表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使い魔は使い魔使い  作者: 壱弐参


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/40

ジェシーの別荘へ……?

「……おい」

「何だよ」

「何だよじゃねぇよ風土。何でジェシーに言われるがままブーメランパンツ買っちゃったんだよ!」

「しょうがないだろう、試着出来なかったんだから。それに、ブーメランパンツじゃない。ブーメラン海パンだ」

「似たようなもんだろうが! じゃあ何で女共は試着出来たんだよ!?」


 そんな純太の情けない言葉に、楓がさらりと反応する。


「女の子の試着は下着の上からするのよ」

「なら、俺たちだって……!」


 言いながら純太の言葉の勢いは徐々に尻すぼみになっていく。

 どうやら、男子の下着の欠点に気付いたようだ。


「普通の水着ならともかく、ブーメランになるとトランクスやボクサーパンツの上に穿いてもなぁ」


 俺の指摘に降参したのか、純太は顔を覆って嘆く。

 さっきまで猿だったのに、羞恥心を取り戻すと人間になるようだ。


「ハッハッハ~! 当日が楽しみダヨーッ!」


 ジェシーの嬉しそうな表情に、玲も楓も苦笑する。

 完全に晒し祭りコースではあるが、女の子との外泊というのは、青春時代に相応しい。

 皆の強化合宿という名目もあるしな。


「姉御ぉ! 姉御の水着はどんなのなんすか!?」

「物理的に消えたいのですか、翔?」

「そんなぁ……!?」


 確かに、ナイアの水着は気になるところだ。

 しかし、これを口にしてしまっては翔と同類だろうし、物理的に消えたくもない。


「顔に出てるわよー」


 と、ジトっとした目で言うのは楓の言葉だけであって、決して俺の本意ではないと言っておこう。そう、興味本位なだけだ。


 ◇◆◇ ◆◇◆


 俺たちは、夏休み初週の楽しみが出来た。

 ジェシーの別荘は、南房総の外れにあるそうだ。

 夏休みの二日目である七月二十八日の日曜日。これが出発の日だ。自分でも珍しくスマートフォンのスケジュール帳に予定を入れてしまったくらいだ。

 あのナイアでさえも、テンションが上がっていた。本人は隠していたがわかる。あれはそういう顔だった。

 当日は八王子スクエアの前に、ジェシーのお手伝いさんが皆を迎えに来てくれるそうだが……なんだ、お手伝いさんって? そんな日本語始めて聞いた気がする。


 そんな楽しみを明日に、今日七月二十七日の土曜日――――福島のイビリを乗り越えた終業式の日を乗り越えたというのに、俺は学校に呼び出されていた。


「とても帰りたそうな顔をしていますね」


 生徒会室の椅子にボケっと座っていたら、背後から聞こえた女の声。その声が誰のものか、俺はすぐにわかった。


高山先輩(、、、、)……背後からよく俺の表情がわかりましたね?」

「カマを掛けただけです」

「ぐっ!?」


 振り返りながら言った俺は、一瞬で高山先輩の鋭い瞳に囚われ、身体をビクつかせてしまった。

 そう、俺を呼んだのは高山(たかやま)純恋(すみれ)。生徒会副会長であり、純太の姉である。


「人が悪いですよ」

「確かにそうですね」

「でも謝罪は無し……と」

「では、暑い中お呼び立て申し訳ありませんでした」


 見当外れな事に対しての謝罪にビックリである。


「素敵な丸い目です」

「よく言われます」

「どなたにですか?」


 言いながら高山先輩は、瞳を妖しく光らせた。

 まるで全てを見透かされているような、そんな瞳だ。


「…………見栄を張りました」

「結構です」

「あのっ!」


 挨拶すらかわされないこの異様な空間を、俺はいい加減壊したかったのだろう。正面に座った高山先輩を前に、立ち上がりながら言う。

 高山先輩は、ただ視線だけを上げる。


「何でしょう?」

「な、何で俺は今日ここに呼び出されたんですか?」

「心当たりがないと?」

「…………なくはないかなぁ」


 俺は高山先輩を直視出来なかった。

 俺の頭に過ったそれは、文字通り頭がトゥルトゥルの福島講師だった。

 え、でも何でバレたんだ? あの時の事を知ってるのは、俺の身内(使い魔)と、塚本講師くらいだろう。


「私が見ていましたので」

「っ!? な、何の事でしょうか……?」

「勿論、昨日の火水君と福島講師の事です」


 完全にバレている。


「い、一体どこから……?」

「二階にある渡り廊下。そこから火水君に詰め寄ってる福島講師が見えました」

「あんなところから……」


 この学校は、校舎がコの字型になっている。

 確かに渡り廊下からならば、進路指導室の状況を見る事が出来る。


「念のため、動画に収めました。そこから福島講師が火水君に何を言っているのか確認しました」


 凄いな、読唇術まで使えるのか。


「火水君の対応は、塚本講師の入れ知恵だと思いますが……」


 それについては喋ってはいけない。それは、俺を助けてくれた塚本講師の立ち場を悪くする可能性が含まれているからだ。


「それはどうでもいいのです」

「へ?」

「問題は、そのやり方では生ぬるいという事。これに尽きます」

「ど、どういう事ですかっ? 話がサッパリ見えません」

「全原会長の名の下に、我々生徒会は、一般生徒である火水君に対する暴力行為を働いた福島講師を強く糾弾します」

「うぇ?」

「現在、全原会長は校長と会議中です。何せ、あの福島講師をけしかけたのは、校長だと言っても過言ではないからです」

「で、でも何で生徒会が俺を助けてくれるんですかっ? 俺が邪道な戦い方で選考会を――」

「――結果を残したのは事実です」


 高山先輩は、淡々と言って俺の言葉を切った。

 そしてこうも付け加えた。


「我々生徒会は……一年生、火水風土を全力で守ります」


 一体何がどうなってるんだ……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~14巻(完結)・コミック1~9巻が発売中です↓
『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』
神薬【悠久の雫】を飲んで不老となったアズリーとポチのドタバタコメディ!

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