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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
序章   Believe in one step
6/70

第6話 近衛騎士団

【第2都市ベルドラ 宿屋】



蒼プレート事件。


どうやらあれから冒険者内で噂になってるようだ。


記憶喪失の冒険者が覚醒したとか。


近い日に魔王が誕生し蒼プレートの勇者が誕生するとか。


新たな術技でギルド内に革命が起きたとか。


世界の終焉のカウントダウンが始まったとか。



噂というのは面白いな。

当事者を置いてどこからどこまでも飛んでいく。


その当事者は一切何もわからない異世界人。

逆にそっちの方が信用される可能性あるのか?



ないな。



もっと尾ひれが付いた噂が飛び交うだけだ。

記憶喪失設定はこのまま続行だ。



ナザ

「おーーう、風呂開いたぞー」



ドトルを出た後、俺は二人に話した。

ナザが気を効かせてくれて、信用の出来る静かな店で事情聴取で逃した昼食を取りながら話そうと提案してくれた。


またおごってもらう形になった。

これだけ絶対忘れないようにしなくては。



そして3人で昼食を取りながら話した。

お得意の痴話喧嘩をすることもなく一語一句聞き逃さない気持ちで真剣に聞いてくれた。


話しを聞いた二人は色々思うところがあるようだが、変な気を起こさないように治めた。

二人も納得してくれた。



『鼠人族のエーイか・・・会ってみてーな』


『宝石の湖 エメラルド・アクアかー見てみたいなー』



そう、何も嫌な話しだけではない。

鼠人族と会ったこと、俺はそれだけでも良い話だと胸を張れる。


話しも無事に終わった途端にいつもの痴話喧嘩をする二人に戻った。

気を使ってくれたのかは、わからない。


勝手な話しではあるが、二人に話せたことで気持ちが少し楽になったようにも感じた。

それからは一先ずフェーチスの手伝いをナザと一緒にやり、夕食を取り、今に至る。


ナザ

「おーーーい、目死んでっぞー?」


カズキ

「元からだ、風呂行ってくる」



これからのことを考えなくちゃいけない。

二人はまだこの街に滞在するって話だが、俺は恐らく明日の朝にはこの街を出ることになるだろう。




俺の意思なんて関係なく。




---------------------------------------------------------------------


【第2都市ベルドラ 宿屋食堂】


それは三人で朝食を取っていた時に起きた。



帝国兵

「この宿屋にカズキと名乗る者がいるのはわかっている!」



やはり来たか。

声から察するに先日の帝国兵隊長ではないな。


無駄にデカイ声で助かった。

宿屋の出入り口から食堂まで聞こえるほどの声を発してくれるたおかげで行動しやすい。



帝国兵

「無駄な抵抗はせず出てこい!」


店主

「兵隊さんや、まだ寝てるお客もいるんだ、やめてもらえるか?」



店主がいさめようとしてくれているのか。

これは事が起きる前にさっさと出るか。


朝食はバイキング方式のが不幸中の幸いだった。

元々あまり手を出す気がなかった、最悪残った分はナザにでもやるつもりだった。



ナザ

「カズキ」



席を立ちあがった俺に呼びかけた。

表情から察するにナザもわかってはいたということか。


だがこればかりはどうすることも出来ない、俺の詰めの甘さが招いた結果だ。

ナザ達には何も言わずコクリと首を下げ別れを告げた。



カズキ

「俺がカズキだ、何か用か?」


帝国兵

「ほう、潔く出てきたかまあいい!」


カズキ

「ほかの客に迷惑だ、せめて外でお願いできないのか」


帝国兵

「貴様にそんな決定権があると思うのか!!!」


カズキ

(ちっ・・・)


あまりやりたくないが



ダメージングシフト。



これでこの馬鹿デカイ音量攻撃を俺一人に移せる。



帝国兵

「貴様には帝国軍に対する反逆罪の罪に問われている!! 拒否権はない!! 大人しくお縄に付け!!」


カズキ

「ぐぅ・・・!!!!」



とんでもない音量だ、頭が勝ち割られそうになる。

無作為な範囲攻撃を全部引き受けるこうなるのか。


もはや告げた言葉がわからない。

どうせしょうもないこじ付けだろうがな。


帝国兵

「やれ!!」


声量だけは一著前の大男の兵士の後ろからもう一人の兵士が現れた。

手には手錠が握られていた。


そして俺は抵抗することもなくお縄に付いた。

心残りがあるとすれば変にナザが行動しないか心配ではあった。


だが、大丈夫だろう、あいつならわかってくれる。



ガシャンッ!



