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ユグドラシルRPG:愛楽園サーガ!  作者: 天乃めぐみ
第1章:オリュンポス神界
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001:ネメアの谷の獅子

 オリュンポス神殿の頂、雲海に浮かぶ白亜の部屋に、朝の光が柔らかく差し込んだ。大理石の床には雷と星のルーンが刻まれ、そよ風に揺れる絹のカーテンが神々の住まう聖域の静寂を彩る。


「…うっ、眩しい。もう朝か…」

 メテオは寝台の上でまどろみから目を覚まし、銀色の髪をかき上げた。降り注ぐ光が、まだ少年の面影を残す彼の顔を照らし、青い瞳にオリュンポスの空が映る。


 ほのかに冷たい床に足を下ろすと、胸の奥で小さな不安が疼いた。最近、父――オリュンポスの最高神ゼウス――が口にする、あの重苦しい言葉のせいだ。


「ゼウスの親父が呪文みたいに毎日言ってるけど…世界の終焉がどうとかさ。」

 言いながら、思わず苦笑する。今はまだ、賑やかな神々の宴や仲間との特訓の日々に紛れ、その響きはどこか現実味を欠いている。

「そんな事がほんとに起きるのかってんだ…いや…俺はまだ知らないだけなんだろう。」

 胸の内に、漠然とした不安と同時にどこか高揚するような期待が交錯する。彼は知っていた。壮麗なオリュンポスが幾度も滅びの危機をくぐり抜けてきたことを。

「このオリュンポス界は、過去何度も世界滅亡の危機に瀕した事があるらしい…。でも――」

 そこでひとつ息を吐き、小さく笑った。

「親父が最高神になってから平和になったと聞いているからな…」

 ゼウスの雷鳴が、この聖域に穏やかな日々をもたらした――少なくとも、今はそう信じたい。


 薄手のローブを羽織り、窓辺に立つと、眼下には雲を突き抜ける黄金の神殿群と、遠くで輝くユグドラシルの枝葉が広がっていた。そこに見とれていると、突然、廊下の向こうから岩を砕くような豪快な声が響いてきた。


「おーい、メテオー! 起きてるか~?」

 迷いの霧を一掃する、朗らかな呼び声。ヘラクレスの声だ。

「来たな、さてっ…今日も兄貴と特訓と行きますかね!」

 メテオの顔に、たちまち笑みが浮かぶ。不安も迷いも、兄貴の声ひとつで吹き飛び、胸に湧き上がるのは戦士としての熱だ。


「ああっ、今出るよ!!」

 勢いよく寝台を飛び出し、星屑の輝きを帯びたローブを翻して廊下へと駆け出した。

 廊下の先で待っていたヘラクレスは、鍛え抜かれた肉体を惜しげもなく晒し、神木の棍棒ガイアブレイカーを肩に担いでいた。陽光に照らされた笑顔は、まるで太陽神ヘリオスのように力強い。


