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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
序章   Believe in one step
8/70

第8話 異教徒組織 ハイトス


【冒険者ギルド ドトル】


あれからというものナザとフェーチスにせがまれてしまい、一緒にドトル内へと入ることにした。

半ば強引に引っ張られて。



念には念をでフードを深く被っておき。

目立たないように心掛ける。



入った時、何かしらの作戦会議か冒険者達が集まっていた。

一番驚いたのはその中心人物は、騎士団長のサナミさんだった。



サナミ

「あっ・・・フフフッ・・・」



目が合った途端に笑われた。

そうゆうことか、ナザとフェーチスを向かわせたのはあの人か。



サナミ

「それでは、冒険者の方々お待たせしました」



透き通る声で話す。

冒険者達も先ほどまではガヤガヤと雑談をしていたのだが、団長の掛声で空気を一瞬で変えた。



サナミ

「この度の大襲撃の首謀者が判明致しました、それは・・・」



一枚の紙を張り出した。



サナミ

「異教徒組織ハイトス 幹部の一人 シェイン・トルテン です」



話しを聞いていた冒険者達がざわついた。

中には知っていたかのように振舞う者もいる。



~ 異教徒組織 ハイトス ~


その名の通り、六神とは違う神を崇め立て祭っている組織だ。

表ではただの宗教活動をしている組織だが、裏ではどす黒い噂が多く存在する。

そのことを知らない人は少ないと言われているが。


それでもなお組織が存続しているのはその信者達の狂気なのだろうか。

教祖と呼ばれるトップがかなりヤバくそれに付いていく狂信者が後を絶たないらしい。



そして今回起こったこの事件ではその幹部が首謀者だと騎士団は突き止めたようだ。



首謀者のシェインという男は元帝国兵士術技霊師、と帝国に仕える人間であった。

同期の兵士によるとある日急に人が変わったかのように術技の研究に没頭したいう。


そして彼は、帝国が捕まえた真人の捕虜に手を出し、術技の人体実験をしようとした所を捉えられた。


未遂で終わったが、あまりの彼の不気味さからなのか当時は死刑にならず帝国の永久追放になった。


あとからその裁判にはハイトスの関係者がいることが分かり帝国はシェインに懸賞金をかけて国民に注意を呼びかけた。


それからというもの、帝国兵士内で何度も目撃証言が数多く出てきていたのにも関わらず捕獲することが敵わず。

ついにはシェインに捕まり人体実験をされ一命は取り留めたのに心が壊れ後日自殺する者もいたという。



それが、ベルデラを襲った狂った首謀者だ。






カズキ

(テロリスト・・・とは少し違うか)


