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ぽつんと家康  作者:
9/80

花宴(はなのえん)

 石田いしだ三成みつなりは考える。


 目に見える戦いは、まだはじまっていない。


 だが、目に見えない戦いは、とっくにはじまっている。「西軍だ」「東軍だ」と、かたちの上ではかれているが、「本心では日和見ひよりみ」という者はけっして少なくない。


 この先、いつだれうらり者になるのか。それによって、戦いの勝敗しょうはいが入れわる可能性かのうせいがある。


 東軍てきうらり者が出れば、西軍こちらが勝ちやすくなるし、そのぎゃくしかりだ。いかに自軍みかたうらり者を出さないか、それが重要になってくる。


 そういう意味では、西軍こちらの方がわるいだろう。


 石田いしだ三成みつなりは自分の不人気を、多少なりとも自覚じかくしていた。西軍の総大将そうだいしょう毛利もうり輝元てるもとなのも、それと無関係ではない。


 だから、なおさらわかりやすいかたちで、「西軍こちらが有利」ということを、早期そうきしめしておく必要があった。


 西軍こちらが有利だとわたれば、日和見ひよりみしている者たちは、我先われさきにとうまろうとするはず。ここで西軍みかたうらってもそんだ、と考えるにちがいない。


 そんな連中れんちゅうに対して、上から目線めせんで「お前の忠義ちゅうぎは何色だ?」などといただすことは、現時点では考えていない。


 今回の戦いでは、一気呵成いっきかせい家康いえやすに勝つ。それが重要だ。戦場において、かずちからである。味方みかたは多いにしたことはない。


 ただし、これはぎゃくの場合にもてはまる。「東軍あちらが有利だ」となれば、西軍みかたないからうらり者が続出ぞくしゅつするだろう。その結果けっか味方みかた減少げんしょうてき増加ぞうかかずちからつぶされてしまう。


「さて、どうするか」


 石田いしだ三成みつなりは考える。


 この状況じょうきょうで、戦場に東軍てき総大将そうだいしょう徳川とくがわ家康いえやすが、たった一人であらわれたのだ。


 あの家康いえやす、おそらくは影武者かげむしゃだと思うが、あれをうまく利用できれば・・・・・・。


 石田いしだ三成みつなりは返しのさくりながら、こうも考える。


(もう少し様子ようすを見るか)


 とりあえずは、島津しまづぐん捕獲ほかくしたようだし、しばらくはまかせておこう。下手へたに自分が口を出して、島津しまづ義弘よしひろにへそをげられてもこまる。


 島津しまづぐんは強い。あれがうらって、東軍てき味方みかたしようものなら・・・・・・。


 想像しただけで、首筋くびすじえてくる。


 島津しまづぐんあつかいは慎重しんちょうさねば。


 部下ぶかめいじる。島津しまづぐんさけおくるように。名目めいもくまかせる。


「そのついでに、問題もんだい家康いえやすをちょっと見てきてくれ」


 やつ本物ほんものか。それとも、偽者にせものか。


 また、せきはらに一人で来た。その意図いとをそれとなくさぐってくるよう、石田いしだ三成みつなりめいじた。


 そこに一人の男がいそあしでやって来る。


 しま左近さこんだ。


 盟友めいゆう訪問ほうもんに、石田いしだ三成みつなりは表情をゆるめる。


「ちょうどかった。左近さこん、少し意見をきたいのだが」


もうしわけありませんが、今は一刻いっこくあらそいます」


 しま左近さこん早口はやくちで、あるさくげてきた。


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