第二話:公爵邸でのジャスミン嬢
ジャスミン嬢目線です。
Side.ジャスミン嬢
公爵家の人々は凄く丁寧に私を扱ってくれる。
『私なんか』と言うと、注意される。
「お嬢様は『私なんか』と卑下されるような人間ではありません!」と。
城にいた時は、着るものは一応侍女(のような人)が選んだ服を着ていた。今思うと、その服はほぼ下着のような服だったように思う。恥ずかしい。
食べるものも、この間久しぶりに大勢で食卓を囲んだ。そして温かいものを食べた。城にいる時に与えられていたのは、一人で冷めたスープとか。賄いでも使えないようなものだったのかしら?温かいものなど食べた記憶はないし、まして、食卓に自分以外の人がいるなんて。
住んでいる所は一応城の一室だったけど、北側だったのかしら?あんまり日が差さなかったように思う。
散歩をしようにも私の格好でウロウロするのが憚られるからかしら?侍女(?)に止められてほぼ一日中部屋にいることになった。
だからかしら、趣味が刺繍になって、ほぼ特技になったわ。
でも耳にしたのは非情な事実。完成した作品(結構時間をかけた大作)を侍女(?)に渡したら、他の王女が、「私が刺したんだけど、どう?」と堂々と嘘を言っていた……。
―それは私が時間をかけて作ったのよ!
―どうして侍女(?)に渡しただけなのに、他の王女が自慢げに話しているの?
ー本当はあの作品をお父様(国王陛下)に見てもらいたかったのよ?
私の中で侍女(?)は信頼できないものへと変化した瞬間だった。
それ以降は、私が刺した作品は自分でひざ掛け、布団カバー、枕カバー、などに利用した。もう諦めた。
そんな時に私に縁談の話が来た。
相手は公爵家の嫡男という話だ。他の王女から、やっかみの手紙が来たりした。
本人が来ればいいのに……。どうせ、暇でしょう?
私はこの地獄のような城での生活から抜け出せればそれでいい。そう思っている。
……そう思っていたのに。
公爵家での歓待が嘘の様!
全身を磨き上げられ、キレイなドレスを着せられ、部屋も南向きのお部屋で調度品も素晴らしい。
お食事は大勢でする習わしのようで、大勢で温かい食事を食べた。
何年ぶりだろう?
私付きの侍女もいるようで、彼女は裏切りはしないみたい。
ジャスミンちゃん健気だ。ジャスミンちゃん推しで。