何かが見えたとか、お告げがとか、わけのわからない理由なのだろう。

不謹慎だが、変に偽善的な理由よりは話しが早くで助かるがな。



ナザ

「そういえば、最近ハイトスの活動が活性化してるって聞いたことある」


フェーチス

「うん、私もこの間勧誘受けたよ」



二人の様子からもベルデラにもハイトスの信者は多くいるのがわかる。

今も何処かで俺達の事を見ているのか。



サナミ

「以上から・・・我々第5近衛騎士団から情報は以上です、引き続き調査を継続、ハイトスの住み家を調べ上げる方針です」



団長の言葉を冒険者はずっと真面目に聞いている。

恐らくこれはサナミ団長にしかできないのだろう。



煌煌ノ騎士。



彼女がそう呼ばれているのは騎士としての力が強いだけではない。

今話しを私語もせずに聞き入っている冒険者達を見ればわかる。



サナミ

「こちらからの情報提供は惜しむつもりはありません、冒険者のみなさんどうかこれからもお力をお貸しください」



団長の話が終わった瞬間、まるで溜め込んだように歓声を上げた。



「よっしゃー!!やってやりますか!」


「ハイトスのやろー見てろよ!!」


「街の仇とらせてもらう!!」


「きゃあああ!!ヒトミヤ様かっこいい!!!」



歓声が鳴り止まない。

この数日、冒険者達も疲れを隠すのも大変なはずなのにそれでもなお士気を落とさないでいられたのは煌煌ノ騎士のおかげなのか。



フェーチス

「凄いよねサナミさん・・・」


ナザ

「それにめちゃくちゃツエーんだもん、おまけにめっちゃ美人」


フェーチス

「何それ!!? それは今関係ないでしょ!」


ナザ

「関係大ありだっつうのバーーカ!!」


カズキ

「・・・・・・ぷっ!」



ついこのやり取りを見て笑い吹いてしまった。

それを見たのかフェーチスとナザは喧嘩をやめていた。


俺のことを物珍しそうに見る二人を見て余計に笑いが込み上げてきた。



カズキ

「クククッ・・・フフフフフッ・・・アハハハハハハハハッ」



冒険者達がサナミ団長のおかげで士気を上げる中、俺はこいつらのやり取りに笑いを止められないでいた。

まさかこんなにも笑うとは自分でも思わないでいた。



ナザ

「何で笑っ・・・フフフ・・・ハハハハハハハハハハハハハッ」


フェーチス

「ちょっと二人と・・・フフフ・・・アハハハハハハハ」



俺に釣られてなのか二人も笑いだした。

終わりが見えない笑いが続いた。


そうだ・・・。


眠っていた俺なんかと比べたら凄く大変な思いをしてきたんだこの二人は。

俺のことを心配しながらも街の人達を守り、自分達に出来ることを精一杯やりながら。


団長から俺の話を聞いても心配が消えるわけではなかったはずだ。

俺本人を見ても心配はきっと完全には消えなかったのだろう。



でも、安心はできた。

3人で過ごした時間なんか本当にたかが知れていると思う。

だけど、その一つ一つが脳裏にこびり付き今こうして3人で立ってしゃべって喧嘩して笑っているのが、何よりも安心感を与えてくれる。



笑いながらも考えていた。

俺達に足りないもの。



カズキ

(ミツバ・・・)



きっとミツバも寝ている夢の中で見ているのか?

いや絶対に見ている、見ていなくても感じてくれているはずだ、一緒に笑ってくれているはずだ。



いつでも帰ってこい・・・。







サナミ

「・・・いいな」


大笑いしている3人を見る。

純粋な羨ましさから言葉が出た。


少し違っていればあの輪の中に自分もいたのかも知れない。

そんな事をふと考える。










--------------------------------------------------------------------


【冒険者ギルド ドトル 出入り口前】



そしてサナミ団長は、冒険者から情報聴取という名の握手会を終え外に出来てきた。


俺とナザ達は先に外に出ていた。

ナザからは飯を食っていないことを悟られ干し肉をあるだけ渡された。


ありがたく頂戴し、今食えない分は服の中に隠しておいた。

意外にこの味が癖になってきているのかもしれん。



サナミ

「おまたせー! あ、それ美味しそう!」



俺が口で頬張っている干し肉を指差す。

腹減ってるのか?



フェーチス

「あの・・・よかったこれどうぞ」



フェーチスが恐る恐る干し肉を出す。

俺の服のポケットに入りきらなかった物だ。



サナミ

「わぁあ!! ありがとうフェーチスちゃん!!」



あむっと早速頬張る。

満足そうな顔で味わっているように見える。


確かに彼女のキャラ的に言えば、B級以下のグルメの方が大好きだと言われても不思議ではない。



サナミ

「あーそうだそうだ、これからあとは私達の拠点に戻るだけだけど、カズキさん何かある?」



俺に振るのか。

確かに確認してみたいところはあるにはある。


もしかしたらハイトスの住み家がわかるかも知れない。

お願いして見るのもありだな。



カズキ

「それじゃあ1カ所だけお願いしていいですか?」


サナミ

「おっへー!! あむあむ・・・」



行儀の悪いことで。



フェーチス

「あの・・・サナミ様」


サナミ

「ごくりっ・・・どうかしました?」



空気を呼んでか飲み込んだ。

大胆だな。



フェーチス

「カズキさん・・・いえカズキをどうかよろしくお願い致します!」


ナザ

「っ! 俺からも頼んます!!」



二人がサナミに頭を下げる。

どういう意味のお願いなのかはわからない。


だが二人が色々な気持ちを持ってお願いしているのはわかった。

本当にこいつらは・・・。



サナミ

「頭を上げてください」



二人の顔を上げさせ、フェーチスの下へと行き両手を取る。

真剣な目でフェーチスを見る。



サナミ

「任されました! あと、様は嫌って言ったでしょ?」


フェーチス

「あ、ありがとうございます!! サナミさん」



どうして女の子達ってあんなにすぐボティタッチできるんだか。

これも異世界共通なのか。



お互い少し見つめ合うと離れた。



ナザ

「何お前顔赤くしてんの・・・」


フェーチス

「う!うるさい馬鹿!!」



これは初めてフェーチスが負けたか?

