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2.岩に刺さった剣が抜けなかっただけでクビかよ

 状況を整理しようじゃないか。

 まず俺は深夜まで働いていて、それで眠くて頭も痛くて……ちょっとあくびして目を開けたらいつの間にか異世界にいて。──うん駄目だ。これ以上考えても何も解決しない。


「そうか、貴殿はコトバと申すのか。良い名だ……まさに勇者に相応しい」

「えっ、あっ……どうも。……じゃなくて!」

「おぅい、勇者殿にアレを持ってきて差し上げろ」


 衛兵の内一人が、短い返事とともに何処かへ行き、何かを持ってくる。……いいや、引きずってきた!? 何だあれ、でっかい岩に剣が突き刺さってる!? エクスカリバーってやつか!?


「この剣は由緒正しき伝説の剣……掲げれば雷が、振れば大地が割れるほどの力を持つ」


 あっ、あるじゃんチート! よかった、これなら俺でもなんとかやれるかもしれない。俺は衛兵に手伝ってもらいながら、岩の上に乗った。


「……」


 その剣は滅茶苦茶厳かなオーラを漂わせていた。とても俺みたいな人間が触れていいもののようには思えないが……これも生き残るためだ。すまない厳かなオーラ! ──柄を握り締め、力いっぱい引き上げる。


「うぉあああああああああああああああ!!!! ……あ?」


 抜けない。


「……勇者様?」

「ちょ、ちょっと腰が痛くて……あれっ、おかしいな、あれっ?」


 抜けない、びくともしない。これはあれか? やっぱり選ばれしマジの勇者様しか抜けないっていう感じの代物か? だとしたら俺は……まさか。


(やっぱり、チート抜きで勇者をやれってことなのか……!?)


 俺はその場に崩れ落ち、これからの自分の惨状を思い浮かべた。ああ、どんなふうに死ぬんだろう……今からでもどうにかして「俺は勇者じゃないんです!」とか言うか? そうだ、そうしよう! そうすれば取り敢えず勇者はやらなくていい……そうだ、正直に言おう!


「……お前は、勇者ではないのか?」

「はっ、はい! そうなんです! ただの万年アルバイトっていうか……全然弱くt

「ひっ捕らえろ〜!」


 えっ? 間抜けな声を出した直後、俺は無数の衛兵に拘束されていた。どういうことだ? 何故俺は今こんな目に遭っているんだ!? なにか無礼なこと言ったっけ!?


「今回も、駄目だったか」


 ため息をつく王様。先程とは打って変わって、まるで虫を見るような目で見てくるじゃないか。


「新しい勇者を呼ばねば……ああ、お前はもう要らん。余の可愛い愛娘の餌にしてくれる。──連れて行け」

「ちょ……いやだ、はなして……!」


 抵抗しようとした瞬間、首筋に強い衝撃が加わる。俺の意識は一気に深いところにまで沈んでいき、そのまま微睡むかのように落ちていった。


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