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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
ニ章   adventure children
70/70

最終話 adventure children

最終局面。


ハイトスの思惑はコートスの手引きにより思わぬ方向へと向かった。

そんなコートスはその報いとしてシェインの手によってこの世界から消された。



まだ戦いは終えていない、再臨の儀の第二段階は止めることは出来たがチヨーとヒルメは目を覚ましていない。




ケイト、ダツ、ネーネ、ミニア、ヘスティア。




五人の最後の戦いが始まる。






【再臨の祭壇】



 眼鏡の男の人が儀を妨害した・・・? 恐らく目の前にいた不気味な黒ローブの男の様子とチヨーとヒルメがその場に居続けていることからあの人が止めてくれたのだろう。


 そして何よりカズキさんがついに来てくれた、これならきっと!




ネーネ

「今なら・・・!」




 私はすぐに動いた。チヨーとヒルメが眠る場所へ走る。

 寝ているのならば起こせばいい、まだ二人は死んでいるわけではない。理屈なんかはわからないけど二人をあそこから解放するならば今しか無い。




ダツ

「373さん! シスターをお願いします!」




 私が走り出したと同時にダツが373さんにシスターの身柄をお願いしていた。

 373さんは無言だった。だがすぐに首を縦に振ってくれた。私達の気持ちを汲んでくれている、きっと373さんもあの二人の事を思ってくれている。


 そう確信してからシスターをお願い出来た。




シェイン

「あぁぁん?」




 黒ローブの男が首を傾けながらこちらを見た。どうやら完全に計画を無駄にされた、そうゆう様子が見て取れた。

 今が隙だ。あの人が乱している内に二人を助ける。私とミニアは男の横をすり通り過ぎていった。。



 

シェイン

「あぁぁぁあぁああ!!!! あぁああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああ!!!!!!!」


ケイト

「うわぁっ!!!」


ダツ

「くっ・・・なんだ!!?」




 突然黒ローブの男が断末魔。そして共に男の中心から衝撃波が私達を襲った。何かの術技なのかみなその場で地面に膝と付いてしまう。

 すぐ後ろにチヨーとヒルメが居る。だけど私達は振り返り男の動きに目線を送った。


 ここで油断をする訳には行かないから。




シェイン

「私はシェイン・トルテン!私はシェイン・トルテン!私はシェイン・トルテン!私はシェイン・トルテン!私はシェイン・トルテン!私はシェイン・トルテン!私わぁああああああああああぁぁああああああ!!!!!!!」




 自分の名前を何度も呼び掛けていた、まるで自己暗示をするかのように。やっぱり気が抜けない人間だ、このシェインという人は。

 きっとさっきの装置での起動の失敗が相当に効いているのだろうか。ただでさえおかしい言動が更におかしな言葉を続けていた。



シェイン

「私は教祖!!!! この世界のぉぉぉお!!!この世界おぉおぉぉぉお!!! 貴様等ぁあああああぁぁあああ!!!! 貴様もぉぉおおっぉおぉおぉおお!!!! 裏切るぅぅうぅ!!!! 消えろぉおぉぉぉおぉぉお!!!!」


373

「・・・っ!」



 シェインが両手を広げ一気に左右の手を叩いた。

 パンッ!という音と共に黒い衝撃波が飛び出し今も寝ているシスターを襲う。



ダツ

「シスターッ!!」



 襲いかかる黒い衝撃は何もぶつからずに遠くへと消え去った。373が寸前でシェインの攻撃からシスターを庇い飛んだ。祭壇の下へ。


 ダツとケイトがまた祭壇を覗く。



ケイト

「・・・・・・あれ!!」



 ケイトが何か指を差しているようだ、きっと大丈夫だったのだろうと二人の様子から察する。シスターは373さんに任せて問題は無さそうだ。


 ならば問題はここから。シェインという人間をどうにかしないと間違いなく二人には・・・。




シェイン

「っ!!?」




 私達は常にシェインの動きを見ていた、すると何か察知したのか辺りをキョロキョロと探し始めた。

 焦っている、警戒をしている。何かをきっと恐れているのだろうか。だが私は・・・私達は・・・逆にこの感覚を、安心と安堵の気持ちに感じていた。





ボゴォオォォオォォォォォオォオォオォォォォオンッッ!!!!!!




 

 祭壇の床が爆発した。

 浮遊する祭壇の下から何かが祭壇目掛けて突き破ったのだ。





シェイン

「蒼き使徒ぉぉぉっぉおおぉぉおぉー!!!!!!!」


カズキ

「うぅううぉぉおぉおおぉぉおぉおー!!!!!!!」




 二人はそのまま祭壇を抜け上空へと消えていった。








ミニア

「カズキさん・・・」



 ありがとう、おかげで二人を助けることが出来そうだった。

 私とネーネはすぐに二人が眠っている場所へと向かう。



ネーネ

「チヨー!!!」


ミニア

「いつまで寝てるのよ!!! 起きなさいよヒルメ!!!」



 二人で呼びかけるも一切反応が無い。本当にネーネが言うような人形みたいだ。下手に動かして大事になってしまってはいけない。とはいっても二人をどうやってこの機械から切り離すのが最適なのか私には・・・。