いや喧嘩にもなっていないか。



サナミ

「フフフフッ・・・」



その光景を見て笑う。

まさかフェーチス以上のタラシ、ということか。



サナミ

「それじゃあーいってきまーす」



団長は手を振りながら二人に別れを告げ歩く。

ナザもフェーチスも満足そうにしていた。


団長を俺の保護者か何かだと思っているのか。



サナミ

「いいお友達だね」



笑顔で言う。

ただ声には少し寂しさが感じられた。


なるほど、帝国騎士、近衛兵団、団長、煌煌ノ騎士。

いろんな肩書を持っていたとしても、彼女は一人の女の子。



そうゆうことなのか・・・。





カズキ

「・・・・・・食べます?」



ナザからもらった干し肉を差し出す。

さっきはフェーチスの話しの為に飲み込んでしまったみたいだから、あまり味わえてないだろう。



サナミ

「・・・いいの?」



驚いた顔を見えゆっくりとした手取りで受け取った。

そしてそれを口に加えて味わう。



サナミ

「あふぃはほう!!」



わざとやっているのか。

けど、笑顔に戻った、この人には後ろ向きな姿は似合わないようだ。



カズキ

「・・・口止め料ですので干し肉の」


サナミ

「ふえぇ!? ずるいっ!!」



こうして俺達は冒険者ギルド ドトルを後にしたのだった。






---------------------------------------------------------------------



【第2都市ベルデラ 正門前】



サナミ団長にお願いした場所に到着した。

俺は団長に事情を説明し、単独での行動を容認してもらった。


どうしても団長が一緒だと今から会う者が警戒するかも知れない為だ。

マントも預かってもらい、手枷を隠せる術技をかけてもらった。


手は自由に動けないがおかげで手枷は見えない。

自分でやろうとしていたのだが、この枷には捉えてる者からの術技を受け付けない術印が施されているようだ。


一時的でも外せたらと団長に謝られたが、こればかりは仕方がない。




そして一度大きく息を吸い向かった。





カズキ

「こんばんわー」



気作に声をかけた。

ここに目的の人がいることは事前に知っていた。



門番

「ん・・・? おぉー君は確かフェーチスちゃんの連れじゃないか、無事で何よりだ」



フェーチスの事も心配していたようなので無事を知らせたら凄く喜んでいた。



カズキ

「大変ですよね? こんな時でもここにいるのなんて」



門番

「いやいや、こんな時だからこそ、自分に出来ることをしないとね」



立派な心がけな。

見習うべき精神だ。



カズキ

「でもここ、一人で大丈夫ですか? 街の中にもちょくちょく盗賊がいるって噂ですし、人手不足もわかりますが」


門番

「・・・? 何が言いたいんだい?」



単純な事だ。



カズキ

「いえね、誰かが通してるんじゃないかなーって思いまして」


門番

「・・・ほう?」



顔色が一気に変わった。

さっきまでの呆けた顔からここまで変わるのか。



門番

「私の聞き間違いなら失礼だが、君が言う誰かがとは私のことを言っているのかい?」



手に持っている槍に力が入る。

疑われたらそう反応するのも普通だ。



カズキ

「いえ・・・他の門もありますし後ほど他の門番さんの話も聞こうと思ってるんで、そう警戒しないでください」



門番を治める。

だが、嘘だ、この後他の門へと向かうつもりはない。



カズキ

「ただですね、さっき一人で歩いていた時に盗賊4人に絡まれましてね、何とか騎士団の人達に助けてもらいましたが」



門番は俺の言葉を真剣に聞いている。

まるで何かを探っているように。



カズキ

「その盗賊が言っていたんですよ、この正門から堂々と入ったってね」



門番

「ほう・・・」



表情一つ変えない様子だ。

まだまだ余裕があるように見える。



門番

「なるほど・・・もしかしたら私が目を離している隙に透明術技でも使われたのかもしれない、すまなかった、今後はs」

カズキ

「違う、俺が言いたいこと、盗賊なんてぶっちゃけどうでもいいんだ」



そう、盗賊の事などは切っ掛けに過ぎなかった。

俺はドトルである人に話しを聞いていた。


ナザとフェーチスと3人で泊まった宿の店主だ。

彼は元帝国兵士、そして彼からこの門番の事を聞いた。



『あいつも元帝国兵士さ、私と違って追い出された身だがね』



