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ターン2-1:偽りの彼女『仙堂寺あずさ』


 数10分後。裏路地から場所が変わり、新秋葉原の商業施設内にある映像配信企業のホログラフィックが運営しているライブカフェのお店に訪れていた。

 その店内の片隅で、俺とあずさはテーブル席に座り対面で話のやり取りをしている。

 備え付けの小型モニターからは公式バーチャルタレントが提供する生配信サービスが流れており。


「あーっ、あの子の企画。私達でもやれそうじゃないかなぁ?」


 最初は面と向き合って真面目な話をしていた。

 今は生配信であずさが喋る話題づくりの一環で、同業他社が提供しているサービスの中にある。こちらで使えるようなアイデアや、使用する上での問題点がない企画がないかと話を交えつつ摺り合わせをしている。


「今度ね。私が先月から始めた朝の生配信企画でしているカード占いのコーナーの配信記録を集めてね。そのデータを使って切り抜き動画にして別アカで投稿してほしいの。初めて見る人もね。今まで私のファンで居続けてくれている人達にもスッと受け入れてくれるようなモノにしてね。上手くいったらシリーズ化希望でよろ!」

「とりあえず切り抜き動画を作れば良いんだな。別にそれくらいなら余裕にできるし。なんなら他のユーザーが細々と凌ぎを削りつつ活動しているはずだ」

「んーっ、それでもダーリンの作ってくれる動画の方が一番に輝いていると思うなーって」

「ははっ、まあ。あずさがそう言うなら別に受けてやっても構わないさ」

「その意気込みでよろ!」


 とりあえず話の終着点にはたどり着いた。


「お待たせしましたー」


 話の終わった直後に。注文していたコーヒーとオレンジジュースが店内スタッフの配膳で届けられた。


「こちらのパフェは」

「彼女の方です」

「失礼しますねー」


 あずさの好物であるホロカフェ特製『アン・ボニーパフェ』が、テーブルの上に乗せられて彼女の方へと差し出される。


「きゃわわ、うちぃの顔を収める感じで撮影してそ!」


――パフェグラスを前に自分の顔を背景にして写真に収めたいってところか。

 あざとらしさを表情で前に出し、あずさは自分の可愛らしさを仕草で魅せつつ映えの構えをとり始める。


『どんな女の子でも。船長のパフェを前にしては我が儘な海賊になってしまう』


 奇抜なコンセプトを前に推しだして、それを具現化したデカ盛りスイーツを前にしつつ、あずさを背景にスマホをかざして撮影を始めた。


「ほいよ」

「どーも、どーも」

「関東人のクセして九州訛りの喋りができるとかすげぇな……」

「うちのフォロワーに仲良くしてる九州の人がいてね。その人がネイティブな喋りをする独特な人でー」

「要するに喋ってる間に言葉がそっちよりになったってヤツだろ?」

「そうそう。それでね。いつかコラボ配信ができたら絶対にぃ。お互いの方言で会話する配信をしてリスナーの人達を楽しませたりしてー。ねぇ、夢があって良いでしょ?」

「面白そうだな。今度、そのフォロワーさんにメンション送ってみようか」

「いいねー。さっすがダーリン。なんだか、ここでも良いから甘えたくなっちゃったかもぉ」

「あっ、ああ……」


 俺と彼女の手がテーブルの上で重なり合う。


――素直に甘い気持ちにはなれないな……。


 このやり取りをしている間にも。彼女の声を聴き、薄汚い視線を送りつけている厄介系のファンがいるかもしれない。


――契約を交わした時に。俺は彼女の事を本当に守れるのだろうかって最初はそう思って怖かったな。


 実際にあずさが夜道で変質者に襲われそうになり、初めて彼女の事を守った時に覚えた感情とその出来事は今でも思い出せる。


『ダーリン……ありがとう……君を選んで本当に良かった……好き……、大好きっ!』


 その言葉が端を発して、あずさは恋する乙女のような立ち振る舞いをするようになり、最初の抱擁から始まったスキンシップは重なりに積み重なって、最終的には俺の身体で常に密着することが当たり前のようになった。


――あぁ、俺はあずさと何をやっているんだろう……。


 あずさが話しかける甘い言葉や、全身から感じる可愛い仕草や眼差しから感じる好意の感情は、恋をしているからとか、愛しているからとかではなくて、彼女が思う純粋な嘘が隠れているようにしか受け取れない。

 俺は自分の身を危険に晒してまで、嘘の愛情で接してくる仙堂寺あずさとの関係をこのまま続けても良いのか分からない。

でも、悩むその度に俺は父から言われた言葉を思い返すようにしている。


もしこの作品を『面白い』と思って頂けたり、『続きが気になる』と思って頂けたならぜひブックマークと広告下にある『☆☆☆☆☆』の所を押して頂きますようお願い申し上げます。今後の作品制作の励みになります。

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