表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぽつんと家康  作者:
4/80

空蝉(うつせみ)

 家康いえやすは自分のうままわみぎをさせようとした。のんびりしていてはてき餌食えじきになる。


 この時、目のはしにわずかな異変を感じた。


 西軍全体に目立めだった動きはない。


 しかし、自分のかんげている。危機ききせまっている、と。


 すぐさまうま反転はんてんさせる。


 ところが、その視界しかいに飛びんできたのは、こちらにかってくる騎馬きばれだった。


 味方みかたであることを強く期待きたいしたが、現実げんじつかなしい。


 てき騎馬きばたいだ。気配けはいして、後方こうほうからまわんできたらしい。


 かなりの窮地きゅうちではあるが、家康いえやすは少しでもまえきに考えようとする。


 相手の数はせいぜい十。ゆみ鉄砲てっぽうっている者はいないようだ。


 うまの速さ勝負しょうぶにでもめば、この全員をることは、けっして不可能ふかのうではないはず。


 であれば、その考えを今すぐ実行じっこううつすべきだろう。


 うまふたたまわみぎをさせた。


 が、そっちにもべつ騎馬きばたいがいる。こっちにかってきていた。


 前方ぜんぽうには騎馬きばたい後方こうほうにも騎馬きばたい


 この二つの騎馬きばたい旗指物はたさしものがそれぞれちがう。別々の主君しゅくんつかえているのだ。


 前後からはさまれて、家康いえやすは本気であせった。


 横からげようとするが、先にあらわれた騎馬きばたいが、まわんでくる。


 予想以上に動きが速い。またたく間に包囲ほういされてしまった。


 さらに、あとからあらわれた騎馬きばたいが、そのまわりを取りかこんでくる。こちらの方が数は多い。およそ三百。


 絶体ぜったい絶命ぜつめい状況じょうきょうだ。


 いや、しかし、こちらの正体しょうたいがばれていない可能性かのうせいも少しは・・・・・・。


 騎馬きばたいの中から、指揮しきかんらしいわかい男が前に出てくる。


家康いえやすこうとお見受みうけするが」


 やばい。普通ふつうにばれている。


「・・・・・・」


 さすがに、「いかにも」とか、「そうじゃ。家康いえやすじゃ」とか、そういう言葉を返す気にはならなかった。


 次の瞬間、「家康いえやす覚悟かくご!」とか、「辞世じせいむ間だけってやる」とか、そんな展開てんかいになりそうな気がする。


 まだにたくはない。せっかくここまでがんってきたのだ。きて天下てんか統一とういつしたい。


(どうにかして、この場を切りけないと)


 しかし、このわかい男にはおぼえがある。


 西軍きっての頭脳ずのうしょうされる「しま左近さこん」、その部下ぶかだ。名はたしか「トラカド」。


 このわかさで、あの「知将ちしょうしま左近さこん」の信頼しんらいているわけだから、ただのいのしし武者むしゃではない。


 自分の側近そっきんの一人、「黒田くろだ長政ながまさ」も前にめていたっけ。ああいう若者わかもの部下ぶかしいと言っていた。


(まずいな)


 さらに、もう一人。こちらも口を開く。


家康いえやすこうとお見受みうけしましたが」


 あとからかってきた騎馬きばたい、それをひきいているのはわかい女性だ。


 彼女もおぼえがある。島津しまづの「ミササギ」。


 このわかさで、「猛将もうしょう島津しまづ義弘よしひろ」の信頼しんらいているわけだから、ただのおんな武者むしゃではない。


 自分の側近そっきんの一人、「本多ほんだ忠勝ただかつ」が前にめていたっけ。ああいう若者わかもの部下ぶかしいと言っていた。


 まずい二人と出くわしたものだ。


 どこかに突破口とっぱこうはないか、家康いえやすあたま全力フル活用かつようしてさがす。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