表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぽつんと家康  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/80

処暑(しょしょ)

 せきはらなかで、本多ほんだ忠勝ただかつ立花たちばな宗茂むねしげ東西とうざい両雄りょうゆうやりかたなはげしくぶつかりっていた。


 とくに、やりが戦いの中心になっている。ちからちからによる激突げきとつだ。


 うまった両者は、えん外周がいしゅうまわるようにして戦っている。


 相手の攻撃こうげきをすべてちからめるのではなく、どちらも適度てきどながしていた。


 相手の攻撃こうげきをいなす時に、その衝撃しょうげきを自分の片側かたがわどおりさせる。この時、うま自然しぜんと、衝撃しょうげきの来なかった方へとよこ移動いどうする。これのり返しだ。


 本多ほんだ忠勝ただかつ立花たちばな宗茂むねしげは、うま一緒いっしょになって、ぐるぐるぐるぐるまわっている。


 この戦いの中で、あの二人が何周なんしゅうくらいするのか。それをミササギがかぞはじめたのは、途中とちゅうからだった。


 そのあと、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。本多ほんだ忠勝ただかつ立花たちばな宗茂むねしげ、両者の背中せなかを三回ずつ見ている。


 本多ほんだ忠勝ただかつ背中せなかがまたもや自分の正面しょうめんに来た時、そこにりかかろうとは思わなかった。


 そんなことをしても無駄むだだ。次の瞬間、自分は死体したいになっているだろう。


 今いる場所からあと少し近づいたら、二人の攻撃こうげきが同時に飛んできそうだ。邪魔じゃまものにはあるべし。そんな共通きょうつう認識にんしきが、あの二人にはできている気がする。


 なので、だまって見ているより仕方しかたがなかった。


 一方、自分のとなりではトラカドがぶつぶつ言っている。


 もしも本多ほんだ忠勝ただかつ再戦さいせんするなら、どう戦うかを考えているようだ。それに没頭ぼっとうするあまり、その内容ないよう無意識むいしきの内に、口から出てしまっている。


鉄砲てっぽうを使って、先にうまねらえば・・・・・・」


 ミササギは微笑びしょうする。やりかたなだけを使った勝利しょうりは、とうにあきらめているらしい。トラカドもけっしてよわくはないのだが・・・・・・。


賢明けんめい判断はんだんですね)


 あの二人は、怪物かいぶつえた怪物かいぶつ正面しょうめんから戦って、どうにかなる相手ではない。


 何か作戦が必要になる。


(先に鉄砲てっぽうで、本多ほんだ忠勝ただかつうま仕留しとめる、か)