ヘスティア

「クゥアォオオォンッ!!!!」



 ヘスティアが叫んだ。そして同時にヒルメ達の身体から赤黒い靄が出てきた。ゆっくりと靄は叫び続けているヘスティアの元へと集まっていく。

 何をしているのかすぐにわかった。 ヘスティアが最初に生まれた時と同じ事だ。きっと今眠っている原因の何かを取り出しているのだろう。



ネーネ

「へスティア、今回復術技をするから!」



 靄を取り込んでいるもヘスティアの表情は苦しそうだった。真素の濃度が濃いからかそれとも有害な物なのかはわからない。ネーネはヘスティアの治癒に務めている、私は何か無いかと辺りを見渡す。

 特別な機械過ぎて私には何が何だか分からない物ばかりだ。それでもきっと何かやれることが・・・。




ネーネ

「ちょっと!! 二人も何か探し・・・・・・」




 ケイトとダツ二人に声を掛けようと振り返った。




ケイト

「・・・・・・」


ダツ

「・・・・・・」




 二人は・・・血を流して倒れていた。

 


 私は言葉を失った、私のその様子を察したネーネもその状況を見た。私と同じように言葉を失っていた。



 すぐに何があったのか理解した。一人の女の人がその場に立っていたから。


 


???

「ふふふっ・・・」





 派手な黒ローブに身を包んでいる。完全にシェインやオノス町長と同じような物だとわかった。だが明らかにその二人とは違う人間。

 そんな人が笑った、私達に向かって・・・。




ミニア

「ぁ・・・ぁ・・・」




 言葉が出なかった。


 スラッとした長身、腰下まで伸びきった銀髪、そして真紅の瞳。


 真っ先に浮かんだのはシュリー教授と同じような瞳だと思った。だけど感じた気持ちは真逆だった。

 私は震えが止まらなかった。ただ見つめられているだけなのに。




???

「・・・・・・」

 

ヘスティア

「クワァッ!!・・・ッ!!」


ミニア

「ヘスティアッ!!?」



 銀髪の女性が手を前に出した瞬間、浮いていたヘスティアがそのそのまま地面に叩き付けられた。

 この人もまた分からない術技を使ったのか!? 軽々しくヘスティアを止めたなんて信じられなかった。


 だけど、あのシェインという男の数百倍にヤバい人物なのはわかった。

 ヘスティアを抱えるネーネの前に出る。

 震える手で武器を、杖の、テューケを握る。



ミニア

「・・・よ、よくも!」


???

「・・・?」



 震えた私の声に首を傾げて反応した。まるで私の言葉がわからないのかのように。

 そしてまた笑みを浮かべながら手を口に当て笑った。



???

「心配ありません、二人は生きてます」



 まるで私達に安心しろと言わんばかりの笑顔で答えた。それが根っからの善人ならきっと泣いて喜んでいただろうが、今の私は別の意味で泣きそうだ。泣いて全てを投げ出してこの場を去りたい。

 もちろんそんな事はしたくない、だから今辛うじて私はここに立っているのだ。



???

「そして・・・その二人も・・・」



 目を閉じ両手をゆっくりと広げ、天に仰ぐようにして掲げた。




ゴッ・・・ゴゴゴ・・ゴゴゴ・・・。




 音が・・・機械が軋む音が後ろから聞こえてきた。何かが動いている。そんな物決まっていた。


 私は意を決して振り向いた。その瞬間に全てを察してしまった。



ネーネ

「やめて・・・」



 ネーネも同じだ。今から行われることが。今目の前にいる人間がやろうとしていることを。



ミニア

「やめろぉおおぉおぉおおぉお!!!!!」



 私は無我夢中に飛び出した。止めないといけない、この人をどんなことをしてでも。止めないと!!



???

「・・・・・・」



 女の人は微動だにしなかった。私は全力で術技を近距離で放った。



ミニア

「っ!!!?」



 私は・・・自分で放った雷を浴びた。全力で放った物をまるで自分に浴びせたかのように。


 私はその場で・・・倒れた。



ネーネ

「ミニア!!!」


 

 ネーネの声がうっすらと聞こえた。御蔭で踏ん張れた。


 意識はある。雷のダメージがとんでもなく残っているが気絶しないで居れた。

 だけど、うつ伏せで倒れてしまってからすぐに動けないでいた。



ケイト

「うおぉおおおぉおぉぉぉ!!!!」


ダツ

「このぉおぉぉぉぉおっぉ!!!!」



 二人の声。倒れながらも顔を上げた。

 ケイトとダツが女の人の背後から近距離攻撃を仕掛けた。当然のように女の人は一切反応もなくそのまま両手を広げたままだ。


 まるで私達に興味がないかのようにしていた。自分が今襲われていることすら理解していないかのように。



ケイト

「ぐあぁあああ!!!!」


ダツ

「ぐぅぅううぅ!!!!」



 二人の奇襲は届かずに吹き飛ばされた。それ以前に襲いかかる前に苦しみ出した。

 何かの攻撃を食らった? いやきっと私と同じだ。攻撃をしたと思ったら自分を攻撃していた。自分でも何を言っているのかわからなくなる、そんな現象が起きている。



ミニア

「くぅ・・・ぅうぅ!!」



 気合いを入れて立ち上がる。そして振り向いた。ヒルメ達を見た。


 あの女の人がやっている事。間違いなくヒルメ達をどうかするつもりだ。そしてそれはきっと、折角止めた事。その続きだ。


 ヒルメ達を覆っていた機械は全てはぎ取られ二人だけが宙に浮いていた。



???

