第十二話 採掘市街 ダンズ
カズキ達と四人の子供達はダンズという採掘市街へと配達の仕事で訪れた。
これまで子供達は多くのクエストなどで疲労が溜まっていることをからカズキは休息も兼ねて子供達を目的である博物館を見学させた。
そこにはヒルメとチヨーというケイト達と同じ年代の子供も見学をしていた。
小さいいざこざがあったもののまだ二人の少女がアンリバンデットと呼ばれる者達であることを子供達もカズキも知らない。
そしてアンリバンデットが博物館を訪れていた理由も当然、知る由もなかった・・・。
【とあるダンズ宿屋の食堂】
ヒルメ
「あぁあーーもう!!腹立つし腹減るし忙しい」
チヨー
「ヒー、さっきからうるさい」
ヒルメ
「だってさぁあー!! 聞いてよぉおー!!」
チヨー
「昼食が始まってから4回聞いた」
コートス
「あははは・・・」
博物館からヒルメ君を担いで宿屋まで来て数分後にチヨー君も合流してくれ僕達は昼食を取ることにした。
一応あれからヒルメ君には注意を促したつもりだけど、いつも通りに流されるだろうと思い肩を落とす。
とはいえ、今のところ警備団沙汰にならなかった事だけは不幸中の幸いだと思う事にした。
それよりも・・・。
チヨー
「ん、コートス、さっきから黙ってる」
ヒルメ
「また腹痛ーー?」
コートス
「え!? あーいや大丈夫だよ、ちょっと考え事しててさ」
ヒルメ君の様子から察しても僕の気のせいだと思いたい。
あの時。
博物館で言い争いの中で僕と同じように子供達を止めたあの男。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
彼の目から感じたもの。
それがどうしても忘れられないでいた。
ヒルメ
「トイレ行くなら早めにねーー」
コートス
「だだだ、大丈夫だよ・・・まだ」
改めてヒルメ君の様子を伺っても特に気にしていないところを見てもやはり僕の気のせいだったと信じよう。
結局あの後あの男は意味もわからず顔を向けずにただ笑っていただけだったのだから。
今はまだ考えないでおこう・・・。
チヨー
「今日の予定、物資の確認」
コートス
「あぁ、そうですね。 昼食を終えたらすぐに行きましょう」
ヒルメ
「けーー、こんな気持ちでお仕事なんて、なんかヤな感じーー」
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【採掘市街ダンズ 宿屋】
カズキ
「んじゃあ、行ってくるけど・・・」
カズキのあんちゃんが新しい仕事ってやつに向かう。
いつも通り爽やかな表情を俺達に向けるが、心配が拭えないって感じの顔にも感じた。
ダツ
「他の人に迷惑は掛けない!」
ケイト
「絶対に無理しない!」
ミニア
「変な事に首は突っ込まない!」
ネーネ
「何かあれば、このインカムですぐに連絡! です」
あんちゃんがネーネに渡した新しいインカムって機械。
本当なら全員分用意したかったと言っていたが一人分しか用意できなかったって説明を受けた。
みんなで話し合って誰が一番最初にインカムを持つのがいいか四人で話し合った結果、ネーネが持つのが良いってことになった。
カズキ
「うん、それじゃあ改めて行ってきます」
四人全員であんちゃんを見送った。
あんちゃんは術技で空高く一瞬で飛び立ち俺達の前から消えた。
相変わらずすげぇーなーって気持ちといつか俺もあれやってみたいなーという気持ちを抱いた。
ダツ
「んで、どうするよこれから。ただ待つだけじゃ勿体無いよな? クエストでも受けに行くか?」
ケイト
「んーー・・・ウェイスとは勝手が違うから・・・」
そっか・・・俺達の事知ってるウェイスのギルドならいくらでも融通が効きそうではあるけど、ここは違うもんな。
冒険者預かりって特別感のある物ではあるけど、不便っちゃ不便なのかと今更になって気付く。
ミニア
「ならさ・・・!」
ミニアが背負っている卵を指差して口を開いた。
ミニア
「この子の事、私達だけで調べられないかな? 街の探検を兼ねてさ!」
ダツ
「いい案だけど・・・それお前が色々回りたいだけだろ」
ミニア
「あははー、まぁそうとも言う」
でも、それくらいが丁度いいかもとケイトが言った。
元々この卵の事は慎重にやることを取り決めた。
今はカズキのあんちゃんもいないし、俺達に出来ることは本当に限られてる。
ほんの少しでいいから卵の事が知れたらいいと思うし。
ネーネ
「ならさ、またあの博物館に行かない? あの館長さんにそれとなく聞いてみようよ」
ミニア
「確かに人当たりも良さそうだし、良さげな所教えてもらえるかもね」
一先ず博物館にもう一度行くことに決まった。
特別反対する理由も思い付かなかったし俺も賛成した。
一つ心配事があるとすると今卵を背負ってるミニアが変な空回りしない事をくらいだけど・・・。
ダツ
「そんじゃー出っ発ー!!
