虚構の覇者sheet7:エピローグ
後日、待望の日本の銘酒詰め合わせが先に届いた。お気に入りの獺祭を初め、都合十本の豪華な詰め合わせだ。
開店前のカウンターに全てを並べ、ご満悦のエル。
「なあエル、こうしてお目当ての賞品はゲット出来たからいいけど、世間的には三位って思われてるの悔しくないか」アキラが尋ねる。
「ううん、全然。アキラや育美さん達が分かってくれてたらそれでいい。アキラは不満?」
「不満はないさ。ただAIチームの奴らが優勝したと思ってるのはちょっと癪だな」
「アキラってAIのこと、敵視してるね」
「エルは違うのか?」
「私はただの道具だと思ってる。辞書に対して『自分の知らない言葉を知ってる』って嫉妬する人いないでしょ?」
「それもそうか」
「それと今回、AIの能力が私に劣ってたわけじゃないからね。使い方が不十分だっただけ」
エルは並べられた日本酒を見つめながら言う。
「この中のお酒、半分は飲んだことないものだけど、もしかしたら獺祭以上のお気に入りが出来るかも知れない。でもそれはお酒の優劣じゃないの」
「あぁ、時と場所によっても一番は変わるしな」
「お酒に関してはね」
「?」
「人間に関してはいつでもどこでもアキラが一番ってこと。それ以上のお気に入りは出来っこないわ」
「エル…」
「アキラ…」
「もしかして、もう飲んでるのか?」
「なんらと、このろんかん!(何だと、この鈍感!)」急に酔っ払い口調になり、掴み掛かってくるエル。
じゃれ合いが始まったかと、オムも参戦のタイミングを見計らっていた。
〈完〉