第一話:公爵家の跡継ぎ
ルが多い名前の主人公です。結果論なんです。狙ったわけじゃないです。
よろしくお願いします!
「我がルル公爵家はショルドに継いでもらおうと思う。傾いた領地経営を立て直した実績といい……ゴホン、まぁこれは、私の手腕が悪かったせいもあるんだが……。その他にも、新たに特産物を作り上げるなど、数えきれないほどの功績をあげた。そのことを鑑みると、後継はショルドが適任だと私は考える。異論がある者」
「叔父さん、あんまりです。親父は叔父さんの兄にも当たり、血統で行けば跡継ぎは私でしょう?」
「そうだな血統だけで見ればそうだろうな。しかしな。お前はこの数年何をした?特にうちの領地に貢献するようなことは何一つしていないだろう?」
「…っ、しかしっ、その跡継ぎに指名されたのは叔父さんが養子で引き取ったどこの馬の骨かもわからない男ではないですか?」
「そうだなぁ。でも、その馬の骨が王家にも高く評価され、多くの功績を上げている。このことについてはどう考える?」
「……」
私の名前は、エトール=ルル。ルが多いと思う。まあそれは私の両親の考えた名前なので何とも言えないが……。
話題にあがった馬の骨こと、私の養子の名は、ショルド=ルル。
そもそも、養子をとった要因なんだが。アレだ。私がモテまくって女性不審になり、結婚しなかったことが原因。
しかしだなぁ、このショルドもイケメンで長身。鍛えられた(うちで鍛えた)体躯。知性と爵位。運動神経も◎。王家の覚えもめでたい。功績も多い。
コイツもモテまくって、女性不審になり結婚をしないのでは?と不安な養父である。
なので、日々「孫の顔がみたい」などと地味に『早く結婚しろよ』というオーラを出している。コイツに通用するのかは疑問だが。
親族会議でやたらと噛みついてきていたのは、私の兄の息子。
兄がルル公爵家を継いでいない時点で、兄弟の優劣がわかってしまう。
事実だから、仕方ないのだ。
いくら私の手腕が悪くて領地経営が上手くいかなくても……。ウっ、心の傷が……。
甥がしつこかったのはショルドが第3王女の降嫁先候補っていうのもあるんだろうなぁ。(現ルル公爵調べ)
第3王女と言えば、見た目は『立てばシャクヤク座ればボタン歩く姿はユリノハナ』というやつという噂だ。立てば~ってやつは東方の話だからシャクヤクって何だろう?って感じだけど、すっごい美人!ってことは伝わる。
あとは、教養もマナーも完璧で非の打ち所がない。という話だ。故に他の王女に疎まれているとか?
「なぁ?ショルド。さっさと第3王女と婚約してしまわないか?王女は城で疎まれてるらしいじゃん。さっさと婚約して、一緒に暮らしてはどうだ?」
赤面するか?一緒に暮らすだけで、同じ部屋で暮らすとは言ってないぞ?お年頃の青年だからか?
「そうですねぇ。私が跡継ぎに決まったわけですし、彼女のためを思うと。でも、一度は対面してみたいものです」
普通はそうだよな。見ず知らずの男女がいきなり同居ってちょっとなぁ……。
「王家の方に、書簡を送っておく」
*********
数日後、ショルドは初めて第3王女と対面した。ショルドが登城した。
王女はみすぼらしい格好をしていた。侍女にも嫌がらせを受けているのだろうか?