「「「「えいえいおぉおーー!!!」」」」
・
・
・
【採掘市街ダンズ ブレレント博物館】
私が卵を背負い、四人で再び博物館を訪れた。
子供は入場無料ということもありすんなり入館出来た・・・が。
ケイト
「忙しい・・・ですよねー・・・」
博物館に入ってすぐの案内所で館長さんに会えないか聞いてみたが、当然多忙ということで断れた。
理由を尋ねられたのでさっきの事の謝罪とか見学の感謝とかの理由だけじゃ会わせてくれないのは当たり前か。
卵の事を聞きたいとは出来るだけ言いたくないので私達は変に食い下がらずに退いて博物館の中の休憩スペースで改めて作戦会議を開いた。
ダツ
「どうすんの?」
ネーネ
「どうしようか・・・」
一気にお先が真っ暗になってしまった。
無差別に聞いて回るのは流石に愚策過ぎるし、私達にとって初めて訪れる街、知らない街。
地理も詳しくなければ人の伝手なんて物も当然あるわけがない。
ケイト
「冒険者って大変なんだね・・・あはは」
ケイトの言う通りだ。
カズキさんの背中をくっ付いて来てただけの私達は感覚が麻痺していたのかもしれない。
今までの物はあくまでカズキさんの伝手や力であり私達が何かをしてきたから出来たものではないと痛感する。
モンスター討伐だけじゃなくてそういったことも今後は必要になるのだと勉強させられる。
ミニア
「よしっ! なら・・・無いなら作ろう!!」
私は立ち上がり握り拳を二つ胸元で作った。
その姿にみな注目していたので私は続けた。
ミニア
「私達は私達の伝手・・・というよりも情報収集能力を身に着けなきゃ! 今後の事も考えるときっと大事になるんだから!」
ネーネ
「それも・・・そうだね・・・」
ダツ
「そう・・・なるよな・・・」
ケイト
「うん・・・」
私は無理やりやる気を出したけど、思ったよりみんなと波長が合わない気がした。
三人を見渡しても思ったほど乗り気じゃない・・・みたいだ。
ミニア
「そうと決まればまずは・・・! まずは・・・?」
あれー?
思った以上に言葉が出てこない。
というよりも何も思い付かない。
つい口を開けたまま顔が天井を見始める。
何も思い付かない中私だけがここまでみんなとテンションが違うのは、単純にこの街に誰よりもウキウキしているからなんじゃないかと思った。
多分そうだ・・・きっと・・・。
ミニア
「んーーー・・・はぁ・・・」
溜息が出た。
そんな時だった。
ネーネ
「ん? インカムが・・・通信かな?」
ネーネが持っているインカムが鳴った。
通信だ。
ちょっと動揺した表情でネーネは私達を見る。
そんなネーネに対して私達は無言で首を縦に振った。
ネーネ
「ふぅ・・・、・・・は、ひゃい!ネーネです!」
完全に緊張しているのがもろわかりだ。
いやでも、私がネーネの立場だったら同じような事をしている自信がある。
そんな事を思っているとネーネがインカムを浮遊させた。
これは、いつぞやのような・・・。
団長
「こんにちわみんな、サナ・・・団長です」
知った声が聞こえた。
この優しさに満ち溢れた声は団長さんだ。
いつぞやのダンジョン以来だ。
団長
「事情はカズキさんから聞いてるよ、それで・・・困ってたりしてないかなと思って連絡しました」
ぐっ!