「さぁ・・・お行き」



 喋った。

 私達が攻撃を仕掛けようとしても何一つ反応がなかった人が今ようやく。


 だがその言葉はあまりにも受け入れ難い物だった。


 ゆっくりと眠っている二人の身体が巨大な水の球体の方へと近づこうとしていた。



ネーネ

「行かせない!!」



 ネーネが術技を放った。それは女の人では無く二人にだった。

 拘束術技を放ち二人をその場に引き留め様としていた。

 ネーネの顔は必死だった、歯を食いしばり勝ち目のない綱引きをしているかのように踏ん張っていた。



ミニア

「うぅ! うあぁああああ!!!」



 叫ぶ。

 そしてまたさっきと同じように女の人へと飛び掛かる。術技を使わずに接近する。今ネーネがほんの少し、たった数ミリかもしれない。けれどそれを無駄にしてはいけない。きっと何かがあるはずだ。



ミニア

「ぐうぅっ!!!」



 テューケで攻撃振り下して攻撃しようとした。だがやはり同じように弾かれ吹き飛ばされた。一切の攻撃を受け付けない。皆目見当が付かない。



ケイト

「くっ・・・攻撃が出来ない!」


ダツ

「くっそぉ!! まるで自分に殴られてるみてーだ!!」



 ダツもケイトも同じ反応だ。どうにかして打開策を見つけようと躍起になっていた。

 二人の言う通り、攻撃が出来ない、本当に自分にそのまま攻撃が返ってくるような感覚だ。

 術技の反射、それならば近距離攻撃の説明が付かない、弾かれるというのならダツの言う自分に殴られてるみたいの説明が付かない。実際に私も試した、女の人へ打撃を与えようと。


 振りかぶって攻撃しようとした瞬間にその攻撃が自分に跳ね返ってきた。



ミニア

(いや・・・違う!)



 跳ね返ってきた、それが間違いなのか。

 可能性は無くはない。けれど失敗したらとんでもない事になる。


 いや、やるんだ! とんでもないと言っても自分が被害を出すだけだ。それにここで上手くいけば形勢逆転になる可能性だってある。

 自分可愛さに手加減なんてする訳にはいかない!!



【サンダー フルドライブ】



 属性鍵をテューケに刺し出力を上げる。全てはこの一撃。

 もしこれが失敗したら私下手したら死んじゃうかも・・・。



ミニア

「だからと言って!!」


 

 再び私は飛び出す。全気力を振り絞る。



ミニア

「エレキス・ライ・・・ファングゥゥウー!!!!!!」



 術技を唱える。


 そして勢い良く振り返り明後日の方向に術技をぶっぱなす。




 雷牙術技。

 獣の口の形をした雷撃。全てを雷の牙で噛み砕く術技。

 それを今私は自分に向けて放った・・・。



ダツ

「ミニアの術技が・・・!」


ケイト

「飛んだ!?」




 雷牙術技が、私の背後の空間から出現した。

 思った通りだ! 原理はもちろんわからない、だけど恐らくあの人がやっているのは反射障壁や見えない防壁の類じゃない。


 私の予想は「敵のコピー」だ。


 自らに害を及ぼす敵のコピーを瞬時に作り出しオリジナルよりも先に同じ攻撃をぶつける物。それこの返されたと錯覚した正体だ。

 そしてそのコピーには恐らく実体は無いのだろう、その証拠に私の術技はそのコピーをすり抜けて今・・・女の人へと向かった!



ミニア

「いっけぇえええ!!!」



 属性鍵を使っての私の単体の最高火力術技。もうこれ以上の物は私一人じゃあ出せない。これで・・・少しは!



???

「・・・っ」



 雷牙術技が直撃する瞬間、女の人の目が開いた。そして私の術技は直撃した。



ネーネ

「やった!!」



 そして同時にヒルメ達が解放されたかのようにネーネが主導権を勝ち取った。ヒルメ達の動きが止まった。

 つまりは効果があったんだ。

 私はようやく笑みを浮かべられた。


 目の前のとんでも化け物にようやく・・・一手与えることが出来たんだ。



???

「痺れを感じたのは・・・何百年振りでしょうか」



 術技で起きた煙から声が聞こえた。

 まるで埃を払うかのような仕草で姿を現した。


 やっぱり・・・こんなことじゃあ駄目か。


 直前で防壁を張った? いや・・・直撃だった。

 直撃だったのにも関わらず効果が無かったに等しいんだ。きっと今ここにいる者では・・・もう・・・。





???

