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自由を愛する勇者ちゃん  作者: 夜月 紅葉
1、王都にて
13/25

11、勇者は戦う。愛すべき人を守るために

 「僕達3人ならあいつに勝てるはずだ!いつも通りのフォーメーションで、いくぞ!」

 「おー!!」


 気合を入れて、僕達はいつものフォーメーションを組んだ。

 誰かは知らないけど、他の人に危害が加わらないように結界を張ってくれたのはありがたい。これで思いっきり力を出せる。


 「ふふふっ、あはははっ、あはははははっ!!

  滑稽。本当に滑稽ですね!その揺るぎない自信!本当に!壊して、壊して、解剖してみたくなります!結界も張ってくれたようですし、楽しみましょう!」


 そう言うと同時にエスラルは踏み込み、僕に向かって剣を横薙ぎに振った。このぐらい受けて反撃する事が出来る。

 

 冬香のために僕がどれだけ努力したのか思い知るがいい!!


 「“ライトバレット”!」


拳サイズの光の弾をエスラルに向けて放つ。それと同時にエスラルの首のあたりを薙いだ。


 「ふふっ。少しは強くなりましたね、勇者くん。しかし、貴方がたが本気を出されているのに私が力を出さないのは失礼ですし、少し力を出しましょう。難しいところですが、全体の2割といきましょうか。“アイスフィールド”」


 一瞬で結界内の地面を凍らした!?しかも、これで2割??

冗談じゃない。しかも相手は笑っている。

笑ったまま僕と冬香の剣を受けて返している。激しい剣の攻防の合間に飛んでくる桃香の魔法も全て魔法で相殺している。桃香の魔法は詠唱ありのものなのに、詠唱なしの魔法で相殺し、隙あらば反撃もしている。


 これを化け物と言わずに何というんだろう。


 今のところ、桃香は魔力が残り少なく、魔法があと2発ぐらいしか撃てないはず。冬香も跳ね飛ばされてダメージが大きい。1対3であるにも関わらず、こちらが劣勢。このままでは全員危ない。

 

 ならばっ!!

 「“奥義・ブレイブソード”!!」


この奥義は自身のステータスを3倍に引き上げる。その為、身体への負担がかかり、効果が切れた後しばらく動けなくなる諸刃の剣。


 しかし、これで決める!

 

 「その罪を償え!“コンビクション・サンクチュアリー”!!」


一面を白い光が覆う。流石に相手も無傷ではいられないはず。

 僕達はここぞとばかりに畳み掛けようと足を踏み切った。…踏み切ろうとした。


 僕の体にはいつの間にか氷の蔓が巻きついていて、一切身動きが取れない状態だった。冬香と桃香も同じ感じになっている。


 「まったく。あんなもの本気を出してない相手に使うものじゃありませんよ?おかげで3割も力を出さなくてはいけなくなってしまったじゃありませんか。ね?

  う〜ん。この後どうしましょうかね。身体的ダメージは今与えてますし…精神的ダメージを与える方が面白そうですね!」

 

不敵に微笑んだエスラルを見て、僕は嫌な予感がした。

 「おい、まさか…」

 

エスラルをは僕達に、僕と桃香の問いに答えるように冬香を魔法で持ち上げた。


 「さて、君達は絶体絶命のピンチです。もう茶番は終わりにしませんか?ねぇ、フユカくん?」


 そう言いながらエスラルは手を握って、なにかを握り潰しているような仕草をした。

それに合わせて冬香が苦しそうにもがき、呻く。

 

 「おい!やめろ!何故僕じゃなくて冬香を攻撃するんだ!」


エスラルは少し考えるような仕草をしたあと、微笑んだ。

 

 「それは勿論、勇者くん。君に精神的ダメージを与える事と、フユカくんに本気を出してもらうためだよ。だから君ではなく、モモカくんでもなくフユカくんなんだよ。」

 「冬香に本気を出してもらう?さっきも冬香は本気で戦ってただろ!その上大怪我も負っているのに、今更なにを言っているんだ!」

 「おやおや、相手の力量すらも測れない人が何を言うかと思えば。ふふふっ。面白いことを言いますね。」


そう言ったエスラルは冬香を地面に放り投げた。

 地面に背中を叩きつけられた冬香は血を吐いて転がった。誰がどう見ても動ける状態じゃない。それでも、冬香はふらふらとしながらも立ち上がった。


 「う〜ん。まだ、続けるつもりですか…

  それならこちらも手を変えましょう。」


 エスラルは冬香に向かって歩き、目の前で止まった。かと思ったら、鋭い蹴りを冬香に放ち始めた。

 蹴られるたびに飛ばされ、地面につく前にまた蹴られて宙に飛ばされている。そんな残酷で、無慈悲な光景が目の前で繰り広げられている。


 流石にそれに黙っていられるほど、僕の器は大きくない。


 「お前、冬香に何をする!」

 「ちょっと、冬香になんて事をするの!」

 「ちょっと黙っててくださいね。勇者くん。モモカくん。それ以上喋ったら喉を刺しますよ?」

 「な…くっ……」


僕と桃香の首元には鋭く尖った氷の刺が突きつけられていた。


 「さて、フユカくん。今貴方は僕に蹴られていて、貴方の大切なお友達は首に刺を突きつけられています。もし貴方が、本気で戦うというのなら、僕は2人に刺を突きつけるのをやめて、結界の端に置いておこう。勿論殺さないよ。ただし、君がもしこのまま蹴られ続けることを選択したら、あの2人を殺すね。さあ、選んでね。仲間を見捨てて自分の無能さを突きつけさせるか、自分の力を見せてまで仲間を助けるか。さあ!選んで!」


冬香、頼む!無理をしないでくれ。僕はどうなってもいいから!


 「…けほっ。流石にそこまで言われたらやらざるを得ない…エスラルさん、凄く面倒臭くて、凄く腹黒。」


冬香が血を吐いたとおもったら、空中で猫のように柔らかく着地した。


 「けほっ、けほっ…エスラルさん本気で蹴りすぎ…肋骨折れたし、魔力の無駄…」

 「でも、そうでもしないと君は本気を出さないよね?」

 「その通りすぎて何も反論できない。はあ。魔力回復ポーション飲んでからでいい?」

 「勿論いいよ。僕は本気の君と戦いたいからね。」

 「どうも。」


一体目の前で起こっている事はなんだ?冬香は何故あんな重傷を負っていたはずなのに普通に立っているんだ?そして外にいた相沢と高橋。お前達は今なにを冬香に渡した?

 ポーションと剣?いや刀?と冬香の身の丈以上もある大鎌?

冬香はいつの間にか僕達と同じ服ではなく、黒っぽい軍服姿になっていた。今は呑気に軽いストレッチをしている。


 本当になにが起こっているのだろう…


 僕は互いに向き合っている冬香とエスラルの姿に見入っていた。


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