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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
序章   Believe in one step
5/70

第5話 冒険者ギルド

【第2大都市ベルデラ 飲食店内】



大都市に到着しフェーチスという村娘に助けがありなんとか街の中に入ることができた。

情報収集も兼ねてフェーチスの作物売買の手伝いをしたらお礼ということで夕食ごちそうになっていた。



夕食が目の前に運ばれ早速食べようとした矢先だった。



???

「フェー!!!チィイ!!!スゥ!!!!!」



何やら物凄い血相をした男、見たところ冒険者か?

フェーチスの名前を呼びながらこちらに近づいてくる。



そんな状況でもフェーチスは出された料理を食べ続けていた。

最初は驚きはしてたみたいだが、声を荒げた男を見るや目の前のから目線を逸らした。


知り合いか。

しかも1、2回会っただけの仲という感じではないな。



???

「フェーチス!!!お前はいつもいつも!!」



男が俺達の席まできた。

これから起きるであろうことが脳裏をよぎる。



???

「冒険者達を悪く言うつもりは一切ないが!! お前はもう少し!!」


フェーチス

「ナザに言われなくたって、人を見る目は持ち合わせてます!!!」



ナザ。

それが今にも爆発しそうな彼の名前か。

身長は180より上で俺よりも大きいか。


格好は見た感じ狩猟の専門家というところか。

身軽な軽装、腰には短剣、メインの武器は背中に背負っている弓か。


髪はかなり長髪で後ろで結んでる。

見ただけではスタイルも良くかなりの美男子、と思うが・・・。




ナザ

「今日の約束も守らないでお前は!!!」


フェーチス

「あれは!ナザが遅刻したのが原因でしょ!!約束の時間から1時間

も待っても来ないナザのせいです!!」


ナザ

「クエストが手間取るのは仕方がないのもわからないのか!!!」




あぁ・・・嫌な予感の序章が的中した。



痴話喧嘩。



溜息を吐きながら目の前に置かれた料理に目が行く。

あんなにも魅力的だったもの普通の料理に見えてきた。



-ライブラリング・アイVer1取得-



ハハハ・・・食材の情報見て少しでも気を紛らわせってことか。

慰めてくれるミツバがやっぱり一番だ。



早速取得した術技を使い、スプーンに乗せた料理の食材を見てみる。

何の肉か、何の野菜か、何処の乳製品か。



カズキ

(あーこれタルシナの食材かー美味そうだなー)


現実逃避、目を逸らす、他人他人、俺は風景俺は風景。

とりあえず口に運ぼう、食事だ食事。



ナザ

「おい!カズキとか言うんだなお前!!!」



スプーンを止めてしまった。

黙って口に運べばいいのに。


仕方ない。

一度スプーンをシチューに置いた。



カズキ

「ボリュームキル」



聞こえるか聞こえないかの小さい声で唱えた。



ナザ

「お前 な 顔だ もし  て・・・っな!!!!?!?」


男の言葉が途切れ途切れになっていた。

なるほど、やはりかける相手の強さに比例するか。


効力が完全に消えるわけじゃないってことか。

ある意味良い収穫だ。


さて、少しは静かになっ・・・。



ナザ

「こ 野 !!!!!」



俺に掴み掛かる気か。

やっぱそうか、どうやっても絡まれるよな、序章だけで終わってほしかったもんだ。



カズキ

「アクセルムーブライド インビシブルムーブ」



スイっと避けれた。

ボリュームキルの事からかなりの手慣れなのはわかったから、ライドを使ってみたが意外と余裕がありそうだ。



ガシャァンッ!!!!



