052話ヨシ! みんな大好きLvあげ
(確かに、6歳児に延々と基礎訓練の反復は、苦痛かもな)
マッシュに言われて、俺も考えを改めた。
思い出してみれば、俺だってそうだった。
オーラ修行の初期は、あまりの進展のなさに、心が折れかけた。
何度か、全てを投げ出して、ふて寝をしたくなったくらいだ。
だから俺も色々と、あたまを捻る。
『自分に出来ない事を他人にヤレ』と指示する愚劣にはなりたくない。
『自分が出来たからみんなもヤレ』と強要する高慢にもなりたくない。
(前世で、そんなヤツらが結構いたなぁ……)
ちょっとだけ、怒鳴るだけのブラック上司を思い出した。
だから、そんな連中を反面教師にする。
(そもそも、 『限界までガンバる』とか一発かぎりなんだよ……)
歯を食いしばれば120%の能力が出せるなら、誰だって苦労しない。
毎回オリンピックで世界新記録が更新されて、人間みんな超人になってる。
競馬だってラストスパートじゃなきゃ、鞭で叩かないしね。
限界ギリギリを振り絞れるのだって、最後の一瞬だけなんだ。
── それはとにかく。
まずは、このトレーニング方法を見直さないといけない。
誰だって、地味で変化のないのは苦痛だ。
わかりやすい変化や、成長の手応えがないと、すぐにダレてしまう。
好奇心旺盛で飽きっぽい幼児期なら、なおの事。
そんな訳で、無い頭を捻って絞り出したのが、これ。
── オーラ修行の 『Lv制度』 だ!
「つまり、Lv上げして新スキルGET方式!」
Lv上げが嫌いな子はいません。
みんな嫌いだったら、メ●ルスライムがあんなに乱獲されてない訳で。
なお、模倣元はRPGスマホゲームだ。
ガチャで出たキャラが、Lv上げたり、限界突破したりすると、新しい技能習得するアレ。
個人的に 『能力値が上がるだけ』 よりも、『新しい技能覚えた!』 の方がよりテンションが上がる。
行動の選択肢が増えると、強くなった実感がわく。
あと、せっかくなので、ちょっと凝ったデザインのカードも作った。
ギルドカードならぬ、修行カードだ。
形は、小学生のラジオ体操出席カード。
内容は、ほぼスゴロクだ。
マス目に、Lv1~10と番号が振ってあり、横に修行メニューが書いてある。
修行メニューが出来るようになれば、Lvアップ。
マス目に『OK』スタンプが押されて、次のマス目へ。
5マス達成で、新しい技を習得。
計10マス達成で、昇格試験。
昇格試験を合格すると、限界突破 ── つまりLv11~20のカードをゲット。
クリアしたマス目や枚数を見返すことで、自分の成長が実感できるという親切設計。
さらに!
『オーラ属性』 とか 『特技情報』 とか 『限界突破回数』 等々……。
無駄な情報が満載!?
── おわかりいただけるだろうか?
携帯電話の頃の、カードゲーム系スマホゲームみたいなデザインなのである。
この無駄なハッタリ感というか、中二病くささというか、それが幼児達には大好評。
しかも、Lvという解りやすい指標が出来たお陰で、お互いの競争意識にも火が点いたらしい。
── 『お友達よりひと足先にレベル上げして、自慢しちゃおう!』 みたいな感じだ。
お陰で、ちょっと白熱しすぎて
「何度も言うけど、オーラ修行は1日1時間だけだからなっ」
と、何度も注意するハメに。
まさか異世界で、『ゲームやりすぎるな』 とか、前世の親みたいな事を言うハメになるとは。
▲ ▽ ▲ ▽
さて、ついでにオーラ修行Lvの内容も説明しよう。
オーラ修行Lv1は、【身体強化】の片手。
いつもやってた、紙ボールの指ピシピシだ。
オーラ修行Lv2は、【瞬瞳】にしてみた。
自分のオーラをハッキリと見るのは大事だし、早めに覚えさせようという考えだ。
そこで、意外な事が解った。
みんな、俺レベルの【瞬瞳】が使えないのだ。
視覚強化4機能のうち、2機能だけの劣化版になってしまう。
何だろうと考えた結果、出た答えは、これ。
── 多分、 『眼球』 と 『視神経』 の違い。
俺は、目だけじゃなくて、その奥の視神経まで強化しているという仮説だ。
試しに、一番成長の早いマッシュに、目の奥にまで意識したオーラ強化をやらせてみた。
予想通り、オーラ観測とスロー再生機能が可能な、4機能の完全版になった。
「うおおおっ!
何っ アットっ これ#Au1S%フ*ォZb&R……ァガッ?!」
マッシュが驚いて何か叫ぶ。
が、途中から変になって、舌を噛んだ。
どうも意識が加速した状態でしゃべると、口の筋肉がおいつかなくて、舌が回らなくなるっぽい。
……やった事なかったから、知らんかった。
俺も気をつけよう。
ともかく、俺の最強能力は、他人でも再現可能と解った。
(ちぇ~~、マジかよ、クソぉ……っ
おい転生神、俺の転生特典とかどうなってんだよ!
特別で無敵な能力とかないんですかねえっ!?)
── 漢一匹、天を仰いで嘆く。
── だが、返答はない。
それはさておき。
簡易版【瞬瞳】を、便宜上【瞬瞳:一重】と命名。
そして、俺レベルの方を【瞬瞳:二重】と技名変更した。
(まあでも、俺からすれば 『スロー再生抜きの【瞬瞳】』とかオーラのムダづかい。
常に【瞬瞳:二重】でいいんだけどね……)
その本番前の練習的な扱いというか。
ああ、そうだ、『派生スキル習得するための前提スキル』 みたいな感じだな。
(しかし、やはっぱり神さまとか、いないのか……?
ひとを魔物いっぱいな世界へ転生させておいて、神のお導きもないとか……。
そりゃあ、いくらなんでもハードモードじゃなですかねぇ……?)
なんかマスコット的な、妖精みたいなガイドさんも居ないし。
どうも最近、『俺は世界を救う勇者とは違うっぽい』 という疑いが出てきたぞ、これ。