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ぽつんと家康  作者:


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18/80

絵合(えあわせ)

 暗号あんごう解読かいどくはすでにわっている。そこに書かれていた内容ないようあたまはいっていた。


 問題もんだいなのは、この『信玄しんげん密書みっしょ』の内容ないよう真実しんじつかどうかだ。


 そして、島津しまづ上杉うえすぎの者以外に、だれが『信玄しんげん密書みっしょ』をったのか。


 書状しょじょうは「五つ」存在そんざいするというから、のこりは三人。


石田いしだ三成みつなりちがうと思うが)


 だれったのかを、あの時使者にたずねたが、らないという答えが返ってきた。


 武田たけだ家臣かしんだんのまとめやくだった人物じんぶつだけがっていたが、その人物じんぶつは使者たちに個別こべつ指示しじを出したあと、みずから口をふうじてしまったらしい。すでに、このにはいないという。


 石田いしだ三成みつなり以外いがいで気になるのが、


徳川とくがわ家康いえやすが『信玄しんげん密書みっしょ』をったかどうか)


 これは非常ひじょうに重要だ。


 だから、あの家康いえやすが「本物ほんもの」ならば、はらって話してしい。


 拷問ごうもん無理むりやりかせようとすれば、しい情報じょうほうにたどりけるかどうかは、うんまかせになる。そんな気がしていた。


 島津しまづ義弘よしひろが『信玄しんげん密書みっしょ』について熟考じゅっこうしていると、いきなりへんな声がこえてくる。


「うんこー!」


 男の声だ。あの家康いえやすがいるまくうちがわからこえてきた。


 そのあとしずかになったものの、


「うんこー!」


 またもやおなじ声がする。


 どうやら、あの家康いえやすさけんでいるらしい。


 島津しまづ義弘よしひろはほとんど表情を変えずに、すぐそばのろう武将ぶしょうたずねる。


「おまえ知恵ぢえか?」


「はて、何のことでしょう?」


 とぼけた顔でろう武将ぶしょうが言う。


「しかし、部下ぶかかた大変たいへんでしょうな。石田いしだ三成みつなりこうにどう報告ほうこくするのか、たのしみでなりません」


 三成みつなり部下ぶか真面目まじめな顔をして、「あの家康いえやすはたぶん偽者にせものです。こちらの質問しつもんに対して、ずっと『うんこ』とさけんでいました」と報告ほうこくする。そんな場面を想像して、島津しまづ義弘よしひろは少しだけ笑った。その時、石田いしだ三成みつなりはどんな顔をしているのやら。


「おまえわるやつだな」


「おめの言葉ことばをいただき、ありがたきしあわせでございます」


 まくうちがわには、見張みはりのへいたちがいるし、石田いしだ三成みつなり部下ぶかは何もできないだろう。尋問じんもんつづけたところで、られる情報じょうほうは「うんこー!」という言葉ことばのみだ。


「そうそう、あの家康いえやすが『お風呂ふろ』を所望しょもうしてきましたが」


常識じょうしきで考えろ。あいつは捕虜ほりょで、ここは戦場だ」


 そう言ったあとで島津しまづ義弘よしひろは少し考えてから、どうするかについての指示しじろう武将ぶしょうあたえる。


 その間もずっと、


「うんこー!」


 何もらない家康いえやすが元気にさけんでいる。


 まくから少しはなれた場所では、うまったミササギがあきれていた。


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