カズキ

「・・・・・・・・・」



男の勢い余って、激突。

俺の飯と。



店員

「御客さん!うちでの揉め事は厳禁だよ!!」


フェーチス

「すみません!すみません!すみません!お皿は弁償しますから!!」




こうして俺の異世界初の食事は終わり告げたのだった。










-----------------------------------------------------------------------



【第2都市ベルドラ 道中】


一悶着起こしてしまったが、ひとまずは無事に店の外に出れた。

あれからというもの、ナザという男を静めることと、食事が台無しになってもう一品奢ると迫るフェーチスに結構食べたからと言い治めるに無駄な労力を使ってしまった。


最終的にはナザが宿代を奢るという事で終着した。



ナザ

「しっかし記憶喪失とはなー大変なんだな」



そしてこの賢者モードである。

大変だと言うが、記憶喪失という所までに話を持ってく方がめちゃくちゃ大変だったぞ。



ナザ

「改めて自己紹介させてもらうぜ! 俺はナザ・ベレース冒険者だ!」



改まってそんな清らかに自己紹介されても。

あれか、フェーチスの事になると周りが見えなくなるとか言うやつか。



フェーチス

「カズキさん本当にすみませんでした、ナザは昔から荒くて考えなしで・・・」


ナザ

「はぁ!!?」


フェーチス

「だって本当のことでしょっ!!!10歳の頃だって!!!」


カズキ

「ボリュームキル、ボリュームキル」



まさかこの術技はこの二人の為に生まれた物なのかと勘違いするほど今日は使った。

一番最初はまさか言葉がぶつ切りでも会話をしてる珍現象を披露してくれたが、徐々に空気を呼んでくれるようになってくれた。


もう夜なんだ、頼むからそれくらいの空気は呼んでくれ。

そして流石に察したのか、二人は反省し静かになる。


解除。



ナザ

「すまねーな、フェーチスとは昔からの馴染みでどうしても喧嘩になっちまうんだ」



幼馴染。



なるほどね、ようやくわかった。

フェーチスという悪徳天然ジゴロ村娘にどうして悪い虫が付かないのかという理由が。


それはナザという白馬の王子の冒険者がお守りしているからということか。

なんて涙ぐましい話しだ、拍手を送りたい。


そんな俺を余所に、二人はお互いの説明、生い立ち、性格、仕草などを小声でテンション下げ、落ち込みながら紹介しながら喧嘩していた。

だが、全く何を言っているのか聞こえない。



カズキ

(というよりも俺は一体何を見せれているんだ)




-クリアアップ・イヤーVer1取得-




聞く無いよミツバ、でもありがとう。

俺を慰めてくれるのはやっぱお前だけだ。




そんなあまりに特にもならない道中を終え、目的の宿屋に到着したのだった。



----------------------------------------------------------------------



【第2都市ベルデラ 宿屋】


ここの宿屋は二人のお気に入りとのことだ。

値段良し、治安良し。


宿主が元衛兵ということもあり警備もばっちりとのことだ。



フェーチス

「それではカズキさん、おやすみなさい」


ナザ

「へっ!」


カズキ

(はぁ・・・)



さっきから溜め息しか出ないでいた。

部屋に入ると二段ベッドが一つとテーブルが一つに椅子が二つ。



ナザ

「おい」


投げられた物をキャッチした。

干し肉?ジャーキー?



ナザ

「俺のせいで何も食ってないんだろう、よかったら受け取ってくれ」



椅子に座り俺に渡した物と同じ干し肉を頬張る。

気品なんて眼中にない野生的な食べ方だ。


嫌いではない。



カズキ

「・・・カズキだ、でこいつはミツバ」



今思えばナザという男のことはフェーチスから所々痴話喧嘩の中で知ったが、俺からは何も言ってなかったな。



ナザ

「・・・・・・何だよ、ずっと目付きわりぃ死んだ目してっからしゃべんねと思ってたが」



椅子から立ち上がる。

そして口には干し肉を咥え左手で頬張りながら右手を出した。



ナザ

「ようこそ、ベルドラへ! 歓迎するぜカズキ」



夜天の光り加減のせいか。

さっきまで猿のように痴話喧嘩していた男とは思えない。


格好も乾燥肉加えて握手なんて、あっちの世界でも聞いたこと無い。

これがこの世界では当たり前なのか?


あんなに大変な思いさせられて、干し肉やるから許せって?

とんでもない奴だ、俺は知ってるどうせまたフェーチスとの痴話喧嘩を止めさせられる羽目になるんだろ。




だけど。



たまには止めてやるかと、という自分がいる。



カズキ

(あむっ・・・)