とみんな固まってしまった。
図星だ。
救いの女神とはまさにこの事だろう。
藁に縋るどころか女神に縋ることが出来て私達は早速団長さんに相談に乗ってもらった。
ある程度事情を知っているからこそ包み隠さず相談できる人がいるというのは本当に恵まれていると思う。
団長
「そっかー・・・確かにそうなると大変だねぇ」
ミニア
「そうなんです、慎重にしたいからこそってことで・・・」
団長
「んーー、ならねぇー」
少し悩んでくれてすぐに団長さんは言葉をくれた。
団長
「初心に戻る! ってのはどうかな?」
ダツ
「・・・・・・え?」
みな耳に入った言葉を理解出来ていなかった。
団長さんは続けてくれた。
つまり悩んでいる時こそ初心に戻ることが大事だと教えてくれた。
団長
「今出来ることってことも大事だけど、慎重に事を進めたいなら自分達が今までやってきた事、一番理解しているであろう事を基準に考えてみる、こういった意味も込められてるの」
一番理解していること、得意な事ってことなのかな。
なんか余計に悩ましい気もする。
事の整理にも繋がるとも教えてくれてはいるけど、まだ今一ピンと来ない。
団長
「あはは、ごめんねちょっと私の言葉足らずだったかな・・・」
ケイト
「いえ! あっいやそんな・・・」
団長
「つまりは! 私の提案としてはまずは・・・!」
団長さんが意気込み私達に指示をくれる。
が。
???
「また抜け出してるーー!!いたぞおおおーー!!!」
???
「団長ぉおぉおぉー!!!!」
ネーネ
「あーぁ・・・」
これはお決まりのパターン、というやつだ。
よく知ってる。
団長
「待ってぇぇええーまだ伝えt」
プツンと浮遊するインカムから声が途切れた。
「「「「・・・・・・」」」」
静寂が私達を包む。
言葉を発する空気を殺している。
何の時間だったのか。
逆にもっとわからなくなったまである。
ミニア
「とりあえず、出よう」
何となく、私達は博物館を後にしたのだった・・・。
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【採掘市街ダンズ 外周区】
みんなと離れ俺は教授の指示に従いある場所へと向かった。
そこはさっきまで子供達と居たような雰囲気とは真逆の場所だった。
真逆。
教授がこの街を好きじゃないと言っていた一面だ。
「この野郎がぁあああああー!!!!」
スキンヘッドの大男が殴りかかってくる。
カズキ
「っ・・・!」
大振りの拳を避け距離を空ける。
だが、大男の攻撃は囮か。
距離を空けた俺目掛けて2人の男が剣を振り上げ襲ってくる。
奴らが剣を振り下ろすよりも先にミツバを構え大きく振るう。
「ぐうっぅうう!!」
「こいつぅぅう!?!?」
俺の振るった風圧で飛んできた奴らは思い通りに吹き飛んでくれた。
カズキ
「後か・・・!」
今度は俺の背後から弓を構えてる奴らが数名か。
休みを与えまいとすぐさま俺目掛けて矢を撃ち込んでくる。
最小限の動きで避ける・・・が。
カズキ
「っ・・・術技か」
放たれ地面に刺さった矢の中の一本からツルが伸び俺の足に絡み付く。
動きを制限させる物か。
「もらったぁああ!!!!」
俺の動きが止まった事を確認した大男が一気に接近してくる。
性懲りも無く腕を大きく振り上げる。
カズキ
「ふんっ!!!」
俺の手と大男の拳がぶつかる。
強い風圧衝撃を生み出す。
確かに腕力だけなら互角・・・か。
いや、それだけじゃない。
カズキ
「無駄に統率も取れている・・・!」
ミツバの風圧で吹き飛ばした2人が再び襲いかかる。
左右同時に動きを止めている俺目掛けて走り込んで来る。
足場はツルのおかげで動きが制限されている。
なら・・・。
俺はミツバ地面に思いっきり刺し込みトリガーを引いた。
「あん!!!?? ごぶうぅ!!」
「地面からだとぉお!? ぐぶうぅぅ」
再び奴ら2人には吹き飛んで貰い・・・その光景を見て大男は気を緩めた。
その隙にミツバ引き抜きツルを切り取る。
「こいつっ!!」
大男の拳を受け止めていた手で払い除けると同時に腹部へと蹴り込む。
身体を曲げながら大男もその場から吹き飛ぶ。
すかさずミツバを上空へ向けトリガーを引く。
上空に飛んだ弾丸は5つに分裂し建物の屋上にいる弓兵目掛け襲い掛かる。
カズキ
「これで・・・ひとまず・・・」
いや、まだ・・・いる。
カズキ
「っ・・・!!」
その場からすぐさま飛び攻撃を避ける。
鞭・・・? いやあれは・・・。
???
「へぇー! 今の攻撃を避けたんだ凄いじゃん」
建物の隙間から人影か。
見たところ・・・女か。
上半身は軽装ヘソが見えるレベルの軽装。
下は分厚い布をスカート状にしてるのかわからんがジャラジャラと装飾品が目立つ。
???