「兄貴、お待たせ!」

 駆け寄ったメテオに、ヘラクレスは豪快に笑い、腕を組む。

「メテオ。お前を迎えに来る途中で耳に挟んだんだが、ネメアの谷に棲む獅子の話は聞いたことあるか?」

 その問いに、メテオは少し首を傾げる。


「ネメアの谷の獅子…? いいや、ないけどさ。どんな話だったの?」

 ヘラクレスは真剣な表情になり、棍棒を軽く地面に叩きつけた。鈍い音が響き、床に小さなひびが入る。

「うむ、なんでも腹を空かせてはやってきて、人々や羊や牛、馬なんかを襲ってるらしい。」

「なんだって、それは放っておくのはまずくねぇか?」

 眉を寄せるメテオ。神々の聖域のすぐ傍で、そんな被害が出ているのは看過できない。


「俺もそう思った。普通、肉食動物なら神々の住む場所に近づかねえ。だが、その獅子は堂々と襲ってるって話だ。」

「確かに、それだけ大物感あふれる怪物ってことか…」

 口にしたその瞬間、メテオの胸に小さな焔が灯る。未知の怪物――それを前にした時の、血が騒ぐ感覚。

 ヘラクレスの眼差しにも戦士の光が宿る。メテオの言葉に力強く頷き、棍棒を握り直した。


「今日の特訓に丁度いいとは思わないか、メテオ?」

 挑戦的なその言葉に、メテオの瞳がキラリと輝く。


「まじか! ネメアの谷の獅子の討伐…面白れぇじゃねぇか!」

 日々の鍛錬で磨いた雷の魔法を試す、絶好の機会だ。その胸の奥には、いつか父に並び立つための欲求がある。


「俺たちは日々特訓で着実に強くなってる。それに、俺たちより先に旅立ったアレスに、いつまでも遅れを取るわけにもいかねぇ。」

 ヘラクレスはふっと笑い、その口元に兄弟としての誇りが滲んだ。


「獅子の毛皮をはぎ取って持ち帰るぞ!」

「なるほどね、それを証拠として親父に見せるんだな。」

「そうだ。人々や家畜への被害も出てる。ゼウスの耳にも、獅子の話は届いてるはずだ。」

 メテオはぐっと拳を握りしめる。雷のような闘志が、全身を駆け巡った。


「よーし、腕が鳴るぜ! で、ネメアの谷ってどっちだっけ?」

 ヘラクレスは豪快に笑い、棍棒でオリュンポスの谷間を指し示す。


「ああ、あっちだ。行こうか、メテオ。」

「ああ、兄貴!」

 そのまま二人は並んで歩き出す。頭のどこかで、ゼウスが口にしていた「世界の終焉」という言葉がふとよぎったが、今はそれよりこの胸を焦がす挑戦の方がずっと大きかった。


 オリュンポスの街道は、朝の陽光に白亜の石畳が輝き、雲海が柔らかく揺れる。鳥のさえずりが風に乗り、神々の使いのロバや商人の荷車がゆったり行き交う。


 メテオは双剣ヴォルトアステリオンを腰に差して歩き、青い瞳で空を見上げ、隣のヘラクレスに問いかけた。

「街道はやっぱり平和そのものだよなぁ…、ネメアの谷の獅子かぁ…いったいどんな怪物なんだろう」

 ヘラクレスはガイアブレイカーを肩に担ぎ、悠然と歩を進める。巨木の影が二人に落ち、風がローブを揺らす。

「メテオ。ギガントマキアのテュポーンは聞いた事あるよな?」

「ああ、親父が倒したっていう怪物だろ?」

 メテオは頷いた。ゼウスの偉業は、幼い頃から刻まれた壮大な物語だ。


「そうだ。オリュンポス神界の命運をかけた壮絶な戦いだった、俺は産まれてまだ間もない時だったが、その光景は目に焼き付いてる。」

 ヘラクレスの瞳に、雷雲と炎の戦場がよぎる。遠くの雲海が、雷鳴のように低く唸った。メテオは思わず唇を噛んだ。


「あぁ、くっそ…俺はギガントマキアを聞いた話でしか知らない…」

 悔しさが滲む声に、ヘラクレスは苦笑する。棍棒を軽く地面に叩き、土埃が舞う。

「ギガントマキア後、ゼウスがこの神界の最高神になってからオリュンポスは変わったからな、無理もない。だが、メテオ。お前が求めるものはすぐ近くにまで来ている。」


 ヘラクレスの視線が、雲海の先にそびえるネメアの谷へ伸びる。岩山が朝霧に霞む。メテオもその視線の先を追った。

「ネメアの谷、か…」

 谷の入り口が視界に入り、空気が冷たく重くなる。ヘラクレスは唐突に、しかし真剣な声で続けた。

「獅子の怪物も怪物でそれが不幸なのか幸せなのかは本人にしかわからないが、神の子は時として異形の怪物の姿で産まれてくる事があるんだ。その異形の見た目だけで奈落の底へ追放された神もいる。」