両手に大型の枷。

重く、見ただけで簡単には壊れそうにない物だ。


背中を押し込まれながら俺は宿屋を出た。



帝国兵

「ほれ店主!これで満足だろう?」



足元に金貨をばら撒いた。

口止め料とでも言うのか。


店主

「んなもんいるか、とっとと出てけ! 二度とくんな!」


帝国兵

「ガハハハハッ!!!」


自ら撒いた金貨を踏みながら外へと消えていった。



フェーチス

「カズキさん・・・」


ナザ

「くそっ・・・!」




外を出た先には6人の兵士が待ち構えていた。

俺だけの為に合計8人か、随分と待遇がいいな。


帝国兵

「それではこれより!! 反逆罪人カズキを連行する!! 皆の者!警戒を怠るな!!ガハハハハハッ!!」



手枷に付いた鎖で引っ張られながら歩かされる。



警戒?

ただの見せしめじゃないか。


わざと警戒すると言ってゆっくりと連行する。

通りすぎる街の人達を見せつけるようにだ。


罪人の末路。

明日は友人かもしれない、兄弟かもしれない、親かもしれない、自分自身かもしれない。



そういった恐怖心の植え付けが目的。


いや、こいつらがそんなこと大層なことを考えられるほどの奴らとは思えない。



ただの私欲だ。

自分は上だ、そして他の奴らは下。


力を持っている人間だと錯覚しそれを玩具のように振り続ける。

馬鹿みたいに見せつけ、振舞う。



哀れだ。



そんな哀れさで不作為の人達は傷付き最悪命を落とす。

それでもこいつらはその哀れさを改めることなんてしない。


どうしようもな哀れ、救いようがない。




帝国兵

「きびきび歩け!! へへへへっ・・・あん?」



カズキ

(止まった・・・?)




地面ばかりを見ていたから一切回りに気を配っていなかった。

何があったのか、自分の目で確認する為に視線を上げた。




それよりも先に多くの悲鳴と叫び声が耳に入った。




「助けてくれぇえー!!!」


「きゃあぁああああー!!!!」


「モンスターだあぁあー!」



帝国兵

「なんだと!!!?」


カズキ

「街の中でだと」


どうゆうことだ、しかもここは正門から近くはない。

入ってきたばかりというわけではないのか。



帝国兵

「何をしているお前ら!! さっさとこいつらを倒せ!!罪人の連行は私一人でやる!! 街を守るのだ!!」



カズキ

(こいつまさか・・・っ!!?)



繋がれた鎖を力いっぱい引っ張られた。

あまりの驚きで反応できなかった。



まさか逃げるのか!?

今もなお街の人達が襲われてるというのに。



カズキ

「このまま逃げるつもりかあんた!!」


帝国兵

「黙れ罪人!! 私は任務を遂行しているに過ぎんのだ!!」



任務だと?

ここまで清々しいと笑いが込み上げる。


こんな奴なんかに俺の命運を任せなきゃならないのか。

そんなこと、あって良いわけないだろう。



カズキ

「ごんのぉ!!」



足へと力を振り絞り急停止させた。

だがとんでもないほどの力だ。


あんな奴がこれほどの腕力を持っているとは思えない。



帝国兵

「き、貴様!! 止まるな!!!」


カズキ

「ふざけるな! 戻れ!!」



鎖で綱引き状態。

だが、いくら踏ん張っても引っ張られる。



帝国兵

「まだだ!! この鎖には術印が施されている! 貴様のようなやつでは抗えん!!!」



術印?