それから俺は門番と話した会話の内容を思い出していた。

そして違和感を感じることができて確信へと変わった。



あとは、どう崩すかだ。



門番

「どうでもいい? ならなんだとうのだ?」


カズキ

「察しの悪い奴だな・・・大襲撃のさ中ハイトスの連中を招き入れたんだろ?」


門番

「なんだと?」


カズキ

「考えればわかるだろ?あんな大規模な事件、いくら召喚術技とは言っても少人数では不可能、だが元々内部で大人数を潜伏させるのは冒険者達に怪しまれる」



門番は俺の言葉を真剣に聞いているようだ。

だが手に持った槍がいつこちらに向けて飛んでくるかわからない、相手を挑発しながらしゃべり細心の注意をする。



カズキ

「ならば答えは単純・・・」


門番

「混乱の中でハイトスを中へと誘導したと」


カズキ

「わかってるじゃないか」



門番の表情は依然と変わらない。

だがまだこちらの手札はある。



門番

「確かに君の言う通りだろう、だが君は知らないのだろうな、あの襲撃直後を。 あれは酷かったよ、外へと逃げ惑う人々があまり多かった、外は危険だという私の言葉など聞いてはくれなかったのだ」



わざとらしく頭を悩ませるようなポーズを。



門番

「そんな中ハイトスを見分けして、捕まえることなんて私には出来んよ、恐らく君にもね?」



男の言う通り。

そんな状況なら俺も無理だ、進入されても手が出せない。



本当にそんな状況だったらな・・・。



カズキ

「ふぅん!」



勢いよく地面を手枷で殴り付けた。

同時に術技が解け、俺の手に再び姿を現せた。


当然門番の男にも見えるようにしたのだ。



門番

「何の真似だ?」



カズキ

「あれ? これを見てもわからないか?」



手枷を持ち上げ良く見えるようにする。

誰が見たって手枷であることを。



門番

「まさか・・・お前・・・」



カズキ

「正門は大混雑? 俺は知らない? 知ってるよ全部、上で何回も見てたんだからな」



直接正門からハイトスが出入りした瞬間は見ていない。

だが、一回目のジャンプで真っ先に確認したのは正門だったのはハッキリと覚えている。



門番

「お前が噂の・・・手枷・・・!?」



カズキ

「街の人達は、あんたが思うほど、馬鹿じゃない、モンスターに狙われてるのにモンスターのいる外になんか行くわけないだろ」



一気に顔色が変わった。

人は嘘を見抜かれたら大抵はこうなる。



カズキ

「盗賊を入れたは失敗だったな、他の門番も調べないといけなかったが、奴らの存在が仇になったな」



門番

「お、同じ正門でも、私以外の人間が」



カズキ

「いないだろ? あんたが殺したんだから」



正門の門番は確かに他にも。

襲撃に巻き込まれ全員が死んだと聞いた、こいつを含めなければ。



門番

「言いがかりはよせ! 何を根拠に!」



挙動が変わった。

もうおしまいだ。


俺は門番が先ほどから何かを気にしていることに気が付いていた。

目線から察するに休憩所か。


正門から入ってすぐのところの小屋。

何かあるな。



門番

「お、おい!! 止まれ!!」



静止を効かずに足を進め小屋の中に入った。

そこには大量の金が散らばっていて、明らかにこの男の物ではない財布が複数落ちていた。



そしてそれらを手に門番の下へと戻る。



カズキ

「十分やってるな、あんた。金に目は眩んだが殺しはしてない、とでも言うつもりだろうが、これは先にドトルのエイジルトにでも渡してみるよ」



門番

「何・・・エイジルト・・・だと」



更に顔色が変わった。

どうやらエイジルトと何か関わりがあるのか?


だがこの脅しは相当効いたみたいだ。

みるみると体が震えだし、顔は歪みだしそして・・・。



今にも襲いかかってくる・・・様子。




門番

「うおぉおおおお!!!!」




ガキンッ!!!




振り被った槍を手枷で受け止める。

こうなれば俺の物だ。




門番

「貴様を殺せば!貴様を殺せば問題はない!」



恐らく最初に言った、一人で歩いていたら、というのに騙されているようだ。

だが本当は煌煌ノ騎士が後方でスタンバイしている。



門番

「貴様のせいで台無しだ!!」


カズキ

「元々違和感はあったんだ、俺がフェーチスと街に入る時だ、あんた、何で滞在期間なんか聞いた? 変だよな? まるで今から何かが起こることを知ってるみたでさ」


門番

「黙れ!!」



ガキンッ!



