001話ヨシ! オーラのある世界
── この世界には、オーラがある ──
普通、『オーラがある』とか言うと 『雰囲気がある』 『なんかスゴそう』 みたいな意味合いだ。
だが、俺が言っている 『オーラ』 は 『神秘的エネルギー』という意味の方 ──
── スピリチュアルでオカルトな方だ。
つまり、『この世界には、目に見えない超常のエネルギーが存在する』 という事だ。
俺が生まれ変わった先は、そんなミラクルなパワーのある世界。
(コレって、最高じゃない!?)
── カ●ハメ波ぁ!
── 界●拳、10倍だぁ!
少年の日の憧れが、再現できそうな世界なのだ!
もしかしたら、空を飛び回り、超スピード格闘バトルとかもできるのかもしれない!?
俺の次の人生の舞台は、そんな異世界だった。
(最高な世界じゃないっ?)
幼児な俺は、キラキラなお目々で我が家の周りを見渡す。
……うん。
なんか、文化的には、どっちかというと西洋っぽい気もするが。
レンガの建物とかいっぱい有るし。
なんか硬いパンとかチーズみたい物をよく食べてるし。
だけどきっと、能力的には、きっと東洋風!(願望)
(きっと、神さま的な龍が、およそ7個のボールで召喚されたりする世界なんだ!)
すかさず脳内の竜が、『お前の夢を三つかなえよう!』とか言ってくる!(妄想)
(うわあ、最高すぎるぅ!
── 俺、ワクワクっすぞ!)
俺は、歓喜のあまり、部屋中を転げ回る。
ちなみに、俺がそういう事実に気づいたのは、物心ついてすぐ。
3歳になったばかり頃。
ドタバタと何か慌ただしいと、裏庭を覗き込んだ。
すると、パパらしきヒゲもじゃ親父が、一瞬で戦闘スーツみたいな黒い鎧姿に変身!?
人間離れした超スピードで走り去っていった!!
その後、兄ちゃんに、オーラというステキ超パワーの存在を教えてもらった。
── 超ビックリした!
── 超ワクワクした!
思わず、鼻血まで出た!
我ながら興奮しすぎである。
幼い脳みそがエキサイトしすぎて目がギンギンになり、夜の寝付きが悪くなったくらいだ。
「どうしてウチの坊やは、夜になると元気になるの?
昼はあんなに眠そうなのに……」
美人なママが、そんな風にすごく心配した。
(夜型人間ですまんな。
前世からの悪習なんですよ、ママン)
なお、異世界転生してもダメ人間は治らないらしい。
▲ ▽ ▲ ▽
生まれ変わった今世(というのか?)の俺は、小さい頃から好奇心旺盛。
しゃべる内容は、大人びていて、おませ。
知能の発育は、周りの子供以上。
周囲には、早熟な子供と思われている。
(まあ、前世は30半ばくらいまで生きたし……
いまさら、純真無垢な子供のフリはちょっとムリかな)
ご近所さんや親戚の間では、
『これで読み書きがスラスラできたら、神童と呼ばれるのにねぇ……』
という評価。
天才にはなれない、残念な早熟幼児という扱いだ。
(ムチャ言わんでくれ。
こっちは異世界の文字と言葉を覚えるだけでも、結構精一杯なんですが?)
何せ、中身おっさんだ。
前世では、健康診断の結果に一喜一憂する、中年だったのだ。
純粋無垢な普通の幼児より、脳みそが硬くて物覚えが悪いのかもしれない。
あるいは、前世の記憶がある代わりに、そういうデメリットとが有る可能性が……。
それも 『いかにも』 な感じで、ありえそうだ。
なお、この世界の文明程度は、近代くらい。
産業革命後というか、簡単な工場機械くらいはあるっぽい。
(まずいな……)
かけ算割り算とか小中学校レベルの知識では、マウントは取れないかもしれない。
工学とか物理とか、どっちかというと苦手分野だったし。
電子機器の知識とかもないし。
正直、ウ●コ使って農業革命くらいしか、思いつかない。
なかなか知能SUGEEE!は難しい状況のようです。
(いいもん、俺にはオーラがあるし!
俺くらいの前世の知識じゃあ、内政無双なんてムリっぽいしっ)
こんな事なら、何か専門知識でも仕込んでおけば良かった、とも思わなく無いが。
今さら言っても仕方ない。
── おっと、自己紹介が遅れてしまった。
申し訳ない。
俺、アット。
アット=エセフドラ。
今世での、俺の名前だ。
『アット』みたいに、名前に「ッ」が入るのは、男の子のポピュラーだ。
ちなみに女の子の名前だと、『カーチ』(妹の名前)みたいに「ー」が入るのが一般的らしい。
(前世の名前は……なんだっけ?
アリトだか、アラタだか……たしかそんなカンジ?)
なんの因果か、今の名前に似たような感じだった……
── と、思う。
何か、あやふやな話ですまない。
どうも、母親の腹から生まれた時に、前世の記憶の半分くらいを置いてきたらしい。
(あとは、ヘーセイ生まれで、レーワ時代のニッポン国に住んでいたはず。
仕事は、いてもいなくてもいい、社会の歯車みたいなものだったな……)
── いや、違う。
ああ、そうだ、確か。
やたらと不景気でろくな就職先がなくて、クルマの営業マンか何かしていたはずだ。
コミュ障のくせに交渉力のいる仕事をしていたせいで、1年をまたずにクビ。
それからはトウキョウから田舎に帰郷。
親戚のオジさんの紹介で町工場に就職。
(なんか、フォークリフト? ──
荷物を上げたり下げたりする機械を、死ぬ前に運転していた気がするな……)
いや、違う。
あれは、そうだ。
そう、フォークリフトの上に、乗ったのか。
なんか、木の枠を山積みにした上に乗って、高い所へ持ち上げられたんだ。
なんだか、班長だかセンパイだか、やたら威張りちらしたヤツに「電球交換しろ」とか言われた気がする。
………
……
…
なんだろう、ちょっと頭痛がしてきた。
気にしないでくれ。
たまにあるんだ。
だいたい前世の事を思い出した時なんかに。
さて、そんなしょうもない話はさておき。
ワクワクな話の方を続けよう。
今から、世界で一等なキセキで、アドベンチャーな毎日が幕をあけるんだ!
(更新予告)
では、また2時間後に