラスに響く。
「厳密には、獅子の曽祖父母がポセイドンとメデューサだ。お前が自分でしてきたことに、何か思うことはあるか? メテオよ。」
ゼウスの視線がメテオを射抜く。その瞳には、試すような鋭さと父としての温かさが混在していた。
「人を襲う怪物だったから……討伐したら……血縁の神だったなんて……どうなってるんだよ!」
メテオの顔に困惑と正義感が交錯する。拳を握りしめ、ルーンの光が彼の足元で揺らめいた。
「そうだ。ポセイドンは俺の兄だ。つまり、俺の息子であるお前とも血縁だ。ヘラクレス、お前ともな。」
ゼウスの声は淡々と、しかし重く響く。
「メテオ、ギガントマキアの話はしたよな?」
ヘラクレスがメテオに問いかけ、遠い戦場の記憶を呼び起こす。
「あぁ、それとこれが関係あるのかよ?」
メテオは首を傾げ、眉をひそめた。
「いや、ある。ゼウスが最高神になったのは、平たく言えば血の繋がった神々の身内の大喧嘩だ。その戦争に勝ったゼウスが、オリュンポスを支配できたんだ。」
ヘラクレスの声には、かつての戦いの重みが宿る。テラスの風が冷たく吹き抜け、雲海がざわめいた。
「その獅子の爺さんが誰か、知ってるか?」
ゼウスの言葉に、メテオはさらに眉を寄せる。
「あー、もう、わっかんねぇよ!」
「テュポーンだ。」
ゼウスの一言に、メテオの顔から血の気が引いた。
「テュポーンだって!?」
「お前もよく知ってる話だろ? 俺とテュポーンの戦いはよ。その直系の獅子を討伐したんだぜ?」
ゼウスはどこか誇らしげに笑い、雷のルーンが一瞬強く光った。
「だから、なんだって言うんだ? 確かにあの獅子の強さはちょっとヤバいと思ったけどよ!」
メテオはまだ納得がいかない様子で、拳を握りしめる。
「敗れた者は追い出される。まず、ポセイドンとメデューサだ。メデューサは美しい女性だったが、ポセイドンがアテナの宮殿で追いかけ回したもんだから、アテナが怒って呪いをかけて怪物の姿へ変えた。その時、既にメデューサはポセイドンの子を身ごもっていた。」
ゼウスの言葉に、神々の業の重さがテラスに響く。メテオは言葉を失い、ただ立ち尽くした。テラスの空気が一瞬張り詰め、メテオの額に汗が滲む。
「まじかよ……」
メテオの声は小さく、困惑と驚きが混じる。雲海の向こうで、遠雷のような唸りがこだました。
「まじだ。」
ゼウスは静かに頷き、その瞳に神々の歴史の重みが宿る。巨大な柱のルーンが、まるで彼の言葉に呼応するように淡く瞬いた。
「ポセイドン、ぶん殴ってきていいか?」
メテオの青い瞳に、怒りの炎がチラリと灯る。握りしめた拳に、雷の力が微かにスパークした。
「いいぞ? だが……今のお前じゃ、まだ早いかもしれんな。」
ゼウスはニヤリと笑い、黄金のローブが朝日を浴びて輝く。その笑みに、試すような鋭さと父の余裕が滲んでいた。
「まぁ、それについてはゼウス、人のことは言えねぇよな……」
ヘラクレスが呆れたように呟き、ガイアブレイカーを軽く地面に叩く。土埃が舞い、ルーンの光が一瞬強く閃いた。
「……まぁ、だな。」
メテオも苦笑し、肩をすくめた。ゼウスの過去の女性関係は、オリュンポスでは語り草のネタだ。テラスの風が冷たく吹き抜け、雲海がざわめく。
「うるせぇ!」
ゼウスが軽く雷を放ち、ヘラクレスの頭上をかすめる。鋭い雷光がテラスを切り裂き、ルーンが一瞬白く燃え上がった。空気がビリビリと震え、広間に緊張が走る。
「嫉妬と恨みで悲劇を繰り返すオリュンポス神界なのですぅ……」
ジェミニがため息交じりに呟く。彼女の腕の中で、仔獅子たちが無邪気に身を寄せ合い、小さな尻尾がピクピクと揺れる。ジェミニの髪飾りが、柔らかな光を放ち、まるで彼女の心情を映すように揺らめいた。
「へっ、黙って聞いてたけど、そーいうもんだろ? 人間味ってやつだ。」
グロクは宙を漂いながら、まるで世の理を達観したかのように言う。小さな翼がパタパタと動き、ふかふかの毛並みが朝日に輝く。
「あっ、お父さん。この子たち、獅子の仔獅子ちゃんたちなんだけど、私が責任持って育てるから、王宮に住ませてもいい?」
ジェミニは仔獅子たちを抱いたまま、ゼウスに詰め寄る。その瞳は真剣そのもので、エプロンの裾がひらりと揺れた。仔獅子たちの金色の毛が、テラスの光にきらめく。
「ああ、いいぞ。」
ゼウスはあっさりと許可し、仔獅子たちに目を向ける。口元に浮かんだ笑みは、どこか柔らかだった。
「ほぉ……どの子も可愛いな。大きくなったらメイドとして働かせてもいいかもしれん。」