門番

「すぐに殺してやる! ランススピード・アップ!」



術技か。

恐らく槍の攻撃速度を上げたか。



門番

「おらぁあ!!」


カズキ

「・・・っ!」



連撃。

速くて反撃のタイミングを見定められない。


距離を取ろうにも敵は槍だ、比べてこちらは素手。

俺とのリーチ差は歴然。



門番

「逃げてばかりか!おらぁ!」



カズキ

「っ!! なら!!」


ストライクアップ。






ガキンッ!




タイミングを合わせ槍を弾いた。

隙が出来た、蹴り飛ばす!!




カズキ

「そらぁあ!!」



門番

「それがどうした!! アーマー・アップ!」



ゴォンッ!!!



カズキ

「くっ・・・」



甲冑の音を鳴らした程度で攻撃が通らない。

一度距離を離した。



門番

「は!! 手枷の英雄なんて呼ばれていたもんだから警戒してみてたが飛んだ見込み違いだぜ! 冒険者共が来たら面倒だ、次で終わらせてやるよ!!」



槍を構えなおした。

術技が来る。


俺も体勢を整える、この敵相手に持久戦は厳しい。

ならば一点集中、見極めるんだ。



門番

「術技!! ストライク・ランサー!!!」



早い踏み込みだ。


だが。


目で追えないわけじゃない!



カズキ

「術技・・・!」





術技と同時に俺の身体貫かれ。




門番

「ふはははは!! 私の勝t・・・ぐふぉえぇ!!!!」



カズキ

「残念だったな・・・フリューゲル」




門番の男は吐血で悶えている。

この瞬間を待っていた。



カズキ

「フィンガァー!!」



顔面を掴み、そして放り投げた。



悲鳴を上げながら地面を転がる。



門番

「な、何故・・・確かに・・・貫い・・・」



俺は奴の満身を狙った。

奴は是が非でも俺を殺さなくてはならないだから。



チェンジフェイク ライド インビジブルムーヴ



そしてウェポンキルで腹部を甲冑ごと膝蹴った。

仮説が当たってよかった。


アーマーアップが残っていたら恐らく俺の攻撃は通らなかっただろう。

俺の仮設はバフ関係のオンオフだ、単純な話し戦意を解いた瞬間バフも解かれるのではと考えた。


予想は的中した。

門番は俺のフェイクを殺せたと思い油断しアーマーアップを効果を消し俺のカウンターを見事に食らってくれたわけだ。



カズキ

「さて・・・ここからが本番だ、言え、奴らは今どこにいる」



丁度兜が飛んで行ってくれたおかげで髪を掴みやすい。

殺意を込めて睨み続け、もう一度聞く。




門番

「しし、知らn・・・」



バギィッ!!



顔面を地面に叩きつけた。



門番

「し、知ってるのは・・・彼らは決まって現れる時足元が濡れている!!」



決まりだ。



カズキ

「この近くに下水道があるのか?」



門番

「そ、そこにいるかは、わわからない。 だが下水口の出入り口は外の正門横にしかない! わ、私はただ金で雇われただけだ!頼む信じてくれ!!」



ここにきて命乞いだと・・・。



門番

「た、確かに私はハイトスに入っている!だが今回は違う! 私は反対したんだ!! 頼む!!」



もう言っている事もめちゃくちゃだな。

信者ではあるが街がこんなことになるのは嫌だと。


けど金はもらうから好きしろ、自分は何も見ていないだと?



