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使い魔は使い魔使い  作者: 壱弐参


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23/40

新たなる目標

「……はぁ」


 高山先輩の呼び出しの後、俺は寮へ戻っていた。

 食堂で吐いた溜め息を、どうやら拾われてしまったようだ。


「何だよ、辛気臭い溜め息だな?」


 そう、拾ったのは高山先輩の弟、高山純太その人だった。


「あれ? 何で制服着てるんだ?」

「いや、生徒会に呼ばれてな」

「ははーん? それが原因だな、今の溜め息は……?」

「ま、それは肯定せざるを得ないな」


 俺は少しだけ肩をあげて、純太の問いに反応した。

 すると、対面に座った純太が身を乗り出すように聞いてきたのだ。


「何の話だったんだ?」


 ここまで言ってしまえば当然の疑問だろう。

 だが、相手は純太。先程まで話していた高山純恋(すみれ)先輩の弟なのだ。

 しかも、純太は姉の連絡先を知らない程の仲なのだ。ここで、高山先輩と話したら、純太の機嫌を損ねてしまうかもしれない。

 俺はそう思い、適当に誤魔化す事にした。


「選考会の結果から、一年生の中では俺が統一杯一番乗りって事らしい」

「何だよ、そんなの新学期に知らせればいいのにな?」

「そうもいかないだろう。一年生とはいえ、統一杯は統一杯だ。可能な限り上位に入って欲しいだろう? 夏休み中も『気を抜くな』って釘を刺すには、今の内に言っておくのが当然だよ」

「まぁ、そうだな……うん。っと、そういえば俺たちはどうなるんだろうな?」

「純太たち?」

「あぁ、ジェシー・コリンズ、一部(いちべ)将太郎(しょうたろう)、んでもって俺は、あの選考会で同率四位だっただろう? 誰かが二位にならなくちゃ統一杯の選抜――二人の内の最後の枠が埋まらないだろう?」


 そういえば、あの時は皆召還力(サモンクラフト)を使い果たして、二位から四位の全員が四位になったんだった。まぁ、一部(いちべ)だけは物理的に戦闘不能になったんだけどな。……俺のせいで。


「んー、どうだろうな。その話は上がってなかったしなぁ? そのうち連絡があるんじゃ

 ――――」


 と、俺が言ってる間に、純太のポケットから電子音が鳴った。


「……っと、噂をすれば生徒会からだ」


 昨今の養成学校は、入学の際メールアドレスの記入が義務づけられている。

 これは、突発的な事故や連絡に対する予防である。とか入学時のプリントに書いてあったけど、これはつまり、便利だからという事以外に他ならない。

 当然、生徒会が学校を通して生徒に連絡してくる事もあるだろう。

 きっと、生徒会内だけのメーリングリストもあるんだろうな。


「で、何だって?」

「……うーん、お盆前にもう一回集まって二位決定戦をやるみたいだぜ?」

「三人だけでやるのか。中々寂しいな……」

「おいおい、応援に来てくれないのかよ?」

「そっか、別に行っちゃいけない訳でもないか」

「メールの中にこれに関する守秘義務とかは書いてなかったしな。別にいいだろう」

「わかった。それじゃ応援に行くわ、ジェシーの」

「うおい! 俺の応援はどうなった!?」

「どうなるもクソも、応援するならやっぱり女の子だろう!」

「くっ! ……くそ! 否定出来ない」


 だからコイツは憎めないんだ。


「それに、今回の選考会って、きっと男女総合の一位と二位を決めてるだけだと思うぞ」

「っ! そうか。男女総合の部が一番重要だものな。確か男子の部だけならまた別に二枠あるはずだ!」

「そこに入れれば、統一杯に出たとも言えるだろう。つまり、その二位決定戦の中で、一部(いちべ)にさえ勝てば、純太は確実に統一杯に出られる訳だ」

「まるで、俺がジェシーに勝てないかのような言い方だな?」

「別に、ただ一部(いちべ)とは相性が良さそうだと思っただけだよ」

「はぁ、そりゃどうも」

「ま、少なくとも、一年生の女子の部代表は決まってるんだよな」

「あ、そうか。上位にはジェシーと雫しか女子がいないのか」


 純太は思い出したように言った。

 女子の部の一位がジェシー・コリンズ。二位が(しずく)れい

 男子の部の一位が俺。二位は、今度の二位決定戦で争う純太と一部(いちべ)のどちらか。

 男女総合の一位が俺。二位は今度の二位決定戦の勝者って訳だ。

 生徒会の一部(いちべ)は確かに強敵だが、ジェシーと純太ならば、勝てない相手ではないはず。

 明日からの合宿でそれが明確に現れるかもしれないしな。


 ◇◆◇ ◆◇◆


「ちょ、ちょっと翔さん! タ、タンマっす!」

(おとこ)ならぁ! 歯ぁ食いしばって我慢しろやぁっ!!」

「ゴフ……!?」


 純太との話の後、俺がナイアを召喚したところで楓から連絡が着たのだ。

 八王子スクエアで待ち合わせた俺たちは、個別スペースに入り鍛錬を始めた。

 までは良かったのだが、翔が……いつも以上に怖い。

 しかも毎回毎回、必殺の一撃に近い攻撃を繰り出してくるので、こちらは気が気じゃない。


「げほ、げほっ……あの、何か機嫌悪くありません……?」


 (うずくま)って聞く俺に、翔がヤンキー座りをしながら答える。


「何か調子に乗ってるからよ?」

「お、俺がです?」

「おうよ。一年の代表になったはいいが、それで天狗になってちゃ先が見えねぇぞコラ? お?」

「そ、そう見えましたか……?」

「他にどう見えるってんだ?」


 いや、確かに翔の言う通りかもしれない。

 統一杯に出場出来ると知って少なからず高揚(こうよう)したのは間違いない。

 だが、決して歩みを止めるつもりはない。俺は強くなって四年生までに聖十士に――――、


「そんなんじゃ今年の統一杯、一位なんてとれねぇぞゴルァッ!!」


 あれ? 翔さん、何か目標高過ぎじゃありません?

さすが血みどろの翔ちゃんやでぇ……!

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