「いいでしょう・・・あなた達には、"選ばせて"あげるとしましょう」

 





【再臨の祭壇 櫓跡地】



 シェインを祭壇から引き剥がし急転させて地上へと叩き付けた。

 だがこいつの能力は知っている。殺しても殺しても訳も分からずに現れる。ある意味で不死身、変わり身術が上手いのか何なのかわからない糞野郎だ。



シェイン

「あぁああああ!!! 使徒ぉぉおぉおおお!!!」


カズキ

「何度だって殺してやるよぉ!!!」



 頭をミツバで貫き破壊してもまた別の場所から現れて気持ち悪く攻撃してくる。何処かに本体がいる。そう考えるのが妥当だろうが・・・。



サナミ

「カズキさん!」



 サナミさん!?

 さっきまで誰かと戦っていたように思えたが。

 サナミさんが俺の元に駆け寄ってきて同時にシェインを一撃で粉々にした。



カズキ

「サナミさんの相手は何処に」


サナミ

「わからない、不気味な雰囲気を感じたら消えていったの」



 不気味な雰囲気、それは俺も感じていた。丁度シェインを祭壇から引き剥がしてから少ししてから感じた物だ。

 恐らく祭壇で何かまたあった、そう考えるのが妥当だろう。だがこいつを野放しには出来なかった。


 今は祭壇には子供達が居る・・・くそっ。



カズキ

「サナミさん・・・ごめん」


サナミ

「わかってる、ここは私と・・・」





ルシュカ

「私がやろう」



 サナミさんの言葉で俺は振り向いた。

 そこにはルシュカが立っていた、完全にボロボロなのに一体何が・・・想像に難くないか。また無茶な事をやってこんな姿になったのだろう。トゥトゥーに何を言われるか。



ルシュカ

「言ってくれ、ここは私達が食い止める」


カズキ

「・・・頼んだ」



 再び上空を見上げる。

 あそこでは恐らく、まだ戦いが続いているのだろう。それもあの子達にとって一番過酷な事として。



シェイン

「使途よぉぉぉおお!!! 我々に救いを!!! 私を解放しろぉおお!!!」



 断末魔、それは悲痛の叫びなのか。あの廃墟で会ったヌーターの言葉そしてコートスを思い出す。

 こいつ等は・・・・・・。

 

 だが、今はそれを考えている暇はない。


 今やらねばならない事をしなくてはいけない。



ナザ

「おい!! 急いでくれこっちもいっぱいいっぱいだぞ!!」


レイドラ

「何とか守ってるけど! 他のみんながやられ始めちゃってる!」



 ハイトス信者共がこっちの拠点にまで攻め込んでるのか。十二分に準備してきたつもりでもやはり相手の方が一枚上手なのか。


 パラサイトジェムで強化された信者達を止めるのは一筋縄じゃいかないか。


 すぐに終わらせなくちゃ・・・終わらせる!




カズキ

「・・・っ!?」



 空を見上げた。

 上空に飛び俺達を見下しているようなあの水の球体を。


 だがその姿は、変わり始めていた。ヘスティアが卵から孵るように俺の目に映るそれは変化を見せていた。

 ついに、姿を現す。


 つまりは・・・あの適正者二人は・・・。



カズキ

「シュリー・・・準備は」


シュリー

「出来てる」


カズキ

「タイミングは、俺が出す」



 廃棄された施設の情報はもうシュリーにだけは伝えている。そして今目の前で姿を現そうとしている物はまだ未完成の可能性が高いことも。


 神の完成、奴らが定義する計画の最終段階は是が非でも止めなくてはならない。

 

 変化する球体を見つめる。

 グヨグヨと動き新たな生命がこの世界に誕生しようとしていた。

 

 そして・・・。








チヨー ヒルメ

「「ぅ・・・ぁぁ・・・んっ!!」



 ここへ来て初めて聞けた二人の声は苦しみの声だった。

 二人の姿は背中から水の球体へと飲み込めれている。中へと徐々にゆっくりとまるで慣らしているかのように苦しめさせながら。



ネーネ

「やめて!!! これ以上!!」



 今すぐにでもやめさせなくては、とその場にいる全員が全身に力を注ぐも体を動かすほどの気力がもう残っていない事を告げていた。今の子供達には声を張り上げることしか出来ない。



ミニア

「ヒルメ!!!」



 もう自分達には何も出来ないのか、目の前の人一人止める力はみんなには残されてない。ただその場で這いつくばり今起きている現象を眺めることしか出来ないでいた。



???

「最後の別れです」



 銀髪の女が呟いたと同時に二人の目が開いた。

 目が覚めたんだ。


 だけど、それはあまりにも今の私達には複雑な状況だった。

 二人は、笑顔だった。今までの私達の行動を夢の中で見ていたからのように。優しく子供達に微笑んだ。



ヒルメ

「へへ・・へ、・・っ・・・ごめんね、迷惑・・・掛けてさ」


チヨー

「もっと・・・もっと早く出会えていれば・・・よかったのかな?」



 苦しみに耐えながら言葉を告げる。本当に二人はこれを一番に望み一番に願っていた。どれだけの事をされようと、どれだけの事をしようと。


 どれだけ自分達が世界から見放されようと。


 チヨーとヒルメはただひたすらにこの世界で生き続けた。お互いの為に自分の為に。



ケイト

「駄目だよ!!! 諦めちゃ!!」



 その気持ちからの解放、ようやくお互いをこの世界から解放出来る。

 もう怖い想いや辛い想いをしないで済む。

 


ダツ

「ふざけんなよ馬鹿野郎!! まだ終わりじゃねーんだぞ!!」


 