「随分とあたい達の子分共を可愛がってくれたみたいじゃないか」
カズキ
「何を言うかと思えば、俺はただ人を探しに名前を聞いただけだ・・・シャヌアっていう、蛇腹剣を持った女にな」
シャヌア
「何それ・・・つまりわかっててここに踏み込んできたってわけ? 気に食わないわね」
蛇腹剣を撓らせる。
そう彼女の言う通り、俺はわざと問題を起こした。
変にひた隠しされるくらいならこっちから首を突っ込もうっていう時間短縮だ。
こいつらが最終目的じゃない。
シャヌア
「気に食わないだけじゃなくて生けすかないねー、あんた女の扱いってものわかってないでしょ?」
カズキ
「男の扱い方を勘違いしてる女を女性扱いできるほど男ってのは器用じゃないぞ? 勉強になったか?」
シャヌア
「口も減らない・・・奴がぁあ!!!」
蛇腹攻撃・・・早い。
ゴォオオオォォォオォォオオオオッォオオンンー!!!!
強烈な一撃が地面に叩きつけられ辺りが土煙りで覆われた。
シャヌア
「どうせ食らってないんでしょ、出てきなさいよ」
女の言う通り俺は無傷だ。
ミツバを払い土煙りを退かす。
カズキ
「口論くらいで済ませられると思ったが、これだから女ってのはすぐに手を出す」
シャヌア
「口喧嘩したいだけにここに来る狂った性癖持ちなんか言われたくない・・・ねぇ!!!!」
今度は蛇腹を収め剣だけで距離を詰めてくるか。
ガキンッ!!!!
隙を与えない連撃。
動きも無駄が無い、後退しながらミツバで防ぎきることはできる。
シャヌア
「防戦一方じゃないか!! 本当に口だけってことかい!?」
カズキ
「そうでもないさ・・・っ!!!」
トリガーを力強く引く。
その瞬間シャヌアの地面から弾丸を一斉に発射させた。
シュヌア
「ぐあぁああ!!」
直撃だ。
威力は抑えてあるが十分ダメージは入った。
シャヌア
「なんて言うと思ったか!!!」
握っている剣が蛇腹に姿を変え俺の顔目掛けて襲いかかる。
カズキ
「・・・っ!」
身体を捻り上げ全力で顔を動かす。
スッ・・・!!
カズキ
「くっ・・・!!!」
一度距離を取る。
シャヌアの攻撃をかすめた、手で受けたところを確認したら血が出ている。
致命傷は避けれた・・・、だが今のはなんだ。
シャヌア
「はん!! 口が悪いだけあるね、小賢しい小手先だけの男がよ!!」
カズキ
「そういうお前こそ、何隠してやがるんだ? 隠すのはすっぴんだけにしておけよ」
俺が前もって地面の中に忍ばせた弾丸の攻撃を受けても無傷。
それも何か術技を使用した形跡もない。
前もって術技を見に纏っている可能性・・・か。
古典的な方法ではあるが、一から見破っていくか。
カズキ
「とりあえず、素顔が見えない間は小手先でやらせてもらうぞ」
ミツバの剣先を向けてトリガーを引き弾丸を数発撃ち込む。
シャヌア
「それがどんなのか知らねぇーがよ!!!」
俺の射撃を気にせずに突っ込んでくるか。
だが気を取られずに射撃を続ける。
一発一発、着弾を確認する。
だが全ての弾丸は剣で弾かれダメージを与えるに至らない。
シャヌア
「あたいには効かねぇーんだよ!!!」
カズキ
「なら・・・これはどうだ!」
射撃を止めミツバを振るう。
同時に弾かれた弾丸達を再度起動させる。
今度は四方八方から攻撃だ・・・!
シャヌア
「っ!!?」
ゴォオオオオオオオオオオオオォオォオーンッ!!!!
