11.徐々に派出所で手術中!
「アリス!」
血溜まりの中に沈む彼女は、目も当てられないほどにボロボロだった。毛皮を抉られ、あちこちを切りつけられ……どれだけ痛めつけられたのか、俺は考えたくなかった。
「しっかりしろ、今助けてやるからな……!」
魔導書のページを乱暴に捲る。あんなふざけた魔法が使えたんだ、傷を直したりする魔法がないわけがない! どこだ、どこだ……ああ、駄目だ。探している時間がない! 手汗で手が滑る、焦る……苛立ちが、積まれていく。
「ことば、さま……」
「くそっ、くそっ!」
駄目だ、どれもこれも火を出すとか雷を落とすとか……そういう攻撃系の魔法しか無い。目次もない、書かれている魔法の種類もバラバラで、ああとにかく時間がない! こうしている間にも、アリスの息が細く薄くなっているというのに!
「うっ……ああ……」
「っ……くそっ!」
助けられない、救えない。このままじゃ、このままじゃアリスが死ぬ! それは駄目だ、絶対駄目だ……俺みたいなどうでもいい人間なんかより、この少女が生きるべきなのに! 助けられてばかりか? 頼ってばかりか? ──いいや、まだだ。まだ助けられる!
ページを捲る。血眼で文字を追う。役に立たない魔法の数々に腹を立てながら、それでも読む、捲る……また捲る、読む。──そして、「癒やす」という単語が視界に入った。
(間に合え……!)
「徐々に派出所で手術中ッ!」