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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
序章   Believe in one step
1/70

第1話 望まぬ転移


【駅ホーム】


- 上 手 く い か な い -



世の中上手くいくなんてことはない、自分の実力不足、無知、詰めが甘い・・・。


たくさんある。


失敗。


自分の思うようになったら成功、それ以外は失敗。


だが声をかける人もいる、「十分だ、よくやった」「上々の出来」「出来ている方だ」


優しい言葉だ。


でも・・・失敗なんだ。


思うようにならなかったらそれは失敗。

失敗は全て”自分のせい”なんだ。


成功すれば「回りの助けがあった」「運がよかった」「環境がよかった」


それ以外は全て・・・失敗なんだ。


関係ないんだ。




自分のせい


自業自得


偽善者


考えなし


常識知らず


普通じゃない



どうしてだろう・・・。


わからない、俺は一体何をしているんだろう。


車掌

「3番線に電車が来ます、危ないので黄色い線の内側に・・・」


駅内にアナウンスが響いた。



俺は一人立っている、電車の明かりがこちらに近づいてくる。



その時足が、動いた。




誰かに押された、勝手に動いた、自分で動かした、つまずいた。

咄嗟にそんなことを考えていた、意味もないのに。


あぁ・・・俺、死ぬんだな・・・。


いやだな、これで生きてたりしたら。

こんなことならこの状況の確実な死に方を調べておけばよかった。

これでもし生きてたりなんかしたらまた俺は「失敗」するんだろうか。


せめて、せめてこれくらいは・・・成功してもいいじゃないか。




もう・・・いいだろう・・・。




------------------------------------------------------------------------------------------



???

「ん・・・」


体中が痛い。

なんだろうこの痛みは、仰向けから起き上がれない。


???

「いて・・・んつつ・・・」


とりあえず上半身だけ起こし辺りを見渡す。

回りには岩の塊?わからん洞窟みたいなものなのか?


???

「頭痛も酷いな・・・」


口も動いて声も出せる手も動く。


???

「俺は・・・一体・・・ぐっ・・・」


激しい頭痛が襲う。

その時、ある記憶が鮮明に脳内で映し出された。


???

「死んだ・・・俺・・・死んだんじゃ・・・」


あれは会社の帰りだったはずだ。

電車に轢かれた。


???

「なんで・・・」


頭を抱えこむ、鮮明にある記憶を思い出しながら。

間違いなく俺は・・・。



死んだはずだ。


???

「なんで・・・!」


死んで楽になったはずだ。


???

「なんで!!」


成功したはずだ。


???

「なんで!なんでなんで!!!」


思うようにいったはずだ。


???

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」


今度こそ、今度こそ間違いなく成功したはずだ。


???

「うあぁあああああー!!!!」


はず・・・だった。


絶叫が洞窟内に響き渡った。


そう・・・また失敗したのだ


結局上手くいかないんだ、俺は失敗する、何をしたって失敗をするんだ。

必要とされるものはたくさん学んだ、その為に時間もたくさん使った。

ちゃんと自分で調べた、何が必要で何が大切なのか。

金もたくさん使った、人脈も作った。


思いつく限りを振り絞った。


常に真摯に全てを注ぎ込んだ。


???

「・・・ハハハ」


笑いがこみ上げてきた。

だが、何故だろう、頬が上がるだけの笑いだ。

これは学んだ笑顔じゃない。


けど、そんなのはもういいか・・・。


???

「そうか・・・そうだよ、どうして気付かなかったんだ」



俺はそうゆうものなんだ。



???

「から回っていたとしても、無理だと言われても、裏切られたとしても、はめられたとしても、ルールを破ったとしても」


俺はそうゆうものだから。


???

「会社の為と思っても、上司の為と思っても、同僚の為、友人の為、祖母の為、親の為、兄弟の為」



― 誰かの為 と 思っても ―



???

「俺は・・・そうなんだ・・・」


意味はないんだ、きっと何をどう頑張っても意味がないんだ。

人は誰かの為なら頑張れる、頑張れば道は開けて苦悩から解放される。


そう信じていたんだ。


???

