第三話:ジャスミン嬢in王宮舞踏会
さあ、盛大にざまぁを!
王家から招待状が届いた。何やら舞踏会の招待状らしい。
公爵はパートナー不在だなぁ。
ショルドはジャスミン嬢と出席で。
「あの……公爵様。恥ずかしながら、私は舞踏会に行けるようなドレスや宝飾品を所有しておりません」
なんと!王女だというのに、そこまで虐げられていたのか……。ジャスミン嬢用の予算も国家予算で組まれていたはずだが、誰かが横領していたのか?
「心配なさるな。舞踏会まではまだ日にちがあります。ショルドとパートナーですし、それに見合ったドレスを新調しましょう。腐っても我が家は公爵家ですので、お金の事は気にしないで下さい。貴女が美しい方がショルドは喜びますよ?」
そう言うと、ジャスミン嬢は真っ赤になってしまった。事実だろうな。うーん、ジャスミン嬢に相応しくなるように、ショルドの方も男っぷりを上げて欲しい。
当日、私は公爵として恥ずかしくない格好をした。
普通のタキシードです。
ショルドとジャスミン嬢は新調した服をそれぞれ着ることとした。
ショルドは黒のタキシードだが、うっすらと銀糸でのピンストライプが見える。
カフスボタンに、ポケットチーフなどあらゆるところにジャスミン嬢の瞳の色を意識したような深い青が見える。銀糸ってのもジャスミン嬢の銀髪を意識しているのか?
私から見ると、独占欲丸出しだなぁ。気持ちはわかるけど、彼女すっごいキレイだし?
彼女はというと、オフショルダーでマーメイドラインのドレス。色とかショルドが選んだんだろうか?あいつの趣味か?
各アクセサリーでショルドの緑の瞳の色を意識したようなペリドットを使用しているようだ。ここまでくるとショルドの趣味というのがアヤシイ。侍女長が操っている気がする……。
舞踏会での入場は後の方になる。公爵家だから。
ジャスミン嬢が両手に花みたいな状態(?)で入場することになるのかな?
「ルル公爵家が入場します」
俺らが入場する番だな?ん?ジャスミン嬢が震えている?
「ジャ…「ジャスミン嬢大丈夫ですよ。貴女はこの会場で一番美しいですから、自信を持ってください」
おぉう、ショルドが私を遮るようにジャスミン嬢に語りかけていた。
案の定、会場内では……
「あの(・・)ジャスミン様よ?一緒にいらっしゃる公爵様が不憫だわー。できるなら代わって差し上げたい!!」
等の会話がされていた。
しかし、実際に入場すると……
「あれ?公爵様はお一人なの?次期公爵様は?あのパートナーは誰?」
「流石は公爵家よね、次期公爵様のパートナーに美しい方を選ぶのだから」
と、ショルドのパートナーがジャスミン嬢だと気づいていない様子。
しかしながら、公爵家として陛下に挨拶をしに行く。
「本日はお招きいただき誠にありがとうございます。我が息子にも婚約者として王女を下賜していただき公爵家一同非常に喜ばしい限りです」
「…っ。ということは貴殿の倅のパートナーは…」
「はい、ジャスミン王女でございます」
「おひさしぶりでございます、父上」
「お前はもっと、やせ細って、小汚い娘であっただろう?」
「はて?陛下はそのような王女を公爵家に下賜しようとしていたのですか?」
「…いやっ、その、だなぁ…。それにしてもジャスミン、公爵家に行って随分キレイになったな」
「過分なお言葉でございます」
「彼女はもともと美人ですよ?我が家の侍女達が磨き上げただけです」
ショルドもなかなか言うな……。
「これはこれは、我が家ばかり陛下を独占してはいけませんな。我々はこれで、挨拶とさせていただきます」
背後で陛下の歯ぎしりのような音が聞こえた。
それからは……
「あの方がジャスミン様なの?嘘でしょ?ちょっと前までみすぼらしい感じだったのに」
等と給仕をしている王宮侍女たちの会話が聞こえる。
ショルドは気にせずに、ジャスミン嬢をダンスに誘った。
「私と踊ってくれませんか?……えーと、ダンスはできますか?」
「ふふふ、一応習ってます。足を踏んでしまったりしたらゴメンなさい」
「貴女に踏まれるなら靴も本望ですよ。改めて、私と踊ってくれますか?」
「喜んで」
ジャスミン嬢がショルドの手を取り歩き出した。
そう言って二人はダンスホールのど真ん中に歩いて行った。ショルドの考えでど真ん中にエスコートしていったんだろう。私はそんな二人を見ていた。
「まあ、ダンスホールの真ん中で踊っている方々は誰かしら?二人とも麗しいわ。」
「二人の衣装も素敵。どこのお針子さんの作品かしら?」
等の意見が聞かれた。私はというと、これでもモテる。だから結婚したくなかったんだ!女性不審。よって、女性に囲まれた。
「ダンスホールの二人は私の息子とその婚約者です。婚約者は元・第3王女ですよ」
自分の事じゃないけど鼻が高いぞ。
「え?第3王女と言えばどこにも嫁ぎ先がないだろうって言われていた?」
私が聞いていた噂と違う。
「それは誰から聞いたのですか?」
「王宮に勤めている侍女をしている親戚に聞きましたぁ」
多分、怪訝な顔をして質問していたと思うのに女は嬉々として答えた。
女は嬉しそうだが、そんなものはどうでもいい。私は王宮に勤めている侍従から聞いた。
男の評価と女の評価が違うということか……。
優秀ゆえに女に妬まれるという構図か?ある意味わかりやすいが、厄介なんだよなぁ。女の独特な世界……。
「久しぶりのダンスで少々疲れましたわ」
「貴女が楽しそうで何よりです」
「おい、お二人さん!おつかれ~」
「父上!」
「公爵様!」
「ジャスミン嬢には『お義父さま』って早く呼ばれたいもんだ。ってそうじゃなくてだなぁ。二人の評判かなりいいものになってるぞ。特にジャスミン嬢に至ってはうなぎ登り!」
この状況が吉と出るか凶と出るか、微妙だなぁ。
「ジャスミン嬢の美貌が公表された以上、さっさと婚姻してしまった方がいいと思う。そうでないと王家としては、ジャスミン嬢を取り返し、他国との駒として彼女に政略結婚を強いることが考えられるぞ。さて、どうする?」
顔を見合わせる二人。もうラブラブなのか?そうなのか?