弾丸の一斉攻撃。
土煙りがシャヌアが居た場所を覆った。
一瞬だったが最初の何発かは剣で弾いていたように見えた。
だが、これで・・・。
カズキ
「・・・ちっ・・・お前こそ出てきたらどうだ」
シャヌア
「あら? つまらないわね」
さっきの俺の真似事か、剣を振るい土煙りを掻き消し姿を現した。
しかも無傷の姿をだ。
シャヌア
「あんた最高に面白いじゃない、見たところ冒険者っぽいけど、手品師にでも転職したらいいんじゃないの?」
カズキ
「確かに驚かすのは好きかもな、人を騙す詐欺師にそう言ってもらえるのは光栄だよ」
騙す。
そうだ、奴は詐欺師、ペテン師か。
だとしたら何か不自然な物があるはずだ。
それを見抜け。
奴の得物は蛇腹剣一本、俺の弾丸攻撃は全て掻き消してる。
最初は見えない速度で蛇腹を起動させてると思っていたがそういう訳ではなさそうだ。
シャヌア
「あんたなんかじゃ見破れないわよ、女っていう生き物はね!!」
蛇腹を起動させ鞭で攻撃を仕掛けてきた。
相変わらず攻撃速度は速い、ミツバで弾く。
後退はせずその場で応戦する。
隙を見つけてはトリガーを引き攻撃を試みる。
シャヌア
「ふふっ・・・」
弾丸は届かない。
まただ。
はっきりと見た。
不自然に攻撃が通らない。
何かに遮られた。
いや・・・何かに防がれた。
術技が常に発動している?
真素の痕跡からそれは考えにくい。
何かを纏っている形跡はない。
真素絡みじゃないとするならば・・・。
カズキ
「ギフト・・・って所か」
シャヌア
「へぇー? やっとそこに辿り着いたってわけ?」
真素の流れは特別なところがない。
ならば考えられる事、アイテムでも術技でもないこの不可思議な事を可能にしているのはギフトで間違いない。
次はその能力か・・・。
シャヌア
「辿り着いた褒美に一発くれてあげるわっ!! ロージススネイク!!」
術技が来る!
凄まじい速度の蛇腹剣が襲いかかってくる。
不規則な動き・・・目で追い切れない!!
カズキ
「ぐっぅうう・・・っぅ!!!」
咄嗟にミツバで防いでみたもののあまりの衝撃で吹き飛んでしまったか・・・!
体勢を立て直し着地するが、ミツバから伝わった衝撃の感覚が手から全身に響く。
あれをまともに食らったら・・・終わる。
シャヌア
「ふふふふふ・・・あはははは!!! 本気で打ち込んでないのにもう悲鳴を上げそうな面じゃないか! いいねぇー!! もっとその面を私に見せておくれよぉおー!!!!」
カズキ
「・・・悪趣味が」
再び蛇腹の連撃が開始される。
しかもさっきよりも速度を増してやがる。
シャヌア
「ロージススネイクゥ!!!」
そして数発に一度術技を挟んでくる。
何処まで性悪なんだ。
こっちは何もバフをかけても無いのに・・・!!
カズキ
「・・・っ!!」
奴の術技の発動と同時に俺は右肩を一気に引き避けきった。
考察通り、頭の方は褒められる物じゃないらしいな。
単純明白。
奴の性格上痛めつける持久戦がお好み。
その為にもまずは相手の効き手を潰す為に右肩を狙ってくるのは読めていた。
シャヌア
「ちっ・・・あんた、失礼なこと考えてる時は顔によく出るって言われるでしょ?」
カズキ
「あぁ・・・ご明察のご明察、察しくらいはいいみたいだな」
シャヌア
「絶対に痛めつけてやる!!!!」
頭に血を登らせることは出来た。
というよりも勝手に上ってくれたと思うのが正解だろう。
だがここからは女ってのは怖い。
本当に何をしてくるかわかったもんじゃないからな。
だからこっちとしてはその前に手を打つのが賢明か。
カズキ
「女・・・ねぇ・・・」
俺はその場から一気に移動する。
奴の蛇腹が届かない距離を保ち射撃戦に持ち込む。
シャヌア
「ぜってぇー逃がさねぇーかんなぁー野郎ぉぉ!!!」
物凄い気迫で迫ってくる。
予想はしていたが身体能力も当然高い。
俺が後ろ向きではあるが、距離を取るスピードについてくる。
シャヌア
「追われたい気持ちの方が大きいけど・・・戦いは追い掛ける方が得意なんだよぉ!!!」
カズキ
「そんな乙女心にときめくわけないだろうが!!」
とにかく射撃の手は緩めないで攻撃し続ける。
隙が出来るまで。
求めるタイミングまで・・・。
カズキ
「一撃一撃が重すぎるだろ・・・!」
先ほどから奴の術技の頻度が上がってやがる。
術技は避けるつもりで距離を開けてみたものの・・・。
シャヌア
「甘い甘い甘い!!!」
術技発動中だけあの蛇腹の性能が上がる。
威力や速度はもちろんのことだが、まさか射程まで3倍近くまで伸びるのは少しばかり誤算だ。
一度高めに飛ぶ・・・!