「もう・・・お前はよくやったよ」


俺が俺だけに送る。

誰でも無い、俺自身が称賛してやる。


お前は頑張った、よく頑張った。

もうそれしか俺には・・・できない・・・。



ガサッ ガサッ ガサッ



何かの物音がした。

無意識に音のする方向いた。

だが何故か体は動かないでいた、首だけを動かす形になった。


ガサッ ガサッ ガサッ


暗くてよく見えない。

よく見えなくても何かがそこで動いているのはわかる。


ガサッ! ガサッ! ガサッ! ガサッ! ガサッ! ガサッ!


さらに音が大きくなっている。

こちらに近づいてきているのがわかった。


ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!ガサッ!


そして暗い中でもわかる距離まで近づいてきてようやく俺に近づいてきた物がわかった。




巨大な蜘蛛だ。




唖然として。

さっきまで自己嫌悪に陥っていたのが吹き飛ぶほどの物だった。

自分よりも圧倒的に巨大な蜘蛛が今目の前にいる。


???

「・・・・・・」


言葉は出なかった。

開いた口が塞がらないとはこのことなのだろう。


ファンタジーだ。

完全なファンタジー世界の住人が今目の前にいる。

ぐよぐよと動く複数の目で俺を見続けている。


ガサッ!ガサッ!


抵抗の意思を見せないからか、蜘蛛がこちらにさらに近づいてくる。


食われるのか?

わからない、わからないのに俺は動こうとしなかった。

恐怖からか?それともこんな世界だ、魔法とかの類で動けないからか?


???

「ふっ・・・」


どうでもいい、本当にどうでもいい・・・。

吹いてしまうほどだ。

ここで死ねる。

また死ねる、2度目のチャンスなんだこれは。


???

「なぁ・・・痛いのは嫌だから、すぐに済ませてくれ」


ガサッ!ガサッ!


こちらに応答することなく俺の目の前まで寄って来た。


グワァ!!


蜘蛛の大きな口が至近距離で開いた。

唾のようなものを垂れ流しているように見える。

目を閉じること無く、俺は行く末見守っていた。


今度こそ失敗しない為に、焼き付けた。

もしかしたらまた失敗するかも知れない、その時の為に覚えておこう・・・。


そんなことを考えていた時だ。


???

「なんだ・・・!?」


光った。

全身が光り始めたと同時に胸から何かが飛び出した。


巨大蜘蛛

「ギシャァアアアアアアアアアーーー!!」


蜘蛛の大きな悲鳴と同時に離れていった。

そんな蜘蛛の様子をよく見たらさっき待て目の前にあった顔が何かに切り裂かれたような跡が出来ていた。

そしてその切り口からドロドロと血のような液体が溢れ出していた。


???

「・・・・・・んっ?」


俺の胸から飛び出したその何かが目の前によって来た。

この光はなんだ。

光っているのにも関わらず眩しくもなく、ずっと見続けられる。


蒼い光。


暖かいとかそんなロマンチストな物じゃない。

目が離せない、ずっと見ていたい、そんな感想しか出てこない。


巨大蜘蛛

「ギワァアアー!」

???

「ッ!?」


一度距離を置いた蜘蛛が咆哮ともに今度は勢いよくこちらに飛びこんできた。

だが、それに反応してか目の前の光り輝く何かに薙ぎ払われ吹き飛んだ。


吹き飛んだ蜘蛛はすぐさま体制を立て直したようだが、それに追い打ちをかけるように蒼光は蜘蛛へと攻撃を続けた。


???

「・・・くぅ!!」


その光景を見て何故か体を起こした。

全身に激痛が走る、まるで筋肉が悲鳴を上げているかのような痛みが襲う。

理由なんてなかったとにかく起き上がりたかった。


???

