第6話 峯岸瑞希と佐藤陽菜
瑞希は紅麗亜に言い返した。言われっぱなしでは勝てない。徹底的にやり返してやる。
「そういう山上さんのカフェ案って具体的には何をするですか?コスプレ喫茶はまた3年E組が恒例の冥土喫茶をやるだろうし、うちら程度のやる気でそこに割って入るにはかなり準備しないとダメなのでは?」
E組はクラス替えが少ない英語系重視の文系進学クラスで入学時から英語が得意な人や希望者から選抜して集められている。
3年E組は1年の時から2年連続で「マナーハウス」(貴族の館)なるカフェで男装執事女子や女装メイド男子で人気投票を競い合うという名物企画をやって来ていた。ファイナル・シーズンとかいって大盛り上がりしてるらしく楽しみにしている生徒も多い。だからコスプレ系は生半可な姿勢では集客で割りを食う。
「二人とも勝手に議論しないでくれるかな。話が混乱する」
ここでようやく悠太が勝手にやりあってくれている二人に割って入った。
「峯岸さんは一度座って。山上さん、カフェ案について詳しい所を話してくれないかな」
瑞希は渋々座った。紅麗亜が話そうとした所、左斜め前に座る佐藤陽菜のツインテールの髪の毛が揺れた。立ち上がった陽菜は後ろへ振り向くと斜め右後ろの紅麗亜に手を伸ばした。
「紅麗亜、詳細は私が説明したいんだけどいいかな?」
頷いた紅麗亜は陽菜が伸ばしてきていた左手をタッチした。まるでバトンを受け渡したかのよう。
佐藤陽菜は女バレのセッターでレギュラーをもぎ取った上に主将。委員長の悠太は頭が上がらない相手であり山上紅麗亜の盟友とでもいうべき親友関係にあった。
陽菜はバトンタッチをしてもらった理由にまず触れた。
「カフェ案は紅麗亜がやりたいって言い出して私が詳細は考えていたから、詳細は私から説明します」
そういうと陽菜は宿敵瑞希の方を見やりつつクラスメイト全員に向けて話を始めた。
「カフェ案の場合、コスプレでいくなら何かテーマを決めて着飾る事になります。準備の手間が増えるのでドリンクだけにするとか考えるべきかな。で、飲食物重視でいくならホットプレートとか持ち込んでホットケーキとかも出す事は考えられます。この場合、当日の手間が増えるのでコスプレ案と併用はしない方向で考えるべきだと思う。どちらでいくかは多数決で決めればいいとは思っているけど、コスプレの場合は執事とメイド路線は真似ても面白くないから避けないとダメね」