 どれだけ辛かったかなんてもう口にするのも辛いくらいに戦った。でももうそれからも解放される。そしてお互いが常に一緒にいられるはずだと。

 これからは「一つになれる」から。


 もう心配はないと。 



ヒルメ

「楽しかった・・・よ、ミニア」


ヒルメ

「馬鹿!!!」



 一番だった。この結果が一番なのは二人にとって間違いなかった。

 間違いないと今でも思っているのに。何故か別な辛さが胸を締め付けた。


 それはたった一つの心残り。


 もしも、もしかしたら、可能性はあった。

 それがずっと頭の中、心の中に引っ掛かってしまう。



チヨー

「ネーネ・・・ありがとう・・ね」


ネーネ

「チ・・・チヨー・・・!!!!」



 偶然にも出会った自分達よりも少し幼い子供達。気持ちはまるで同年代の子供と遊んでいるような感覚。昔に捨てたと思い込んでいた気持ちが再び顔を出した。


 自分達は普通の子供のようにはいられない。それが決まっていたから。


 けれどみんなと出会ってしまって自分達のその常識を揺るがした。その気持ちを味わうことはないのだとまた自分に言い聞かせてしまっていた、昔捨てた時と同じように。

 なのに目の前の五人はそれを意図も容易く経験させた。当然望んでいた事はないのに。


 五人はいつも笑顔を絶やさないでいた。それを見たチヨー達は密かに思っていた。


 この子達は自分達と似ている。けれど自分達には出来なかった事をやり遂げている。何がそうさせたのか、何が違ったのか、何でそんなにも強いのか。

 自然と惹かれていったのは必然だった。


 どうすればこんなにも強くなれたのか、こんなにも笑顔でいられるのか。大人でも出来ないことのはずの事をみんなはやっていた。

 



 それを知りたかった・・・。



 そしてもしかしたら・・・それを知ったら自分達も、別の世界へと行けたのかも知れないと。

 だがもうそれは叶わぬ夢。夢物語なのだ。自分達の頭の中での妄想。この五人と一緒に町で買い物をして冒険をしてモンスターと戦って人助けをして一緒にご飯を食べてみんなで眠る。


 そして明日を迎える。


 そんな世界が・・・。





ネーネ

「ぁ・・・ぁぁ・・・!」





 二人は球体の中へと入っていった。 

 笑顔をみんなへ向けて、本当の感謝を込めて・・・小さな涙を流しながら。


 チヨーとヒルメが、五人の視界から消えていった・・・。













ジシャァァアアァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァアァァァァアッ!!!!!











 二人が消えたと同時に世界へ轟かせるほどの咆哮が響き球体が光り輝いていた。

 

 悲しみに暮れる子供達に救いを与えないかのように超巨大のモンスターが姿を現した。

 蛇のようにな姿、海の色のような青い鱗を全身に散りばめた巨大な姿。

 そして誰も見たことのないような顔立ち、近い存在は、ドラゴンだった。



 セカンエンデよりも巨大なその姿が海に出現したのだ。




???

「水幸化身リヴァイアス・・・再臨は済みました、後は・・・幼き冒険者次第ですね」




 銀髪の女目を閉じ姿を眩ませた。その場に元から居なかったかのように消えていった。その事に気付くこと無く子供達は泣きわめいていた。


 自分達の無力さ、友達を止めることが出来なかった事に、せっかくできた友達を失って・・・。



ネーネ

「うあぁああああああああん!!!!」



 目の前には前人未到の化け物のリヴァイアスがいる。それでもお構いなくただ泣き喚いた。

 自暴自棄になったわけでも状況がわかっていないわけでもない。


 ただ自分達の気持ちが溢れて止めることが出来ないでいた。初めて二人と戦うことになってから今まで我慢していた全ての、吐き出しだ。

 どれだけ目から涙を流せば、口から叫べば、この感情を抑えられるのかもう誰にもわからなかった。





ジシャァアァアアア!!!!





 巨大な口が開いた。口の中に真素の力が光り輝く。

 祭壇へ向けられている、リヴァイアスの目の前にいる子供達へ目掛けられた物だ。

 更に光りが徐々に強くなる。誰が見てもわかる物だった、子供達を狙ったものだと。


 そして光は最高潮に達した・・・。





ガァァァァァアアァゴゴオォオォォォオオオォォォンッ!!!!





 強烈な一撃がぶつかる音。

 同時にリヴァイアスの悲鳴が上がり共に子供達へ向けていた開口を上空へと向け溜め込んだ一撃を空へと放った。



 大雨の曇り空を巨大なレーザーが切り裂いた。




ネーネ

「カズキ・・・さ・・ん」




 上を見上げる。そして宙を浮くカズキを見た。

 ネーネの目にはカズキが神秘的に見えた。巨大なレーザーが切り裂いた雲から大空が顔出していた。

 他の三人も同じように見ていた。先ほどまで抱いていた止める事の出来ない感情を止めて全員がその姿を見ていた。


 一人で水幸化身リヴァイアスと戦う姿を。




ジシャァアァアアア!!!!