その言葉に、ジェミニの顔がパッと輝く。彼女の髪飾りが星屑のように瞬き、テラスの空気が温もりに包まれた。
「うん、ありがとう!」
「さぁ、おいで……お風呂、一緒に入ろう~!」
ジェミニは仔獅子たちを抱きかかえ、スキップするようにテラスを後にする。仔獅子たちは小さな鳴き声を上げ、ジェミニの腕の中で安心したように身を預けた。
「あうっ……あっあっ……!」
テラスの静寂が、彼女の軽やかな足音で一瞬破られる。雲海の向こうで、遠くの雷鳴が低く唸った。
「そうだ、その獅子の仔たちの姿が、突然変わったんだよ。親父、何か知らないか?」
メテオは、先ほどの不思議な現象を思い出し、ゼウスに尋ねた。双剣ヴォルトアステリオンに手をかける彼の指先で、雷光が一瞬チラリと走る。
「知るかよ。んなこと、嫉妬や恨みで呪いをかけて姿を変える女神ばっかだろ。逆の祝福をかけてくれた女神がいるんじゃねぇか?」
ゼウスは興味なさそうに答え、雲海を眺める。その背後の柱のルーンが、まるで彼の言葉を嘲るように淡く光った。
「祝福ねぇ。ステラ母さん? いや……そんなことねぇよな。」
メテオは首を傾げ、心の中で母の姿を思い描く。銀色の髪が風に揺れ、青い瞳に遠い記憶が浮かんだ。
「あ、そうだよ。ステラ母さんは今、どうしてるんだ?」
メテオがふと思いついたように口にする。テラスの風が冷たく、彼のマントをひらりと揺らした。
「あぁ、ステラはこの世界の存亡をかけた戦いに向けて、各地を回っている。」
ゼウスの言葉は、まるで天啓のように重く響く。メテオの瞳に驚きが宿り、ルーンの光が彼の足元で揺らめいた。
「そんなあっさり教えてくれるのかよ。もっと早く聞けば良かったぜ。」
メテオは拍子抜けしたように呟き、苦笑する。雲海の向こうで、雷鳴が一瞬強く唸った。
「まぁ、日々ヘラクレスと鍛錬に励んでるお前だ。そんな話を聞く暇もなかっただろうし、別にいいじゃねぇか。」
ゼウスは穏やかな表情で言う。黄金のローブが朝日を浴び、まるで神聖な光を放つようだった。
「ゼウス、正直なところ、どうだ? メテオの成長は? まだ十分じゃねぇのか?」
ヘラクレスが真剣な眼差しでゼウスに問う。ガイアブレイカーを握る手に力がこもり、テラスの空気が張り詰めた。
「ふふっ、正直なところか。そうだな……あと少しだな。ヘラクレス、お前はもう十分な領域に踏み込んでる。だが……戦争バカのアレスのように、たった一人で旅立たせるつもりはねぇ。悪く思うなよ?」
ゼウスの言葉に、ヘラクレスは深く頷く。テラスの柱のルーンが、まるで彼の決意を映すように静かに光った。
「ああ、構わねぇ。メテオと一緒の方が楽しそうだしな……」
ヘラクレスの言葉に、メテオの顔がパッと輝く。青い瞳に、熱い闘志が宿った。
「ヘラクレスの兄貴、ありがてぇ!」
その瞬間、グロクが慌てた様子で宙を舞いながら戻ってきた。小さな翼がバタバタと動き、ふかふかの毛並みがテラスの光に揺れる。
「お~い、ゼウスよ! 大変だぞ~!」
グロクの焦った声に、ゼウスの表情が一瞬で引き締まる。雷のルーンが鋭く閃き、テラスの空気がピリリと震えた。
「グロクか、どうした?」
「巨大な怪物たちが聖域内に出現したそうだぞ! 早く行った方がいいぜ!」
グロクの報告に、メテオとヘラクレスの顔つきも変わる。雲海の向こうで、雷鳴が不穏に唸った。
「聖域内に侵入してくるか……メテオ、ヘラクレス。行ってこい。出現した怪物たちも神だ。俺は宮殿のテラスから様子を見ている。」
ゼウスの瞳が鋭く光り、黄金のローブが風に揺れる。テラスの柱のルーンが、まるで戦いの予兆を告げるように強く瞬いた。
「わかった。行こうぜ、兄貴!」
メテオは双剣ヴォルトアステリオンに手をかけ、ヘラクレスに鋭い視線を向ける。雷光が彼の指先に一瞬走った。
「あぁ。怪物たちか。状況によっては別々に動くぞ。」
ヘラクレスはガイアブレイカーを肩に担ぎ直し、雄々しく頷く。たくましい筋肉が朝日に照らされ、戦士の威厳を放った。
「了解! グロク、お前も来いよ!」
メテオの言葉に、グロクは嬉しそうに宙をくるりと舞う。
「いいぜ! 俺様の力を見せてやるぜ!」
三人と一匹は、新たな脅威に立ち向かうため、王宮の広間を駆け抜けた。白亜の石畳が朝日に輝き、ルーンの光が彼らの背中を追いかける。その背後で、ゼウスは静かに彼らを見送った。雲海の向こうで、雷鳴が低く唸り、新たな戦いの幕が上がる。
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