 メテオの脳裏に、闇と鎖の響きがこだまするタルタロスが浮かぶ。風が冷たく頬を刺す。

「奈落の底…、タルタロスだっけか…」


「冥界のタルタロス、ゼウスの兄ハデスが支配している場所だな。」

 ヘラクレスは深く息を吐いた。吐息が白く谷の空気に溶ける。

「俺やお前も神の子だ。だが…これから戦う事になる獅子も恐らく…神の子だ。」

 メテオの足が止まる。岩の地面に影が落ち、心に重い波紋が広がる。

「…!?。そうか…!…、でも、見た目が異形だからって襲ったり襲われたりさ…」

 戦いを前に、使命と迷いが胸で渦巻く。遠くの岩壁に、薄いルーンが不気味に光る。


「どうした?、メテオ。戦う前から迷いがでているぞ。」

 ヘラクレスが鋭く問いかける。声が谷の静寂を切り裂く。メテオは慌てて首を振った。

「あ、いや…、大丈夫だ。」

 ヘラクレスはメテオの心中を見透かすように、フッと笑う。

「ふふっ、生きる為にはな食べ物が必要だろ。なんの為にここへ来たんだ?。その目的を思い出せ。」

 メテオは、己に言い聞かせるように、強く言葉を紡いだ。声が谷に響き、遠くの岩が震える。

「これ以上…人々や動物への被害をださせない為、そして…俺達が強くなっている事を親父に証明する為だ。」

 その言葉に、ヘラクレスは満足そうに頷いた。棍棒を握る手に力がこもる。


 道が細くなり、鬱蒼とした森を抜けると、不気味な静寂に包まれたネメアの谷が現れた。剥き出しの岩壁がそびえ、枯れた草木の間に古のルーンが薄く光る。遠くで風が低く唸り、空気が肌を刺す。