カズキ

「ぅぅうぉおぉお!!!」




 ミツバ一つでリヴァイアスに食い付くカズキのありとあらゆる術技を駆使して戦っていた。




サナミ

「くぅ・・・私も・・・!」


ルシュカ

「やめろ、もう私達は無理だ・・・」



 シェインと戦っていた二人も海へと目を向けるが、ここまでの連戦でカズキのように戦うことは出来なかった。下手に向かっては邪魔になる可能性の方が高かった。

 それはその場にいる者全員が思っていた事だ。


 今目の前には見たことも聞いたこともない姿をした超巨大な化け物がいる。

 そしてそれに単身で挑み戦う者が一人いる。


 海を地面のように走り、空を舞い、敵の身体に取り付きながら戦う。


 他の者はみなそれをただ見守ることしか出来なかった。



ネーネ

「・・・・・・」



 当然子供達も同じだった。

 祭壇の上からチヨーとヒルメの変わり果てた姿と対峙するカズキを辛い気持ちで見守っていた。本能的に理解をしていた、きっとあの二人が制御はしていないが二人がまだあの中にいると。



ヘスティア

「クゥーンッ・・・」



 ヘスティアもまたみなと同じように戦いを見守っていた。だが他の者とは違う目つきだった。


 まだ諦めていない、自分になら・・・。



ネーネ

「ヘスティア・・・ど、何処に行くの!!」



 ヘスティアが動き出した。すぐにヘスティアの身体を抱きかかえ止めたが暴れている。向かおうとしたのは当然今も戦いを繰り広げているリヴァイアスの元だった。

 

じたばた暴れるヘスティアを見てみな顔を見合わせた。今ヘスティアが何をやろうとしているのか。全てを察したのだった。


 諦めるにはまだ早いんだと。



ダツ

「わかったよ、ヘスティア」



 ダツがヘスティアの頭を撫でて治めた。もう、気持ちは決まったのだと・・・。



ケイト

「みんなで・・・行こう・・・」


ダツ

「あぁ、俺達は行かなきゃ」


ミニア

「絶対に見捨てない・・・その為に」


ネーネ

「真の冒険者・・・仲間を、友達は絶対に助ける!!!」



 ヘスティアはその言葉に口を開いた、レイドラのように言葉を使い細かい気持ちを伝えることが出来ない。自分だけなら・・・そんな事も考えてしまった。



ヘスティア

「・・・・・・」


 

 せっかくの仲間、自分が恐怖せずにいられたみんなの為と考えてもきっとみんなはそれを認めない。

 そう思ってしまったから口を閉ざした。もう何も言えない、自分が最初に動いてしまったから。




 そしてみんなの意思は決まった。




ダツ

「あそこまでの移動は・・俺に・・・任せろ!」



【ファイア オン】



 エレメタルキーを拳のソルスに差し込む。全員が作戦をすぐに理解しダツの捕まる。

 雨の中で燃え滾る拳を正面に、リヴァイアスへと向ける。



 そしてダツは目を閉じ左手で右手を掴み全身の最後の最後の力を込める。



【ファイア オーバードライブ】



 エレメタルキーが最大出力で起動を確認し、ネーネは捕まりながらダツに治癒術技を掛け、他の三人もダツへ能力向上術技で掛ける。




ダツ

「ぐぅぅう!!!」



 限界まで力を溜め込む。

 飛距離だけではない、あの巨大な体を貫き体内に入るくらいの物が必要。それを一撃でやらねばならない。当然だが一発勝負、今まで培ってきた物全てを出し切る以上の事をしなくてはきっと届かない。


 全ての力を・・・目を見開きぶつける。



ダツ

「フレイミー・バン・バンカァァアアアアアー!!!



 ダツの術技が放たれたと同時に全員が飛び出した。息はピッタリにとダツを先頭に全員飛んだ。

 全員に炎が纏い火球が祭壇から発射された。



 目標はリヴァイアス。一直線に。。

 全てを覚悟した子供達が今・・・飛び立った。







カズキ

「・・・っ!? あれは・・・!」



 俺は海面に立ち上空を見上げた。リヴァイアスにでは無い、リヴァイアスに向かう一つの燃え盛る炎の弾を。

 一気に肝が冷えた。最悪なパターン、一番恐れていた物だ。


 ハイトスはネーネ達を使ってこのリヴァイアスを安定させ制御しようと目論んだ。だがそれはコートスの手で止めることは出来たが、今目の前にはリヴァイアスが誕生してしまった。

 当然制御装置の類はないから子供達を使うことはない、普通ならそう思う。



カズキ

「駄目だ! くぅ!!」



 だけどそれだけでは駄目なんだ。きっとあの子達はチヨーとヒルメの力で姿を現したリヴァイアスへ絶対に向かうと過信があった。

 必ずあの子達は二人を助ける。その為なら自らがどうなろうと関係ない。



カズキ

「くっそ!! 邪魔だ!!」



 リヴァイアスから放たれる水光弾が俺の行く手を阻む。すぐにでもあの子達を止めないといけない。

 確証なんてないんだ、チヨーとヒルメを助けることが出来る事が。

 このままじゃ全員がリヴァイアスに飲み込まれて全てが水の泡になりかねない。


 だから俺はこうして戦ってどうにか出来ないか探っていたんだ。



カズキ

「駄目だぁああ!!!!」



 炎に包み込まれた子供達がリヴァイアスへとぶつかろうとしていた。

 ダツの力なのは間違いない、ここまでこの化け物と戦った俺ならわかる、ダツのあの力なら恐らく内部に侵入することは出来ると・・・。





ボオオオオオオォオォォォォオォオオッンッッ!!!!!!