「ぐおぉぉ!!」


こんな痛みは痛みではない。

そう自分に言い聞かせ全力を振り絞り猫背になりながらも立ち上がった。

息を荒くしながらも蒼光と蜘蛛を見る。


戦っている。

蒼光するその何かと複数ある蜘蛛の足が攻防を繰り広げていた。

目が離せないでいた、まだ引かない痛みに耐えながらも。


巨大蜘蛛

「ギシャァッ!!!」


ガキンッ!!!


大きく振り被った蜘蛛の足が蒼光を轟音と共のに吹き飛ばした。


???

「なっ!! おい大丈夫か!」


吹き飛ばされた蒼光は俺の脚元まで吹き飛ばされた。

おぼつか無い足取りで近付くが、同時に巨大な蜘蛛はこちらにこれまでにない速度で飛びこんできた。


???

「っ!? くそっ!」


無我夢中だった。

目の前で横たわった光を俺は抱きかかえるように庇った。


------------------------------------------------------------------------------------------



なんだ・・・これ・・・。


不思議な感覚、空間?

わからない。


???

「・・・わからないことだらけだな」


そんなことを考えていたら、あの蒼い光が俺に近づいてきた。


???

「お前・・・俺を助けてくれたんだよな? ありがとうな」


蒼い光を抱き込むようにして語りかけた。


???

「何をしても失敗して、逃げることも上手く出来ない、捨てても失敗して、何もしないってこともまともに出来ないのに・・・」


また自己嫌悪。

けど、どうしてだろうか、凄く気持ちが晴れやかだ。

目が熱くなる。

俺は泣いているのか?


???

「本当に・・・ありがとうな・・・ありがとう」


涙が止まらない、けど目を閉じた。

いいな、このままこいつを抱き締めたままなのも。

ずっとこのまま、ずっと・・・ずっと・・・。





???

「・・・どうせ出来ないんだろ?」





------------------------------------------------------------------------------------------



暗い。

それはそうだ、目をつぶっているのだから。


巨大蜘蛛

「ッ!!?!?」


???

「言った通りだ・・・どうせそうだと思ったさ」


目を開き睨みつけた。

蜘蛛を睨んだのではない、自分の願いを届けてくれない何かを睨みつけた。


巨大蜘蛛

「ギシャァアアー!!」

???

「黙れ」


咆哮と共に襲いかかる蜘蛛の足を薙ぎ払うようにし両断した。


そして悲鳴と共に巨大な蜘蛛は血を吐き出しながら転がり込んだ。


そんな奴に目をくれることもない、それよりももっと大事なことがある。

右手に持っていた物を見る。


カズキ

「初めまして、俺はカズキだ、よろしくな」


そこで初めてあの蒼い光の正体を知った。


剣だ。


刃が2枚、逆側の取っ手の尻にもう1枚、合計3枚の刃のある蒼い剣を俺は握りしめていた。


そうして悶えている蜘蛛に目線をやる。


カズキ

「さて、感謝でもしようか?蜘蛛野郎、こいつと俺を出会わせてくれたからな、だから逃げるなら見逃してやる」


語りかけても意味がないのは知ってる。

ただ嬉しかった、そう思う。


蜘蛛は応答するかのように性懲りもなくこちらに飛び込んできた。

だがよく見えた、この剣を持ってからか体も軽く視力も良く、何よりも反応速度があがったのがわかっていた。


一気に踏み込み両手で剣を強く握り絞めた。


飛び込んできた蜘蛛の顔面目掛けて一振り、それだけでよかった。

それだけで巨大な蜘蛛は真っ二つに両断された。


カズキ

「感謝、完了」




~これが俺の、俺とこいつの異世界での初めての戦いだ~







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― 新着の感想 ―
[良い点] とても実力ある人の作品ですね('ω'){:Hey] プロみたいですね ('ω'){:what?]  下へ進む (ほめ言葉です グットラック good luck )('ω')ノ     下へ…
[一言] 1話目の感想としては、主人公の手の付けようがないようなネガティブなとこ、個人的には結構好きです。 内容もそれなりに面白いです!
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