これが異世界で初めて物を口に入れた瞬間か。

思ったより辛いなこの干し肉。


思考は全部、愚痴しか出てこない。

こんなに愚痴っぽかったのか俺。


昔の自分が最近思いだせないでいた。

過去の経験を捨てることは出来ないが、今は何故か忘れることくらいは良いのではとも思う。


そんなことを想いながら、ザナの右手を握る。



カズキ

「こちらこそ、よろしく」




左手は干し肉を頬張りながら。





-スレイヴ・スラッシュVer1取得-





今この瞬間の優越感をミツバは黙って許してくれ、2日目の異世界冒険は幕を閉じた。




-----------------------------------------------------------------------


【第2都市ベルデラ 道中】


日が明けて早速行動を開始した。

昨日の夜はナザのいびきをボリュームキルしたおかげでよく寝れた。


朝に3人で各自の行動を話し合った。

フェーチスは売買の再開、そして俺はナザの誘いで冒険者ギルドの場所へと向かうことにした。


道中ナザに記憶喪失の件をできれば黙っていたいことをお願いし、俺はタルシナ村出身の真人ということにしてもらった。

話しを聞くかがりではタルシナ村出身の冒険者はナザ一人らしい。


ある意味好都合だ。

もちろんそれでも下手なことはしないように注意しなくてはいけない。



ナザ

「よーし!俺に任せておきな!」



ナザが先頭してくれた。

遠目からの冒険者ギルドの建物は想像していたよりも街の風景に溶け込むほどの地味さだと思っていた。


だが、いざ建物の目の前に立つと不思議と緊張した。

見上げた感じでは5階建てくらいか。



ナザ

「どうしたカズキー! ビビっちまったかー!」



ぼーっと建物を見上げていた。

この世界に来てからというもの気を抜いてしまうことが多くなった気がする。




-マインド・リフレッシュVer1取得-



カズキ

「ありがとうな、ミツバ、せっかくだし早速使うよ」



マインド・リフレッシュ。



唱えた瞬間体から緊張が抜け、逆に緩んでたネジが締まったように感じられた。

いつもありがとうなミツバ。



よし、と気持ちも整えたところでナザの後に続いた。

そして冒険者ギルドの世界に身を投じたのだ。




【第2都市ベルデラ 冒険者ギルド】


中に入るとそこは本当に自分が異世界にいるのだと再認識させられた。

一人一人違う防具や甲冑の格好。


十人十色の剣、弓、杖、大鎚などの武器。


そして何より人種もバラバラ、犬、猫、エルフ、ドワーフ、リザードマン。



この光景に昨日ナザに言われた死んだ目を見開くほどだ。

見開くだけで立ち止っていた。


そんな俺を見かねてか、一人の女性が近付いてきた。



受付嬢

「ようこそ、冒険者ギルド ドトル へ」



スタイル抜群の真人。

どうしてこう、どの世界でも受付の人間はこうなんだ。


組織の顔だから、そんなことめちゃくちゃ聞かされている。

全世界共通の有意義な選択ということか。



受付嬢

「本日は、ギルドのご登録でしょか?」



察しがいい。

専門家だものな、当然か。



ナザ

「そうなんですよレザリアさん!!! 俺の弟分のカズキって言うんですけどね!! こいつ俺に憧れて冒険者になりたいって!!」



何をとんでもない捏造をしてるんだこの馬鹿は鼻の下伸びきってるぞ。

あとのフェーチスにチクってみよう。



レザリア

「そうでしたかナザ様のご友人ということですね、初めまして、私はこの冒険者ギルド ドトルの受付を務めさせて頂いてます、レザリア・パルセントと申します」



形式かかった挨拶後に綺麗にお辞儀をされた。

そしてその際に見える光景に男の男性の冒険者はどれだけ虜になってしまったのだろうか。


横にその1がいたか。



カズキ

「カズキです、よろしくお願いします。 タルシナ村からは殆んど出たことがないので右も左も分かりませんがよろしくお願い致します」



良い子ぶっとこ。



レザリア

「かしこまりました、早速冒険者登録のお手続きをさせて頂きますのでこちらへお越し下さい」



奥にある受付カウンターに手招きされる。

先ほど外装は地味なんて言ってしまったが、内装は想像以上だった。

清掃もしっかり行き届いていて、装飾品などもバランスよく配分されている。



ナザ

「早く戻れよ!!! 独り占めしてたら絡まれるからな!!!」



ナザからの忠告を背に奥へと歩いた。

その忠告の原因の受付嬢のレザリアさんは一足先にカウンターに着き書類等の準備を済ませてくれていた。



カズキ

(あぁーこれあれだ、役所の手続きまんまだ)



社会人なら誰しもがやったことあるであろう作業。

書類の内容も役所に比べて簡易的ではあるが、一緒だ。


契約規約を読み、サイン。

契約規約を読み、サイン。

契約規約を読み、サイン。


最後には自分の個人情報の記載してサイン。



カズキ

(別に期待をしてたわけではないが・・・なんかなー)



そんなことを考えながらも作業をこなし終えた。



レザリア

「ありがとうございます、驚きました初めて方はもっと手間取ったり規約をしっかり読まない方が多いのですが」



そんな称賛嬉しくねー。



レザリア

「それでは最後のお手続きになります2階へお進みください、クレエスという者がいらっしゃいますのでお声掛けをして下さい」



最後の手続きか。

セオリーではまた同じようなことをさせられるのだろう。



ナザ

「おぉ!早かったな今から2階か?」


カズキ

「あぁ、また同じような書類作業はもうこりごりだよ」



一緒に階段を昇るが。

何故こいつは変に上機嫌なんだ?



