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ぽつんと家康  作者:


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48/80

総角(あげまき)

 井伊いい直政なおまさ騎馬きばたいともに、しろ出陣しゅつじんしていってから、少し時間がったころ


 せきはらの「きた」で狼煙のろしがった。


 服部はっとり半蔵はんぞうはそれを、走るうまうえから確認かくにんしていた。


 このあと、せきはらの「ひがし」でも狼煙のろしがる。


 さらにはせきはらの「西にし」からもだ。こちらは複数地点。


 これらの狼煙のろし服部はっとり半蔵はんぞう部下ぶかめいじてやらせている。すべて陽動ようどうだ。こうすることで、少しでも西軍てき攪乱かくらんする。


 きたひがし西にしとくれば、あとは「みなみ」だ。


 そこは今すぐにではなく、いくらか時間をあける。


 というのも、服部はっとり半蔵はんぞうひきいる忍者にんじゃ部隊ぶたい現在いませきはらのかなりみなみがわ移動いどうちゅうだ。目的の地点へと急行きゅうこうしていた。


 せきはらの「みなみ」で狼煙のろしげるのは、自分たちがここを通りぎたあと、少しってからの方が都合つごうがいい。


 せきはらやその周辺しゅうへん分散ぶんさんして各種かくしゅ任務にんむにあたっていた忍者にんじゃたちが、次々と合流ごうりゅうしてくる。今や五〇人をえる集団しゅうだんへと成長せいちょうしていた。


 そのなかにはレンゲの姿すがたもある。一旦いったん島津しまづぐん捕縛ほばくされながらも、解放かいほうされてもどってきたおんな忍者にんじゃだ。


 もしも彼女が島津しまづまれているなら、いつうらるか、わかったものではない。


 だから、服部はっとり半蔵はんぞう警戒けいかいしていた。レンゲには見張みはりをつけている。戦闘せんとうけた忍者にんじゃが二人だ。


 さらに、「手裏剣しゅりけん」や「苦無くない」などの飛び道具一式を、彼女から没収ぼっしゅうしている。


 その一方で服部はっとり半蔵はんぞうは、こうも考えていた。


 ――レンゲがうら可能性かのうせいきわめてひくい。


 これは直感ちょっかんだ。しかし、こういう直感ちょっかん過去かこ、それなりにたってきた。


 なので、今の彼女は上半身じょうはんしんロープしばられてはいない。両手を自由じゆうに使うことができる。


 飛び道具一式は没収ぼっしゅうしたが、忍者にんじゃとう没収ぼっしゅうしていない。見張みはりをつけてはいるものの、もしもの時には貴重きちょう戦力せんりょくとして期待きたいしていた。


 というのも、西軍てき知将ちしょうしま左近さこんさくによって、味方こちらにかなりの被害ひがいが出ている。今は忍者にんじゃが一人でも多く必要だ。


 そして、レンゲが二重にじゅう間諜スパイになっていないなら、これは彼女レンゲみずから、無実それ証明しょうめいする機会にもなる。


(さて、西軍てきらわれている殿との救出きゅうしゅつ作戦さくせんだが)


 島津しまづ義弘よしひろ提案ていあんわなではないとしても、非常ひじょう困難こんなんなものになるだろう。殿との救出きゅうしゅつして、せきはら脱出だっしゅつするのだ。


 西軍てき確実かくじつ追撃ついげきしてくる。


 そんな状態じょうたいで、黒田くろだ長政ながまさたちが布陣ふじんしている地点までげきるのだ。予想される味方みかた被害ひがいけっして小さなものではない。


 だが、それでもやりげなければならなかった。なにせ殿との東軍こちら総大将そうだいしょうだ。


 服部はっとり半蔵はんぞうは思考の合間あいまに、大きくいきく。考えることが多くて大変たいへんだ。


 こうしているあいだうまは走りつづけている。


 目的の地点に着くのは、もうしばらく先だ。先行させている忍者にんじゃ部隊ぶたいもまだ、そこには到着とうちゃくしていないと思う。


 ならば、今の内にいくらかあたま整理せいりしておくか。もう少ししたら、そんな時間をとることはできなくなる。


 とくに、島津しまづ義弘よしひろからの書状しょじょうについて。


 あの内容ないようはすべてあたまはいっている。


 島津しまづ義弘よしひろくびを一つ要求ようきゅうしてきた。


 これは理解りかいできるし、そっちの判断はんだんについては黒田くろだ長政ながまさまかせている。


 自分が考えるべきは、もう一つのけんだ。


(『信玄しんげん密書みっしょ』なるものが、本当に存在そんざいするのか?)


 甲斐やまなし武田たけだ信玄しんげんと言えば、偉大いだい戦国せんごく大名だいみょうの一人だ。上杉うえすぎ謙信けんしんとの川中島かわなかじまの戦いはだかい。


 徳川とくがわぐんもかつて武田たけだ信玄しんげんと戦ったことがある。そして、やぶれた。一五七二年に起きた、三方みかたはらの戦いだ。


 しかし、武田たけだ信玄しんげんはすでに、このの者ではない。くなって三〇年近くがっている。


 なのに、なぜ今なのか。


 それをろうとして、島津しまづ義弘よしひろはこちらに、その情報じょうほうながしてきたと思う。


 三方みかたはらの戦いで武田たけだ信玄しんげん徳川とくがわ家康いえやすった。つまりはころした。証拠しょうこくび確認かくにんしたという。


 そのように、『信玄しんげん密書みっしょ』には書かれているらしい。


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