 子供達が到達した。

 リヴァイアスへ強烈な一撃を食らわせたと同時に子供達は恐らくリヴァイアスの内部に入ったのだろう。

 リヴァイアスの悲鳴ですぐにわかった。



カズキ

「やめろぉぉぉおぉぉおお!!!!!」



 俺は我武者羅に飛んだ。

 リヴァイアスの攻撃を受けながらも着弾地点へと駆ける。手を伸ばし続けた。

呼び掛け続けた。俺が何とかするから。俺があの二人を絶対に助けるから。君達は・・・それ以上にボロボロになる必要なんてないんだ。



 だから・・・!!!!







ケイト ダツ ネーネ ミニア

「「「「いくぞぉおぉぉぉおお!!!!」」」」


ケイト ダツ ネーネ ミニア ヘスティア

「「「「「えい!!えい!!おおぉおぉぉー!!!!」」」」」




カズキ

「・・・っ!!!!」





 子供達の掛声と共に爆発したかのような衝撃が生まれ俺は吹き飛ばされた。


 目の前に居た子供達に手を伸ばし続けながら落ちていく。子供達が少しずつ消えていく、光と共にリヴァイアスへと溶け込む姿を見ながら俺は落ちていく・・・。







 何を・・・やってるんだ・・・俺は・・・。


 過信したのか、悠長過ぎたのか、どうしてそこまで予想出来ていたのに、何も出来なかったのか。




 そうか・・・何も・・・何もやってなかったのか、何一つ俺は成長していなかったのか。

 子供達の驚異的な成長に驚いた。それは俺がただ何も成長していなかったのだからそう感じていたんだ・・・。


 そうだ・・・結局・・・。




- 上 手 く い か な い -



 世の中上手くいくなんてことはない、自分の実力不足、無知、詰めが甘い・・・。


 たくさんある。


 失敗。


 自分の思うようになったら成功、それ以外は失敗。


 だが声をかける人もいる、「十分だ、よくやった」「上々の出来」「出来ている方だ」


 優しい言葉だ。


 でも・・・失敗なんだ。


 思うようにならなかったらそれは失敗。失敗は全て”自分のせい”なんだ。


 成功すれば「回りの助けがあった」「運がよかった」「環境がよかった」

 

 それ以外は全て・・・失敗なんだ。


 関係ないんだ。




 自分のせい


 自業自得


 偽善者


 考えなし


 常識知らず


 普通じゃない



 どうしてだろう・・・、わからない、俺は一体何をしているんだろう・・・。




 















 違う・・・。




カズキ

「違う!!!」




 俺は何一つ変わって無くても、それでいい。

 でも、それでも!


 それでもある物はあるんだ! 成長出来なくても得たモノを何一つ変わることが出来なくても出会えたモノが。沢山俺に与えてくれたモノが。


 この右手に握りしめてるモノが。











 もの言わぬ俺の最高のパートナー。











- フリューゲル・リベレーション 取得 -







カズキ

「シュリィィイイイー!!!ターゼェェエエエー!!!」




 叫んだ。ここしかない。リヴァイアスが苦しみ動きを止めている今しか。


 もう考えてる暇なんてないんだ!!





ターゼ

「全羽展開!! 筒状縮小!!」


シュリー

「ノーヴァルキャノン起動」




 これがヴェアリアスの最後の切り札、対超巨大モンスター用に急増した兵器。

 シュリーの武器をセッティングし完成される大型ライフル型キャノン砲。


 ターゼの癒しの力で強引に力を抑え込みパーツの破損を抑え込み究極の一撃を繰り出す最終手段。




ターゼ

「絶対に外さないでよシュリー!!」


シュリー

「・・・・・・」



 シュリーは集中していた。フォンから浮かび上がるモニターで距離を計算し図る。

 超強力の力は当然のように一度しか使えないが一撃で呼び出されたモンスターを倒す為にシュリーが考案した物。


 まさに最終手段だった。



【ノーヴァル オーバードライブ】



 ノーヴァルキャノンのチャージはある程度までしていた。

 この瞬間をただ待ち望んでいた。


 シュリーは引き金に指をかける。目を閉じカズキの報告を思い出す。

 当然子供達の事だ。


 カズキの呼び掛けの声質で全てを理解した。きっとカズキは賭けるつもりなんだ。ノーヴァルキャノンリヴァイアスを倒した瞬間を。

 何を考えているかはわからない。


 けれど・・・今は、カズキを信じる事しかシュリーには出来なかった。



シュリー

「行くわよ」


 

 息を吸い止め、引き金を引く。



シュリー

「ノーヴァルキャノン・・・ディスチャージ」









 地面を揺るがす発射音、リヴァイアスが最初に放ったレーザーよりも二回りも巨大なビーム。

 それが今シュリーの手によって放たれた。


 まっすぐ何よりも早い速度でリヴァイアスへと直進していった。



シュリー

「え・・・」




 発射された物を見つめていた。だがそこに何か人影が現れた。

 リヴァイアスとノーヴァルキャノンの撃ったモノの間に。



カズキ

「・・・・・・」



 それはカズキだった。ミツバを構えたカズキが一人宙に浮いていた。

 