シャヌア
「あめぇええーって言ってんだろうが!!!」
カズキ
「なっ・・・!」
俺よりも早い速度で追いかけてきただと。
まずい、追いつかれる。
シャヌア
「これで終わりよぉお!!!ロージスゥゥ!!!」
奴の術技が発動する・・・。
避けるのは・・・無理。
カズキ
「だけどなぁ・・・!!!!」
トリガーを力強く一気に握る。
シャヌア
(まさかこいつ・・・!!! 性懲りもなく!!!)
一斉に空中で弾丸が姿を現す。
最初の一打と同じ、罠を仕掛けた。
地面から攻撃もダメ、四方八方からの攻撃もダメ。
なら。
空中で完全包囲攻撃だ!
ボゴォオオオオオオオオォオオオオオオォォォオォオオオンッ!!!!!
「あぁ!! シャヌア姉御ぉぉお!!?」
「マジかよ!!!!」
今度も全弾直撃だ。
当然避ける事は出来ない・・・!
三度土煙りが宙を覆う。
シャヌア
「何度も何度もぉぉぉおお!!!」
雄叫びが響く。
奴の術技が来る・・・!!
シャヌア
「ウザったいんだよぉぉおおー!!!・・・なっ!!!?」
俺はもう奴との距離を詰めていた。
完全包囲攻撃の本当の目的は土煙りだ。
視覚がほぼ無い状態での奴が術技で仕留めようとする場合俺が居た位置に最速で放ってくるのは呼んでいた。
変化の無いド真ん中の豪速。
なら後は簡単だ少しだけ位置をずらし後は接近するだけだ。
カズキ
「これでぇええ・・!!!」
全開で振り被ったミツバを奴の腹部目掛けて突き刺す。
ガキンッ!!!!
何かの金属音・・・!?
シャヌア
「そんな攻撃!! 効かねぇえって何度・・・もっぉおおぉおお!?!!?!?」
カズキ
「何となくわかってたさ!!!」
ミツバを両手で強く握り締め全身に力を入れこいつごと振り回し位置を固定させる。
俺が上でこいつが下の位置を。
そして一気に急降下する。
シャヌア
「こいつ、最初から・・・!!」
このまま地面に叩き付ける!!!
地面への到達は一瞬だった。
気付いた頃にはもう地面に叩きつけられる瞬間。
その間の反撃の余地なんて与えない。
今日一番の轟音が鳴り響いた。
二人の人間が猛スピードで地面へと激突した。
位置関係は変わってない。
カズキ
「ぅぁ・・・げほっ!ごほっ・・・」
本日四度目の土煙りは量が凄い。
大地の国なだけあって新鮮な土なのかとてつもなく煙い。
シャヌアを地面へと叩きつけてすぐさま離れたから正直どうなったかはわからない。
もちろん奴の技量を考えて高度を必要最低限に抑えたつもりだったが・・・。
「姉御ぉぉお!!!」
「シャヌアの姉御ぉおおお!!!」
下っ端達が激突地点へと駆けよっていく。
流石に心配になったのだろう。
俺の予想外なところは最初にここで戦った時の奴らの統率力だ。
あのシャヌアが下っ端達と連携して来たら余計に時間がかかると思っていたが、下手に1対1に固執してくれて助かった。
おかげで奴の"厚化粧"の正体もわかった。
シャヌア
「うるさぁああああああああああああぁいっっ!!!!!」
生きていた。
シャヌアの大声で彼女を心配する声が途絶えた。
土煙りが晴れていく。
まるでシャヌアの言葉を待っていたかのように。
シャヌア
「くぅぅぅ・・・うぅっ・・・ぺっ!!」
カズキ
「随分素敵な姿になったじゃねぇか、そんなに肌出してこれから舞踏会かな?」
シャヌア
「生憎、舞踏会より武道会の方が好きなんでねぇ」
軽口を叩く程度には元気か。
だけど、完全に雌雄は決した。
それはこの場にいる人間全員が思っている。
シャヌア
「さぁ・・・! 2曲目のダンスを始めようじゃないか!!」
カズキ
「いや、もうお前に勝ち目はない」
トリガー軽く引き、また前もって奴の右足付近に仕込んだ弾丸を打ち上げた。
もちろん弾丸は奴には届かない。
だが俺が狙ったのは・・・服に付いてる、正確には腰に付いている装飾品の一つだ。
ガキンッ!!
