1、プロローグ
冷たい空気が肌を撫でる。
猛暑日が続いた夏が過ぎ、肌寒く感じる秋。
今日もいつも通り私、水野冬香は学校へ通う。
時刻は7時半をまわったところ。閑散としている校舎内を通り、まだ人が殆どいない教室に入る。
自分の席について、読書を始める。
私の大切な時間……
を壊してくる人がいる。
「冬香〜、おっはよ〜!今日も相変わらず可愛いな〜」
大体の生徒が登校し、教室が騒がしくなる頃にいつもやって来る。
藤田桃香、学校のマドンナ的存在。モデルの様な顔立ちとスラっとしているが、出てるところは出てる2次元を具現化した人。女子力が高く、男女共に好かれている。…変態なところがなければ完璧美少女。何故か私の事をよく構いにくる。
決して嫌いなわけではない。むしろ好きな方。
私の平凡平穏な生活を壊さなければ。
今日も元気に私に抱きついて、セクハラ紛いの行為をしてくる。
「おはよ、桃香…重い……」
「も〜っ!重いだなんて酷いよ〜!!そんな冬香ちゃんにはお仕置きし、ちゃ、う、「「キャーー!!!」」…チッ、もう来ちゃった。」
今舌打ちした。幼なじみに対して舌打ちした。いや、腐れ縁なのはわかるけど、駄目でしょ。せめてほかに人がいないときにお願いします…
「珍しく早いね〜、智紀。何かあったの?頭打った?」
いつの間にかできていた人だかりから聞こえた女子の歓声に笑顔で応える、無駄にイケメンな男子がこっちに向かって来た。
「頭打ったのは桃香の方じゃない?昨日の深夜に″冬香の写真コレクション″なんてもの送ってきて。僕を遅刻させて、冬香に何をしようとしたのかな?」
無駄にイケメンな男子こと、高島智紀。学年1の完璧イケメン。変態なところがなければ…
と言うか、私の写真コレクションって何かな?撮られた覚えはないから隠し撮り写真かな?
警察、行こうかな…
ヒートアップしていく2人を尻目に、私は読み途中だった本を開きかけたその瞬間。
教室が白い光に包まれた
教室が白い光に包まれ、私は思わず目を瞑ってしまう。
光が収まった頃、恐る恐る目を開けてみると、
そこは私の知っている教室ではなかった。