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怖がりさんの初戦闘

 テイマーが明らかに弱いのはスキルが原因でもあった。マイナス表示されたスキルを見て、桜は戸惑う。


「これ、どうやって仲間を増やせばいいの?」

『レベル1のモンスターなら仲間に出来ます。それでしばらくは頑張るしかありません』

「そんなぁ」


 とはいえ、今更他の戦闘職にすることはできない。

 せっかく作ったキャラクターをそう簡単に削除するのは初心者の桜にとっては気が引けたし、何より他に出来そうな職業もないのだ。


『……とりあえず、チュートリアルの戦闘やってみますか?

 出てくるモンスターは緑マイマイのみです。レベルも1ですから』

「うーん、わかった……」


 マイマイという名前からして絶対にろくなやつじゃない。

 しかしこのままでは、この先やっていけないだろう。桜は鞄からテイマーの武器である鞭を取り出し構える。少し手は震えていた。


 どうしても動画にあった、気持ち悪くて怖いモンスターの記憶が過ぎる。でも、まだ序盤だから平気だろうと願った……が、すぐにその考えが甘いということを知る。


『それではいきますね。――【マイマイ召喚】!』


 リーンが呪文らしきものを唱えると空から何かが降ってくる。

 それはべちょっと音を立て泥を跳ね、リーンと桜の間に着地した。


 ……現れたのは巨大なカタツムリ。

 大きな体に見合う大きな緑色の殻を背中に背負い、触覚らしきところには生々しい目が付いている。

 実に桜の身長の半分くらいはあるそのモンスターは、ぬちょぬちょと音を立てて桜の方を向いた。


「ぴゃあぁぁぁぁぁぁ!!」


 その瞬間、桜は後ろに二メートルは飛び下がる。AGIは0だったが、それは恐怖ゆえの跳躍力だった。

 がくがくと膝を揺らし、じっとこちらを見ているカタツムリに手も足も出ない。


『ミカサさん? 大丈夫です、これはチュートリアルですから早く【テイム】を』

「む、むり! 怖い、気持ち悪い……こんなの仲間にしたくない!」


 それは最もな意見だった。事実、他サーバーでテイマーを選択した者たちはこの時点で「気持ち悪くて無理」とデンデンのテイムを放棄、キャラクターを作り直し職業を変えていた。

 ただでさえ怖がりである桜がテイムなど使えるはずがない。


『では通常攻撃で倒すしかありません。仲間にするか倒すかどちらかです!』

「ぴいぃぃ……」


 桜は小さく鳴く。涙を浮かべて、ゆっくりと迫りくるデンデンをただ見つめるだけで鞭を振るうことが出来ないでいる。

 こんな図体だがデンデンはチュートリアルで出てくるような、そこらにいる雑魚モンスターである。


 レベル1テイマーの攻撃力でも数発殴れば倒せるのだが……それは恐怖で動けない桜にとっては難しい問題だった。

 どうしようもない状況の中、段々と近付くデンデンとの距離。いくら桜でもこのまま攻撃できずにいたらHPを削り切られてしまう。


『ミカサさん、このままではやられてしまいます!』

「やだ、べちょべちょやだ……」


 しかし、そんなことを言っている余裕もそれまでだった。もうデンデンの触覚は真上にある。

 デンデンは大きく体を持ち上げ、桜をその巨体で踏みダメージを与えようとしだす。


「ぴ――――――」


 絶望の声。しかしこの時、桜は一枚のスクリーンショットの存在を思い出した。

 それはテイマーのジョブ紹介画面にあった……可愛らしい妖精との2ショット。


「ひらめいた!」


 恐怖の中どうにか身体を動かし、ギリギリのところでデンデンの攻撃を回避する。そして鞭を握り――リーンの傍へ走り出した。


『ミカサさん、何を?』

「妖精だし可愛いし怖くないし――だから、あなたなら大丈夫なの!」


 その瞬間、今度はNPCであるリーンの顔がこわばる。

 だがもう遅かった。鞭が充分に届く範囲に桜の侵入を許してしまったことで、その意図を理解しても行動が出来なかった。


 桜は思い切り鞭を振り上げ、唱える。


「【テイム】――!!」

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