そうゆうことか、この怪力はそうゆうことか



ならば仕方ない。



カズキ

「もう一度言う、今すぐ戻れ耳障り」


帝国兵

「はん!! この鎖で繋がれている貴様に何が出来る!!」



もう駄目だ。

どうしようもなく哀れだ、躊躇したのが間違いだった。



カズキ

「アクセルムーブライド ジャンパーハイク」



帝国兵

「何・・・ぐおぉああああああ!!!」



急加速で空へと上昇した。

高さは、この街で一番大きい建物の3倍は飛んだだろう。



カズキ

「あとはあんた次第だ、耳障り」



予定通り、鎖を手放した。

再度掴み直すほど余裕はないようだ。



本当に任務が大事ならと思ったが。

無駄だったな。



帝国兵

「ひぃいいいーー!!!」


落下の衝撃を今朝のように肩代わりしてやることはできる。

だが今後の事を考えるてもしてやる義理はない。



シュタッ・・・。


無事に建物の上に着地は出来た。

一緒に落ちた耳障りは、生きてるみたいだな。


落下先に大きな木があったのか。

運がいいやつだ。



カズキ

「そんなことよりも」



腰のミツバ手に取る。

やはり手錠をした状態だとかなり苦しいか。


だがそれでもやるんだ。

やらなきゃいけないんだ。



カズキ

「アクセルムーブライド! ジャンパーハイク!」



もう一度高く上昇する。

落下しながら街の状況を確認する。



カズキ

「ライブラリングアイ・・・あっちか!」




フェーチスの手伝いをして正解だった。

断片的ではあるが、街の構造は把握できている。


すぐさま急降下に移る。

目標は街の人達を襲うモンスターの頭上だ。



「助けてくれー!!」


「兵隊は何をやってるんだよ!!」


「逃げろぉおお!!」



オークが襲ってる。

近くに冒険者や兵士はいない、だからここを選んだ。



「お姉ちゃぁああん!!」


「この子だけは!」



オークの振り上げられた拳が姉妹に向けられた。



オーク

「うおぉおー・・・ぐぶおぉ!!!!!」



ズドォオオン!!!



急降下からの一撃。

轟音と共にオークの頭を吹き飛ばし撃退できたみたいだ。


「あ、ありがとうございます!!」



カズキ

「ヘイトダウナー」



念の為に姉妹にヘイトダウナーをかける。

これで少しモンスターに襲われるリスクを減らせるだろう。



カズキ

「北へ行け! 冒険者達が避難誘導をしている急げ!」


「は、はい!!」



避難する姉妹を見送る暇も与えてはくれない。

すぐさま飛び次の目的地に向かう。


街全体の把握はしたが戦況がどうなるかはわからない。

2回に1回は状況把握が必要か。


ピョンピョン街を飛び回って人助け。

昔みた外国の映画に出てきたアメコミヒーローの気分だ。



だがこれは映画じゃない、しくじれば誰かが死ぬんだ。

そんなヒーロー気分ではいられない。




-ナイト・アイVer1取得-




建物越しでも見える術技か。

流石だミツバ、これで討ち漏らしが確実に減る。



向かう先は襲われている人達の下。

冒険者や兵士が対応していないところだ。



上空で確認した際には兵士も冒険者も突発的なことで上手く連携が取れていないように感じた。

それに帝国兵ほど当てにならない物はいない。


奴らがいつ責務を放棄するか、時間の問題だ。

もっと早く対応しないと。










カズキ

「7回目!!」



数を数えて奇数の時にはアクセルムーヴを乗せた上昇をするようにしていた。

モンスターの数は確実に減らしているはずなのだが、一向に戦況が変わらない。



カズキ

「ちっ・・・またか!」



戦況把握で一番困らされる物。

それは想定していた帝国兵士の敗走だ。


兵士が対応していると思い任せ、次に飛んだ時にはいたはずの兵士がいなくなっていることが頻繁に起きている。


今から向かうところは最初は兵士と冒険者共に対応していたのにも関わらず先ほど確認した冒険者一人になっていた。

モンスターの数もかなり多かったから注意深く確認しておいてよかった。





ナザ

「サンドショット!!!」



前衛の兵士が逃げやがったが為に時間の問題だ。

だけど、ここで引いたら後ろで匿ってる人達がやられる。


コブリンやハイウルフの程度は知れているが、数があまりにも多すぎる。



ナザ

「ここまでか・・・」




ドゴォオーーン!!!



