表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/68

055話ヨシ! 逆襲のクマぁ


秋も深まり、風の涼しい河原。

紅葉する山並みが、小川のせせらぎに映っている。


そこでは、水面を波立て、小動物と戯れる子ども。


動画サイトに投稿したら、10万再生くらいはカタそうなシチュエーション。



だというのに、肝心の幼児本人はちっとも楽しんでいない。



「いやぁぁぁ、しぬぅうううっ」



涙まみれの、とっても酷い表情。


俺ことアット=エセフドラは、わがまま炸裂しちゃってるマッシュ(お子ちゃま)へ、声援を飛ばす。



「おっし、行けマッシュ!

 そこだ、まずは足をすくってぶっ倒せ!

 あとは、1年前に俺がやった方法を思い出せば、いけるいけるっ」


「ムリだぁああっ

 何言ってんのぉ、アァァ~ットォォォ~~!」



マッシュの絶望顔に、鼻水が炸裂した。

この世の終わりみたいな顔をしている。


全く、大げさな、


俺は、『フーやれやれ』 と肩をすくめながらも、拳を上げて応援を続ける。

気分としては、『公園で鉄棒の逆上がりを指導している、休日のお父さん』 だ。



「ビビるなビビるな、イケるって、やれるって!」


「くわれるっ

 くわれるぅぅっ」


「あー、逃げるなってっ

 ソイツ足速いんだから、背中向けるなってっ」


「にげるわ、アホー!

 こんなのに勝てるか、バカー」



トサカ頭の男児は、涙目で振り返り、毛むくじゃらを指差す。

場外ファイトの相手は、小ぶりなクマさんである。

親離れしたかどうかくらいのヤツを、さっき俺が森で厳選して(さら)ってきたばかり。


赤いマスクが、まあ可愛い(ぷりちー)

赤ちゃんのよだれ掛けみたい!


そんなユル萌えな小動物(マスコット)が、ガア!って(さけ)んだくらいで涙目とか、マッシュまじでザコ(ププッ)。


前世ニッポンの英雄(ヒーロー)、金太郎さんなら秒でK.O.(ノックアウト)してんぜ?



「大丈夫、大丈夫。

 お前も一年歯を食いしばって鍛えてきたんだから、リベンジいけるってっ

 ── よし、両者向かい合って、ファイトっ」



去年、マッシュを追いかけてたのは、立ち上がって160cmくらい。

今日のプリティガールは、立ち上げって130cmくらいだ。


身長的に 『成人女性なみ』 から 『中学生1年くらい』 までランクダウンさせているのだから、安全安心だ。


余裕ヨユー。



「 『ファイトぉ』 じゃねえ!

 ふざけるな、アットォ!!」



そんなこんなをやっていると、森の茂みがガサガサと派手に揺れる。

転がり落ちる落石の勢いで着水したのは、軽自動車くらいの毛むくじゃらだ。

どうやら、子グマの母のようで、怒り狂った赤マスクの大クマが突進してくる。



「いやぁぁぁぁ、増えたぁぁぁっ」


「ハハハ、マッシュったら。

 悲鳴が女の子みたいだぞ☆」


「笑ってる場合かぁああ!」



叫ぶマッシュの顔色は、青ざめを通り超して、白くなってる。



(ハァ……仕方ないなぁ(しゃーねーなぁ)……)


俺は、右籠手の下に高密度オーラを注入し、【超強化モード】を発動。

人間の頭くらいの岩を、隕石みたいに投げつける。



「── フンッ……!」



必ず殺す技・改。

天も驚く、石の剛速球・破だ。



(あ、俺の右手がうなる、とかの口上忘れてた……)



まあいいや。

どうせ、この攻撃だと利かない訳だし。



── グルゥアアァァァ!


母グマは、うなり声で、コートを展開。

毎度のごとく、石弾は赤黒い煙幕に絡め取られてしまう。



(── ここまでが、手順1……)



俺は、魔物の懐へ飛び込む。


しかし母クマ、立った時の背丈が半端ない(っぱねえ)

前世ニッポンの電柱くらいありそう。

少なくとも、2階建ての家くらいの背丈があるぜ。



── ガアァァ!



そんな、2階の屋根から落ちてくるような、雪崩式ベアクロー。

だが、魔物の攻撃は、自分で撒いた威力減衰の煙幕にジャマされる。


俺は、悠々としゃがみ走りで避けて、魔物の足下で【旋風】を発動した。

オーラ煙幕を利用した渦巻きが、俺の回転攻撃を超加速。

同時に、魔物のオーラ煙幕の一部を吹き飛ばす。


俺の両手で構えた岩が、巨大ハンマーの代わりとなり、魔物の膝を粉砕。


ゴキンという打撃音と、グシャンという破壊音がほぼ同時に響く。



(── ここまでが、手順2……)



── グアァァ……っ


と、母クマは、バランスを崩して横転。

ジタバタと川の水面を泳ぐようにもがく。



「さて、最後はこれが利くか、だな」



俺は、軽自動車くらいの四つん這い魔物に飛び乗り、背中にまたがる。


ポケットから河原で拾った三角の石破片を取り出し、倒れた魔物の首筋に当てる。

さらに、それを抑え付けるように、両手を当てた。


まだ誰にも見せていない新技。

初お披露目だ!



「名付けて、【秘鎚(ひづち)】!」



一瞬、俺の両腕を、オーラが螺旋に走り抜けた。


ドオォォン! と、金属成形のプレス機のような、すさまじい音が響く。


ブワッと返り血が飛び散った。

そして、母クマはガクガクと震えて動きを止める。



「ほら、カンタン、カンタン?」


「ムリだぁぁぁっ」



マッシュは、どうしても納得してくれなかった。





▲ ▽ ▲ ▽




(……うーん。

 いきなりクマはきっつかったのか……)



帰り道に、半泣きでグチグチ言い続けるマッシュをなだめながら、俺も反省する。



そういえば、俺も

── 飛猿魔

── ロングネック

── クマ

と順番に討伐したからなあ。



(いや、クマよりロングネックがレベルが上かな?)



先に、ちっこいのを倒させて、自信をつけさせた方がいいかな。


モンハンでも、最初は象とか鹿みたいな、草食動物みたいなの狩ってたからな。

じょ~ずに()れました~!



うん、基本は大事。

手順を踏むのも大事。


ちょっと訓練メニュー考え直すか。



なお、夕暮れ前まで粘ってもマッシュがダメそうだったので、幼獣の方も俺がブチ殺した。

なーむー。

(更新予告)

次の更新までちょっと空きます。

来週中くらいに更新再開の予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