カズキ

「不愉快極まりないな・・・」



今なお懇願し続ける男にたくさんの感情が湧き出る。



宿屋の店主の話しをふと思い出していた。

昔は、一緒に国の為だと活気していた。


だが一度、国を守る兵士の道を踏み外した。

そうなったらもうおしまいだ、1回が2回、3回が4回と踏み外した悪事は止まることを知らないで走り続ける。



まさに今目の前にいる男はその末路ということだろう。



『私は今も、心の片隅に、失った志しがあると信じているよ』



『そうかい・・・気をつけるんだよー』



カズキ

「・・・・・・」


髪を握る手の力を抜き、離した。


こいつのしたことは到底許されることではない。


だが、それを俺が今ここで裁いてはいけない。



手枷を見る。

そうそんな権利はない、だったらこの街に委ねればいいだけだ。

慎重に行こう、下手な感情に流されないで。



カズキ

「あんたを・・・教えてくれた人が言っていた。 あいつは本当に正義感のある優しい奴だった」



これは店主から聞いた話し。

色々教えてくれた中の一つだ。



カズキ

「敵を倒す兵士よりも、みんなの笑顔を守れる兵士になりたい。その言葉に嘘偽りはなかったと、教えてくれた」




門番

「・・・・・・・」



カズキ

「今も、心の片隅に、失った志しがあると信じている、ってな」



命乞いで泣きじゃくっていたせいか、涙が出ていないが泣いている。



俺も店主の話しを聞いた時は感動するら覚えた。

倒すよりも守る。


凄く素敵じゃないか、失うよりも築いた方が生産性がある。

築けなくても、築いてくれる人を守ればいい。



俺もそうだ・・・ミツバ・・・お前に守られてばかりだけど、お前を守れる為に俺は強くなる。

少しでもいい、お前楽しく笑顔でいられる時間があればいい。


そんな小さな願いでもいいんだ、強くなるっていうのは、きっとそれだけでも・・・・・・。




サナミ

「避けてっ!!!」




団長の叫び声で我に帰る。

そして後ろを振り返ると灼熱と燃える火の球が俺に目掛けて飛んできていた。



カズキ

「なっ・・・」



反応が遅れた。

避けることは出来ない!!




ガバァッ!!




俺と火球の間に誰かが割り込んだ。



門番

「ぐあぁあああああ!!!!」


カズキ

「なんで・・・」



俺を庇ったのか。

火球は男の全身を燃やし尽くした。


甲冑も鉄で出来ているなんてお構いなしに黒焦げにした。

そして男はまるで糸の切れた人形のように倒れた。



カズキ

「おい! なんで・・・おい!!」



すぐに駆け寄り声をかける。

仰向けにしたが、皮膚も焼け人間の顔の原型を保っていない。


まだ体中に熱があるのだろう。

身体を抱える手がやけどするほど熱い。


だがそんなことが気にならないほどの状況に混乱している。

さっきまで戦っていた人が俺を庇って・・・死んだ。



カズキ

「どうして・・・」



???

「それは簡単です、彼は信仰を捨ててしまったからでございます」



ゆっくりと顔を上げる。

火球が飛んできた方向へ。



カズキ

「貴様がやったのか・・・!」



???

「いいえ・・・これは彼自身の業、彼が招いた結果ということです」



カズキ

「ふざけたことを・・・」



業? 招いた結果?


そう言って簡単に人を殺していいのか、そうやって人は死んでいくのか?


ふざけてる・・・ふざけてる・・・不愉快だ!