「このような私を受け入れて下さるのでしょうか?」
侍女達が何故か「あり得ないわよね~」などと話している。
「本日のお召し物はどなたが?」
「お付きの侍女が……お目汚し申し訳ありません!」
頭を下げる王女を、侍女がクスクスと笑っている。
「あぁっ、王家の人間がそんな簡単に頭を下げてはいけませんよ」
王女は耳まで真っ赤になってしまった。
「うん、だいたい事情はわかりました。本日より第3王女ジャスミン嬢は我が公爵家で生活していただきます。決定です。陛下には父上より奏上させていただきます」
多分いまごろ、侍女頭があわてて陛下のところに行ってそうだけど……。
「いいのですか?」
「いいですよ。部屋もたくさんありますし、私とあなたは後々夫婦となる予定なのでなんら問題ありません。ジャスミン嬢の方に何か問題が?」
「いいえ、ありません」
「では、私がここへ来た馬車で共に公爵邸へ行きましょう。持っていきたい荷物などありましたら、用意を。あと、連れて行きたい侍女などおりますか?」
“公爵邸”と聞いて行きたいと思った侍女がいるようだが、王女は連れて行きたいとは思わなかったようだ。
*****
「「ルル公爵家へようこそ!」」
使用人たちがもう笑顔いっぱいで迎えている。
……ジャスミン嬢が若干引いている。
「この数百年公爵家に女性が生まれたという話は聞きません。今も男所帯で……嗚呼、ショルド坊ちゃんありがとうございます!なんて美しいお嬢さんなのでしょう!さぁ、まずはお嬢様に湯浴みを!もう、徹底的に磨き上げるわよ!!」
「「イエス、マム!」」
……どこの軍隊だろう?いやに統制が取れている。まぁ、侍女長に任せておこう。
「おい、ショルド。ジャスミン嬢は磨けば光る逸材だな?」
「はい。それ故に城で蔑まれていたようで……」
「なるほどなぁ。女の妬み・嫉みは厄介だもんなぁ」
「旦那様!私達、侍女隊もそのように思われていたのですか?」
「まぁ。隊の中で色々あるんだろうなぁとは思っていた」
「私は悲しいです。そのようなことがないように、私は勤めてきたというのに……うぅっ」
私は侍女長に泣かれると弱い。彼女は一応俺の乳兄弟。
「あ、実力は買っているぞ!今回だってジャスミン嬢をもうピッカピカにするんだろう?」
「もう、ショルド様もお目が高い!あれほどの磨けば光る逸材を連れてくるんですもの。私どもの腕がなりますわ。ずっとお世話する相手がいなくて手持無沙汰でしたの。では失礼いたしますね!」
「情緒不安定なのか?」
「……とりあえず、ジャスミン嬢のような方がいらして良かったということですね」
「ああ」
晩餐の時間となった。
甥が煩かったのもわかる。
ジャスミン嬢がピカピカに磨き上げられて本当に王家の王女です!って感じになった。
「あの……変ではありませんか?」
「ジャスミン嬢は鏡を見ていないのですか?貴女は眩く輝いていますよ」
ショルドよ……結構口説くな。公爵家も安泰か?
ジャスミン嬢は耳まで真っ赤になった。というか、デコルテが露出しているのでデコルテまで真っ赤になっているのが見える。
「そうでしょう、そうでしょう!侍女隊が総力を挙げて磨き上げました。元が素晴らしかったので、更なる高みに上った感じです。こちらとしても、やりがいのある仕事を与えられて非常に満足でございます!」
侍女長は言う。
……そんなに感動的だったのか。
「さぁ、美しく生まれ変わったジャスミン嬢と共に晩餐を楽しもう!」
「あの……ルル公爵家では、侍女長さんも食卓を囲むのですか?」
「食事は大勢の方がいいだろう?とはいえ、侍女全員をというのは無理だしなぁ…。厨房の連中は賄いを食べるんだろう?賄いも調理の腕の見せ所だからなぁ。賄いから生まれる料理だってあるわけだし」
「そうですね。侍女長さんにはお世話になりましたし、大勢で食卓を囲む方がいいですよね!」
(ジャスミン嬢は虐げられ、食事も一人で賄いの残り物のようなものを与えられていたと聞く。我が家では楽しく過ごして欲しい)
「父上、遅くなりました!」
「そうだぞ、せっかくの食事が冷めてしまうではないか!」
そこからはマナーを考えずに楽しく食事をしていた。
(ジャスミン嬢も楽しそうで何より、マナー……気にしなくていいけど所作が美しいな)
美人は何だか眼福で、新緑のように目に良い感じですよね。私だけ?
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