「では父上の仰るようにさっさと婚姻してしまいましょう。さっさと籍を入れてしまいませんか?王家に先を越されないためにも」
こいつ……ロマンもクソもないな。仕方ないんだけどさぁ。
とりあえず家に帰って詳しい話を詰めようと思う。
家に帰ると、
「ジャスミン嬢、今日は疲れたでしょう?父上、話し合いは明日でもいいでしょう?ジャスミン嬢は疲れているようですし、私も今日は失礼します」
そう言って、二人とも部屋に戻っていった。
明日でギリギリかなぁ?間に合うといいんだけど?
それにしてもショルドはもう溺愛レベルで彼女を大事にしてるみたいでなにより。
正直、孫が見たい!!これは本音。
明日で間に合う事を祈ろう!
翌日、本当にほんっとうに間にあって良かった!と思う。
籍だけになってしまうが、式は後回しになってしまうけれどもジャスミン嬢は正式に『ジャスミン=ルル』となった。王家も流石に臣下に離縁を迫ってまで、政略結婚の駒を手に入れようとはしないだろう。
子供の一人もできれば確実だけれど、ショルドの手腕はどうなんだろう?
とりあえず二人がラブラブなのはわかる。
「父上!ジャスミン嬢、ああもうジャスミンと呼んでも構いませんか?」
ジャスミン嬢は赤面して俯きながらも首肯している。
「父上!ジャスミンとの寝室は二人一緒で構いませんか?」
おおう、なんということだ!ショルドやつは本気だ……。本気で子作りをする気だ。
いや、公爵家にはいいことだけど。まぁ、籍も入ってるし双方の同意があればいいんじゃない?
あと、情事の声とか音は聞きたくないから、私の寝室から離れた部屋にしてくれ。
「ごほっ、まぁ公爵家として跡継ぎができるのはいいことだから構わない。ジャスミン嬢もいいのかな?」
首肯するし。
それならそうと、侍女に用意させ最高の初夜にさせてやろう。
侍女隊はそれはもう張り切って二人の初夜の準備をした。
二手に分かれて、一方はジャスミン嬢を磨き上げる(あれ以上磨けるのだろうか?)、もう一方は部屋のプロデュース。
二人ともハジメテだろうに、ジャスミン嬢は王女として閨教育を受けているだろう。ショルドには私が跡継ぎを欲しかったからなっ。きちんと閨教育をしてある。
あとからショルドから聞いたのだが、ジャスミン嬢はスケスケネグリジェだったらしい。理性と欲望の戦いが大変だったと。それから侍女隊によってベッドから入り口までバラの花びらが散らされ、ベッド本体には♡にバラの花びらが散らされていたらしい。私はやりすぎだったんじゃないか?と思ったが、ショルドはそれどころじゃなく理性と欲望が戦っていたからどうしようもなかったらしい。
ショルドは3日ぐらい部屋から出てこなかったけど、大目に見よう。孫が見たい!
仕事が待ってるぞ!
可哀そうに、新婚さんなのに出張のようだ。
何?!ジャスミン嬢を出張に連れて行く?
あぁ、まぁ先方にショルドの伴侶を紹介できるけど……。
そんなんで、無事に(?)ジャスミン嬢も懐妊し、私は孫を待つばかりとなった。
後日はどういうわけか(?)、孫が5人産まれショルドとジャスミン嬢はラブラブ全開で生活を続けました。
私はそんな中、孫も多く幸せに70代前半まで長生きをすることが出来ました。ショルドには早々に爵位を譲位していたので、余生は孫と楽しく過ごしました。
END
全3話だった。もっとあると思ってた…。
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