シュリー

「馬鹿じゃないの・・・・・・何やってんのよ!!!」


ターゼ

「ちょっと待って・・・何考えて・・・」


ユミィーリア

「どうして・・・!」


ルシュカ

「あれじゃあ・・・」


サナミ

「カズキ・・・さん」






 俺は目を見開き背後から来るノーヴァルキャノンの砲撃を待った。息を止めてタイミングを見計らうかのように。


 全てを右手に握るミツバに賭けながら。


 そして砲撃は俺の背中へと直撃した。



カズキ

「ぐっ・・・ぐぅうう!!!!」



 砲撃に押されるようにリヴァイアスへと急接近する。着弾まで一秒もない。それでもタイミングを見計らう。

 少しでも失敗してはただ・・・自分が死ぬだけになってしまうから。



カズキ

「フリューゲル・・・」



 ミツバが与えた、いや、ミツバが解放した術技を準備する。

 これがどうゆう物なのか理解出来ていた。今までは力を俺に与えてくれるモノ、だがこれは違う。


 ミツバ"自身"に力を授ける力。


 だからこれを使った場合、俺は・・・。



カズキ

「・・・・・・」

 


 ついにミツバが届く距離にまで来た。これが全てだ。

 もっと良い方法なんてあるに決まってるし絶対に間違っていると言われるだろう。

 けれどもうそれでもいい、それであの子達が・・・また笑えるのなら。それが、本当にどんな結果になろうと。



 俺はあの子達の目の前では、カッコよく居たいんだ。



カズキ

「リベレーション!!」



 ミツバが蒼く輝く。攻撃の力じゃない、ミツバ自身が力を増した証拠。

 俺は体を捻り一気にリヴァイアスへと突き刺した。

 

 ミツバが一気に差し込まれると同時に蒼い光はリヴァイアスの中へと消えていった。





カズキ

「あとは・・・頼んだぞ、ミツバ」






 そして。同時にノーヴァルキャノンがリヴァイアスへと直撃した。







ジシャァァアアァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァアァァァァアッ!!!!!





 リヴァイアスの悲鳴。

 巨体には、砲撃で空いた穴が出来た。聳え立っていた姿は徐々に力を失い息絶えるかのように海面へと落ちていく。


 倒した。

 あの巨大な化け物を倒したんだ。

 全ての人間が喜びに満ち勝利を喜んでいた。

 









カズキ

「・・・・・・」



 思った以上に生きていた、全身が粉々になるかと思ったが、ミツバが最後の最後に力を残してくれたのか。

 それとも運がよかったのか、わからない。


 でもわかった、俺は死ぬと。



 そうか死期ってのはこうも簡単にわかるものなのか・・・。



 俺があの日、走る電車の前に落ちた時には感じることの出来なかったことだ。死ぬってこうゆう事なのか・・・。


 この世界に転移してきてから約半年、たった半年だが多くの事があった。決して元の世界では味わうことの出来なかったモノだ。

 嫌な事も辛い事も、嬉しい事も楽しい事も。全てを教えてくれたかのようにも感じた。

 人によってはまだまだだというだろうけど、俺には十分過ぎる施しだ。


 全てを投げ出したかった男には十分過ぎたんだ・・・。




カズキ

「ありがとう・・・お疲れ・・俺」




 これで俺は・・・俺の好きを求めた異世界物語は終わりを告げた。

 好きな事なんて何一つ見つけることなんて出来なかった。


 それでもいいんだ。


 それを求め続けた事に意味があった。


 それでいいんだと・・・今なら胸を張れるんだ。 






 もし・・・。




 次があるなら・・・次は・・・・・・・。





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【??????????】




 温かい気持ち。

 これはなんだろうか。


 蒼い光。


 これはなんだろう?目を見開くとそこには光りといつものみんなが居た。


 そして、助けたいと願った者達も居た。

 

 手を伸ばした、名前を叫んだ。

 応えてくれたかのようにゆっくりとこちらを向いてくれた。



 そして手を取ってくれた。



「もう・・・離さないからね!」


 

 蒼い光の下、再び出会った。


 そして誓った。どんなことがあってもこの手はもう離さないと。小さくても強い手を。



 これが。



 小さい冒険者である、自分達が思い描く冒険者の姿だ・・・。

ご愛読ありがとうございました。


見切り発車で始めた処女作でしたがアクセス数やブックマークの数字を見て頑張ってきました、本当にありがとうございました。




本来なら第3章と続けたいのですが、この作品に凄く愛着が出てしまい、その為に自分の実力不足に頭を悩ませる日々でした。


なので一度しっかりと勉強して別作品を作ってから本腰を入れて3章を書こうと思います。


ツイッターやユーチューブのチャンネルもやってますのでよかったら遊びに来て頂ければモチベーションに繋がると思いますのでよろしかったらそちらも合わせてよろしくお願いしましま。




改めてお付き合い頂きありがとうございました。

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