「着いたぞ。ここがネメアの谷だ。」

 ヘラクレスが指差した先、荒々しい岩山に囲まれた巨大な洞窟が二つの闇の口を開ける。岩壁のルーンが、雷鳴に呼応するようにかすかに瞬く。

「ここが…、ちょっと不気味な場所だな。」

 メテオが警戒しながら周囲を見渡す。草木は枯れ、土は乾ききり、生命の気配が消える。


「あそこか…?、棲み処にするには丁度いいような洞窟があるな。」

 ヘラクレスの視線は、谷の奥の洞窟に注がれる。闇が燭光を飲み込み、冷気が漂う。

「あれか、よく見ると入口が二つある…、どうする?」

 メテオが問うと、ヘラクレスは顎に手を当て、思案する。


「そうだな。俺達の奇襲に驚いて獅子に逃げられては追いかけるのも大変になる、挟み撃ちといくか?」

「ああ、俺もそれを考えてたんだ。」

 二人の視線が交錯し、無言のまま頷き合う。岩壁の影が二人に落ちる。

「メテオ、お前が向こう側へ回り込んでいけ。俺が正面の入口から中へ入ってみる。」

「わかった、頼りにしてるぜ、兄貴。」

「お前もな。…俺が大きな音を立てたらお前も洞窟の中へ突入してこい。二人がかりで獅子を仕留めるぞ。」

 ヘラクレスの目が、獲物を捉える獣のように鋭く光る。メテオもまた、雷の力が宿る右拳を握りしめた。拳に雷光が一瞬走る。


「ああっ!」


 メテオはヘラクレスと別れ、洞窟の裏口へ回り込んだ。岩陰に身を潜め、ヘラクレスの合図を待つ。闇が静寂を深め、空気が圧迫する。

「さて、俺はこの裏口で兄貴の合図が来るまで待機だ。」


 静寂が、耳鳴りのように響く。時間が重く流れ、冷気が肌を刺す。

「…」

「…」

「……」

「……」


 待機中の時間が長く感じられた。洞窟の冷気が肌を刺す。

「…遅いな、洞窟の広さからいってもうヘラクレスの兄貴は獅子と遭遇していてもおかしくない。」

 焦りが胸に募る。何かあったのだろうか。いや、兄貴がそう簡単にやられるはずがない。だが、もしものことがあれば。岩壁のルーンが不穏に光る。


 迷わず、メテオは駆け出した。

「行くか!」

 洞窟の奥から、低く唸る咆哮と、金属がぶつかり合う鈍い音が響く。岩屑が舞い、地面が震える。


「おーい、兄貴~!無事かー!?」

 メテオが叫びながら洞窟の奥へ進むと、開けた空間で信じられない光景が目に飛び込んできた。


 金色の巨獣、体長3メートルのネメアの獅子が咆哮を上げる。鋼の毛皮が燭光に輝き、目は冥府の炎を宿す。爪が空気を裂き、風圧が岩壁を軋ませる。


「メテオ!?」

 ヘラクレスの声が、驚きに混じって響く。獅子はヘラクレスを巨大な前足で押し倒そうとし、彼は歯を食いしばって耐えている。筋肉が膨れ、汗が滴る。


「って、おいおい…なんだあの怪物!でっけぇ…」

 獅子の咆哮が洞窟を震わせ、岩屑が舞う。


「…ぐっぐぐっ…!」


「兄貴と怪物が取っ組み合ってる…、そりゃ、合図だせる余裕もないわなっ!」

 メテオは即座に状況を判断した。ヘラクレスが苦戦しているのは明らかだ。獅子を怯ませなければ。


「今助ける!!…雷光よ、閃け──ケラウノス・スパーク!」

 メテオの右手が閃光を放ち、ヴォルトアステリオンから雷球が迸る。雷光が洞窟を照らし、獅子の毛皮に焦げ目が走る。びりびりと痺れる音が響き、獅子の動きが一瞬止まった。


 その隙にヘラクレスは獅子の拘束から逃れ、大きく息を吐いた。汗と土埃にまみれる。

「はぁはぁ…、すまんな。メテオ…待ち伏せされていたんだ。」


「なるほど、頭の良い怪物なようだな。」

 メテオは警戒を緩めず、獅子を見据える。獅子は怯んだものの、すぐに体勢を立て直し、牙を剥いて咆哮。洞窟の空気が震える。


「ん、くるぜ、兄貴。ほらっ…あっちに棍棒落ちてるぜ。」

 獅子との格闘中に手放したガイアブレイカーが、岩の間に転がる。


「ああっ!、仕切り直しだ。」

 ヘラクレスが棍棒へ向かおうとするが、獅子が立ちはだかり、巨爪を振り上げる。風圧が岩屑を巻き上げる。


「兄貴の方へはいかせねぇよ…!」

「親父から貰ったこの双剣・雷星の剣ヴォルトアステリオンの切れ味見せてやる!」

 メテオはヴォルトアステリオンを引き抜き、**雷光が刃に瞬く。**獅子へ斬りかかるが、刃は鋼の毛皮に弾かれた。


「…っ!?、なんて硬さしてやがる。全く切れない…、雷で攻めないとダメそうだなぁ!」

 メテオは双剣に雷を宿らせ、素早く動く。雷光が軌跡を描き、獅子を翻弄する。


 その隙に、ヘラクレスは獅子のわずかな隙を突き、ガイアブレイカーへ飛びついた。

「うらああっ!!」

 棍棒を掴むや否や、ヘラクレスは雄叫びと共に獅子の胴体へ渾身の一撃を叩き込んだ。緑の衝撃波が炸裂し、獅子の巨体が岩壁に激突。洞窟が軋み、岩屑が舞う。


「グギャアアッ!!」


「おいおい、兄貴のパワーやべえな…、吹っ飛んでいった。」

 メテオは思わずそう呟いた。ヘラクレスの膂力に、洞窟の空気が圧倒される。


「よーし、メテオ、今だ。お前の雷をお見舞いしてやれ!」

 ヘラクレスの号令に、メテオは双剣をクロス。今度は全身の雷力を込めた。

「あいよっ!。くらえええーっ!!サンダー・ネビュラ! 星雲の雷で粉砕だ!」


**ヴォルトアステリオンから星雲のような雷光が迸り、獅子を飲み込む。閃光が洞窟を白く染め、爆音が岩壁を震わせる。**焦げた匂いが漂い、獅子の巨体が黒焦げで沈んだ。


「グギャアアア…ァァ…ァ…!!」