ナザ

「これからやることは、冒険者の適正を調べる為の神聖な儀式なのだ!」



ドヤ顔で首にぶら下げている装飾品を見せる。

チェーンで飾られたプレートのような物。


色はブロンズカラーの物だ。

このプレートは知っている、この街に来てから付けている人を多く見掛けたがそうゆうことか。


冒険者の証。

そしてこれが冒険者の身分証明書となりあの通行手形にも使えるっていう代物か。


そして今から俺はそれを作りに行くと。

それでナザがウキウキしているのは恐らくこの証には冒険者のランクみたいな物がわかるシステムになっているんだろう。


適正のある者は最初から高いランク付けをして、低いランクの者は鍛練を積みランクを上げていけと、こんなところだろう。



冒険という名の縛りのない物のはずなのにな。

もちろん最初はそんなことはなかったのだろうがこれは物の摂理か、システムも環境が変われば存在価値が変わる。



意図しない物が生まれることなんてのは当然の話か。

意思疎通をするどの世界でも同じということか。




-ストライク・アップVer1取得-




なるほどなミツバ、力を示せ。

この世界は力を示しやすい、そう言いたいんだな。




ナザ

「いたいた、あの人がクレエスって人だ」



ナザが指さす方へ視線を動かす。

そこには真人ではない女性がいた。


だが、その女性は今までに出会った者とは異質な空気を醸し出していた。



クレエス

「初めましてカズキ様、レザリアから聞き及んでいます、私はクレエスと申します。今回カズキ様の冒険者適正を御調べするお手伝いするように命じられています」



白くない肌、メガネ越しでもわかる綺麗な紫の瞳。

ダークエルフ、だがエルフの特徴である耳が真人のそれと変わらない。


そして何よりも。



クレエス

「お察しの通り私はハーフのダークエルフです、ご不満があるようであれば別の者をお呼び致しますが」



淡々としゃべる。

まるで人形。


カズキ

「いえ、あなたにお願いします」


クレエス

「かしこまりました、それではこちらに」



機械的に振舞う。

先ほどの受付嬢とは正反対の存在。


まるでこの世界に来る前の自分を鏡で見ているようだった。



カズキ

(だとしても、かける言葉なんて無い・・・か)



無力?

違う、そんな偽善的な考えはない。


ただ、クレエスという初めて会った女性の印象が強かった。

本当にただそれだけだ。





【冒険者ギルド ドトル 2階適正鑑定室】



案内された部屋の中に入るとこれと言って特別な物はなかった。

強いて言うなれば装飾品が他と比べて少ないくらいの印象だった。



クレエス

「それでは、説明をさせて頂きます」



適正鑑定の説明が始まった。


小さな小箱を渡された。

中に入っているのは白いプレート。



このプレートは冒険者の証。



今からこのプレートを俺が手に触れ。

その際にプレートの色が変わり紋章が浮かび上がるとのことだ。


色は特別な意味を持たないようだが、浮かび上がる紋章によって受けられるクエストを決めることが出来るようだ。


つまりその紋章が、ランク ということだ。

ランクが高い奴、低い奴と決められるシステムだ。


細かい説明もしてくれたが、あまり耳に入ってこなかった。

恐らく新参者の冒険者はここでワクワクとした高揚感を味わってきたのだろう。


どうも一切その感情が浮かばない。

ただただ不愉快なだけだった。



クレエス

「説明は以上ですご質問等なければ初めて下さい」



変わらず淡々としゃべる。

どうやら彼女はこの鑑定の記録係りということなのだろう。

じっと俺を見つめる。



カズキ

(これを手に持てば冒険者・・・それと同時に格付けか)



