第15話 エピローグ 今野創太と友人のメッセ
放課後。今野創太は教室を出て部活動のため調理実習室に行った。部屋に入るとまだ他の部員は来ていない。ちょうどいいやとスラックスのポケットからスマフォを取り出しメッセアプリを立ち上げた。
創太:クラスの出し物は料理コンテストになった。高山くんはなんとか時間を作って当日の審査員はやる気みたいだけどそこまで阻止しなくていいよな?
加美洋子:いい。当日それぐらいは彼も遊びたいだろうし、文化祭実行委員長の仕事は開催前と終了後の方が大きいからそこに影響ないなら問題ない。
創太:それは大丈夫。気をつけておく。
加美洋子:感謝している。
創太:これで借りは返したということでいいかな?
加美洋子:確かに。利子はまだ残ってると思うけど。
創太:利子って今時の銀行じゃこんな短期じゃつかないよ。文化祭でのお料理研のアジアンスパイスレストランの食券あげるからさ。それでチャラという事で。
加美洋子:食券はもらえたら嬉しいけど利子の返済にはならない。まあ、気にしないで。何も起きなければきみにこれ以上頼みごとをせず卒業の日を迎えるかもしれないし。
創太:どうだかね。それじゃ利子が利子を生みそうだし。そうそう、小説面白かったよ。おかげで文化祭の出し物のアイデアも出せたし。
加美洋子:怪我の光明かな。
創太:本当にそうなのか?元より出させたい案に僕を誘導するためじゃなかったのか?
加美洋子:君が面白く読むだろうと思ったのは本当のことだよ。ただ謝ることがあるとすれば私が読んだのは小学生の頃が最初。マイ・フェイバリットの一冊だから。
創太:やっぱり思った通りって事なんだね?
加美洋子:創太くんの料理好きと劇中の料理大会「ファイア・ファイア」が重なって見えたから何かの役に立つとは思ったけど。
創太:けど?
加美洋子:手段までとやかく言うのは頼む側として失礼かなって思ったから言わなかった。言った方が良かった?
創太:まあ、そう言われたら僕は断ったと思う。ひねくれ者だからね。僕は。
加美洋子:だよね。ともかく本当にありがとう。文化祭の心配事が一つ減った。感謝してる。
加美洋子。この学校の高校2年生で現生徒自治会長だからね。いろんな人と友達になって話をするのが大好きという変わり者。そういう性格は生徒自治会長のために生まれて来たような人とも言える。そして一方的に少なくとも友人だと思っている。
高校入学してほどなく彼女と知り合いになり、助けたり助けられたりという貸し借りのやりとりがずっと続いている「取引相手」だ。文化祭でお料理研が学生食堂を使う件については彼女に早々に許可を得たいのだと話をして協力をしてもらっていた。 いずれ取り立てはあると思ったけどクラスメイトで文化祭実行委員長の高山リンがクラスの出し物にのめり込まないように何か方法を考えて対策して欲しいという話が来たのは驚いた。あいつは体が弱いくせに賑やかな事と忙しい事を愛している。それを加美会長が心配する所になった訳だった。
できない子は加美さんのお眼鏡にかなわない。僕は彼女の事が嫌いではないし、嫌われたくもないしできない奴と見られたくもない。そういう気持ちを見抜かれているような気がする。
そして彼女もまた僕が期待に応えられない奴となるのを恐れたから本を貸してきたんじゃないかという気がする。そう思っておく方が僕の心は平安で幸せだから答えは出すつもりは僕にはないのだ。




