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ぽつんと家康  作者:
14/80

明石(あかし)

 西軍てき偵察ていさつだと考えて、まずちがいない。川のこうがわにある小さなはやし、そこにかくしている。


 東軍こちらせきはら方面ほうめんへの接近せっきんを、西軍にらせるのが目的だろう。


 服部はっとり半蔵はんぞうの少し後方こうほうで、風がえる音がした。さらに自分のよこを、突風とっぷうがすっ飛んでいく。


 そのあと、はやしの中で悲鳴ひめいがった。


 ごくみじかい時間に、それが三回続く。


「すまん。少しおくれてしまった」


 本多ほんだ忠勝ただかついついてくる。


てきがいた。あと一人ひとりのこっている」


 服部はっとり半蔵はんぞうは感心した。あの一瞬の気配けはいだけで、「てきかずは四人」だとやぶったらしい。


 で、どうやってたおしたのかというと、げたのだ。ゆみにつがえることなく、自分の手で。


 まえ酒席しゅせきで見せてもらったことがある。


 ――戦場でゆみつるれる、そんなことはめずらしくないからな。


 そう言ってを、にわいし灯籠どうろうあなに、次々とほうんでいた。普通ふつうへいゆみはなつよりも速く、正確せいかくに飛んでいっていた。


 常人じょうじん可能かのう芸当げいとうではない。さすが忠勝ただかつだ。


 また、こんな話もいたことがある。忠勝ただかつ大名だいみょうしろおとずれた時だ。


 深夜しんや寝所ねどこで気づいたらしい。天井てんじょううらてき忍者にんじゃひそんでいる、と。


 その時は、まくらもといてあったすずりばこから大筆おおふでって、それで仕留しとめたのだとか。すみかたまっていれば、筆先ふでさき強度きょうどはいくらかす。


 ――まさか、本当にうまくいくとは思わなかった。


 そう本人は後日ごじつれくさそうにかたっていたらしい。


 半蔵はんぞうもそのしろおとずれたことがあるが、うわさ部屋へやにはたしかに、天井てんじょうに小さなあないていた。大筆おおふでの先がちょうどてはまりそうなあなだ。


 さすが忠勝ただかつ。さすが東軍最強。


「本当におそろしい男だな。忠勝ただかつてきでなくて本当にかった」


 敬服けいふくする半蔵はんぞうに対して、忠勝ただかつ真面目まじめな顔で言う。


半蔵はんぞう、お前も十分じゅうぶんおそろしい男だぞ。てきでなくて本当にかった」


 たがいに得意とくい分野ぶんやちがうのだ。そのことを二人とも自覚じかくしている。だからこそ、本多ほんだ忠勝ただかつ服部はっとり半蔵はんぞうちからわせるのだ。


 本多ほんだ忠勝ただかつ部下ぶかたちが十数人、服部はっとり半蔵はんぞういていく。


 そのままはしわたりきると、小さなはやし包囲ほういした。てき偵察ていさつ、その最後の一人も、これではげられまい。


「ところで半蔵はんぞう殿との居場所いばしょはまだつかめないのか?」


候補こうほしょしぼった。そのどちらかにいるようだが・・・・・・」


 しま左近さこんじんか、島津しまづ義弘よしひろじんか。


 しま左近さこん配下はいかわか武者むしゃトラカドが、西軍のかく武将ぶしょうたちをたずねて、島津しまづの方におくったと言っているらしい。


 が、それをそのまましんじるわけにもいかない。そう言っておいて、じつしま左近さこんじんに、ということもありる。


 石田いしだ三成みつなりがいる西軍の本陣ほんじんでないのはすくいだが、それ以外では、よりにもよってという「二つのじん」だ。


 西軍きっての頭脳ずのうしょうされる、「しま左近さこん」のじんか。


 西軍で一、二をあらそ猛将もうしょう、「島津しまづ義弘よしひろ」のじんか。


 本気であたまいたくなる。こちらには本多ほんだ忠勝ただかつがいるものの、どちらのじんむにせよ、かなりの犠牲ぎせい覚悟かくごしなければならない。


 けわしい顔をする半蔵はんぞうに対して、忠勝ただかつたのしそうにげてくる。


「どちらかと言えば、島津しまづの方であってしいものだ。あそこには、ぜひとも部下ぶかくわえたいわか武者むしゃがいるからな」


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