ターン2-2:偽りの彼女『仙堂寺あずさ』
『頂点を目指して頑張る女の子を応援して見守るのも。俺達、男としての役目だろ?』
これは俺の幼い頃に亡き父親から言い聞かされた言葉だ。その言葉には威厳があり、尊敬を感じた。
父親の話を受けてから今年で19歳になって数ヶ月が経つ。
父親の当時の面影は思い出せない。
――小さいときに死別したからあんまり思い出せないんだよなぁ……。
父親が話してくれた言葉の影響もあり、自分の性格のひとつとして根付いている。
実際に頂点を夢見てVチューバーの活動を頑張るあずさに対して、色んな悪巧みを考える犯罪者達を相手にして退けてきた。
アイドルが好きだった父親の言った言葉は間違いじゃなかった。
そんな父親に対して母は離婚する、父が亡くなった事をきっかけに俺を置き去りにした。
その後になり、母は父親に黙って浮気をしていた相手と結婚し、自分の知らない地方に移り住んで2人だけの甘い生活を営んでいるようだ。
『あんたがいると母さん。邪魔だから。もう2度と会おうとしないでちょうだい』
父の遺産を、母は全部自分のモノにしたと話した時は幼く、その言葉はよく理解する事が出来なった。
――今も鮮明に思い出せる……。あの時の自分は絶望的な状況だったんだよな……。
父と母が離婚した原因は母のスキャンダルだった。
俺を産んでくれた事に対する恩はあるが。俺と父親の尊厳を踏みにじって裏切った時の気持ちはこれからも忘れない。
両親と別れた後。俺は養子縁組制度を通じて育ての親と家族関係になるも。
『お悔やみ申し上げます』
中学の頃に2人目の両親は大きな交通事故に巻き込まれて死別した。
時折に孤独は感じるが、両親の死別後に出会ったカードゲーム『マジックマスターズ』のおかげで人生が明るく変わり、今は充実した生活を送ることが出来ていて満足している。
――マジックマスターズのコレクションカードと多額の遺産を残してくれたこと。天国で見守ってくれている父さん。今も忘れずに感謝しております。今日もイージスの盾があずさを守ってくれました。
ひとまず過去の自分に対する振り返りはこれ位にしておこう。
今は幸せそうな笑顔になり、あずさが食事をしている姿を見守る義務がある。
「ふふふ、はぁ……。やっぱり罪な味よねぇ……」
あずさが思わず言葉を漏らし、幸せの余韻に入り浸りながら食レポをしている姿に思わず苦笑がこみ上げてくる。
「ふっ、それは何よりだ。俺もあずさの幸せそうな笑顔が見られて満足しているところだ」
「えへっ、嬉しいかなー。ダーリンも食べる?」
コーヒーカップを片手に啜りつつ、あずさから少し魅力的な提案を受けるも。
「大丈夫だ。俺はこの一杯で充分さ」
「じゃあ、後でしたいなー」
「なら仕方が無い」
「ねぇ、今日で私達が恋人になって2ヶ月の記念日だよ。これからもずっと一緒にいようねダーリン。好きだよ。もう世界の中心で愛してるって、言っちゃいそうなくらいに大好き! 今から役所に突して婚姻届を出しちゃってもいいくらいに大大好きっ!」
「気が早いし考えますねー」
「あちゃー、だめかー! じゃあ、また来年だねっ!」
――もう気づけば2ヶ月の恋人関係になるのか。思い出すよ。
あの時に出会った彼女のやり取りは鮮明に覚えてる。
仙堂寺あずさとはひょんな出会いから始まった。
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