閑話その1、ハイド=マリエールくん
今回はハイド=マリエール君のお話です。
僕はドイラ王国の西の外れの村に住む平民の家に生まれた。
優しく慈愛のある両親に、何不自由のない生活を送っていた。
……5歳の祝福の儀があるまでは
この世界では、5歳になると『祝福の儀』というものを受けなくてはならない。
『祝福の儀』とは、5歳になった子供達が神殿に行き、マリアール様とその他の神に祈りを捧げることで、自身のステータスを見ることができるようになる儀式の事。
この儀式では、神官の人に自身のステータスを見せなくてはならない。
優秀な人材を確保する為だ。
この儀式で、僕が“マリアール様の使徒”である事が判明し、王都の神殿で強制的に暮らす事となった。
(“マリアール様の使徒”の称号を持つ者のみ、マリアール様から神託を授かることができる。その為、どこの国でも重宝される)
神殿には礼拝堂以外、聖職者しか入る事ができないので、当然、両親と離れて暮らすことになった。
今では両親の顔も朧げだ。
こうして王都の神殿に連れていかれた後、僕は勉強と礼儀作法の練習、剣術の練習に明け暮れていた。
連日行われているパーティーにも出席させられた。そのお陰で、人を見る目を養うことができた。
特に、欲にまみれた人と嘘をついている人を見抜く事が出来るようになった。
愛想笑いも板についてきた。
しかし、こんな生活を続けていれば当然人間は疲弊する。
僕はだんだん何も感じなくなっていった…
〜12年後〜
いつも通り、礼拝堂で祈りを捧げていると、マリアール様から神託を授かった。
『魔王が現れました。水無月の1の時、勇者を呼びますので、迎え入れる準備をしなさい』
一瞬意味が理解できなかったが、授かった神託をこの国の重鎮たち(ハイドは、ハゲ豚と心の中で呼んでいる)に知らせなくてはならない。
勇者がこちらに来る日は1ヶ月後。それまでに40人程いるらしい勇者達を迎え入れる準備を終わらせなくてはならない。
それから慌ただしい日々が続いた。
〜1ヶ月後〜
いよいよ勇者達が呼ばれる日がきた。
勇者達が少し静かになった頃を見計らって、召喚の間の中に入った。
この国では珍しい焦げ茶色の髪の少年と女の間にいる無表情な少女に一瞬、目が奪われた。
何か胸がざわついた気がするが無視する。
僕はいつも通りの愛想笑いで勇者達を出迎え、豚王のいる部屋に案内した。
その間、女の勇者候補たち?がキャーキャー言いながら僕に近づき、質問してきたのは正直吐き気がしたが、そこはいつも貴族の人と同じように自分でも吐き気がするほどのキラッキラの笑みを浮かべて静かにするように言った。
次の日、勇者達の能力測定をした。
念の為“真実鑑定”のスキルを発動させておく。嘘でもつかれて能力ごとに分ける時に支障が出たら困る。
僕は魔道具の使い方を教える為に勇者達にステータスを見せたが、あんなものは嘘に決まっている。
“女神の使徒”である僕が、来たばかりの勇者よりも弱くてどうする。
勇者を補佐する女神の使徒が弱かったら、勇者がダンジョンに入って魔物に遭っただけで死んでしまう。
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ハイド=マリエール (17) Lv.52
人間族
職業:聖魔術師
称号:女神マリアールの使徒
冷徹な者
HP:25000/25000
MP:56000/56000
STR:8400
VIT:9600
AGI:12500
固有スキル〉大図書館・神官・魔法構築
スキル〉鑑定S級・真実鑑定S級・偽装S級・隠蔽S級・光属性魔法S級・水属性魔法B級・火属性魔法B級・剣術A級・隠密B級・気配察知B級
特殊スキル〉マリアールの祝福
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依頼で魔獣討伐をしていたら、いつのまにかこんなステータスになっていた。
勇者達のステータスを見ていても、僕の数値を上回るほどの者はいなかった。
当然、スキルも反応しない。
しかし、かの少女の番になった時に僕のスキルが反応した。
この少女は嘘をついている
“真実鑑定”のスキルはどの様な嘘をついてるのかは分からない。
が、少なくとも弱くはないようだ。何せ宝具を使っているのに嘘判定が出たからだ。
フユカ・ミズノ、か。
これからの生活が面白くなりそうな気がして、久し振りに胸が高まった気がした。
読んでくださりありがとうございます。
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