簡単だからこそ、余計に不愉快だ。

格付けというものをこんな簡単にできることにだ。



逆に考えれば、簡単だからこそ潔いのかもしれないな。

冒険者にはこれが丁度良い、どれだけの歴史があるか知らないがそういったことなのだろう。


無理やりにも自分を納得させた。

させなきゃ進まないから。



カズキ

「すぅーーー・・・っ!」



大きく息を吸い止めて、白いプレートへと手を伸ばした。



小箱からプレートを取り出し手に取った。



目線をプレートにやっているとそれは急に起きた。




クレエス

「っ!!?」




部屋の中が激しい光りに包まれた。

俺がこの世界で目覚めた時と同じ蒼い光りだ。



カズキ

「っ!! ミツバお前」



腰に下げていたミツバを見た。

やはりこの蒼い光りはミツバから発されている。


咄嗟にミツバを手にした。

抱きかかえるようにし呼びかけた。



カズキ

「落ち着けミツバ!!! どうしたんだ!!!」



いつもの様子じゃないのは誰が見たってわかる。

蒼い光りが一向に収まる気配がない。


さらに強く抱きしめる。

これが正解なのかなんてわからない。



だけど今はこうしてやるのが一番だと感じた。



カズキ

「くぅっ!!! ミツバ・・・!」


ナザ

「おいおいどうしたんだこりゃ!!!」


レザリア

「カズキ様!? クレエス!大丈夫!!?」



続々と人が蒼光りする部屋の中に入ってきた。

部屋の外では他の冒険者やギルド関係者達がざわついている。



誰もがこの現象に驚きを隠せないでいる。



カズキ

「くそっ!これが原因か・・・!」



握り拳の中に握っているプレートを投げ捨てようとする。



だが。



カズキ

「なっ!? 手が!!」



握られた拳が開かない。

力を入れても全く開かない、まるでプレートに括り付けられたかのような感覚だ。

どれだけ力を込めてもビクともしない。



ナザ

「カズキ!!!」


カズキ

「駄目だ!!来るな!!!何があるかわからない!!!」


ナザ

「だが!!」


カズキ

「ナザ!!!」


ナザ

「くっ・・・!」



どうする!?

このままだと本当に何が起きるかわかったもんじゃない!


ここから飛び下りる?

駄目だ!外には大勢の人間がいる、最悪巻き込んでしまう。



カズキ

「くそぉお!!こいつさえ!!!」



原因は十中八九こいつだ、ギルドプレートだ。

どうしてこんなことになってるかなんてわからないが、こいつがミツバの気に触れたのだけはわかる。


カズキ

「頼む!!ミツバ!! ミツバ!!!!」




-フリューゲル・フィンガーVerX取得-





ミツバが答えてくれた!



カズキ

「うあぁあああ!!!!!!」



ミツバが暴走したんじゃない。

きっと俺から何かを守ってくれていたんだ。


この異世界に最初に来たときのように。

自分の力を振り絞り俺を守ってくれた。



そして今も・・・。



カズキ

「フリューゲルゥゥウ!!!!」



いつも迷惑ばかりかけてごめん。

前の世界の記憶に引っ張られてばかりでごめん。



でも、絶対に俺は・・・約束を守る。



その為にも!!




