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真白のキャンバス

作者: 葉月

今回は書く期間が長い割に短編です。

今までの短編よりは文字数は多いかもですが…


呼んでる途中でわけわからなくなるかもしれませんが、作者の技量不足です。


読了願います…。

人生に疲れてしまった。


みんな誰しもが思う事だろうけど、やっぱり自分の苦しみは自分にしかわからない。

誰かに話したところで、相手のアンサーにまたストレスを抱えてしまう。

自分勝手なのはわかっているけれど、それでも望んだ答えが出ない。


そもそも望んだ答えが何なのかもわからなくなってしまった。

みんな誰しもが同じ経験をしているだろうけど。



自分を空っぽにしたい時、よく外をふらふら歩く。

普段通らない道を通り、知らない角を曲がり、知らない景色を見る。

いつもと違うタバコを吸い、いつも着ない服を着て、誰に会うわけでもないのに普段と違う化粧をする。


違う自分を作って、自分を偽って、知らない色に染まる。


それでも現実はいつもそばにいて、鳴り止まない携帯、増えてく着信履歴。

また現実色に塗り替えられていく。


明日になればまたいつもの私。

キレイな色のない、くすんだ現実。


いやだな。戻りたくない。



こんなだからこんな私だから出会えたのかもしれない。

知らない坂を下ると、一風変わったお店が立っていた。看板は真っ白で、店の名前もわからない。

ただ扉には、黒い字で《OPEN》と書かれていた。


私は真っ白い、何にも染まっていないキレイな看板が羨ましく、疎ましくなり、気付いたらそのお店に足を踏み入れていた。



店の中は酷く散らかっていて、絵の具やらパレット、筆などが無造作に床に転がっていた。


そして部屋の中央にキャンバスがポツンと置いてあった。

一目でわかる。私と同じ、キレイな色のない、くすんだ色で構成された絵。


これは私なのだろう。

今の私の世界はまさにこの絵のようにくすんだ色で成り立っているのだろう。


気に食わない。目の前にある現実に。

私を描いているこの絵が。


私はその辺に落ちていた筆を手に取り、絵の具を拾って、絵にぶちまけた。


もっとキレイな色にしたくて、ステキな人生を送りたくて。

暖色系の色をメインにふんだんにぶちまけた。

あとは筆で整えるだけだ。絵に輪郭をつける。


何故だろう。

絵なんか描いたことないのに筆が進む。


そして出来上がった作品を自分自身に反映して満足した。

暖色系を強調とした自分。今では考えられないほどのキレイな色。

久しぶりにいい気分だ。


なぜこんな店があったのかとか、なぜ店主がいないのかとか、そもそも何のお店なのかとか。

そんなものは今、どうだっていい。

私は最高の気分で店を出た。


そして振り返り、看板に目がとまる。


看板は、暖色系をメインにキレイな色に染まっていた。


それからというもの、私の人生はまさに絵に描いたようで、仕事はうまくいき、大きなやりがいのあるプロジェクトを任せられた。


前までは友人関係も上手くいかず、仕事ばかりの生活を送っていたが、それも解消され近いうちに友人達が集まり、旅行に行く計画まで立てることができた。


そして良い出会いもあった。

最初は友人同士で呑み会してる時に友人が連れてきたのが出会いだった。

趣味が合い、休みの日に一緒に出かけることもあった。


幸せだ、あのキャンバスのおかげだろうか。

私は今、自分で絵に描いた通りに充実している。


ただ私は焦っていた。

大きな仕事を任せられた事に応えようとして、他がおざなりになっていってしまう。


今度は他のことを頑張ろうとして仕事がおざなりになる。


おかしい。少しずつ上手くいかなくなってきてる。

キャンバス通りになるのではないのか。

私の人生は私が描いた通りになるはずではないのか。


そして全てに手が回らなくなり、だんだん私の色がくすんでいく。


また元どおりになるのが嫌で、気づけば私はあの店の前に立っていた。


そして看板を見て目を疑う。

塗り替えたはずのあの看板が、暖色系をメインにキレイな色に染めたあの看板が。


濁っている。全体をぼかしてその上から黒い絵の具を垂らしたようにくすんでいた。


どうして。何で濁っている。


もしかして、誰かがこの店を見つけた?

そして、私が塗ったキャンバスに手を加えた?


それのおかげで私の人生はあんな目にあっていたのか。


許せない。今までにないほどの憤りを感じた。


店に入り、キャンバスを見た。

とても幸せとは思えない色。こんなの私の人生じゃない。


私はまた色を塗る。何度も何度も幸せな色を。

今度は暖色系に加えて、寒色系を少し加える。

急ぎすぎないように、焦りすぎないように。


少しずつ丁寧に、細かく繊細に。

すると携帯が鳴った。会社からだった。


そんなことよりも今は絵に集中だ、これさえ仕上げればまた幸せになれるのだから。


だが携帯は鳴り止まない。

頭を抱えていると衝撃的な光景が目に映る。


キャンバスの絵が塗り替えられていく。

私は何も手を加えていないのに、淀んでいく。


何で…何度も何度も繰り返し塗り直す。

それでも携帯が鳴るたびに、私が頭を抱えるたびにキャンバスが歪んでいく。


ああ、もしかして。

このキャンバスは私なのだろう。

私が色を塗り替えれば、私の人生に反映されるが、私自身の気持ちが淀むとキャンバスに影響が出て、それも私の人生に反映される。



それなら、どうせ上手くいかない人生なら。



私は白い絵の具を大量に、キャンバスいっぱいに塗りたくった。

ムラが出ないように、一面真っ白に。


鳴り止まない携帯を何度も叩きつける。

やがて鳴らなくなった携帯に目もくれず、ひたすらに真っ白に塗る。



そしてやがて手が疲れ、腕が上がらなくなった頃。

私は、私の中は綺麗になっていた。

彩られているわけでもない。ただの白。


こんな綺麗な色があるだろうか。

何者にも染まれる。何にでもなれる。真っ白な自分。



そして何者でもなくなった私は何色でもないキャンバスを抱え、静かに眠りについた。



私は何色に染まるのだろう。

「素敵な色だといいな。」


私は誰もが羨む幸せを掴むのだろう。

「その時は何色かな。」


私の人生は幸福の色で染まるだろう。

「幸福ってどんな色なんだろう。」



私は。私は。「私」とはなんなのだろう。

(わからない。何も。ここは?なんでいる?どこにいる?何してる?何をしていた?)


視界が霞む。

体が動かない。

声も出ない。

意識が朦朧とする。



すべて理解した。






(「ああ…白いなぁ。」)






ー真白のキャンバスー

ここまで読んでくださりありがとうございます。

最後まで読んでもわからなかったかもしれませんが、一応伝えたい事は書けたかなと思います。


読了ありがとうございました。

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