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ぽつんと家康  作者:
10/80

葵(あおい)

 いくつかの茶碗ちゃわん一斉いっせいれた。


 衝撃しょうげきらせに、思わず茶碗ちゃわんを落としてしまった者が多数。


「それは本当か?」


 徳川とくがわ家康いえやす側近そっきん本多ほんだ忠勝ただかつく。


 ここはせきはらに近いしろの中だ。


 明日の戦いを前に、東海道とうかいどうすすんできた東軍のおも武将ぶしょうたちが、このしろあつまってきている。


 長旅ながたびをしてきた者がほとんどだ。


 つかれをいやす者もいれば、明日にけてのいくさ談義だんぎをする者もいる。


 本多ほんだ忠勝ただかつたちは後者こうしゃだった。


 東軍の総大将そうだいしょう徳川とくがわ家康いえやす指示しじでは、「せきはらに現地集合」となっている。


 とはいえ、こうして合流ごうりゅうしたのだ。このあとは一緒いっしょに行動しようと、駿河しずおかのおちゃあじわいながら、せきはら地図ちずひろげていた。


 そこに突然とつぜん忍者にんじゃたちの棟梁とうりょう服部はっとり半蔵はんぞうがやって来たのだ。


 そして、げてきたのが、「主君しゅくん捕縛ほばく」である。


「は?」


 本多ほんだ忠勝ただかつはじめ、その場にいた者たちは、最初きょとんとした。


 戦いは明日のはずだ。まだせきはらいてもいない。


 なのに、殿との捕縛ほばくされた?


 面白おもしろ冗談じょうだんを言うようになったな、と笑い飛ばしたいところだが、よりにもよって、相手は服部はっとり半蔵はんぞうだ。


 真面目まじめな男で、これまで冗談じょうだんを言ったのをいたことがない。しかも、その表情は真剣しんけんだ。


 ひょっとしたら、本当かもしれない。


 そう思った途端とたんことの重大さに気づき、武将ぶしょうたちの手から茶碗ちゃわんがすべり落ちたのである。


半蔵はんぞう、くわしくかせろ」


 本多ほんだ忠勝ただかつの顔も真剣しんけんになった。


 それで真偽しんぎ判断はんだんする。主君しゅくん捕縛ほばく。意味不明の状況じょうきょうだ。


 服部はっとり半蔵はんぞう早口はやくち説明せつめいする。


 先ほど、部下ぶかから報告ほうこくがあったという。


 何でも、殿とのが一人でせきはら出陣しゅつじん。そこを西軍てき捕縛ほばくされたとか。


 半蔵はんぞう自身じしん誤報ごほううたがったが、同様どうよう報告ほうこくがさらに二件にけん


 もしやと思い、殿との所在しょざいいそいで確認かくにんしたところ・・・・・・。


「かなり前に、このしろを出ていったそうだ。それをもんの近くで目撃もくげきした者たちがいる」


 しろ周辺しゅうへんで本日、数人の武将ぶしょうたちがへい調練ちょうれんはげんでいた。その視察しさつ激励げきれいのために、しろを出ていくのだと思ったらしい。


 だが、実際じっさいにはそうではなく、殿とのは一人でせきはらかったようだ。


「やはり誤報ごほうではないのか? もしくは、てきながしたにせ情報じょうほうとか」


 東軍とうぐん武将ぶしょうの一人が言う。まだしんじられないのも、無理むりもない。これが西軍てきによる攪乱かくらんさくというのは、十分じゅうぶんにありる話だ。


「だから、部下ぶかたちにいそいで確認かくにんさせている」


 服部はっとり半蔵はんぞうが答えた。


「しかし、どうも本当のようだ。今のところ、否定ひていする材料ざいりょうの方が少ない」


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