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世界を歩く少女 えぬ  作者: tomo
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ののかとお母さん

その日の夕方、お父さんとお母さんがけんかしてた。


お父さんが、「お前が甘いからダメなんだよ」とか「子ども育てるって言ったんなら責任もてよ」とかそんなことを言ってた。


お母さんは「ごめんなさい」と何回も泣きながら謝っていた。ののかは昼間にお父さんにぶたれたのが痛かったのと、ブー太が流されてしまって涙が出そうだったので、お母さんたちがけんかしてる隣のお部屋で寝てるふりをしてた。


お母さんとお父さんはしばらくしたら静かになった。そのまた少し後で玄関のドアが開く音がした。バタンと強い音がしたから多分お父さんだ。


静かにふすまが開いて、お母さんがののかの顔を覗き込んだ。目が青くなって潰れたみたいになってた。


「ののちゃん、起きてる?」


「うん?寝てたよ」


寝てたけど今起きたっていうことにした。


「ののちゃん、昼間は怖かったね。でもお父さんは、本当は優しい人なのよ。今は、お母さんとののちゃんのために怖くしてるの。わかる?」


ののかは「うん」も「ううん」も言わなかった。


「お母さん、今日は疲れちゃった。ね、ののちゃんお母さんもう休むね。ご飯食べたかったら、冷蔵庫に入ってるから、レンジで温めて食べてね。レンジに入れて、このスイッチ押せばいいからね」


お母さんはそう言ってののかの隣のお布団に入ってしまった。


冷蔵庫を開けるとお魚のフライが入ってた。

レンジに入れて温めたけど、冷たかったかれ何回も温めた。手で握って食べてみたけど味がなかった。


気がつけば外は暗くなっていた。ののかの家は静かになった。お母さんも寝てしまって、ののかだけが世界にひとりぼっちな気がしてきた。


トイレに行って、トイレの中を見てみたけど、水だけで何もなかった。手を伸ばそうとも思ったけど、できなかった。すぐに居間に戻った。明かりを消して、真っ暗な部屋で丸くなって座った。1人になったら涙が出そうになった。お父さんはいない。お母さんは寝てる。起こさないように静かに、カーテンの隙間から見える灯りを見た。オレンジ色、緑色、キラキラ、チカチカしている。灯りがだんだんぼやっとしてきた。


涙が出てた。涙が出たと気づいたら、あとはずっと止まらなかった。声を出さないようにして、泣いちゃった。

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