生徒会室での問答
ガキ呼ばわりされて反応する程、彼等は子供ではない。
ここに一部がいたのであれば話は違ったかもしれないが、翔の姿形は我々と同じような年齢であっても、多くの経験をしているであろう事は、言動から明白。
彼が使い魔であろうと目上である事に変わりないし、俺たち一般高校生くらいの年齢は、世間的に見れば当然ガキなのだ。
まぁ、この中で全原会長だけは、そうは見えない風格はある。……だけに、くすりと笑って見せるような大人な対応も出来るのだろう。
「これは失礼しました。翔さん……とお呼びすれば?」
「おう」
「そちらの女性はナイアさんとお呼びしても?」
「勿論です、全原生徒会長」
翔は偉そうに、ナイアは胸に手を当て小さく会釈をした。
そうか、俺が紹介すれば良かったのか。
まだこの状況に慣れていないのも事実だが、失敗したな。
「それで、今日俺は何で呼ばれたのでしょうか?」
「うむ、かけたまえ」
全原会長に促され、俺たちは生徒会室の椅子に腰掛ける。
「チーム、と先程言っていましたね?」
直後、ナイアが話を切り出した。
そういえばそんな事を言ってたな。
「その通りです。実は今年の統一杯のメンバーが確定したのだよ、火水君」
「そういう事でしたか」
統一杯のメンバーは三年の各学年から男女四人。
これは一年生も変わらない。ただ一年生だけは男女総合部門に一人しか入れないのだ。
三年の男子からは全原会長。
二年の女子からは夜鐘先輩と高山先輩が確定だろう。
一年生は……まぁ俺の身内だよな。
「一年生の男女代表が火水君とジェシー君。そして男子部門に高山君の弟君、女子部門に生徒会の雫君が追加となる。ふふふ、まさか生徒会の人間が一人だけ……しかも総合部門に入れないとはね。今年の人選は完全にミスだったようだね」
いや、高山先輩がいる限り純太は生徒会に入らないだろうし、ジェシーも自由奔放過ぎて無理だろう。
当然、俺も生徒会入りなんてごめんだ。実力者で生徒会を揃える文化は、早く無くなれば良いと思う。
「二年生の男子代表がカルロス君と六角君。女子代表が高山君と夜鐘君だ」
「にゃははは、ギリギリセーフだったね」
カルロス・アルベルト。スペイン系の交換留学生だったかな。気性が荒くて有名……だと玲に聞いた事がある。最初に名前が出たという事は、二年の男子の中では最強なのだろう。やはり留学生組は強いなぁ。
そして六角清澄。生徒会の庶務だったはずだ。一般の高校であれば、庶務の必要性を問われるが、この国立上等召喚士養成学校であれば、その仕事は多岐に渡る。まぁ、雑用が多いのはどこの庶務も変わらないだろう。六角といえば召喚士の名門だ。確か六角先輩の両親は上等召喚士、存命の祖父は特等召喚士だと召喚士名鑑で見た事がある。昨年の一年生男子代表だ。惜しくも聖十士入りを逃したらしいけどな。
そして、高山先輩と夜鐘先輩か。ここは昨年の女子代表は変わらず……だな。
そう思えば、一年の中で聖十士五位に入った高山先輩の実力は、本当に凄いんだろうな。
夜鐘先輩の実力は未知数なんだよな。確かに去年出場してたけど、途中棄権してたからな。
確か急病だったっけ? 盲腸だとかなんとか。流石に今年連続でそういった不運にならないだろう。多分。
「三年の男子代表は私と風紀委員長の八神君。女子代表は烏丸君と上武君だ」
全原会長は文句なしの召喚士学校のスーパースター。
風紀委員長の八神一心……か。実力は高いらしいが、主立った成績は残していない。去年は確か全原会長同様に男子代表ではあったが、二年生の六角先輩の方が成績は上だったはずだ。
まぁ、今の三年は全原会長だけで質はもの凄いんだけどな。
女子代表の一人、烏丸美咲。顔立ちの整った才女……くらいしか情報がない。昨年の成績は下から数えた方が早いくらいだしな。
もう一人の女子代表が上武。…………下の名前が出てこない程知らないな。
どうにも三年の女子はパッとする選手がいない。二年生の高山先輩が強すぎるってのもあるんだけどな。
「この十二名が今年の統一杯出場者だ。今度顔合わせの機会もある。覚えておいてくれたまえ」
まぁ、上武以外は昨年の録画を見ればすぐにわかるけどな。半分以上が顔見知りだし、すぐに覚えられるだろう。
「わかりました」
俺の返答に、全原会長は一度ニコリと笑った後、別の話題を切り出した。
「では――」
この時、この瞬間、全原会長の召還力が増大したように感じた。
そしてそれ以上に、全原会長の目が、ナイフのように鋭くなっていたのだ。
当然、ナイアも翔もそれに気付いているだろう。涼しい顔してるけどな。
しかし……これはもしや――――?
「我が宿敵、剣士養成学校の話もしておこうか」
やはり、この話は避けては通れないよな。