ナザ

「何だ!!? 新手か!?」



カズキ

「スレイヴスラッシュ!」



振り被りと同時に複数の弾を放つ。

そして追尾性が高い、逃げられないぞ。



ナザ

「カ・・・カズキか?」


フェーチス

「カズキ・・・さん!!」


カズキ

「すまん後回しにして」


ナザ

「まさか、何度も鳴ってたこえー落下音はお前だったのか?」



あぁ、軽く応えながらナザと匿っていた人達にヘイトダウナーをかける。

ナイトアイで人数は大体知っていたが・・・。



ナザ

「もう大丈夫ですよ、立てますか?」



ナザの声掛けが聞こえてないのか、それに腰を抜かしてる人達もいるか。

負傷者が多すぎる。



フィーチス

「もう大丈夫だよ、お父さんお母さん達もきっと大丈夫だから」



子供も多い。

これじゃあ避難は容易じゃないか、仕方ない。



カズキ

「ダメージングシフトライド ヒーリングケア・・・ぐぅう!!!」



負傷者の痛みで血を吐いたか。

ここまでキツイか、今にも意識が持ってかれそうだ。


だが、これで負傷者はなんとかなりそうだ。

あとは怯えてる子達か。



カズキ

「くはぁっ!!」


フィーチス

「まさか・・・今朝のやつを使ったんですか!?」


カズキ

「大丈夫だ、マインド・・・はぁはぁ、リフレッシュ」




光り輝く霧が怯える人達に降り注ぐ、これで子供たちも怯えることもないだろう。

全体の確認をしたところ、負傷者も次々と立ち上がっている、これなら何とか避難は出来そうだな。



カズキ

「はぁ・・・はぁ、あとは頼んだぞ・・はぁ二人とも」


ナザ

「待てよ!!」


カズキ

「時間が・・・はぁ惜しい」


ナザ

「違う!こいつを持っていけ、回復の足しにはなる」


投げて渡されたのは、透明な瓶に入った青色の飲み物。

ポーションってやつか、これは本当にありがたい。


早速蓋を開け飲もうとした。




-エフェクター・アップVer1取得-




アイテム能力の向上の術技か。

ポーションを一気飲みした。


驚くほどに痛みが消えていく。

それにミツバとナザの助けがあったからこそと思うとやる気も満ち溢れてきている。



ナザ

「俺もすぐに援護に行くかよ! それまでくたばるなよ!」


フェーチス

「無理だけは絶対にしちゃダメだからね!!」



最高の激励の言葉達だ。

何が何でも成し遂げる。



カズキ

「わかってる、みんなを頼んだぞ」




二人なら大丈夫だ任せられる。



ミツバ、もう一踏ん張り行くぞ。




--------------------------------------------------------------



【第2都市 ベルドラ 上空】


カズキ

「33回目・・・何とか沈静化したって感じだな、ジャンパーストップ」


術技を唱えた瞬間上昇が止まった、もちろん落下もしない。

俺は今浮遊している。