サナミ

「シェイン・トルテン!!」



俺の目の前にサナミ団長が割って入る。

剣を抜き構える。




シェイン

「おやおや、これはサナミお嬢様、いや煌煌ノ騎士様と及びした方がいいですかな?」



サナミ

「でしたら、ナイクネス第5近衛騎士団 団長 ヒトミヤ・サナミが命じます。投降し、法の裁きを受けなさい」



シェイン

「法・・・? 裁き? フフフフフ・・・・」



サナミ

「抵抗はやめて・・・」



シェイン

「傑作!!! 真の裁きを知らず!!! 裁き!!!裁き!!!裁き!!!裁きいいぃいいいいい!!!!!」



サナミ

「・・・・・・」


シェイン

「法に縛られる哀れな乙女に!!! 私が真実を!!!裁きの意味えを!!!  お教えしましょう」



ピッと俺に指を差す。



シェイン

「彼・・・彼の彼の彼の彼の彼の彼の彼の彼の、彼の心ですよ」


カズキ

「俺・・・!?」



一体この狂信者は何を言っているんだ。

嫌な予感がする、まさかこの事件は。



シェイン

「おや、裁きの当事者もご理解していないと? それは非常に困りましたねーーー、心当たりありませんかね?」



サナミ

「裁き・・・カズキさんが一体どうしたっていうんですか」



やめろ・・・。

俺の妄想をしゃべるな。



シェイン

「わかんないみたいでしねー? 仕方ありません!!!! ご教示致し!!!ますーーー!!!」



カズキ

「しゃべるなぁああー!!!」


サナミ団長を退かし、シェインへと駆ける。

飛び蹴る。


シェインは避ける気がないのか、その場から動かない。

だが。



カズキ

「っ!! フェイク!」



シェイン

「でーは、改めてお教え致しましょう!!! それは遡ること数日前!! あるギルドの建物で奇妙な出来事が起きたのでした~~~」



カズキ

「・・・・・・」



聞きたくない。

それを聞いたら認めることになる。



俺が・・・この街を・・・。



シェイン

「まさに神!!! 神が降臨されたのです!!! 神が!!!裁きを決断されたのです!!!!」



サナミ

「まさか・・・カズキさんが冒険者になろうとした時の」


シェイン

「そおおおおおおぉおぉっぉおう!!!!!! まさに裁きの輝き!!! この偽りの世界を裁く力!!! 蒼く輝く光りぃぃいいいいい!!!」


サナミ

「蒼い・・・光り・・・」


シェイン

「この方はまさに神が与えし使徒!! 輝きを持つ存在!!!」



団長も全てを察したようだ。

俺がこいつの口を止めようとした理由。


それは・・・。



シェイン

「私達は聖戦の準備!!!序章!!! 授かりし使徒様の覚醒をお手伝いさせて頂いた次第!!!!!」



神を呼び起こす為の・・・。



サナミ

「あなた達・・・それだけの為に街を・・・」


シェイン

「それだけ?????? 何故!!!?? 使徒は今目の前に!!!力を示した!!!? 何故!!? 知っているのに!!? 何故!!?」



ただの実験だと・・・。



シェイン

「私はまぁあああだ!!偽りの魂!!偽りの身体から解放されていない!!! だから!!使徒様を解放!!!覚醒させて上げれない!!! お許し下さい。しかあぁあああああし!!!!」



方法を探る為だけの・・・。



シェイン

「煌煌ノ騎士様ぁあぁああああああ!!! あなたもご覧になられたはずぅうううううあ!!! 神がぁあああああ!このお方おをおおおををををおをををおを!!! 御助けになる瞬間おおおおぉあおおおあおおあおあおあお!!!あぁあああああああああ使徒あぁあああああををををおをををおお!!!!」



サナミ

「・・・・・・・」



シェイン

「なあぁああのにぃぃいいい!!! あなた達はその使徒様を手枷で自由を奪いぃい!!! 死刑にしようとしたああああぁあああ!!! 恐れたあぁああ!!恐れたんあだぁああ!本当の裁きにぃぃいあいいい」



俺を助ける為に・・・。



カズキ

「生贄にしたとでもいうのか・・・」



この街を壊したのはミツバの覚醒。

こいつらが言う神とはミツバの事だ、ミツバが力を発揮してしまってこの蛾蝶共が寄って来た。


そうゆうことだったのか・・・。



シェイン

「生贄? はて妙ですね? 生贄とはどうゆうことでしょう? 偽りの者共は生きる屍同然、ではないであぁあすか!!??」




こいつ・・・人間じゃない。

意思疎通が出来ないとかの問題じゃない。



根本が違い過ぎる。

同じ大地を踏んでいるのに、別世界の住人だ。



会話も言葉も通用しない。



まさに化け物をしゃべっているんだ。




シェイン

「ではーーー、私はこれにて・・・それとその黒焦げが言ったことはほぼ合ってますのでー! 来る場合は絶ぇええええ対いに使徒様をお連れするようにいいいいい!!」



黒い霧がシェインを取り囲み、消えた。



身体の全身から力が抜け落ちる。



カズキ

「俺が・・・俺がいたから・・・俺が・・・」



惨状が脳裏に浮かびだす。

全ての原因・・・やつらが襲撃してきたのは全て。



サナミ

「スリーピング・ミスト」


カズキ

「んっ・・・」



術技・・・?


急に眠気が・・・。



サナミ

「悪いようには絶対にしない・・・信じて」















サナミは一人あの時の事を思い出していた。



初めてカズキさんと出会った時だ。

重症、もう助かる見込みがないとわかるほどだ。


回復術技を何度も掛け続けても状況が変わらない。

ふと、諦めようとした時だった。



彼の胸から何かが飛び出した。


それは剣、3枚の刃で出来た剣だった。



剣が蒼く光りだし、そして彼の胸へと刺さった。


少しずつ彼の中に入ってく。


どんどん光り増していきその剣を見続けることができなかった。



最後には大きく光り輝き、剣は彼の中へと姿を消していた。





そしてすぐに彼が息を吹き返した・・・。






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