 なるほど。わるくないあんかも。


 そこでミササギは思考を瞬時に切りえる。


 あの二人の殺気さっきがさらにくなったような。自分の愛馬あいばおびえている。


 本多ほんだ忠勝ただかつ立花たちばな宗茂むねしげが同時に、かたなさやにしまった。やりのみでの攻防こうぼう専念せんねんする気らしい。


 そこから先、戦いの速度ががった。やりの動きが、地上の流星りゅうせいぐんしている。


 その大半たいはんを、ミササギは目でいきれなかった。


 ただし、これだけは感じる。決着けっちゃくが近い。怪物かいぶつたちの殺気さっきがそうげている。


 はたして、つのはどちらなのか。


 東軍最強の本多ほんだ忠勝ただかつか。


 それとも、西軍最強の立花たちばな宗茂むねしげか。


 ミササギはうま手綱たづなを強くにぎりしめる。この決着けっちゃく絶対ぜったいのがさない。


 怪物かいぶつたちの目がひかった。


 やりうなる。最大さいだいきゅう一撃いちげきだ。


 ちから圧縮あっしゅく、そして爆発ばくはつ


 やり同士どうし激突げきとつで、大気たいきれた。周囲しゅういおとが一瞬でし飛ぶ。ひたすらにせいじゃく。時間さえもこおりつく。


 そして・・・・・・。


 せいじゃくが少しずつけていく。時間がゆっくりと動き出した。


 ミササギが見ている前で、立花たちばな宗茂むねしげ体勢たいせいがぐらつく。


 両者の今の一撃いちげき、それぞれもうぶんのないものだった。


 しかし、優劣ゆうれつがついた。


 この勝負しょうぶめたのは、っているうま


 立花たちばな宗茂むねしげうまが、先にげたのだ。つかれきって、その場にへたりんでいる。


 それに対して、本多ほんだ忠勝ただかつっているうまには、まだ余力よりょくがあった。


 やれやれとうまりる立花たちばな宗茂むねしげ


「ここまでありがとな。ゆっくりやすんでくれ」


 そう言って、うまくびをさすった。


 そのあと、自分だけよこ移動いどうすると、


「さて、つづきといこうか」


 立花たちばな宗茂むねしげ騎乗きじょうの相手にやりかまえる。


 だが、本多ほんだ忠勝ただかつ臨戦りんせん態勢たいせいをとらなかった。


 おだやかな声で、こうげてくる。


つづきは、またの機会にとっておこう。今回はけだ」


「おぬしのちでも、べつかまわんぞ」


 自分はまだまだやれるけどな、そう言いたげに、立花たちばな宗茂むねしげやりかるるう。


「いや、遠慮えんりょさせてもらう。ったのはうまだった、と他の者たちに思われるのは不本意ふほんいだ。いずれまた、きちんとしたかたち決着けっちゃくをつけたい」


「そっちのちでいと言ってるのに。おぬし、なかなかの堅物かたぶつだな」


おなじことを半蔵はんぞうにもよく言われる。あいつの方が堅物かたぶつだと思うのだが」


 このあと二人は、相手の顔を見て微笑びしょうする。


 最高の相手との死闘しとう。一度の人生じんせいで何回もあじわえるものではない。


たのしい勝負しょうぶだった」


 両者の声がかさなる。こころそこからの言葉ことばだった。


 そのあとみじか沈黙ちんもくいて、


「では、さらばだ」


 東軍最強の本多ほんだ忠勝ただかつうまきを変える。せきはらひがしかってけ出した。


「ああ、またやろうぜ」


 西軍最強の立花たちばな宗茂むねしげが返す。


 この直後にミササギは動いた。


 自分の役目やくめわすれてはいない。


 ――追撃ついげきするふりをして、あの東軍いえやすたちせきはらからげるだすけをしてやれ。


 うちの主君とのは東軍に対して、合戦かっせんでの決着けっちゃくのぞんでいる。


 だから、このくらいの距離きょりたもちながら、せきはらのすぐ外までいかけるふりをするのだ。


「トラカド殿どのも私について来てください」


 本当はいていきたいが、そうもいかない。


 それをすると、厄介事やっかいごとえる。そんな気がしていた。


 ミササギはうまを少し前にすすめて、黒い覆面ふくめん人物じんぶつに声をかける。


「何かわけありのようですが、ひとまず島津しまづぐん陣地じんちに来てください」


 これに素直すなおしたがってくれるかはわからない。が、そうしてくれた方が、こっちはたすかるのだ。


 トラカドにはこえないように小声で、


「あなたは今、島津しまづぐん具足よろいていて、しかも、私のあにということになっているので」


 今後のために、口裏くちうらわせておいた方がいい。


 必要と思うことをつたえると、ミササギはうまの足を速めた。単騎たんきげる本多ほんだ忠勝ただかつ、その背中せなかいかける。


 ところが、ここで視界しかいひだりがわ砂塵さじんれつ出現しゅつげんした。


 何がきたのかはわかる。


 他のぐん騎馬きばたいが動き出したのだ。


 すぐに砂塵さじんの中から、その騎馬きばたい正体しょうたいあらわす。あの具足よろい宇喜多うきた秀家ひでいえぐん


 さっと見ただけでも、かずが多い。おそらく千、いや、千五百はいる。


 しかも、まだ後続こうぞく途切とぎれない。どこまでかずえるのやら。


 さすが、西軍一の大兵力だいへいりょくほこ宇喜多うきた秀家ひでいえぐんだ。この局面きょくめんで、だい規模きぼ機動きどう戦力せんりょく投入とうにゅうしてきた。


 普通ふつう状況じょうきょうならば「たのもしい援軍えんぐん」だろうが、今の状況じょうきょうでは「ありがた迷惑めいわく」。


 ミササギのよこに、宇喜多うきた秀家ひでいえぐん武将ぶしょうが一人で近づいてくる。


「ここはわれらにまかされよ! あの男、本多ほんだ忠勝ただかつくびを、かならずやって帰るゆえ! 島津しまづ無念むねんわれらがらす!」


 大将たいしょう宇喜多うきた秀家ひでいえ自陣じじんでお留守るすばんのようだが、名のある武将ぶしょうの顔がちらほら見える。へいたちの士気しきもかなり高い。


 そんな騎馬きばたいが本気の追撃ついげき開始かいししたのだ。


 ミササギとしては、宇喜多うきた秀家ひでいえぐんあやしまれることなく、その追撃ついげき妨害ぼうがいしなければならないが・・・・・・。


無理むりですね)


 ミササギはあっさりあきらめると、


「おたのみします! かならずや、あの男のくびを!」


 迫真はくしん演技えんぎをする。


 こうなったら、あとは本多ほんだ忠勝ただかつ武運ぶうん、そして、あの徳川とくがわ家康いえやす悪運あくうん期待きたいするしかない。


 自分たちの追撃えんぎは、ここまでだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