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自由を愛する勇者ちゃん  作者: 夜月 紅葉
1、王都にて
3/25

3、誰がどう見てもうざいものはうざい

 「ようこそお越し下さいました。勇者の皆様。」


そう言った金髪碧眼美青年…もう美青年くんで良いや。美青年くんは頭を下げた。


 「勇者の皆様って…?」


智紀は驚きが隠せないのかそのまま声になって出ている。


 「わたくしの口からは申し上げられません。申し遅れました。わたくし、この世界の創造主である女神マリアール様を奉っているマリル教本殿ほんでんの司祭長を務めさせていただいております、ハイド・マリエールと申します。以後お見知り置きを。」


本殿の司祭長って事は物凄く偉いのでは?


しかし、わたくしの口からは申し上げられません。という事は、あれか。王様とかが待っているあれか。あの偉ぶった態度で助けを求めるあれが待っているのか!?


 「では、この国の王であられるヘルト=ドイラ国王の元へ案内致します。こちらへどうぞ。」


案の定、王様のところまで案内される様だ。

私達はハイド司祭長くんの後をついて行った。


移動している間、女子がキャーキャー騒ぎ、男子がハイド司祭長くんに憎悪の視線を向けたのは言うまでもない。


♤ ♤ ♤


 赤と金で装飾された大きな扉の前まで来た所で、ハイド司祭長くんは止まった。

そして、大きくかつ通る声でハイド司祭長くんは言った。


 「マリル教本殿司祭長のハイド=マリエールで御座います。勇者の皆様をお連れ致しました。」

 「良い。通せ。」


そう内から聞こえた後、扉の横にいた人達によって大扉が開かれた。


その先には、更に豪華絢爛ごうかけんらんな大広間だった。

その中を私達は進み、王様であろう人(宝石に飾られている肥え太った豚みたいな人)が座るところの近くで止まった。


 ハイド司祭長くんが横に下がったのを確認した後、王様らしき人が話し始めた。


「よくぞ我らの呼びかけに応えてくれた。勇者たちよ。私はドイラ王国の国王。へルト・ドイラ・リアだ。どうか我ら人間族をを救ってほしい」


やっぱり王様だったんだ、あの肥え太った豚…んんっ、ぽっちゃりした人。

しかし、案の定見たことあるような展開が目の前で起きている。


あの王様なんかうざいな…服からはみ出している肉をサンドバッグ代わりに殴りたくなってきた…


そんな余計な事を私が考えている間に、智紀は王様に対して発言した。


「了承する前に、いくつか質問してもよろしいですか?」

「よかろう。発言を許可する。」

「ありがとうございます。1つ目に、『人間族・・・を救ってくれ』と仰っていましたが、人間族以外にもいるのですか?」

「もっともな質問だな。おい宰相、説明を。」

「はい。」


王様の隣にいたこれまた小太りのおっさんが前に出て言った。


…自分で説明しないんかい。


「この世界には人間族と魔族がおります。人間族は西の大陸に。魔族は東の大陸にそれぞれ分かれて暮らしております。魔族は獣人、魔人、精霊人などに分かれております。

2年前、魔族が西大陸に攻めてきまして、今も交戦しておりますが魔族は個々の力が強い故、個々の力が弱い私たち人間族は徐々に押されてきており、既に東大陸寄りの国が町が2つやられてしまっております。今は進軍を止めるのもギリギリの状態でして、女神様から特別な力を授かる勇者様を呼び寄せた次第であります。」


説明が長い!

しかし、分かりやすくはあった。この宰相が政権握ってるんじゃないのかな?


「なるほど、理解しました。では2つ目です。僕たちは元の世界に戻れるのでしょうか?」

クラスメイトや周りにいた人々はざわついた。

まあ、これが1番気になる事だよね。


これにはハイドさんが答えた。


「残念ながら元の世界に戻ることはわたくし達の技術では不可能です。しかし、可能性として、使命を果たした場合、女神様が元の世界に戻してくれるかもしれません。」


ハイドさんの言葉に一時は騒然とするも、可能性があることがわかり、歓喜に包まれた。

しかし、見事なワードマジックだな。

あくまで可能性は可能性。しかも確証もない。帰れる確率はほぼ皆無・・と言っていいだろう。

この人達は何か重要な事を隠している気がしてならなかった。


 智紀はさくさく話を進めた。


「では、3つ目です。『救ってくれ』と仰いましたが、具体的に何をすれば救った事になるのでしょうか?」

しばしの沈黙が訪れる。王様や宰相はこれを質問されると思っていなかったようで、口を開け、びっくりした表情で固まっている。

依頼を受ける側としては当然の質問だろうに…


「……魔族を全滅させるか北の大陸、ヴェーゼに追いやることができたら救ったとみなそう。」

「それは魔族と言われる人全員ですか?」

「その通りだ。」


…何言ってんだこの豚は。

魔族を全滅って、族って大きな括りにするくらいには数がいるって事だよね?

そしてどうやって北の大陸に追いやるの?

はっきり言って不可能・・・だ。


思わずため息が漏れてしまう。


しかし智紀は、考えないようにしているのか、はたまたそんな事考えていないのか、質問を続けた。


「それでは最後の質問です。僕たちに稽古や指導をしてくださいますか?また、その間、私達・・生活・・保障・・してくださいますか?」


生活の保障は当然のことだし、稽古をつけてもらわなければ、戦いなんて知らない一般市民だったクラスメイト達なんて簡単に死んでしまう。


「ああ、当然、生活を保障するし、稽古も指導する人をつける。安心するがよい。」


どうやら智紀はこの場で自身がやりたかった事を全て行うことができたらしい。口角が上がっている。


「質問は以上です。ありがとうございました。」

「うむ。」


そして、私達全員の顔を見まわし、王様の方を向いて高らかに宣言した。


「わかりました。その依頼、僕達が受けましょう!」

「おお、受けてくれるか。」


生活・・保障・・されているり、人間族を救うことに全力を尽くしましょう。」


…本当に用意周到な事で。

しかし残念ながらその言葉が前にいるやつら共に伝わってはいない。

       .

交渉に関しても、智紀は一般人の域を出ないみたいだ。

実に惜しい人。


かく言う私も一般人の域を出ていない。はずだ…


その後、私達は王宮の一角に案内され、そこで一晩を過ごした。

一人一人に当てがわれた部屋は広く、ベットはふかふかだった。

皆いろんなことがあり過ぎて疲れたのだろう。早々に寝てしまったようで、あたりは静まり返っている。


…この世界は私たちがいた世界とは違う、異世界。

ここで私の長年の夢が叶うといいな…


桃香には申し訳ないけど、智紀は…どうでもいいや、私は出来るだけ自然にかつ平穏に抜けようと思う。

私の思う自由を求めて…


その晩、私はぐっすり眠った。


読んでくださりありがとうございます。

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