カズキ

「フィンガアァアアアアアーー!!!!!!」




術技が発動した瞬間頑なに握られた右手が離れた。

そして同時にギルドプレートが床に落ちた。


それを見て安心したのかミツバの光りは徐々に消えていった。





まるで蒼いギルドプレートを見て落ち着いたかのように。




-----------------------------------------------------------------------


【冒険者ギルド ドトル 5階聴取室】


あれからというもの、俺は今回の件で事情聴取を受けた。

記憶喪失ということがバレてしまった。



エイジルト

「それで君は記憶喪失で目覚め、鼠人族の助けを得たてこの街に着たそうゆうことだね?」


この男はエイジルトと名乗った。

薄気味悪く、ねっちこいしゃべり方で事情聴取と言う名の拷問。

よく言ったもんだ、聴取というのにこちらの声は届かない。


今目の前にいる男は俺が何かしらの反逆者ですと言わせるのが仕事だ。



『####カズキは、有罪とする!』



嫌な思い出が過ぎる。

出来るだけ思い出さないようにとミツバと約束したのに。



エイジルト

「そしてフェーチスという娘を利用しこの街に潜入、そこから更に冒険者ナザを利用しここ、ギルドドトルへと侵入することに成功したということだね?」



棘しかない言いようだが、間違いではない。

確かに俺はあの二人を利用していた。


運がよかったから利用した。

二人とも知性に乏しいと思ったからか。


考えなかったと言ったら嘘にはなるかもしれない。

だがそれを言われるのも考えさせられるのも不愉快だ。



エイジルト

「これで全部・・・でいいのかな?」



今ならまだ間に合う、とでも言いたげな言い方だ。

恐らく、こいつは握っているのだろうあれを。



エイジルト

「先日ねー、帝国兵士6名が極秘任務から帰還したんだがねー」



やはりか・・・。



エイジルト

「物凄い痛手を受けたみたいんでねー、もちろん極秘任務ということだから詳しく聞けなかったのだがねー」


カズキ

「あんた、冒険者ギルドの人間じゃないのか? どうしてそこまで帝国兵士の事を気にする?」



そう、今現在はまだ冒険者ギルドでの事情聴取ということで済んでいる。

それがもし帝国軍での話しとなると、即刻死刑。


帝国に仇なす反逆者として遂行されるのだろう。

だが、今はギルドで起こった出来事だ。



エイジルト

「いやいや、ただの世間話さ。確かに私には帝国貴族との親交もないわけではないがねー?」



なるほど、俺を売り払って爵位を得るとかそんなところか。

あの蹴散らした兵士達の中にそれが出来るほどのボンボンがいてもおかしくはない。



エイジルト

「でーー、話しを戻すけど・・・本当にこれで全部、ということでいいのかな?」



カズキ

「・・・・・・・・」




俺は・・・帝国兵士達との戦いの事を話した。

無理だとは思いながらも帝国兵士達が無抵抗の鼠人族を殴り付け、土地の規約に反したことをしていたことも伝えた。


そして今回の件は俺にもわからないということをとにかく言い聞かせた。



それを聞けて満足したのか、俺は解放された。




----------------------------------------------------------------------



【冒険者ギルド ドトル館】


階段を黄昏ながら下りていた。

結局胸躍る冒険者とやらにはなれなかった。


就職活動ではよくあったことか。

いかんいかん、昔のことは思い出さない思い出さない。


首を振り気持ちを切り替える。



ナザ

「カズキ!」


フェーチス

「カズキさん!」


1階から二人が上って来た。

珍しく痴話喧嘩をしていた様子がないのに驚いた。


ナザ

「大丈夫か!? もう動けるのか?」


カズキ

「あぁ、心配かけたな」


フェーチス

「内密にっていうことみたいだけど、ナザから聞きました、大変だったと」



今回の一件は、ドトル内だけの話しということで他言無用をギルドは冒険者達に告げた。

原因もわからずに下手に街の人々に不安を与えない為の処置。



原因不明、当事者の俺もわからない始末だ。

ミツバの暴走、いや確実にミツバは戦っていた。


当時を思い出しながら右手を見る。

本当ならプレートが変化して終わるはずだった。


だが、あの時ふと感じた違和感がある。

確証があるわけではないが、何か得体のしれない物に俺の右手は掴まれていたようにも感じた。


今思い返してみれば手に取ったプレートが一瞬色が黒くなりかけていたようにも思える。

クレエスさんの説明によれば色は関係ないおまけのような物。


だが、手に持った白いプレートの色が変わろうとした一瞬の後にミツバが光り出した。



プレート・・・色・・・。



あまりに情報が無さすぎる。

いくら考えても俺の異世界の知識なんて微々たる物だ。



ナザ

「おいまさか、エイジルトのおっさんになんかされたのか!?」


フェーチス

「えぇ!? ほ、本当に大丈夫なの?」



凄く心配されている。



そうかエイジルト、あの聴取官に話したんだっけか。

帝国兵士の暴虐な行為、それを一緒に退けた。


美化した言い方だが、間違いではない。



カズキ

「本当に大丈夫だ、心配は無用だ・・・ただ」



口が勝手に動いた。

俺は今何をしゃべろうとした。


目線を二人に向けると、俺の言葉を真剣な目で聞こうとしていた。

無意識に俺は、この二人には知っておいてほしかったのかもしれない、帝国兵士と戦ったことを。



知ってほしい、自分の事を・・・か。




-ダメージング・シフトVer1取得-




お、よかったミツバ起きたんだな。

そしてそれはお前からの後押しか?


やっぱりお前には敵わないよ。




そうして、ナザとフェーチスに帝国兵士との戦いを伝えた。

俺がどんなことをしたのか、そして鼠人族が物凄く強いということもしっかりと伝えた・・・。









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