何か大きな金属が落ちる音。
シャヌア
「・・・・・・」
カズキ
「まさか本当にもう一本隠し持ってるなんてな」
冗談半分で考察していたのが当たった。
女の二面性。
どっかの誰か達がそんな事を言っていたような気がする。
『女の子には男の子には見せない二面性ってものがあるわけでしてね! 一面は常に隠し通さないといけないわけで!!!』
もう一つの獲物を隠し持つ。
つまりが蛇腹剣をもう一本を敵から見えないようにして防御に展開していたなんてな。
元々こいつの蛇腹の精度は目を見張るほどのものだった。
俺のトラップ攻撃の一発一発をピンポイントで防ぐことが可能なほどの物。
そして何よりこいつの性格上、一つのことを極めるような奴。
つまりは蛇腹剣の精度を極限までに仕上げているような奴が、他の武具を頼りにするとは思えない。
それが俺の出した結論だ。
カズキ
「観念しろ、もう俺には通用しないぞ」
シャヌア
「くぅ・・・!!」
勝負あり。
これで少し話が穏便に進んでくれることを祈る。
そんなことを考えていた時だった。
???
「そこまでです!!」
幼い声・・・?
この場に似つかわしくない声色が耳に飛び込んできた。
その声の主を見て俺は、驚きを隠せないでいた。
カズキ
「男の・・・子・・・?」
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【大地の国グライブ 森林】
ダツ
「あったぁああー!!!」
ここはダンズから少し離れた森林。
博物館を出た僕達というと・・・結局クエストに出ていた。
ネーネ
「すごーい、結構たくさんあるね」
ダンズの冒険者ギルドへ向い、簡単なクエストをやろうということになった。
内容は至ってシンプルな、薬草取りだ。
ギルドが用意した籠の中にある程度決められた量の薬草を詰めて、ギルドへと帰る。
お使いクエストだ。
ケイト
「ふぅー・・・こっちにもあった」
どうしてか僕達はほぼ無意識に近い感覚でこのクエストを選んでいた。
見習い時代の感覚がまだ根強く生きているだと思う。
ケイト
「そう思うと少し悲しいな・・・」
一先ずこのクエストに集中しよう。
手持無沙汰よりはかは幾分かマシだ。
きっとみんなもそう思って、このクエストを何も言わずに受諾しただろうし。
ダツ
「おっしゃぁ!! また見つけたぁーー!!」
ダツがまた目的の薬草を見つけたらしい。
とはいえ僕もさっきから特に手間取ること無く見つけている。
意外にも他の森林ということでいつもより手こずるかとも思ったけど、予想以上に早く終わりそうではある。
ネーネ
「あぁーこれ!! 見たこと無い奴だー!みんなー!!」
ネーネの声にみな集まる。
指差す足元を覗くとそこには橙色の薬草が複数生えていた。
ウェイスにいた頃には見たことのない物だ。
ミニア
「これかー・・・確かこれがね大陸によって変わるって言われる変異体らしいよ」
ケイト
「つまり、別種の薬草ってこと?」
ミニアが得意げに勉強していた事を教えてくれた。
薬草は薬草でも色の違う薬草が各地では多く存在する。
通常は濃い緑色、草とあまり変わり映えしない色の薬草が通常種と呼ばれている。
けれど、こういった地域や大陸によっては変異体と呼ばれる別種の薬草も存在する。
ミニア
「当然、薬とかに調合する際も通常とは別の手順を用いないといけないのです!!」
ネーネ
「ミニアすごーい!」
ミニア
「はっははは!! 敬え敬え!!」
世界各地かー。
という事はこれは橙色だけど、他の大陸や街に行くともっと別な色の薬草を見ることが出来るのか。
少し気にはなるかも。
そんなこんなで僕達は何事もなく無事に薬草採取クエストを終え、全員自分が採取した籠を背負い冒険者ギルドへと戻るのだった。
ちなみに今は僕が卵を抱えていた。
ダンズは確かに広くて今は人も多くて大変だけど、無理や不注意でもしない限りは。
人とぶつかることはない・・・が・・・。
ケイト
「・・・っ?」
注意していたからこそ見つけてしまった。
建物と建物の間からさり気無く出ていた・・・人間の足を。
ケイト
「ぃい!!?!?」
足をから上を目で追った。
すると人が、そこで倒れていた。
どうした?とみんなが集まり僕と同じような反応を見せる。
すぐさま周りを見渡す・・・。
だけれど、誰しもが見ない振りと通していた。
なんだろうこの日常茶飯事みたいな反応・・・?
ケイト
「・・・・・・」
直感でわかった。
この街の人達が冷たいとかではきっとない。
恐らくこういった人はよくいる。
きっとそうなんだと。
行き倒れ???
