第7話 文化祭実行委員長 高山リン
一瞬の静けさの中で一人廊下側の前の方の席で手を挙げている男子生徒がいた。悠太はクラスの出し物について口出ししないと思っていたその人物を当てた。
「高山くん、質問なら手短に」
文化祭実行委員長の高山リンは賑やかなことが好きだった。だから文化祭実行委員会に関わっていると言ってもいい。忙しくしている事も大好きだったけど彼の弱点は体が弱かった事。無理すると熱が出て寝込んでしまう事がしばしばあるのが唯一の弱点。
そんな高山くんが首を横に振りつつ立ち上がった。
「そういう話じゃなくて助言。ホットプレートは他の教室と兼ね合いがあるから審査でオーバーしそうな場合はくじ引きになるからね」
怪訝に思った陽菜が高山くんに確認した。
「他の教室の兼ね合いって?」
高山くんは少し首を横に振りつつ応じた。
「今、それを言おうとしてたんだって。佐藤さんが慌てすぎ。ツッコミ早すぎ。ボケなさすぎ」
イラっとした陽菜が率直な意見表明をした。
「生まれ故郷が関西だった事はこっちに来てもう捨てた事だから。高山、怒るよ。さっさと続けて」
これぐらいの反応は高山くんには馬耳東風。聞き流して何も言われなかったかのように説明を始めた。
「はいはい。教室のコンセントっていくつかまとまって系統分けされてるんだけど、その系統で一斉に数百ワットとかずつ使うと合計電力が超過してその系統まるごと停電するから。それを避けるため教室ごとに電気容量の制限をやってる。大きな電気容量を希望する展示が多ければくじ引きで使用を認める展示を決める事もあるので代案は予め考えておいて欲しい。電力割り当てが足りなくてできないなんて無しにしてねって事」
陽菜は眉をひそめていたが大事な助言と理解して矛を収めた。
「高山くん、ご説明どうもありがとう。よくわかったわ」
高山くんは微笑んだ。
「佐藤さん、ご理解を賜り感謝デス。自分のクラスだからといって情実審査とか期待しないでね。そういう手助けするわけにはいかないのでその点はよろしく。当日は手伝うつもりだけどね」
高山め。そんな余裕ないだろうにと今野創太が心の中でぼやいた。自分の立場考えろよ。そんなのだから彼女に心配されるんだって。
悠太はにこやかに宣言した。
「お互いにカフェ案、クイズ大会案の説明をしてくれた訳なので一度みんなの意見を多数決で確認したい。どちらかの支持が6割超えてるならそちらの案を検討っていう事にしたいんだけど、いいかな?」
一部から「いいよ」という声が出ていたけどそれだけじゃなかった。安平さんが廊下側の最後列の席でで手を挙げていたのだ。悠太は内心ため息をつきながら安平さんを指名した。
「安平さん、何か?」