 かすかな、しかし確実に命が潰える音が響く。洞窟の闇が静寂を取り戻す。


「ほぉ、さっきのケラウノス・スパークとは段違いの威力だな。」

 ヘラクレスが感心したように言う。メテオは少し得意げに胸を張った。


「まぁね、さっきのは傍に兄貴がいたからね、これが俺の全力さ。」


 ヘラクレスが獅子の体に近づき、息を確認する。焦げた毛皮の匂いが鼻をつく。

「ふむ、息をしていないな…確実に仕留めたようだ。」

 メテオも安堵の息を漏らす。汗が頬を伝う。


「それじゃあ、毛皮を剥ぐぞ。」

 ヘラクレスが慣れた手つきで、頑丈な毛皮を剥ぎ取り始める。**刃が鋼の毛皮を切り裂く音が響く。**メテオはふと、先ほどのヘラクレスの言葉を思い出した。


「なぁ…、兄貴?」


「なんだ?」

 ヘラクレスの手が止まる。


「ギガントマキアでは、こういう怪物がいっぱいいたのか?」

 メテオの問いに、ヘラクレスは遠い目をした。かつての戦場の炎と雷鳴が、彼の背後に浮かぶようだ。


「ああ、こいつよりもっと大きくて恐ろしい怪物共、ギガース…巨人族とかな。」

 想像を絶する光景が、メテオの脳裏をかすめる。


「そっかぁ、やっぱ…親父はすげぇんだな。」

 しみじみと呟くと、ヘラクレスも深く頷いた。


「うむ、あの強さは本物だな。」

 その時、メテオの足元で、小さな鳴き声が聞こえた。


「なぁ…」


「ん?」

 ヘラクレスが首を傾げると、メテオは指差す。


「あそこにちびがいるけど…」

 洞窟の奥、親の亡骸の傍に、震える三匹の仔獅子がうずくまる。金色の毛が燭光に輝き、怯えた瞳がメテオたちを見つめる。小さな爪が岩を引っかき、震える体が寄り添う。


「獅子の子達か…」

 ヘラクレスは冷静に、しかし優しい眼差しで仔獅子たちを見つめた。


「怯えてるよな、かと言ってこのままにしておくわけにもいかないよな。」

 メテオの心に、強い感情が湧き上がる。親を殺した自分たちが、この子たちを放っておけない。冷たい岩の感触が、胸の痛みを増す。


「ふふっ、メテオ、お前のしたいようにすればいい。あの子達はまだ無邪気だ。」

 ヘラクレスの言葉は、メテオの背中を押した。彼はゆっくりと仔獅子たちに近づき、膝を折った。


「なぁ…お前ら、親を殺して済まなかった。でも…俺にはこうする事しかできなかった…。それで、俺はお前達を助けたいって思ってしまってるんだ。お前達の親を殺しておきながら変な事を言ってると俺でも思う…、一緒に来ないか?」

 メテオがそっと手を差し伸べると、仔獅子たちは警戒しながらも、小さな鳴き声を上げた。


「みゃ~、みゃ~」

 震える仔獅子たちが、メテオの手にそっと体を擦り寄せる。柔らかな毛の温もりが伝わり、怯えた瞳に信頼の光が宿る。


 その光景に、ヘラクレスは目を見張り、そして静かに呟いた。

「やはりな、メテオは怪物と心を通わせる事ができる優しさを持っているのは本当だったか。」


 メテオは仔獅子たちを優しく抱きかかえ、ヘラクレスに振り返った。

「よしよし…、毛皮は兄貴がもってくれ。俺はこの子達3匹を抱えて戻るよ。」


 ヘラクレスは剥ぎ取ったばかりの毛皮を肩に担ぎ、少し呆れたような顔で言った。

「それはいいが、この子達もやがてこの獅子のように大きく育つかもしれないぞ?」


「その時はその時だろ、大きいか小さいかの違いだけで済む場所決められてしまうのもなんか変だぞ。」

 メテオのまっすぐな言葉に、ヘラクレスはハッと目を見開き、そして深く納得したように頷いた。


「ん、そうだな。確かにそうだ。」


「だろ?、ヘカトンケイルにキュクロプスだってあんな巨体してんのにさ。」

 メテオの言葉は、神々が持つ固定観念を揺さぶる。ヘラクレスの表情が、一瞬、真剣なものに変わった。


「ふむ、…新世代の神の台頭はメテオ、お前かも知れないな。」

 思わぬヘラクレスの言葉に、メテオはきょとんとした顔をした。


「新世代の神?なんの事だ。ってか、早く帰ろうぜ。結構重いぞ…3匹も抱えてるとさ。」

 重くなった仔獅子たちを抱え直し、メテオは立ち上がった。仔獅子の温もりが腕に伝わる。


「それなら俺がこいつらを抱えてやってもいいぞ?」

 ヘラクレスが申し出るが、メテオは即座に拒否する。


「やだ、俺が抱えて帰る!」

 仔獅子たちも、メテオの腕の中で安心したように可愛らしい鳴き声を上げた。


「みゃ~、みゃ~」

 そうして、一人の英雄と、一人の未来の神、そして三匹の仔獅子は、ネメアの谷を後にした。

洞窟の闇が背後に消え、オリュンポスの光が彼らを待つ。新たな絆と得難い経験を胸に、彼らは帰路につく。

お読み頂きありがとうございます!、はじめての投稿なので誰も読んで貰えないかも…だけど…。

あらゆる神話を題材とした大スケールに及ぶファンタジー作品にしていくつもりです、ギリシャ神話には存在しないオリジナルの神メテオくんが主人公です。他の濃ゆいキャラに負けないよう成長させていきたいです!。

キャラクターデザインはできているので、挿入やX等で掲載してみたらいいのかな?、色々試してみたいと思います、宜しくお願いします。

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