「ぅ・・・ぁ・・・」
声が・・・した。
生きてる!
行き倒れ???
「ぅぅう・・・はぁ・・・」
なんだろう、今の。
勝手な憶測だけど、起きようとして諦めた?
もうちょっと良いかなみたいな・・・みたいな?
ネーネ
「ど・・・どうするの」
ダツ
「いやいや、どうって・・・なぁ?」
他の人のように見て見ぬ振りがいいのか・・・。
僕は・・・息を呑んだ。
ケイト
「みんな・・・ここに居て・・・」
薬草の入った籠を地面へと置き卵をネーネへ預け単身で近付く。
ゆっくりと警戒しながら近付く。
最悪何かの罠の可能性だってある。
ケイト
「あのぉー? 大丈夫・・・ですか?」
全体像が見えた。
長い茶髪で、体型から見て・・・大人の女の人?
声をかけて反応がなくうつ伏せのままだ。
ケイト
「警備団の人・・・呼びますか?」
こちらの声が届いているのかいないのか判断に困る。
生きては・・・いると思うけど。
行き倒れ???
「・・・ぁ・・た」
ケイト
「え?」
今何か言った・・・のかな?
細心の注意をして聞こえる距離まで近付く。
行き倒れ???
「お腹が・・・減っ・・・た」
ケイト
「お腹・・・?」
行き倒れ???
「でも動きたくない、歩きたくない、立ち上がりたくない、声も出したくない、このまま寝ていたい、地面に顔を近付けておきたい」
・・・・・・はぇ?
なんか急に饒舌になった。
行き倒れ???
「でも動きたくない、歩きたくない、立ち上がりたくない、声も出したくない、このまま寝ていたい、地面に顔を近付けておきたい、税金払いたくない、働きたくない、手を動かしたくもない、やりたくないことしたくない、考えることもしたくない、息を吸うこともしたくない、でも死にたくないし研究はやりたい、締め切りを攻められたくない、人と喋りたくない、上司の顔見たくない、作り笑顔もしたくない・・・」
ケイト
「え!? あっ!? えっちょっ・・・! えっとな? えなっ!?」
なんか凄い長文を並べ出した。
ブツブツと永遠と言葉を並べてる。
普通に怖い。
このまま戻って、見なかった事にしたい!
ケイト
「えっと・・・こ、これ・・・食べますか?」
僕は懐から出した干し肉を差し出す。
カズキさんがよく食べている物だ。
行き倒れ???
「・・・・・・」
ケイト
「あはは・・・」
こちら凄く見てる。
目は前髪で見えないけど、めちゃくちゃ見てるのは良くわかる。
行き倒れ???
「・・・あぁっ」
ケイト
「え・・・?」
急に口を大きく開いた。
そこから微動だにしない。
これはつまり・・・口に入れろというご指示ですか。
僕は差し出した右手を開いた口に近づけた。
どうしてか右手が震えている。
ハグゥウ!!!
ケイト
「ひぃっ!!!?」
干し肉が口に近づいた瞬間に微動だにしなかった大きな口が物凄い勢いで閉ざされた。
つい差し出していた手を引っ込めてしまった。
行き倒れ???
「・・・あぁっ」
ケイト
「えぇっ!!?」
さっき見た光景に戻った。
あれ僕は・・・あれえ? あれ?
再び大きな口が開かれて得物が来るのを待ち望んでいる。
いや、どちらかというと雛が親鳥から餌を与えられるのを待っているようにも見えた。
ケイト
「・・・・・・」
再び懐から干し肉を取り出す、今度は二枚。
先ほどと同じ動作。
開かれた口に近付き・・・。
ハグゥウ!!!
またもや凄い勢いで干し肉が消えていった。
二枚同時だからかかなり手ごわいようで飲み込むまで時間が掛かっているように見えた。
い・・・今のうちに、今度こそ・・・。
僕は音を立てずにその場から去ろうとする・・・が。
行き倒れ???
「・・・少年」
ケイト
「っ!!?」
声をかけられその場で急停止した。
背筋が凍った。
凄く冷たい声、まるで言葉で凍り付いたかのような。
振り向くことも出来ず、僕はただその場で手も足も全ての動作を停止させた・・・。
女の人の言葉に耳を傾けた。
何を言われるのか・・・緊張が切れないでいた。
行き倒れ???
「もっと柔らかい物はないのか・・・?」
ケイト
「無いですよ!!!!!!」
大声を上げた。
・・・ただ大声を上げるしかなかった。