正確には空中で止まってる。


術技を発動した時で位置で止まるというものだ。

ここからさらに鳥みたく飛ぶことはできないが、今は十二分に良い術技だ。


ミツバこんな戦乱の中考え抜いてくれた代物だ。

ありがたく使わせても貰っていた。



そして戦況は、兵士はほぼ全滅していた。

大半は逃げ出した奴らが多かったが、運の悪いことに逃げ込んだ先で多数のオーク達に襲われたと合流したナザから報告された。


今もなお戦っているのは冒険者達。

そして武器を手に持った人々だ。


俺もできる限り協力をしたかったのだが、冒険者でも無くこんな手枷を付けられた奴の情報を不審に思う冒険者は多くいた。

だから、俺は手が足りない時はナザを介してモンスターの位置情報を冒険者達に伝えた。



それからは、冒険者達の連携が鮮明に変わった。

流石モンスター退治のプロといったところか、次々とモンスターを討伐していった。



そんな中でまさかの協力がいた。

俺は今からその彼女に冒険者達の動きの状況を確認しに向かった。



クレエス

「はい・・・かしこまりました、そのように伝令します通信終わり」



シュタッ



上空からの着地も慣れたものだ。

ボリュームキルを使えば音も出さずに着地できる。


冒険者サイドからの情報がわかればと考え、無音透明で今目の前にいる彼女から冒険者のふりをして情報を聞き出そうとしたのだが、何故かバレた。


俺の名を呼び、用件は何かと問い詰めらた時は心臓が飛び出そうになっていた。

無音透明を確認もしたが正常に機能していた、力を過信を反省していた。



クレエス

「北東エリアの掃討は完了し、そのままBグループは北へ進行し残党の掃討を慣行するとのこと」


カズキ

「そうか・・・なら北西の残党は俺がやる、共有お願いします」



かしこまりました、と相変わらず機械的にしゃべる。

だが彼女の対応速度は機械なんかよりも勝っているものだ。


状況の整理と報告、時には提言し円滑に行う。

冒険者達が想定よりも早く体制を築けたのも彼女の力あってこそだろう。



カズキ

「それでは・・・」



クレエス

「お待ち頂けますか」



急な停止を要求された。

今までこんなこともなかったのに、何かあったのか?


彼女の言葉に身構える。

少し様子が変わったように見受けられるが。



クレエス

「その剣・・・ミツバ様はあれからどうでしょうか?」



どうでしょうって・・・。

なんだ? 心配してくれてるのか。



カズキ

「あぁ、心配かけたみたいだが、もう大丈夫だ」


クレエス

「そうですか、それは何よりです」



俺の返事を聞いてすぐに通信を開き職務に戻った。

少しだけ彼女の顔を確認しすぐに俺も飛び立った。


目的地へ向う途中、先ほどの彼女のことを思い出した。




『それは何よりです』




笑ってた。



正確には安堵の笑みというところか。

ミツバの事を知っている?


あの笑みは悪さを企むような物では決してない。

どこか悲しげでもある笑み。



カズキ

「これが終わったら聞いてみるか」



そう、今は目の前のことに集中だ。

早く対応すればするほど状況は良くなるのは間違いないんだ。



---------------------------------------------------------------


【第2都市ベルドラ 冒険者ギルド ドトル館屋上】


ギルドのドトル館では今、避難民の収容所として扉を開いている。


もっと大きな建物もたくさんあるのだが、冒険者同士の連絡の取りやすさという点でもあるが。

医療設備がしっかりと整っていて、一番受入れがし易いのがここだ。


モンスター達は退かせることができたのだが、負傷者の数があまりにも多い。

それなのに大きな病院が受け入れるのはほとんどが真人。


それ以外の種族は小さな病院やここのような日頃多種族を受け入れている施設に行くしか助からないでいた。



カズキ

「これが・・・この世界で摂理・・・とでも言うわけ」



人種族の差別。

日頃から歩みよることができていればこんなことにはならなかったということか。


いや、俺が見えてなかっただけだ。

表面上しか見ていなかったからそんな感想が出てくるんだ。


もっともっと知らないといけない、この世界で強くなるにはもっと・・・。



今日の事は絶対に忘れない、そしてこの事件の黒幕が必ずいる。

今回のモンスター達は正門から来た物じゃない。


召喚と呼ばれる術技を使ったモンスターの呼び出しだ。

つまりはこの街にいる誰かが意図的にやったものだ。


さらにはあんな大規模での召喚術技の行使。

1人2人の犯行とは到底思えない。


早く突き止めて対応しなくては、いくらモンスターと戦っても解決しない。

今すぐにでも行動したいところだが。



カズキ

「こいつ無ければ・・・」



今もなおがっしりと俺の両腕を捉えて離さない大きな手枷。

戦闘は十分できるが、こいつのせいでこの社会で動くにはあまりにも困難だ。


いつ帝国軍がここに現れて、同じような待遇を強いるかわからない。

動きたいのに動けない。


最悪俺としゃべったというだけで連行されるなんてこのも考えられる。

本当に八方塞がりだ。



自分の詰めの甘さを悔いる。

自己嫌悪にまた陥りそうにもなろうとした時、遠くから悲鳴が耳に届いた。



「うわぁああああああーー!!」」



カズキ

「何、まだ残ってたのかよ!」


すぐさま悲鳴の方向へと飛ぶ。

フラフラな体に鞭打つ。



カズキ

「クリアアップイヤー ナイトアイ」



正確な位置は何処だ。

落ち着け、まだ大丈夫なはずだ。



「誰か・・・助けて・・・」



聞こえた!

まだ生きてる。



カズキ

「頼む間に合え!」



アクセルムーヴ。



カズキ

「居た!」



だが遠い。

そんなこちらの事情なんて関係ないかのように漆黒の甲冑を身に纏ったモンスターは大剣を振り被る。



カズキ

「くぅう!」



この距離であの大剣は止めれない。

絶対に間に合わない。



使うしか・・・ない!



カズキ

「ダメージングシフトォオオ!!!」



振り被った大剣が逃げ遅れた男性を斬り付けた。

だが男性は無傷だ。



カズキ

「ぐはぁあ!!!!」




吐血。

斬られた部分が直接体に移り激しい痛みとして襲う。



カズキ

「ぐぁあぁああああ!!!!」



ボォゴオォオオオー!!!



着地制御なんて出来るはずもなかった。

今も全身に走る激痛に耐え、意識を保つので精一杯だ。



そしてモンスターがこちらにトドメを差そうと近づいて来る。

抵抗しようにも体が動かない。



カズキ

「ぐぅううぅう・・・かはぁっ!」



意識がもうろうとする。

俺の意識が先に消えるか、モンスターに殺さるか。





ふざけるな・・・。





こんな・・・ところで・・・。




カズキ

「まだ・・・・・・まだぁああ!!!」



血を吐きながらも立ち上がれた。




黒甲冑

「っ!!?!」



ビビってやがる。

それは信じられなかったのだろうな、突然上から降ってきて、見てみればただの虫の息の人間一人。

絶対絶命なのにも関わらず立ち上がって何をしでかすかわからないんだから。



カズキ

「はぁはぁ・・・ぶうおぇえ・・・はぁはぁ」



ガタッ、ガタッガタッ、ガタッガタッガタッ



ビビって震える音が甲冑だからよく聞こえる。

最高じゃないか、こんな人間一人も倒せない騎士様ごっこ野郎のガタガタと怯える姿見れるのは。




カズキ

「はぁはぁ・・・来い・・・よ・・・ビビり」




黒甲冑

「っ!!っ!!っ!!っ!!ぐおぉおー!!!!」




俺の挑発が聞こえたのはどうか。

情けない声まで聞かせてくれるなんてサービスしすぎだろう。


ミツバを取り出そうにも意識がもうろうしている。

ミツバ自身も俺の受けたダメージに大きく影響を受けてるんだろうか、度重なる術技で疲れきってしまったのか。



お互い燃え尽きたってことだ。





すまんミツバ・・・。





















































???

「ツイン ナイトレイ・ヴォルグ!」




放たれた二本の術技は螺旋を描きながら、漆黒の甲冑を一撃で貫通させた。



モンスターは死ぬ間際の雄叫びすら上げれずに死に絶えた。



カズキ

「・・・誰・・・だ・・・」




空から舞い降りてきたのは。



一人の人間だ。




???

「私は、ナイクネス帝国第5近衛騎士団団長」




幻覚が見えてるのか・・・?



目の前には。




サナミ

「ヒトミヤ・サナミ です」




黒髪の少女 が立っていた。




カズキ

「日本・・・人・・・?」




ドサッ・・・



俺は完全に意識を失った。









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